著者 小森 陽一 、 出版 新日本出版社
橋下徹的扇動手法には5つの手口がある。うむむ、どんな・・・・?
第一の手法は、悪役・悪玉・敵役を意図的に捏造して、そこに攻撃を手中させること。小泉政権も、「悪玉づくり」の名手だった。「悪いのは、教師と公務員だ!」と単純明快な「悪玉づくり」を大きな声でいってくれる人がいると、それだけで落ち込んでいたのが救われた気持ちになる人も多い。そして、これには「あなたは悪くない」というメッセージをふくんでいる。
第二は、多くの有権者の抑えに抑えているうらみや怒りに働きかけ、それを晴らすかのような幻想を与えること。実際には、むしろ出口なしの状況によりいっそう追い込んでいくことになるのだが・・・・。
第三に、有権者に責任の所在を明らかにし、政策を生み出すような思考を行わせないこと。
第四に、思考停止の強制。少し考えれば絶対に矛盾視することを、別に大きな声で言っておいて、世論の方向がどちらへ向くのかを見定めて、どちらでも選べるようにしておくという、有権者を侮辱したやり方である。このとき有権者に少し考える余裕すら与えず、「白か黒か」の二者択一を迫る。
第五に、紋切り型の連鎖へのはめ込む悪玉連鎖をつくって、橋下自身は善玉として安泰になる。
なーるほど、そうやって今、多くの人が騙されているんですね。
「人材の育成」という基本理念を持ち込むと、教育についての考え方が歪んでしまう。
そして、点数化された学力競争をすればするほど、点数さえ落ち込んでいく・・・・。教育における点数競争は、子どもたちに、何かと大人から学ぶという意欲そのものをなくさせている。
マネジメントとは、人間が最初は野生だった動物を人間の思いどおりに家畜化する、あるいは家畜を人間の思うとおりになるよう訓練、調教するという意味合いをふくんだ言葉なのである。そうだったんですか。だったら、学校にマネジメントなんかふさわしくありませんよね。
職務命令や分断支配によって校長の意図が強制される学校では、教師や子どもは実は家畜のように扱われるという事の本質が大阪の条例にあらわれている。
橋下を支持している人に向かって、「あなたは愚かだ」と言っては連帯できない。橋下の主張の矛盾をていねいに解きほぐしながら、支持者と連帯できるようなしなやかな言葉のやりとりが大切である。「あなたがそう思うのは、よく分かる」ことをまず伝える。その人の思い、言い分をよく聞く。そして、橋下が何をしようとしているのかを論理的に明確にし、それで私たちは本当に得(トク)をするのか、具体的に語りあう。
橋下を支持する人々の置かれた状態に注意を払い、その願いをよく聞き、寄りそいながら、橋下流の「改革」で本当に幸せになれるのか、よくよく話し込む。
憎しみをあおるような言葉に気持ちを任せるのではなく、本当に生活を良くするためにはどうしたらよいか、一緒に考えることが大切だ。言葉を言葉で疑い、ウソをひっくり返していく。
わずか85頁という薄い小冊子ですが、大切な指摘、今すぐ実践したくなるような珠玉の論文でした。ぜひぜひ、あなたもご一読ください。
(2012年5月刊。571円+税)
2012年6月26日


