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小説・外務省

カテゴリー:社会

著者  孫崎 享 、 出版  現代書館
 安倍首相は、靖国神社に参拝して、韓国や中国との親善交流よりも、戦争をひき起こすことに喜びを見出しているようです。本当に怖い首相です。そして、マスコミ(とりわけNHKや売らんかなの週刊誌)が、その強硬姿勢をもてはやし、戦争へ駆け出そうという恐ろしい流れが出来あがっています。
 これでは、日本は、外から見るとまるで「軍国主義、ニッポン」ではありませんか・・・。そのことを多くの日本人が自覚し、認識していないため、安倍首相の支持率が6割だなんて、とんでもない数字が出てくるのでしょう・・・。
 著者は、アメリカべったりの外交はもはややめるべきだ、もっと外交を通じて世界と日本の平和を守るために行動しようと呼びかけています。私は、何度も著者の話を聞きましたが、本当にそのとおりだと思います。
 安倍首相の言うような、軍事力に頼って解決することは何もないのです。そこでは報復の連鎖、暴力の応酬が始まるだけなのです。ぜひ、このことを分かってほしいし、広めてほしいと思います。
 この本は、小説とうたいながらも、実名で本人もふくめて登場してきます。だから、本当に分かりやすいのです。
 鳩山由紀夫首相が、なぜ行き詰まって首相の座をおりたのか・・・。
外務省では、アメリカの大学で研修し、在米大使館で勤務したことのある人々を「アメリカ・スクール」と呼ぶ。アメリカとの関係を最重視する人々だ。
 外務省の事務次官そして総合外務政策局長、北朝鮮局長は、歴代、「アメリカ・スクール」で占められてきた。だから、外務省では、アメリカとの関係を維持する、追随するという方針で、すべてが決まってきたし、決まる。
 「アメリカが望んでいない」は、すべての案件を論じるときの切り札となる。外務省では、上司の意見に従う、だけでなく、アメリカの意見に従う。これがすべてだ。
 外務省では、すべてが、この大切な日米関係を、○○事件ごときで損なってはいかんというモノサシがある。
アメリカは、人物破壊という手法をつかう。人物破壊とは、政敵を壊す手段である。特定の人間や組織の信頼性を失わせるために、間違っていたり、誇張されたりした情報などを執拗につかう政治手法だ。その人間を世間から永久に抹殺するという点では、人殺しと変わらない。いわば、殺人の代用方式である。
 アメリカにあるヘリテージ財団は、単なる研究所(シンク・タンク)ではない。スパイ活動と関係している。
石原慎太郎は、実際には、アメリカの評価を実に気にしている。
 アメリカが人を買収するときには、講演会を依頼する。その報酬には限度がない。
 研究所は講演料として、巨額のお金を渡す。そこでは、スパイ容疑はどこにもない。すべて合法だ。
外務省と読売新聞との関係は、きわめて良い。
谷垣は、リベラル色をもっていた。だから、完全にアメリカに追随するのか疑問があった。そこで、谷垣を自民党の総裁選挙の直前におろした。日本の自主政権は許さない。その芽が出たら、汚職で攻める。
 残念ながら、本書で書かれていることは本当だと実感することがあまりにも多すぎます。日本って本当に独立国なのでしょうか・・・。少なくとも、もっとアメリカに向けてきちんとモノを言うべきです。フランス並みに、とまでは言いませんが、せめて同じアジアのフィリピン並みに、アメリカ軍の基地を国内から早く全面撤去させたいものです。米軍基地を撤去したあとを商・工業ゾーンとしたら、みんな共存共栄できると思います・・・。
 いい本でした。小説ですから、さっと読めるようになっているのがいいです。
(2014年4月刊。1600円+税)

