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2004年5月 の投稿

パリのおっぱい、日本のおっぱい

カテゴリー:未分類

著者:木立玲子、出版社:集英社BE文庫
 フランスのマスコミで働く日本人女性が43歳のとき乳がんとなり、乳房切除の手術を受けました。4年後、転移していることが分かり、化学療法を受けます。その経過を明るいタッチで描く本です。日本とフランスの医療事情の違いも分かり、興味深い本です。
 フランスでは乳がんの手術は無料です。難病100%払い戻しの対象となって、払い戻しされるのです。がんとエイズは、その対象となっています。そのため、フランスでは給料の46%を社会保険のために天引きされます。これは税金とは別です。スウェーデンは54%、デンマークは53%、ベルギーは46%です。それでも、病気にかかったときの安心感があります。
 しかもフランスの病院では、ほとんど個室か2人部屋で、全員に個別の電話が提供されます。大部屋は廃止されたのです。日本もフランスの医療制度に見習うべきです。病気にかかったとき、お金のことを心配せずに安心して治療に専任できるようにするのが政治の責務だと思います。税金のつかい方に、日本人はもっと関心をもつべきです。
 ただ、この本には江戸時代の日本に「離婚の権利は亭主だけにある」という昔ながらの「常識」をうのみにした誤りもあります。日本の女性は昔から、そんなに弱くはなかったのです。ぜひ、この点は改めてほしいと思いました。

戦争映画100!

カテゴリー:未分類

著者:大久保義信、出版社:光人社
 私は、たとえ「平和ボケの日本人」と罵倒されようと、平和主義者でありたいと願っています。でも、戦争映画はなるべく見るようにしています。これも世界の現実を認識するためには欠かせないものだと思うのです。スクリーンのうえで銃弾が飛び交っていても、決してこちらに飛びこんできて死ぬようなことはないという安心感もあります。
 中国大陸へ駆り出された私の父は、病気になって辛うじて生還しましたが、私に「戦争ちゃ、えすか(怖い)ばい」と語ってくれたことがあります。私も、本当にそうだろうと思います。私の青春時代にはベトナム戦争がありました。私も何度となくベトナム反戦デモに参加しました。夜遅く、東京の銀座通りを埋めつくすフランス・デモに参加したときの感動は今もはっきり記憶しています。
 「ワンス・フォーエバー」は、ベトナムのイアドラン渓谷におけるベトナム正規軍とアメリカ軍が初めて正面から戦闘した状況を再現したものです。「フルメタル・ジャケット」はアメリカ海兵隊の苛酷な新兵養成訓練を見せてくれます。「プラトーン」や「ハンバーガー・ヒル」はベトナム戦争の峻烈な現実を想像させてくれます。
 この本は、これらの映画の意義について戦争の実態をふまえて解説してくれます。まさに「軍事オタク」というべき著者のウンチクの深さに驚嘆します。
 第二次大戦を描く映画、そして最近の湾岸戦争を舞台とする「戦火の勇気」まで、軍事問題に関心をもつ人には必見の映画を見事に紹介しています。

知事の決断

カテゴリー:未分類

著者:日本居住福祉学会、出版社:英伝社
 被災者生活再建支援法が改正されました。4月1日から施行されています。地震などで被災した住宅の再建のための解体費用として最高300万円を支給するというものです。では、解体したあとに再築する費用は、いったいどうなるのか。その点について鳥取県知事が何をしたのか、本書で紹介されています。私は感動のあまり胸が熱くなりました。片山知事は、東大法学部を出て自治省に入ったエリート官僚でした。その官僚出身の県知事が霞ヶ関の常識に果敢に挑戦したのです。生半可な気持ちでは、とてもやれないことだと思います。
 財務省は、住宅本体の再建費用については私有財産の形成に税金を投入することなんかできないと頑強に抵抗しています。しかし、本当にそうなるのか、他に例はないのか。片山知事は前例はあると主張します。農地です。個人の財産であっても、農地なら災害復興の対象になって補助金がもらえます。ところが、人間の生活の基本である住宅については、壊すのなら補助金を出すけれど、壊さないことが前提なら補助金は出さないというのです。変な話です。阪神・淡路大震災では、たくさんの仮設住宅をつくりました。1戸300万円はかかっています。ところが、それは取り壊すから国が補助金を出したというのです。えっ、と驚いてしまいます。
 片山知事は、仮設住宅はなるべくつくらずに、現地で建て替えるのに300万円の補助金を出しました。財務省の猛反対を押し切ってのことです。これによって被災地からの住民の流出がほとんどなくなりました。私は、それを知って涙が出そうになりました。住む家を喪った親を大都会に住む子どもたちが引き取ろうとしました。それを許せば、鳥取はますます住む人がいなくなります。大都会に住む子どもたちが年老いた親を呼び寄せ、見知らぬ人々のなかで生活させるのは本当に美談なのでしょうか。やはり住み慣れたところに住み続けたいと思うのが人情なのではありませんか。私より3歳年下の片山知事の英断に、私は惜しみなく拍手したいと思います。

