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恐竜大陸・中国

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者 安田 峰俊 、 出版 角川新書
 世界でもっとも恐竜が見つかった国は、アメリカでもカナダでもなく、中国。これまで322種が発見され、毎年10種もの新種の恐竜が報告されている。いやあ、これは驚きですね…。
 ティラノサウルスやトリケラトプスなどの仲間の起源が中国大陸にあったことも判明した。ということで、中国は、今や世界一の恐竜大国だ。
 中国の恐竜名は「龍」を「ロング」としたり「ロン」としたり混在している。
 中国では年に20体ほど、恐竜の全身化石が見つかっていて、ありふれた現象になっている。
 これまで、中国で恐竜化石発見には、農民が必ず登場していた。ところが、今ではネット社会なので、インフルエンサーが活躍している。
 恐竜の卵の化石を発見したのは、なんと9歳の少年だった。2019年7月、広東省の河源市に住む少年。
恐竜のタマゴ化石は、中国では、すでに1万8千個も発見されている。いやあ、これはすごいですね、1万8千個とは、ケタ外れの数です。
 恐竜の足跡化石もあちこちで発見されていて、家畜のエサ皿として使われていたのもあった。高僧の化石だと思われていたものが、実は恐竜の足跡だったということもあった。
 ちなみに、台湾では恐竜の化石は見つかっておらず、今後も見つからないだろう。つまり、地層が古くなく、新しいからです。
 中国が恐竜大国であることを実感させてくれる新書でした。
(2024年6月刊。960円+税)

思い出せない脳

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 澤田 誠 、 出版 講談社現代新書
 私は名前を思い出せないということが多いです。これは。年齢(とし)とったからというのではなく、若いころからそうです。
 小学校の先生(教員)は、新学期の前に、顔写真と氏名を見比べながら、必死で覚えておき、初めての生徒たちを名前で呼んで安心させるという話を聞いたことがあります。
 年齢(とし)をとって衰えるのは、新しいことを「覚える力」ではなく、「引き出す力」だ。
 加齢によって脳の細胞は減っていく。とくに「海馬」の細胞は、他より減りやすい。その海馬は記憶の「引き出し」にも関係している。海馬の神経細胞は、記憶に関して重要な役割を担っているにもかかわらず、酸素不足やストレスに弱い。
 海馬の一部の場所では新たな細胞が生まれている。神経細胞は入れ替わらなくても、神経細胞を構成している成分は入れ替わっている。
数に限りのある神経細胞でも、組み合わせ次第でほぼ無限に記憶を保管できる。
 神経細胞が加齢で死ぬ主な原因は血流不足。糖尿病にならないように注意するのが重要。糖尿病は認知症のリスクも1.5倍高い。糖は血管を傷つける。
 感情は情動と気分が合わさったもの。名前だけが思い出せないのは、名前が意味記憶で、意味記憶が生存に必須ではない記憶だから、情動が働かず、脳にとって思い出しにくいということ。
 記憶に残るか残らないかは、情動の動きに関係している。睡眠不足は、思い出せない脳をつくる。睡眠は、脳の機能を回復させる、脳の老廃物を排出させる、記憶の整理・編集・定着が行われる。
 起きているときよりも、睡眠時に活動が上がる脳の部位がある。大脳辺縁系。これは情動を司る脳部位。長期記憶を形成するために、睡眠はとても重要。新しい技能をマスターするためには、よく眠ることが重要。睡眠薬では、自然な睡眠周期は現れないため、記憶の形成の面ではデメリットも生じる。
 人の名前がどうしても思い出せないときにどうしたらよいか…。それは、思い出そうとするのをやめること。周辺抑制が働いているので、それを解放したらいい。脳は非情ともいえるほど合理的だ。
 脳の話は、いつ読んでも面白いですね。
(2023年5月刊。980円+税)

政党助成金、まだ続けますか?

