法律相談センター検索 弁護士検索

「反省させると犯罪者になります」

カテゴリー:司法

著者  岡本 茂樹 、 出版  新潮新書
 私も長く刑事被告人(被疑者)とつきあってきましたが、上辺だけの意味があるのが、崩壊的でした。ですから、反省文というのを押しつけたことはほとんどありません。新兄弟への手紙を書くようにすすめていますが・・・。
 この本のタイトルは、あまりに刺激的なので、よくあるキワモノ本かもしれないなと、恐る恐る手にとって読みはじめたのでした。すると、案に相違して、私の体験にぴったりくる内容ばかりなので、つい、「うん、うん、そうだよね」と大きくうなずきながら、最後まで一気に読みすすめてしまいました。
 著者は大学教授であり、刑務所でスーパーバイザー・篤志(とくし)面接委員です。
 反省させると、悪い受刑者がさらに悪くなる。それより、否定的感情を外に出すこと。それが心の病をもった人の回復する出発点になる。
 犯罪は、人間の心の中にある「攻撃性」が表出したもの。自分が起こした問題行動が明るみに出たときに、最初に思うことは、反省ではない。
 悪いことをしたにもかかわらず、重い罪は受けたくないというのが被告人のホンネ。
 裁判という、まだ何の矯正教育も施されていない段階では、ほとんどの被告人は反省できるものではない。
 人は、自分がされたことを、人にして返すもの。優しくされれば、人に優しくすることができる。思春期の親子関係のなかで素直さを失った子どもは、大人になっても、周囲のものに素直になれない。反省文を書かせることは危ない方法なのだ。反省は、自分の内面と向きあう機会を奪う。
子どもの問題行動は歓迎すべきもの。なぜなら、問題行動とは、「自己表現」の一つだから。問題行動を起こしたときこそ、自分のことを考えるチャンスを与えるべき。寂しさやストレスといった否定的感情が外に出ないと、その「しんどさ」はさらに抑圧されていき、最後は爆発、すなわち犯罪行為に至ってしまう。
 被害者の心情を理解させるプログラムは、驚くべきことに、再犯を防止するどころか、再犯を促進させる可能性がある。それは、自己イメージを低めさせ、心に大きな重荷を背負わせることになるから。自己イメージを低くしていくと、社会に出てから他者との関わりを避け、孤立していく。そして、孤立こそ、再犯を起こす最大のリスク要因となる。
 孤立とヤケクソがセットになると、大きな事件が起きる。
 刑務所で真面目につとめることにこそ、再犯に至る可能性をはらんでいる。自分の感情を押し殺し、心を開ける仲間をつくらないまま、ただ刑務官のいうままに、真面目に務めることによって、出所していく受刑者はどうなるだろうか・・・。彼らは抑圧している分だけ、「パワーアップ」して出所していく。社会に出しても、常に他者の目を気にする人間になる。そして、容易に人間不信となり、人とうまくつきあって生きていく意欲を奪ってしまう。
 単調な毎日を漫然と過ごすだけの受刑者にとって、被害者のことを考えるのは、もっとも向き合いたくないこと。まじめに務めていることで積みを償っているのに、なぜ、被害者のことまで考えなくてはいけないのか。これが、身勝手だけど、受刑者の言い分なのだ。
架空の手紙を書くロールレタリングは、反省の道具として使われていて、うまく活用されていない。
 抑圧していた感情を吐き出すことによって、はじめて相手の立場というものを考えられる。まずは、心のなかに抑圧されていた感情を吐き出して、一つひとつ気持ちの整理をしていくことが必要なのだ。
受刑者は、例外なく、不遇な環境のなかで育っている。受刑者は、親などから大切にされた経験がほとんどない。彼らは孤独がこわいので、居場所を求めて人と群れたがる。しかし、そこはたまり場でしかない。居場所とは、本来、ありのままの自分でいられるところ。なぜ、他者を大切に出来ないのか。それは自分自身を大切にできなくなっているから。自分を大切にできない人間は他者を大切にすることなどできない。自分を大切にできるからこそ、他者を大切にできる。
 自分を大切にできないのは、自分自身が傷ついているから。自分が傷ついていることに鈍感になっていたり、麻痺していることがある。自分の心の傷に気がついていない受刑者の心の痛みなど理解できるはずがない。
 真の反省とは、自分の内面とじっくり向きあった、結果、最後に出てくる謝罪の心。反省は最後なのだ。
よくよく納得できる本でした。
(2013年11月刊。720円+税)

