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兎の眼

カテゴリー:社会

著者   灰谷 健次郎 、 出版   理論社
 大阪で橋下流の教育改革がすすんでいます。最低・最悪の「改革」です。ところが、マスコミは、橋下「改革」をもてはやすばかりで、その重大な問題点をまったく明らかにしようとしません、情けない限りです。
いまの教育の現状に満足している日本人は、わたしを含めてほとんどいないと思います。しかし、橋下はさらに悪い方向へ引っぱっていこうとしているのです。とんでもない方向なのに、それに気がつかない人、目をつぶってはやしたてるマスコミの多いのにあきれます。
教育の手が込んだ、面倒なものだというのは当然のことです。だって、人間を扱うのですから。たとえば、人間は誰だって反抗期を経なければいけません。口先だけは反抗していても、本当は甘えたい。そんな矛盾した心理を見抜いてうまく対処するのが大人であり、教師です。
そして、貧乏という問題があります。お金がないと、何かと困ることは多いわけです。お金がないと家庭での親子の会話も乏しくなることが多いのです。そうすると、子どものボキャブラリーは貧しくなり、学業成績にもマイナスに影響します。
この本は1974年に刊行されたものです。今から38年も前の本ですが、いま読んでも古さをまるで感じません。
橋下がしているように教師をいじめたら、結局は子どもたちをいじめるのと同じです。「ダメ教師」を排除するということは、「ダメ生徒」を排除すると同じです。トップのエリートだけを育てればいいというのでは公教育ではありません。
 教育の現場は面倒くさいもの、それにつきあうのは大変だけなもの。それをじっと我慢して見守るのが大切なことなんです。
いい本でした。読んで心が洗われる気がしました。
(1978年3月刊。1200円+税)

法律相談のための英語ノート

カテゴリー:司法

著者   宇都宮 英人 、 出版   林田印刷
 すごいです。本職は弁護士なのに、子どもたちに空手を教え、さらには英語にも中国語にも堪能なのです。3年前に『法律相談のための中国語ノート』を刊行していますが、今回は英語ノートです。昨年、『空手と護身の英語ノート』を出していますので、英語ノートとしては第2弾になります。
 子どもたちに英語を教えるほうでも、その成果が本にまとまっています。8年前の『体と心を鍛える日の里空手スクールの実践から』(海鳥社)と、3年前に出たそのパートⅡです。
 著者の空手は、さすがに京大空手部の主将だったというだけに、何も分からない素人の私が見ても、いかにもぴしっと型が決まっています。決して一朝一夕にはできない体型です。
 この英語ノートは、とても実践的な内容です。弁護士が法律相談を受けて直面するだろうという質問を英語で回答するとこうなるというものです。
 たとえば、近所にいる80歳の一人暮らしのお年寄りが訪問販売からいろいろ物を買わされているようだが、という質問があります。民生委員を利用するとか成年後見申立をするというのがその回答になっています。まったくシステムの異なる国から日本に来て働いている人にとって、日本のシステムはとても複雑で分かりにくいと思います。
 解雇など労働契約が解除されたときにともなう質問に対しては、労働審判制度が説明されています。
具体的な質疑応答のほか、ボキャブラリーということで司法の専門用語についての英訳もあります。これで助かる人も多いと思います。
 著者の引き続きのご活躍を期待します。
(2012年3月刊。1600円+税)