前夜、日本国憲法と自民党改憲案を読み解く

カテゴリー:司法

著者  梓澤和幸・澤藤統一郎ほか 、 出版  現代書館
 自民党の改憲案のもつ問題点が縦横に語られています。
 安倍首相の改憲にかける執念深さは、異常としか言いようがありません。それは、自民党の要職をつとめた人々からもやり過ぎだとして警戒されているほどです。野中広務、古賀誠、山崎拓などです。
 アメリカ政府からも「失望した」とか、ケネディ駐日大使は安倍首相と会おうとしないとか、さまざまな圧力が加えられています。安倍首相は、今のところアメリカの圧力に屈せず、自分の信じるとおり敢行しているようです。でも、そんな「対米自立」は、かえって日本人には迷惑なことなのではないでしょうか・・・。
自民党の改憲草案は、ひどく時代錯誤そのものです。
 天皇を元首とすることは、限りなく君主主権に近づけるということ。
今どき、君主主権だなんて・・・。復古調も、ここまでくると、少し狂っているという感じがします。だいいち、いまの天皇自身が、そんなことを望んでいませんよね。要するに、天皇を道具として使いたいために、その下心から、勝手に天皇を「元首」に持ち上げようとしているのです。天皇を心から崇敬しているとは決して思えません。自分の手玉(てだま)として使いたいというだけです。天皇を、そんなに軽々しく扱うなんて、私だって許せません・・・。
 自衛隊を「国防軍」に変えるという自民党の改憲草案は、軍事組織として、ある程度の自由をもって外の世界へ出ていくことを許すこと。
 要するに、日本人の集団が「国防軍」として海外へ戦争しに出かけ、そこで外国の人々を殺し、また外国の人から殺されるということです。「フツーの国」になるということは、戦死者が「フツー」に、すぐ身近に存在するということになります。これって、社会の変質ですよね。
 自民党改憲草案は、現行憲法が「すべて国民は、個人として尊重される」としているのを、「すべて国民は、人として尊重される」に変えるとする。「個人」を「人」に変えるというが、「人」というのは、非常に抽象化されたもの。動物と人という感じだ。それに対して、「個人」は個性をもっている。一人ひとりの個人と「人」とは、ニュアンスがまったく違う。
 原子力発電所(原発)を設置し、稼働する人たちは、戦争を想定していない。そして、防衛、安全保障、戦争を考える人たちは、原発のことを想定していない。
 北朝鮮は、ミサイル一発を原発に撃ち込めば、日本を地上から消し去ることができると言った。本当に、そのとおりなんです。とても怖い現実があります。
 安倍内閣は、北朝鮮のテロの危機を声高に叫んでいますが、ミサイルによる原発攻撃には口をつぐんでいます。防ぎようがないし、本当にそうなったら、日本は「おしまい」だからです。真の怖さは隠して、その一歩も二歩も手前の「怖さ」だけを言いたてて、防衛産業の売り込みを図っているのです。まったく、許せません。
 自民党の改憲草案は、私は何度も読み返しました。草案の前文なんて、お話にならないほどの格調低さです。出来が、まったく違います。ぜひ、見比べてください。
 それにしても、改憲草案の全条について、こうやって詳しく検討してくれて本当にありがたいことです。
(2013年12月刊。2500円+税)

人権は国境を越えて

カテゴリー:司法

著者  伊藤 和子 、 出版  岩波ジュニア新書
 国際人権団体であるヒューマンライツ・ナウの事務局長を務める女性弁護士が若者に向けて書いた本です。
 ヒューマンライツ・ナウは、2006年に発足し、今では700人以上のメンバーを擁している。NPO法人となり、2012年には国連で発言権のあるNPOとして登録されている。
 著者が弁護士になったのは20年前の1994年のこと。高校生のころから弁護士を志望して、大学は法学部を選んだ。司法試験には、3回目で合格。必死にがんばったのでした。
 弁護士1年目の1995年9月に、北京での世界女性会議に参加して世界の人権状況に目が開かされた。
 1996年、フィリピンに現地調査に行った。日本人男性がフィリピンで子どもたちの売春をしていることを知り、告発した。
 そして、日本国内の冤罪事件(名張毒ぶどう酒事件)、難民認定事件などにも関わった。
 2001年の9.11のあと、2002年1月にはパキスタンへ出かけて難民キャンプの実情を調査しています。本当にたいした行動力です。すばらしいですね。
 そこで聞いた難民女性の言葉が胸を打ちます。
 「家に帰りたい。平和がほしい。尊厳を取り戻したい。私たちは、これまで平和に暮らしてきたのだから・・・」
 平和は、失ったときに、その大切さが実感できるのですね。いまの日本の平和な生活を大切にしたいものです。
 2004年から2005年にかけて、アメリカはニューヨーク大学のロースクールに留学した。若いって素晴らしいですね。そこで、国際人権法をさらに勉強し、日本に帰ってきました。
 ビルマ(ミャンマー)、カンボジア、フィリピンに出かけ、現地の法律家との交流を深めます。
 深刻な人権侵害が世界各地にあり、それとたたかう法律家と連帯する活動をすすめています。
 そして、日本国内でも、3.11後の救援活動に身を投じます。こんなに勇気ある若い弁護士がいることを知って、ロートル弁護士である私も元気を出さなくては、と思いました。
 ぜひ、多くの若者そして、子どもたちに読んでもらって、あとに続く弁護士が一人でも多く増えることを願いたいと思いました。
(2013年10月刊。820円+税)