ザ・タイガース、花の首飾り物語

カテゴリー:社会

著者  瞳 みのる 、 出版  小学館
 グループ・サウンズのザ・タイガースといえば、私の大学生時代には大変な人気でした。
 なかでも、この「花の首飾り」という歌は、私も大好きでした。
 そうは言っても、若い人たちと話すと、「なんですか、それ?」という反応があり、ちょっぴり悲しくなります。
花咲く娘たちは  花咲く野辺で
ひな菊の花の首飾り
やさしく編んでいた
 この歌詞は、なんと月刊『明星』で懸賞募集されてつくられたものだったのです。それも、なんと、1ヵ月あまりのうちに13万通も応募作品が殺到したというのですから、驚きます。
 当選発表は1968年(昭和43年)1月に発売された。『明星』3月号。当選者は当時19歳の北海道の女学生、菅原房子。1等の賞金は5万円。私が大学1年生のころのことです。ようやく東京での生活にも慣れてきました。月に1万5千円ほどで生活していましたから、5万円というと、3ヵ月も生活できることになります。大金です。3月に武道館で1万2000人を集めてザ・タイガースの新曲発表があったのでした。ヒットチャート首位を7週連続で続けたほど売れました。大変なブームでした。
 著者はザ・タイガースで「ピー」と呼ばれ、ドラムを叩いていました。ザ・タイガースの解散後、出身地の京都に戻り、芸能界と縁を切って勉強し、慶応大学に入り、卒業後は慶応高校で40年間、漢文を教えていたそうです。すごい人です。
 そして、作詞をした女子学生を、北海道まで飛んで探りあてるのでした。
 菅原さんは当時、定時制高校生。チャイコフスキー作曲のバレエ音楽「白鳥の湖」をモチーフにして書いた。国語が嫌いで、文章を書くのも嫌いで、詩など作ったこともなく、決して文学少女でもなかった。友人に誘われて、みんなで書いて応募することになって送ったという。もちろん、熱心なタイガースファンだった。
菅原さんの当時の住所は、北海道の八雲町。函館の近くになる。私も一度、行ってみたくなりました。
 菅原さんの送った歌詞は今のものとはかなり違っています。なかにし礼が補正して、すっかり変わっているのです。
 でも、なかにし礼が次のように言っているのは、私もそのとおりだと思いました。
菅原さんのつづり方がなかったら、これは生まれなかった。サッカーで言えば、10人の選手は菅原さん。最後のゴールを決めたのが、僕(なかにし礼)。
 物語として、断トツだった。しかし、それは詩になっていなかった・・・。
 そして、メロディーのほうは、わずか5分で出来あがったというのです。さすがプロは違います。なつかしい青春の歌のひとコマをたどることが出来ました。ありがとうございました。
(2013年12月刊。1500円+税)

雪に咲く

カテゴリー:日本史(江戸)

著者  村木 嵐 、 出版  PHP研究所
 新潟は高田藩の筆頭家老・小栗美作(みまさか)の壮絶な生涯を描いた小説です。
 越後高田藩は中将家である。藩主の光長の祖父は二代将軍秀忠の兄にあたるので、武家の長子相続からすれば、格は将軍家より上になる。
 加えて、光長の母は三代家光の同母姉だ。光長ほど、家康に血筋の近い者はいない。御三家にしても、九、十、十一男の筋にすぎず、将軍家すら三男の筋だ。
ときの大老は酒井雅楽頭(うたのかみ)忠清。越後高田藩のことを何かと気にかけてくれる。ところが、雅楽頭は、同時に密偵を越後高田藩に潜入させ、情報を得ていた。
 仙台藩家老・原田甲斐が乱心して、一門重臣の斬殺に及び、自身も討たれた。そこで、仙台藩譜代の原田家は断絶処分を受けた。
 光長の継嗣が41歳のという若さで突如として亡くなった。子どもがいない。さあ、どうするか・・・。
 藩内が二手に分かれ、対立抗争が次第に激化していく。筆頭家老の美作を気に入らない者たちは、美作邸へ押しかけて来るようになった。
 家で騒動が起きたら、幕府により御家断絶の危機があります。それで、美作はじっとガマンし続けたのでした。ところが、将軍綱吉の時代になると、お家騒動のおきたところは、どんなに名門であっても、容赦なく家断絶が命じられるのです。
 綱吉も犬ばかりを大切にしたのではありません。そして、ついに苛酷な刑が申し渡しされるのでした。
江戸時代も、域内のいたるところで、派閥抗争が激しかったようです。江戸時代の人間関係の難しさがよく伝わってくる本でした。
(2013年12月刊。1700円+税)

