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小選挙区制は日本を滅ぼす

カテゴリー:社会

著者  浅川 博忠 、 出版  講談社
 庶民いじめで大企業優遇の消費税の税率アップ。本当に痛いです。平和な日本の金看板をひっぺがす武器輸出三原則の緩和、そして集団的自衛権行使の容認。また、教育統制の強化。さらには、日本の農業と医療をつぶしてしまうTPP。
 どれをとっても、こんなにひどい内閣はないと思うのですが、不思議なことに安倍内閣の支持率は60%もあります。いったい、日本って、どうなっているんでしょう・・・。
 NHK会長をはじめ、マスコミのトップには安倍首相のお友だちばかりのようです。月に1億円を使い放題という内閣官房機密費による超高級料理店での接待がきっと効果をあげているのでしょうね・・・。
 そして、国会は安倍首相を応援する人ばかり。なんで、そうなるの・・・。そのカラクリ(仕掛け)は簡単です。一人区がほとんどの衆議院選挙だと、少数意見なんて反映されません。
 だから、この本のタイトルにあるように、小選挙区制は日本を自滅させてしまうというものです。種の多様性を許さない生物は、いずれ絶滅するしかありません。環境の激変に対応することができないからです。
 小選挙区制が導入されてからの6回の総選挙において、少なくとも3回は、国政は風まかせになり、議員たちは「風にそよぐ葦(あし)」と化している。
 小選挙区制のもつ恐ろしさを知ると同時に、その果実をいちはやく得たのは、小沢一郎ではなく、小泉純一郎だった。
 小選挙区制を実現したときにさかんに言われていた「政治改革」とは、その本質は竹下登と小沢一郎の権力闘争だった。竹下とのケンカにおいて、小沢が「飛び道具」として使ったのが選挙制度であり、小選挙区制を中心とする制度だった。
田中角栄も小選挙区制の導入にとりくんだ。そのときの狙いは、憲法を改正しようとするときに最大の強敵と目される日本共産党つぶしだった。
 たしかに小選挙区制の下で、日本共産党の議席は激減しました。比例部分の議席が少し残っているので、日本共産党の議席が今もなんとかありますが、その比例部分を大幅に削ろうとしている策動が根強くあります。
 国民のなかの価値観がこれほど多様しているのに、国会の中は、依然として古い自民党路線オンリーのようで、残念でなりません。
政治改革イコール選挙制度の改革に対して、小泉純一郎は猛烈に反対した。
 小選挙制が導入されようとしていたとき、マスコミは、それに反対する人々を「守旧派」と呼んで、たたきつけ、足をひっぱった。つまり、守旧派なる語(コトバ)が、あたかも悪者を示すかのように多用された。
 小選挙区制度の弊害がこれほど明らかになっているのに、推進派だった人々から表だっての反省の弁や釈明がなされていない。これは、きわめて残念な現象だ。
 小選挙区制には、民意を反映すると言いながら、極端から極端へと走りすぎるリスクがある。
 小選挙区・比例代表並立制は、政権交代が容易になるとして実施された。
しかし、結局のところ、政権交代こそ実現しましたが、それで日本が良くなったという実感はありません。かえって、格差社会が拡大し、弱い者いじめの政治がひどくなっただけのような気がします。
一区3人の中選挙区制で妥協するのが、日本では最適だろう。
 政党助成金もひどい。総額320億円もの税金を適当に配分している。
これほどひどい小選挙区制です。ぜひ、一刻も早く、元の中選挙区制に戻したいものです。
(2014年3月刊。1400円+税)