レーガン

カテゴリー:アメリカ

著者   村田 晃嗣 、 出版   中公新書
 在任中は、あれほど人気のなかったレーガンが今ではアメリカ史上最高の大統領だと評価されているそうです。そんなことを聞くと、アメリカって本当に変な国だと思います。
 レーガンは自分がアルツハイマー症にかかったことを自ら公表しました(1994年11月)。そして、レーガンの生前から神格化が始まったのでした。
 レーガンは、大統領在職中は、知性に欠けるもとB級映画俳優と軽蔑され、危険なタカ派として、その政策やイデオロギーは激しい非難にさらされた。ヒトラーや吸血鬼ドラキュラと並んで嫌われたことすらある。
そうなんです。私もそのように見ていました。この本で、B級映画俳優としての実像、そして映画人組合長としてFBIにこっそり情報を提供し、アカ狩りに加担していた内情を詳しく知ることができました。
 レーガンは、貧しいアイルランド移民の末裔として生まれ育った。レーガンは離婚歴をもつ、史上初(唯一)のアメリカ大統領である。
 子どもたちとの関係は緊張をはらんでいたものの、レーガンは大統領として家族の絆の大切さを説いた。さらに、信仰の必要性を語りながらも、自らは教会に足を運ぶことはほとんどなかった。
 「小さな政府」と「強いアメリカ」を標榜しながら、結果として着任時の3倍にのぼる膨大な財政赤字を残し、ソ連との和解に着手して冷戦の終結に貢献した。
 レーガンの曾祖父はマイケル・オリーガンという。アイルランド風のオリーガンをレーガンに改めた。
 レーガンの父親は靴のセールスマンであり、放浪し、飲食におぼれていた。ただし、父親は黒人やユダヤ人への差別を憎む人でもあった。レーガンにとって、父は反面教師であり、母は心の故郷であった。父のアルコール依存症は深刻な問題であったが、レーガンはそれを知られないように陽気で社交的に振る舞わなければならなかった。
 レーガンは写真撮影のように書物を鮮やかに暗記できる記憶力があった。レーガンは書簡の人であり、生涯に1万通以上の手紙を書いた。
レーガンの出世の第一歩は、スポーツ・アナウンサーだった。その声は、重要な生計の糧となった。機転と当意即妙の話術を身につけた。そして、レーガンは黄金の声をもち、抑揚や口調を工夫して技術を磨いた。
 レーガンの映画デビュー作は実は犯罪映画だった。カトリックの背景をもちながら、レーガンは典型的なプロテスタントに見えた。
レーガンは葬儀に出席することを嫌った。葬儀の重苦しい雰囲気は、レーガンの楽観主義と相容れなかった。
 レーガン一家はニューディール政策によって救済されたにもかかわらず、政府が平時に税金で社会福祉を拡大することには反対した。
レーガンは優れたエンターテイナーだったが、優れた俳優とは言いがたかった。レーガンは俳優として大統領を演じたにすぎないという評価は、政治家としてのレーガンを過小評価するのみならず、俳優としてのレーガンを過大評価するものである。
 なーるほど、そのように評価すべきなのですね・・・。
 レーガンには戦前、共産党シンパの友人がいて、共産党への入党も考えていたようです(本人は強く否定)。そして、戦後、レーガンは映画俳優組合の委員長に就任します。しかも、5期連続の委員長です。ところが、こっそりFBIに情報を提供していました。つまり、FBIのスパイだったわけです。
 マッカーシー旋風のとき、公聴会ではレーガンは証言を拒否した。だから、リベラル派をふくむ多数の好感を得て委員長に連続して再選された。ところが、裏ではFBIのスパイをしていた。同じ反共主義を標榜しても、マッカーシーにとっては政治的方便だったがレーガンにとっては確信だった。
レーガンは賭博場やナイトクラブを好まず、仕事以外では、読書に没頭した。レーガンはかなりの読書家だった。レーガンは「リーダーズ・ダイジェスト」などからエピソードやジョーク、統計を拾い出しては丹念にメモをとり、自ら原稿をかいて、スピーチに磨きをかけた。スピーチライターの原稿を読むだけの政治家とは、演説修行の練度が違う。
 これには驚きましたね。レーガンはスピーチライターだったし、実況中継アナウンサーとして当意即妙に話しが出来たというのです。これは、ブッシュ(子)とは大違いです。しかも、レーガンは中国の孫子だけでなく、レーニンの本まで読んだというのです。うへーっ、すごいです。
レーガンは決して偉大な知性の人ではなかった。しかし、ひとかどの読書人であり、実務的な知識や応分の教養は身につけていた。そうでなければ、あれほどのユーモアのセンスは発揮できない。レーガンの知性を過小評価するのは危険だ。ただし、レーガンはもっぱら自分の信念を確信し、補強するために読書する癖があった。それがレーガンの知的限界だった。
 権威や体制への順応は、レーガンの変わらぬ資質の一つだった。カーターは、レーガンに対して、自分の知性と知識の優越を確信して討論会にのぞんだ。だが、勝負を決したのは、知性や知識ではなく、自信とビジョンそして表現力だった。
 レーガンは決して人種差別論者ではなかった。そもそもレーガンは人種問題にほとんど無関心だった。
 かつて演説原稿を自ら起草してきただけに、レーガンの加筆・修正は要点をおさえていた。危機や悲劇に際して共感と希望を平易に語ることは、指導者の重要な資質である。
レーガンという人物を正しく知るうえで大変有益な本だと思いました。
(2011年11月刊。880円+税)