三秒間の死角

カテゴリー:ヨーロッパ

著者  アンデシュ・ルースルンド 、 出版  角川文庫
 スウェーデンのミステリー小説です。
 刑事マルティン・ベッグシリーズは読んだことがあります。『笑う警官』など、スウェーデン社会を背景とした警察小説はとても読みごたえがありました。
 解説には、これは警察小説であって、警察小説ではない、と書かれています。難しい表現ですが、この本を読むと、なんとなくうなずけるものがあります。
 共作者は、自らも犯罪をおかして服役した経験があるというのです。ですから、刑務所のなかの描写は真に迫っています。
ストーリーを小説にするわけには生きませんので、スウェーデンの刑務所を描写したところを紹介してみます。日本とは違った問題点があることが分かります。
 東欧マフィアの事情分野は三つ。銃の取引、売春、クスリ。スウェーデンには刑務所が56ある。それをマフィアが掌握する。おおぜいのヤクザものに借金を負わせて、意のままに操る。
 刑務所のなかには、クスリや酒に支配されている。クスリや酒の持ち主が、すべてを意のままに動かしている。刑務所のなかに大量のクスリを持ち込み、まずは値段を落とし、先行している連中を蹴落とす。そして、取引を独占してしまえば、値段を一気につり上げる。クスリが欲しいのなら、その値段で買え、いやなら注射を辞めればいいと客に言い渡す。
どの刑務所でも、毎日、毎時間、目覚めている時間のすべてが、クスリを中心に回っている。定期的な尿検査をかいくぐってクスリを持ち込み、使うこと。それがすべてだ。面会に来る家族に、尿を、検査しても陰性を示す尿を持ち込ませることもある。持ち込んだ尿が高値で売買されることもある。そして、尿検査で妊娠しているという反応が出てしまったことさえある。
 靴下を買うお金にも困っている連中にクスリを売りつける。彼らは借金を抱え、塀の外に出てもなお、借金を返すために働くしかない。彼らこそ、資本であり、犯罪のための労働力である。
ポーランド国内では、500もの犯罪組織が日々、国内資本をめぐって争いを繰り広げている。国をまたいで暗躍する、さらに大きな犯罪組織の数も、85に及ぶ。
警察が武装して戦闘に入ることも珍しくはない。毎年5000億クローナ以上に相当する価値の合成麻薬が製造されている現実を前にして、国民はひたすら首をすくめている。
 毎朝、看守のあける開錠からの20分間、午前7時から7時20分までの20分間に、すべてがかかっている。この20分間を生きのびることができれば、その一日は安泰だ。鍵が開き、「おはよう」の声がかかってからの20分間は生と死の分かれ目だ。計画的な襲撃は、必ず、看守たちが警備室に引っ込んでコーヒーを入れ、休憩しているあいだに行われる。区画に職員の姿がなくなる20分間。刑務所内で近年おきた殺人事件は、まさにこの20分の時間帯に起きていることが多い。
 規則でがんじがらめの日本の刑務所では、あまり収容者同士の殺人事件を起きているという話は聞きません。そこが、北欧と日本の大きな遠いように思われます。
 スウェーデンの刑務所と警察組織の一端に触れた気になる文庫本でした(上・下の2冊)。
(2013年10月刊。840円+税×2冊)

管理組合物語

カテゴリー:司法

著者  二木 朋子 、 出版  文芸社
 マンションの管理組合をつくり、その理事会を運営していくのが、いかに大変なことか、この本を読むと本当に痛いほどよく分かります。
舞台は東京から少し離れた風光明媚なところにある、大きなリゾートマンションです(総戸数262戸)。マンションを建設した会社は、さらに大きくもうけるため、タイムシェア制を売り出し、マンションは大混雑します。そして、管理会社を設立して、そこでも法外な利益を手にするのです。
 その仕組みに不満をもつ税理士は一人たちあがろうとするのですが、仲間(同志)は簡単には見つかりません。リゾートマンションなので日常的な交際が乏しいうえ、規約上も建設会社と管理会社の意向が貫徹する仕組みになっているからです。
 負けじと立ち上がり、苦闘するなかで、共感する住民が少しずつ増えてきます。
 かと思うと、裏切り者も出てきます。自分だけ管理会社と手打ちして、有利な条件をもらうのと引きかえに昨日の友が脱落していくのでした。
 いやはや、マンションで同志を見出すって、大変なことなんですね。
専有部分と共有部分の使い分けも微妙なところがあります。
 管理会社に対抗するため、管理組合をつくり、理事会を設立します。それも大変でした。管理会社がさまざまな嫌がらせをしてくるのです。郵便だって、きちんと配達されません。宅配便も冷凍物が玄関前に放置されて、溶け出してしまうのです。
管理会社のひどさをマンション住民に訴えようとしても、あまりに「過激」だと反発を買って、みんなから敬遠されてしまうので、それなりの配慮が必要です。
マンションの修理・修繕についても、どこからお金を出すのか、誰に頼むのか、どうやって決めるのか、いろいろ大変です。それを面倒だと思って管理会社に任せっきりにすると、とんでもなく高額になったり、手抜き工事をされたりします。
 議事録作成も、なあなあで、やっておくと、あとで後悔することも起きます。むしろ理事会のメンバーはどんどん変わっていくので、きちんと記録しておかないと、みんなの記憶に頼っていたら、すべてが曖昧になってしまうのです。
 この本では、いちおうハッピーエンドで終わっていますが、実際にリゾートマンションの管理・運営の大変さ、そして、それを解決するための手順と問題点が実践的によく分かるものになっています。貴重な小説だと思いました。
(2013年10月刊。1100円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.