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 上脇 博之 、 出版 日本機関紙出版センター
 2019年7月の参議院議員選挙で自民党の河井克行・案里夫婦の公選法違反(買収)事件のとき、自民党本部から1億5千万円もの大金が河井夫婦に渡されたが、そのうち1億2千万円は政党交付金だった。つまり、私たちの納めた税金が自民党議員の当選のための買収資金として使われたということです。とんでもない税金の使途です。
 政党助成金の根拠となる政党助成法が制定されたのは1994年なので、もう30年にもなります。「政治改革」の名のもとに導入されたのですが、かえって政治が悪くなり、国民に無力感を植えつけてしまいました。
自民党本部のお金は幹事長マターだが、このときの1億5千万円は安倍首相の強い意向によるもの。河井克行は、安倍首相補佐官を長く勤めていて、対立候補は安倍にケチつけていた人物なので、その恨みを安倍は晴らしたかった。そして、1億5千万円のうちの1億円は自民党本部の使途不明金(つまりは裏金)だった。
政党交付金の原資は国民の支払った税金。なので、残金が生じたら、当然、国庫に返納すべき。しかし、自民党は返納していない。そして、政党基金とか支部基金として貯めこんでいる。その総額は、なんと277億5千万円をこえる。いやあ、とんでもない税金の使い方です。許せません。
「残金」を返納しないのは自民党だけではない。
政党交付金は税金を原資としているのに、政党交付金の使途は透明度が高くない。とくに、人件費は明細が不明。いつ、誰に、いくら支払ったという明細が記載されない。
自民党本部は、政策活動費に12億円ほど使ったことにしている。
そもそも、私的な存在である政党のために税金を投入してよいものなのか・・・。
政党交付金は317億円超。その半分以上の172億円が自民党本部に入っている。25年間でみると、政党交付金の72%、総額8221億円を自民党本部が吸い上げている。自民党本部の「人件費」の98%は政党交付金でまかなっている。自民党は大きな口を叩いていますが、政党交付金への依存度が高く、いわば国営政党というべき存在なのです。もっと謙虚に、大企業・金持ちのためではなく、庶民のための政治をしてほしいものです。
税金である政党交付金をもらっていると、国民から政治資金を集める努力をしなくなる。政治資金規正法を改正して、政党が公職の候補者に寄付することを禁止すべき。私も、この著者の提案にまったく賛成です。
自民・公明政権は領収書を10年後に公表するという、まことに奇妙奇天烈な法律を先日制定しました。信じられないほどの愚法そのものです。今いる国会議員のうち、10年後も国会議員だという人は、それだけいるでしょうか・・・。恐らく、ほとんどいないでしょう。
著者は、今のような小選挙区制ではなく、完全比例代表選挙にして、民意を正確に反映する国会の構成にすることを提唱しています。まったく異議なしです。
著者のweb講演を福岡の会場で視聴しました。その受付で販売されていた本を買って、読んでみたのです。大変勉強になりました。
(2021年2月刊。1200円+税)

デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 針貝 有佳 、 出版 PHPビジネス新書
 デンマークっていう国は、九州ほどの面積に590万人が住む。千葉県より人口は少ない。
 そして、カフェーでカフェラテ1杯とサンドイッチを注文すると2500円もする。そして、この2500円は最低ラインの時給でもある。消費税は25%、給料の半分を税金でもっていかれる。いやあ、これって、びっくりする高率ですよね。
 ところが、教育費はタダだし、医療費も無料。老後も心配いらない。人生何とかなるという安心感がある。ふむふむ、それだったら、高率の税金でもいいかな…と思いますね。
そして、デンマークは、国際競争力もデジタル競争力も、ともに1位。今後5年間のビジネス環境は3位。では、日本というと…。ビジネス効率性はなんと47位。国際競争力も日本はどんどん低下していますよね。独創性を喪い、インターネット産業(とくに半導体)では台湾にも韓国にも大きく遅れをとっていますよね、残念ながら…。
 この本を読むと、日本人は本当に大切なことを見失っている気がしてなりませんでした。
 デンマーク人にとって、第一に優先するのは家族。なので、夕食を家族ともどもとるのは当然のこと。子どもを学校や保育園にお迎えに行くのも母親とは限らず、父親だって行く。保護者会に出席するのも当然、父親も参加する。第二に優先が仕事で、第三に娯楽や自分のしたいことが来る。なので、友達に会ったりするのは優先順位が低い。
デンマーク人は、仕事のつきあいはしない。仕事帰りに同僚と「一杯」なんて習慣はデンマークにはないのです。
仕事は午後4時に終了するのが一般的。その後はフリータイム。金曜日は午後2時には退社する。
 生産性の高い源泉は「仕事への喜び」。いつだってリフレッシュしているから、生産性が高く、成果を出せる。社員は心から仕事に喜びを感じている。
 会議で発言しない人は、次からは会議に参加しない。いても意味がないから…。
 デンマークの組織は、少人数かつ実践的で、意思決定のスピードが速い。
ランチタイムは日本より少し早くて午前11時半に始まり、30分間。帰宅時間が早いからだ。ただし、仕事を家に持ち帰って、夜に仕事をするデンマーク人が少なくない。
 デンマークでは、部下が上司の指示に従わないのは、よくあること。部下は上司の指示に、ただ使うのではなく、指示された仕事が本当にやる意味があるのかどうか判断する。
 デンマークの組織は無理しない、無理させない関係で成り立っている。
 デンマーク人は、初対面で職業を訊く。それは会社名ではなく、どんな仕事をしているのかを尋ねる。
 デンマーク社会では、数年ごとに転職する人のほうが評価され、長く同じ職場にいると、「変化を受け入れられない人」と判断されて採用されにくい。同じ会社に10年以上いると、「このままではいけない」と感じてしまう。
 デンマークの会社は、日本のような新卒を一括採用するということはしない。
 湧き出る意欲と意志が「高い生産性」を生み出す。これはこれは、とんでもない違いですね。日本は、今のような詰め込みの学校教育をやめて、もっと自由に自分の頭で自主的に考える力を伸ばす教育に切り換えた方がいいと思います。一部のエリートを養成すればいいというのは、古い誤った教育感だと私は思います。
 この新書がわずか1年近くで、すでに11刷だというのは、私と同じように考える日本人も少なくないということを意味しているように思いました。いかがでしょうか…。お勧めの新書です。
(2024年9月刊。990円)