全盲の僕が弁護士になった理由

カテゴリー:司法

著者   大胡田  誠、 出版   日経BP社
 先天性の緑内障のため、12歳のときに両目の視力を完全に失い、全盲となったにもかかわらず、日本で3人目に司法試験に合格し、今、東京で弁護士として元気に活躍している人の体験記です。読むと元気が出てきます。
 サブタイトルは、あきらめない心の鍛え方となっていますが、まさにぴったりです。
 見えない目で、しっかり相手の目を見て、とことん話を聞く。それが信頼関係を築く第一歩だ。なるほど、です。すごいですよね。見えない目で、しっかり相手の目を見るなんて・・・・。
 そして、奥さんも全盲です。こちらは未熟児網膜症のため、生まれたときから目が見えません。そんな夫婦ですが、1歳の子ども(娘)さんがいます。子育てにも夫婦でがんばっているのです。
 弁護士の仕事は、相手の心を知るところから始まる。口は目ほどにものを言う。声は正直なもの。言葉は選べても、息づかいや抑揚、間のとり方まで装うのは意外に難しい。
 衣ずれや足音や、声以外の音も重要な手がかりとなる、不安やいら立ちが表れる。匂いもその人を物語る。
見えないことはハンディだけれど、だからこそできる仕事もある。見えなくても、きちんと相手の目を見ているつもりで顔を向けて、低く落ち着いたトーンでゆっくりと話す。
 証人尋問では、見えないからこそ有利な面もある。相手の方の証人が、弁護士に言わされているのではなく、自分の意思で自信をもって証言しているかどうか、注意深く観察する。法廷での声の響き方によって、うつむきがちで発言しているか、左右をキョロキョロうかがいながら話しているかも分かる。
 ところで、全国に30万人いる視覚障がい者のうち、点字を満足に読み書きできるのは、1割。大人になってから視力を失った中途視覚障がい者には、点字をまったく読めない人も多い。何歳から点字を覚え始めたかで、読める速さはまったく異なる。
 なーるほど、それはそうでしょうね。
そして、点字を読むのが遅い著者は司法試験を耳で受験したのでした。それにしても、4日間、トータルで36時間30分という長丁場の受験に耐え抜いて合格したなんて、すごいですね。
 試験会場には著者1人に、試験管3人が監督していたというのでした。
 すごいな、すごいなと思いつつ、自然に元気の湧いてくる本です。
(2012年3月刊。1500円+税)

経済大国インドネシア

カテゴリー:アジア

著者  佐 藤  百 合 、 出版  中公新書
 インドネシアという国には、あまりいい印象がありませんでした。長く軍部独裁が続いてきた国で、9.30事件では共産党をはじめ民主的人士を大量虐殺し、近くはチモール独立運動も圧殺した国というイメージです。
 ところが、この本によれば、そんなインドネシアが最近ぐんと変化したといいます。
 インドネシアの人口は2億4000万人。日本の2倍。ロシアの1.7倍。日本とメキシコの2倍。経済成長率の高さでは、中国・インドが突出していて、それに続くのがインドネシアである。
2004年、インドネシアは建国史上初めての直接大統領選挙を成功させ、ユドヨノ大統領が誕生した。これをもってインドネシアに民主主義体制が確立したといってよい。
 インドネシアでは、毎年200~250万人の新規参入労働力が発生する。
インドネシアは多民族国家である。1128の民族集団と745の言語がある。インドネシアは、6000あまりの無人島を含む、1万7504の島々から成る最大の群島国家である。インドネシアの国語は、最大民族集団のジャワ人のジャワ語ではない。文法がシンプルで表記が簡便なムラマ語(マレー語)を国語としている。
 インドネシアは総人口の88%、2億1000万人がイスラム教徒、世界最大である。しかし、インドネシアはイスラム教を国教とはしていない。ヒンドゥー教のヴィシェヌ神を背に乗せて飛ぶ神の島、ガルーダを国章にしている。インドネシアという国は、各地の多種多様な民族がオランダを共通の敵として共にたたかったという歴史的事実を唯一の根拠として誕生した国である。
 インドネシアでの現地生産の長い日系企業のなかではインドネシアの作業員の質の評価は高い。手先の器用さ、眼のよさ、作業効率の高さ、忍耐強さなどである。
 インドネシアの輸出相手国として、日本は原油・天然ガスの最大の仕向け先として一貫して第一位を占めている。
 うむむ、日本って、インドネシアとそんなに深い関係だったのですね。
 日本から見て、インドネシアは最大の援助対象国である。ODAについて、日本政府からの債務が270億ドルで44%を占める。
 しかし、同時に日本はインドネシアを南進策の下で占領した歴史がある。インドネシア人の日本観も、日本による軍事占領の歴史を起点としている。
 そうなんですね。日本人の私たちの忘れがちなところです。加害者は忘れても、被害者は忘れることができないものです。
 インドネシアの今日を、ハンディに知ることのできる貴重な本でした。
(2011年12月刊。840円+税)

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