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2004年12月 の投稿

義経の悲劇

カテゴリー:未分類

著者:奥富敬之、出版社:角川選書
 悲劇の将、義経の実像を完膚なきまでに暴いた本です。きわめて明快です。うんうん、そうだったのか、なるほどねー、と唸りながら読みすすめました。
 義経は戦術には長けていたかもしれないけれど、時代の流れを見抜く力がなかった。後白河法皇に操られ、勃興する武士に背を向け、衰退していく公家の側に身をおいたために滅亡していったという著者の論証はきわめて説得的です。
 義経は平清盛に助命され、母の常磐御前は清盛の側室とされた。そして、清盛に傾倒し、父とまで敬愛するようになった。しかし、成人して、実は自分の父親(義朝)が清盛に平治の乱で殺されたことを知ると、一転して清盛を、ひいては平氏を憎み嫌うようになった。
 ところが、頼朝は後白河法皇の言いなりにならず、武士の頭梁として天下を握ろうとした。したがって、義経が頼朝のご家人でありながら頼朝の許可を受けずに朝廷から官位を受けたりすることは絶対に容認できないことだった。
 義経は時代状況を客観的に見ることができず、武士団の統率力もなかった。多くの武士からすると、義経は公家の手先でしかなく、信頼できる存在ではなかった。
 となると、義経の悲劇は、歴史の移り変わりを見抜けなかったことによる必然のものだったということになります。つまり、「判官びいき」とは、あとから頼朝を悪者に仕立て上げ、執権として実権を握った北条一門を善者にすべくつくりあげられた「神話」にすぎないということなのです。うーん、そうだったのか・・・。

英仏百年戦争

カテゴリー:未分類

著者:佐藤賢一、出版社:集英社新書
 佐藤賢一は『王妃の離婚』や『カルチェ・ラタン』、『双頭の鷲』など、どれも中世ヨーロッパを舞台にした小説を書いていますが、その博識とストーリーの面白さに、どれも感嘆して読みました。今度は、この本でヨーロッパ史の裏側を知ることができた思いです。
 イギリスといい、フランスといい、実は英仏百年戦争までは、大陸フランスの貴族の争いであったというのです。ああ、そうだったのか・・・、と初めて知りました。イングランド王国はフランスのノルマンディ公の属国でしかなかったのです。
 そして、ヘンリー4世まではイングランド王は実はノルマンディ公であり、アンジュー伯であり、大陸の領土を奪われても、相変わらずフランス人だった。王侯貴族は母語としてフランス語を話し、英語はイングランド庶民の言葉でしかなかった。ところが、ヘンリー5世はフランス語が話せず、イングランド人として即位した初めてのイングランド王だった。
 英仏百年戦争が終わったとき、それぞれ初めて中央集権国家が誕生し、フランス人、イングランド人が生まれた。イングランド王はフランス人であることをやめ、外国である大陸の領地に固執しなくなった。
 うーん、そうだったのか・・・。シェイクスピアの『ヘンリー5世』のアジャン・クールの戦いのことも触れられています。まとまりのないフランス貴族連中の軍を統率のとれたイギリス軍が圧倒した戦いです。なるほど、なるほど、とまたもや思いました。
 私はフランス語の日常会話はなんとか話せます。11月に受験した仏検1級は不合格でしたが、71点とることができました(合格点101点、150点満点)。30年も続けていてこの程度ですから、まるでたいしたことはないのですが、それでもフランス語を聞いてかなり分かるのがうれしくて毎日、仏和大辞典を愛読しながら続けています。