検証  政治とカネ

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 上脇 博之 、 出版 岩波新書
 自民党とは、まさしく裏金まみれの違法行為を平然とし続ける政党だということがよくよく分かる本です。問題は、それを知ってもなお自民党に平然と投票する人にある。というより、そんなこと自分には何の関係もない、こううそぶいて投票所に足を運ばない人がなんと多いことか・・・、そこにあります。今や投票率の低さこそが裏金まみれの自民党を辛うじて支えていると言えると思います。
 裏金は簡単につくれる。企業が政治資金パーティー券を購入しても、誰が、いくら購入したのかは明らかにできない。自民党本部は、合法的に使途不明金(裏金)をつくることができる。
 政党に支払われる政党交付金は全額が税金。毎年300億円以上の税金が自民党などに支払われている(共産党は受け取り拒否)。自民党は250億円の収入のうち7割の170億円が政党交付金なので、国営政党のようなもの。
政治資金パーティーは政治家の資金集めを最大の目的としていて、その利益率は8~9割。参加者は寄付するつもりでパーティーに参加しているので、その実質は限りなく寄付に近い。1人20万円をこえたときのみ、収支報告書に明細を記載すればよいとされている。ホテルの会場の収容人員が最大1000人であっても、パーティー券はその何倍もの数千人分が売られていることは少なくない。
政党から政治家個人への寄付が許されていて、裏金となっている。
 自民党の政治家は複数の政治団体をもっているので、一人が年間150万円という制限を簡単に突破できる。
裏金は何に使われているのか・・・。一つには買収資金。自民党の総裁選挙は、もちろん公職選挙法の適用はありませんので、裏金が大活躍していることでしょうが、違法にはなりません。
私たちの税金を充てる政党助成金は、企業献金を廃止するので、その代わりのものとしてスタートした。しかし、企業献金は禁止されなかったので、政党助成金は、「泥棒に追い銭」となった。
著者は政党助成金は憲法違反だとしています。国会議員5人以上という要件は、少数者を不当に排除している。ドイツでは、政党助成制度は1960年代に憲法違反だとした判決が出ている。1月1日現在で交付対象とされているので、年末になると、5人以上の国会議員が新党をつくっている。
自民党の党員は547万人いた(1990年代初め)のが、今では109万人(2023年)しかいない。5分の1になっている。
小選挙区制は、与党の過剰代表を生み出すおかしな制度。大量の「死票」が出ている。自民党は4割しか得票していないのに議席は8割もとっている。そして、この「上げ底」に応じて政党交付金まで過剰にもらっている。小選挙区制になって、自民党の国会議員も「イエスマン」ばかり。内閣や党役員のポストを狙って、打算と利権だけの集団と化してしまった。
これだけ自民党の裏金づくりに対する国民の批判、いや怒りが湧き立っているのに、総裁選の9人の候補者は誰も裏金づくりを止めるとは言いません。そして、NHKなど、マスコミも、それを弾劾しないのです。摩訶不思議な日本そのものです。そんな世相に対する頂門の一針というべき新書です。ぜひ、お読みください。
(2024年7月刊。990円+税)

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