生活保護で生きちゃおう

カテゴリー:社会

著者  雨宮処凛・和久井みちる 、 出版  あけび書房
 楽しいマンガ付きの、生活保護を受けるための手引き書というか入門講座です。
生活保護を受けとるのは恥ではない。
 生活保護を受けている人を叩くのは、自分の首を絞めているようなもの。国民が、もっと自由に健康で文化的な最低限度の生活を過ごせるようにするのは、国の義務である。
 そんなことが、マンガをふくめて、とても分かりやすく解説されています。
生活保護の利用者は、現在、216万人いる(2013年8月現在)。
 その理由となった事情は、それこそさまざま。適応障がいのために仕事が長続きしない若者、ずっと精神疾患のために家族と別に暮らしている若者、アルコールなどの依存症のため、仕事が出来ない中年男性、身体障がい者なので、まともな仕事と収入がない40代の女性など・・・。
 そんな人たちが自分の体験を通して、生活保護を受けるためのテクニックや、生活の大変さなどを率直に語り合う座談会が紹介されています。
 市役所のケースワーカーから、「子どもはつくってくれるな」と言われたとのこと。この言葉は本人にショックを与えました。そうですよね。人間らしい生活をするなというのと同じコトバです。
 「生活保護をもらっている人は、好きなだけ病院に行けて、いいよね」
 これも間違いです。誰が好きで病院に行くものですか・・・。みな、仕方なく病院に通っているのです。
本当は生活保護を受けてもいい、受けるべきなのに、実際に生活保護を受けているのは、わずか2割でしかない。
 生活保護を受けている人を責める側の人々は、自分たちもこんなに生活が苦しいのに、高い税金を払っているのだ、その税金で保護を受けている人は食べているという感覚だ。
 しかし、世の中は助け合いですよね。生活に困っている人を放っておいていいのですか。航空母艦やら「海兵隊」創設につかう税金があったら、人間を育てるほうにお金をまわすべきですよね。
生活保護を受けにくくしているのは、いま流行のバッシングにある。
 自分たちの家族がバッシングの渦の中に入ってしまう恐怖心がそこにあった。
 本当は生活保護を受けるべき人が8割、実際に受けているのは2割。この現実を変えて、もっと多くの人が、気楽に気軽に生活保護を受けられるようにしたいものです。
 また、保護を受けるのは恥ずかしいことでも何でもありません。大きく叫びましょう。
(2013年10月刊。1200円+税)
 庭に植えているアスパラガスに大きく伸びていました。一度に7本も収穫できたのは初めてです。しかも、みんな店頭に並んでいるほどの太さでした。
 早速、春の味覚をかみしめました。

死なないやつら

カテゴリー:生物

著者  長沼 毅 、 出版  講談社ブルーバックス
 生物、そして生命の不思議さを紹介した本です。ええっ、ありえない。そう叫びたくなる話のオンパレードです。
 生命とは、エネルギーを食って構造と情報の秩序を保つシステムであると定義することが出来る。むむっ、これって難しすぎる定義ですね。
 この宇宙で炭素化合物が安定して存在するには、メタンか二酸化炭素になるしかなく、それ以外の炭素化合物は、どれも不安定な状態にある。
 クマムシは、151度の高温でも、絶対零度の低温にも耐える。放射線に対しても、57万レントゲン(5700シーベルト)が致死線量。人間なら500レントゲン(5シーベルト)だから、1000倍もの耐久力がある。ただし、これは、クマムシが体重の85%を占めている水分を0.05%にまで減らしたときのこと。
 ネムリユスリカは、乾燥状態で放置して17年後に吸水させたら、元に戻った。
 ふつうのバクテリアである大腸菌は、少しずつ高圧に馴らすようにしていくと、なんと、2万気圧でも生きることができた。
深海に生きるもののなかには、無機物の鉄を酸化させて、そのときに生じるエネルギーを利用して有機物をつくって、それを栄養としているものがいる。これを「暗黒の光合成」という。
 太陽光線による光合成のようなものが、暗黒の深海でやられているなんて、本当に驚いてしまいます。
 アフリカのフラミンゴはピンク色をしているが、本来の体色は白色。赤い藻を餌として食べているので、ピンク色になった。
バクテリアの仲間の「バチルス」は、2億5000万年前の岩塩のなかに見つかったものがあり、生きていた。
こうなると、生命とは何なのか、さっぱり分かりません。
重力は普通1G。ジェットコースターでかかる最高は5G。戦闘機のパイロットは、9Gにまで耐える訓練を受けている。ところが、大腸菌などは、40万Gの重力を受けても、平気だった。
南極大陸の氷の下に、ボストーク湖がある。ここには、これまで誰も見たことのないような遺伝子をもつ微生物がたくさん発見された。1500万年前の生物に、生きたまま会えたことになる。
人間の体内には、合計すると、1キログラムほどの腸内細菌が棲んでいる。種の数は1000以下。個体数にすると100兆個。それだけ多くの「別種の生物」が体内で人間と共生している。
本当に、生命体の不思議さは驚くばかりです。
(2013年12月刊。900円+税)
 KBCシネマでやっている映画「アクト・オブ・キリング」をみました。
1965年にインドネシアで起きた大虐殺事件「9.30事件」について、加害者が何をしたのか、自らの体験を喜々として再現していくというすさまじいドキュメンタリーです。どのように人を殺したのか実際にやってみせるのです。主人公は1000人もの人を殺したと高言するプレマンと呼ばれるギャングの親分です。
 今から45年以上も前のことですが、虐殺した側は、今もインドネシアの権力の側にいて、犯罪者どころか英雄視されてきました。ナチス・ドイツが戦争に勝って、その蛮行を自慢げに語っているようなものです。
 ところが、虐殺犯が自己の体験を再現してくなかで重大な転機を迎えるのです。次のような解説があります。
 「今も権力の座にあり、誰からも糾弾されたことがないため、今でも自分を正当化することができる。しかし、その正当化を本当は信じていないため、自慢話は大げさになり、より必死になる。人間性が欠けているからではなく、自分の行いが間違いだったと気づいているからのこと」
 前に紹介しました『民主化のパラドックス』(岩波新書)が参考になります。

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