著者:大石学、出版社:中公新書
コンパクトな新書という体裁からは想像できないほどの重厚な学術書そのものです。私より5歳も若いとは思えないほど博識な著者が豊富な文献を駆使して、新選組とは何だったのか、その実像をあますところなく描き出しています。
たとえば、新選組には「時代に取り残された剣士集団」「復古主義思想にこり固まった野蛮な浪人たちの殺人集団」というイメージがあります。本当はどうだったのか?
新選組は着実に洋式軍備化をすすめていた。土方歳三は、新選組が毎日全員が砲術訓練を行い、西洋鉄砲がだいぶ上達し、幕長戦争の先駆けも勤められるほどになったと自慢している。鳥羽伏見の戦いのとき、新選組はみな鉄砲を持っていた。新式の元込の鉄砲やマントとズボンを購入しており、洋装化していた。新選組は全体として鉄砲隊としての性格を基本にしつつあった。
映画『隠し剣、鬼の爪』に東北地方の海坂藩が様式銃をもって訓練に励んでいるシーンがあるのを思い出しました。また、新選組の隊員は江戸と甲府の浪士と豪農出身とばかり思っていました。しかし、これも間違いです。その出身は東北から九州まで全国にわたっています。筑前から2人、筑後から5人も新選組に加わっているのです。そして、武士・浪人だけでなく、百姓、商人、職人、町人、医師、宗教家など、さまざまな出身階層の人がいました。いわば全国からの志願兵によって成りたっていたというわけです。
そして、新選組の特徴は、浪人の同志的組織から、官僚制度組織になっていったということです。近藤勇がそれをすすめたのです。もちろん、これには強い反撥もうまれました。しかし、近藤勇は、厳しい法度を制し、公印をもつなどして組織化・官僚化を強引におしすすめていきました。さらに、隊員には月単位の俸給制度を導入しました。武士のような家単位の現物支給ではなかったのです。うーん、そうだったのか・・・。
新選組
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