階級社会

カテゴリー:未分類

著者:ジェレミー・シーブルック、出版社:青土社
 日本は一億総中産階級になった。こんなことが言われたのは、今から30年前のことでしょうか。まだ労働者階級という言葉が少なくない学生に魅力ある言葉だった時代に、アンチテーゼのように登場してきたフレーズでした。階級なんてない。そんなのは古くさいマルクス主義思想の残りカスだ。本当かなー・・・。私は大いに疑問でした。
 いま東京では、1億円のマンションが売れ残っても、10億円のマンションは即日完売するそうです。六本木ヒルズのマンションは賃料月額300万円、共益費100万円だといいます。誰がそんな賃料を支払えるのかと問いかけたくなります。でも、余計なお世話と言われてしまいそうです。
 多くの人々が、よりよい生活を実現する唯一の可能性が世界の富の公正な分配にあるのではなく、もっと多くのカネを稼ぐことにあり、それが彼らの地位を向上させてくれるかもしれないと考えるようになった。
 支配階級にとって残念なことは、富の生産に対する普遍的な献身からいささかの利益も受けないインド、バングラデシュ、ブラジル、メキシコの人々が、このイデオロギー構造の英知を必ずしもよく理解してくれないことだ。
 世界のすべてが変わった。それにもかかわらず、気味が悪いことに、すべてが同じままだ。豊かな国々に住む我々がテレビのスイッチをひねるたびに、貧困を映し出す映像が目に飛び込んでくる。だが、我々としては、軽蔑しながらそれを見るのが関の山である。
 さまざまな言い訳が考案された。奴らは外国語を話す。奴らは別の神を信じている。世界との距離が近くなったことに感謝しつつも、実際に起こっていることからは目を背けることが可能である。
 稀少種の動植物を手つかずの森に生かしておくのはいい。だが、貧相だ。不衛生だの病気だのを無理に押しつけられるのは嫌だ。
 第三世界が与えてくれる利益だけは慎重に選びとり、それが抱えている問題は無視する。これで公正と言えるだろうか?
 ほとんどの人が自分をミドルクラスと考えているような社会では、アンダークラスは、ある有益な機能を担っている。彼らは、残りの我々に対して、自己を抑制するよう警告を発している。つまり、彼らのような運命に陥らないためには、慣習を守って暮らすようにと、強く教え諭す存在である。彼らは体制順応と正当性遵守の意義を教え、反体制の愚かさと、別の生き方などを試みたあげくの結果とを教える。
 どれだけ凶悪な社会現象がアメリカで起きても、それは間違いなく世界各地で起きるようになる。
 貧富は富者のイメージにあわせて、その姿を変えつつある。彼らは、何を買うか、何を持つか、どのようにお金をつかうかについて、どこにいても、同じ執拗な広告、同じ勧誘にさらされている。彼らの欲求はあおられる。彼らは自己抑制の破綻、市場主導の帰属意識に身をさらしてきた。それでいて、貧者にとっては、市場に参加するためのお金は手の届かないところにある。
 排除された若者が多国籍企業の広告を身につけるとき、貧者は富者の敵であることを止めたばかりでなく、嬉々として富者の利益の拡大をもはかっている。貧者は新たな形の従属にからめとられている。
 かつてないほど豊かに富んだ社会で犯罪率が急増しているという現象は、20世紀最大の謎のひとつである。それは社会の富が莫大なものとなり、特定の個人が著しく大きな報酬を受けとるという状況のなかで依然として、社会的不公正が続いていることの反映である。こうした利益を受けられない人は、なぜ自分がそんな目にあわなければならないのかを理解することができない。
 犯罪は、そうした不公正に対する彼らの個人的な回答なのである。本能的な反抗心を育むのは、ちっぽけな名声ではなく、人々がかかえる劣等感である。社会的な改善の可能性を断たれた人々は、故意にでも法を侵そうとする。つまり、犯罪は高度にイデオロギー的な現象である。犯罪率の上昇は不平等の拡大と関係している。犯罪は、金持ちが分配敵正義を西欧の主要政党の綱領から削除させた代わりに支払わなければならない代償である。

絵で見る幕末日本

カテゴリー:未分類

著者: エメェ・アンベール、出版社:講談社学術文庫
 江戸時代の末期にやってきたスイス人による絵入りのレポートです。スイス時計業組合の会長であり、自由主義的な参議院議員でもあったということです。
 写真のかわりに、いかにも細密な絵を描いていますので、写真と同じほどのインパクトがあります。
 中産階級の欠如は、日本の農村に貧相な風景を与えている。
 親切で、愛想のよいことは、日本の下層階級全体の特性である。
 日本には、香気のある植物、また、歌う小鳥がきわめて少ない。
 日本人に認められる表情の活発さと相貌の多様性は、自主的で独創的で、自由な知的発育の結果である。
 日本人は、シャツとズボン下を着ないが、毎日、入浴している。
 江戸の町人は、武器を取り上げられて、武士の主権の下に屈従させられているものの、見たところ自由に、あらゆる便宜さを享有しながら生活している。
 なんだか、今も通じる指摘ですよね・・・。

広い宇宙に地球人しか見あたらない50の理由

カテゴリー:未分類

著者:スティーヴン・ウェッブ、出版社:青土社
 宇宙人はいるのか。映画『ET』の世界は現実にはありうるのか・・・。
 UFOは地球におりてきていないのか。ナスカの地上絵は宇宙人が描いたものではないのか・・・。フェルミのパラドックスをテーマとして取りあげ、ひとつひとつ解明していった本です。
 私は、なぜ夜の空は暗いのか、前から疑問に思ってきました。だって、空には無数に星があるのですよ。無数とは無限のことですから、光が途中で消滅しない以上、夜空は大小さまざまの星からの光線によって埋め尽くされている。つまり、どちらを向いても全面的に光に満ちあふれ、無数の光によって明るくなっているはずなのです。ところが、雲ひとつない夜空なのに、空は暗くて星明かりは少ししかありません。これは、宇宙が固定したものでなく、膨張していることの反映だということです。でも、それにしても・・・、不思議です。
 地球の人口は、1650年に5億人、1800年に10億人、1930年に20億人、1975年に40億人、1999年に60億人。すごい増え方だ。
 われわれが銀河に植民することになるのなら、なぜ彼らは既にそうしていないのか。植民地を樹立する手段として動機と機会があるのに、そうしているようには見えない。なぜか。これをフェルミ・パラドックスという。
 フェルミ・パラドックスが教えてくれるのは、この銀河系の中で知性のあるもの、もののわかる種族は人類だけだということ。銀河では、単純な生物はずっと少なくなるが、それでもないに等しいほどではない。例外的に興味深い生命系は、銀河の中には何万とあるだろう。ただ、知的生命体を備えた惑星は地球だけだということ。
 ええーっ、そうなのかな・・・と思いつつ、やっぱりそうかもしれないなと思いました。

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