日本海海戦かく勝てり

カテゴリー:未分類

著者:半藤一利、出版社:PHP研究所
 ひとつくれよと露にゲンコ。今から100年前の1904年(明治37年)、日露戦争が始まりました。日本海海戦は1905年5月、対馬沖でたたかわれ、東郷平八郎のひきいる連合艦隊がロシアのバルチック艦隊に完勝しました。
 この本は、この日本海海戦の真相を追求しています。有名な丁字戦法は使われていなかった。併航戦法がとられ、日露両軍の士気の違いで勝利した。機雷をロープでつないだ連繋機雷を新兵器で使おうとしたが、それも波が高くて使えなかった。天気晴朗なれど波高しという電文の真意は、波が高いので、連繋機雷作戦は多分できないだろうと軍司令部に通報したのだ。そんな驚くべき新事実を解明しています。
 軍の機密保持と東郷長官を神格化するなかで、誤った宣伝がなされたというわけです。まさしく政府の情報操作です。
 また、私は203高地の攻略作戦の意義を初めて知りました。『坂の上の雲』にも出てくる有名な秋山参謀は、「旅順の攻略に4、5万の勇士を損ずるも、さほど大なる犠牲にあらず。彼我ともに国家存亡に関するところなればなり」としているそうです。
 乃木希典大将が203高地で無謀にも強行突撃をくり返し、何万人もの大量戦死者を出したのは有名な話ですが、それにはこんな背景があったのですね。ところが、203高地を占領してみると、旅順港のロシア艦隊は既に日本軍の砲撃でみな沈没していたというのです。結果的には、203高地の占領は必要なかったというわけです。
これも知りませんでした。とかく戦争には隠された部分が大きいと思いました。
 国民は政府の情報操作によって、政府の思うように踊らされることが多いのは、先日のイラクの人質バッシングを見てもよく分かります。情けないことです。

鉄槌

カテゴリー:未分類

著者:いしかわじゅん、出版社:角川文庫
 弁護士には耳の痛くなる本です。漫画家の著者がスキーに出かけ、夜行バスで帰ろうとしたとき、トイレに行って戻ったら、なんと寒風吹きすさぶ夜空のなかバスに置き去りにされてしまっていました。その悔しさと怒りを漫画で表現したところ、バス会社から名誉毀損として100万円の賠償を求める裁判を起こされてしまいました。もちろん、著者も弁護士に頼んで応訴します。そのときの着手金がなんと200万円。えっ、と驚いてしまいます。そんなー・・・。
 著者は、弁護士費用というのは吹っかけられるものだとは知らなかった、実は、弁護士費用も交渉で決まるものだと書いています。えっ・・・。今では、弁護士会の標準となる報酬規定が廃止されていますので、こういうことも、お互いに納得づくであればありうるわけですが、当時は弁護士会の報酬規定があったわけですから、とても信じられません。
 しかも、著者によれば、弁護士と会って打ち合せをしたのは1回のみ。あとは、FAXと電話でのやりとりだったというのです。これまた信じられません。もっとも、はじめの弁護士(実名で登場します)は懲戒処分を受け、あとで弁護士登録を抹消しているそうです。ただし、それを引き継いだ弁護士は、そのようなことを何も説明していません。
 そして、和解交渉に至ります。本人との打合せなしに和解交渉するというのも信じがたいところです。裁判の記録についても、きちんと本人は渡されていなかったようです。ひどい弁護士がいるものだと思います。
 著者は、さらに、弁護士の文章のまずさ、拙劣さを厳しく糾弾しています。日本語になっていないというのです。難関の司法試験を合格し、文章を武器としてたたかっている人たちとはとても思えない、そうこきおろしています。関係者がほとんど実名で出てきます。こんなことを書かれたくないと思いつつ、胸に手をあてながら最後まで一気に読んでしまいました。

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