パンダが来た道

カテゴリー:生物

著者  ヘンリー・ニコルズ 、 出版  白水社
 パンダの写真は、いつ見ても心がほわっと浮き立ちます。なんで、こんなに愛くるしい生物が存在するのでしょうか・・・。
 でも、そんなパンダですが、人類と接触するようになったのは、今から150年前のこと。もちろん、パンダはその以前から存在していました。しかし、棲息地である中国の山奥深くに、ひっそりと生きていたため、中国の古典文献にすら登場してこなかったのです。いかにも不思議な生物です。
 そして、中国革命で有名な毛沢東の東征のころ(国共内戦のころ)、パンダはしきりに欧米白人から捕獲されていたのでした。そんな、パンダの不思議な話がまとめられた本です。
 私は、かつて上野動物園で眠っているパンダの実物を見たことがありますが、あとは写真集ばかりです。和歌山には、たくさんのパンダがいるようですし、四国・四川省にはパンダの保育園があるとのことです。ぜひ見てみたいものだと思います。
 パンダは、1869年まで、中国の外では存在すら知られていなかった。実は、中国でも、ほとんど知られていなかった。150年足らずの間に、まったく無名だった動物が、世界でもっとも人気のある動物になったことになる。
 パンダは、レッサーパンダより、クマに近い。このことがDNAの解説で判明した。
竹ばかり食べるパンダは、肉食のクマの仲間なんですね。
1937年、アメリカでパンダの展示が始まったとき、初日だけで、5万3000人の入園者があり、1週間の入場料収入でパンダの取得費用をすべて回収した。
1972年4月に、中国からアメリカにパンダが贈られたとき、最初の日曜日だけで7万5000人が見に来た。
 今では、パンダに何を食べさせるかは非常にきびしく管理されている。竹のみを与え、それ以外は最小限にとどめている。
 パンダは、よく眠る動物で、エサにおかゆを食べさせると、とりわけよく眠る。
 赤ちゃんパンダの体重は、100グラムほど。母親の1000分の1にすぎない。
 パンダの赤ちゃんは、人間で言えば赤ちゃんは妊娠20週あまりで生まれてくるようなもの。
 メスのパンダが生殖可能になるのは3年半。毎年1回の春、発情期を迎える。しかし、わずか数日間のみ。
 発情が近づくと、繁殖に発声する。通常は、あまり声をあげず、音よりも、匂いにおいてコミュニケーションをとる。
 野生のメスのパンダは、1年すぎに8月に出産し、そのときには山を下り、心地のいい洞穴や木の洞を見つけて子を産む。
 パンダは不安を感じているときは、歯をすり合わせたり、くちびるを摩擦させたりして音を立てる。悲しいときは、短く鼻を鳴らすような叫び声。身の危険を感じているときは、いかにも悲痛な呻き声。そして、発情が近づいたときには、ヤギの鳴き声やさえずりにも似た短く鋭い声を発する。
 そうなんですね、パンダの声もいろいろあるのですか・・・。
 中国は、文化大革命のあと、パンダの人工授精に力を入れた。
 パンダは冬眠はしない。パンダは、5平方キロほどの狭い土地をテリトリーにしている。平均すると、1日の移動距離は500メートルほどでしかない。パンダは基本的に単独行動を好み、交尾のときだけ数日間、一緒に過ごす。
 パンダとは何か。どうしてパンダが今も生き残っているのかが、よく分かる楽しい本です。
(2014年2月刊。2400円+税)

校庭に東風吹いて

カテゴリー:社会

著者  柴垣 文子 、 出版  新日本出版社
 車中、そして喫茶店で一心に読み続けました。あまりの情景描写のすばらしさにいつものように読み飛ばすことが出来ず、なんと読了するのに3時間近くもかかってしまいました。一気通読派の私にしては、珍しい画期的な遅読です。
 素晴らしいのは情景描写だけではありません。主人公の女教師と、その家庭、さらには学校で声を出せない女の子を取り巻く情景がことこまやかに描写されていて、ついついもどかしさを感じてしまうほどの心理描写もあり、本のなかに、すっと感情移入してしまったのでした。車中でも喫茶店でも、一切の雑音を遮断して本の世界に没入してしまいました。まさしく、良質な本にめぐりあったときに感じる至福のひとときでした。
 主人公の女性教師は鹿児島出身で、京都の小学校につとめています。ですから、鹿児島弁が少し出てきます。夫も中学校の教員です。大学生の息子と高校生の娘という四人家族。身体が強くないのに、教育委員会は片道2時間も通勤にかかる小学校へ配転したのでした。そして、4年生の担任、40人学級なのに、なかに1人の女の子が場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)だというのです。これは大変ですね・・・。
 失語症と場面緘黙症の違い・・・。
失語症は、たいていの場合話は意思はあっても、機能的に話すことができない。失語症の原因は、ほとんどが病気。言葉が出てこない。話している内容が分かりにくい。話したいのに話せない。
場面緘黙症の場合は、話すことができるのに、話せない。多くの場合、自宅では話せる。でも、保育園や学校では話せない。返事くらいはできる子、特定の子どもとなら話せる子、場所によっては話せる子もいる。
つまり、失語症の子は話したいのに話せない。場面緘黙症の子も、どちらも内面では、すさまじい葛藤があると思われる。そして、場面緘黙症の子については、その原因が分かりにくいという特徴がある。
主人公の女教師は、教室内で固まっている女の子をかかえて途方に暮れてしまいます。お昼の給食の時間には、隣の机にすわって話しかけるのでした。
 その女の子には、友だちがいました。一緒になんでもしてくれるのです。そして、母親と祖母との関係も微妙ですし、存在感の乏しい父親も原因になっているようです。
女教師にしても、場合の婦人部長をしたり、高校生の娘との対話が難しかったり、年老いた実母の介護で悩んだり、本当に身につまされる話が同時並行的に進行し、考えさせられます。
現実の一場面を切りとり、社会の実際を改めて振り返ってみることのできる小説として、深々と心に突き刺さってくる本でした。
場面緘黙症の子が、ついに教室の中で給食を食べ、話し出す様子も描かれ、救いがあります。読了したあと、幸せな気分に浸ることができました。
団塊世代より少しだけ上の世代の著者です。今後ますますの権筆を期待します。というか、私も、こんな小説を書いてみたいと思ったことでした。
(2014年3月刊。2200円+税)

40年パリに生きる

カテゴリー:ヨーロッパ

著者  小沢 君江 、 出版  綜風出版社
 私がフランス語を勉強するようになった40年以上になります。正確には大学1年生のとき、第二外国語として選択したのでした。
 初めてフランスに行ったのは今から30年ほども前のことになりますが、そのころはフランス語の単語に聞きとれるものがある程度でした。ですから先輩弁護士がフランス語でフランスの弁護士と話しているのがうらやましいというより、アナザーワールドの住人という感じがしていました。今でも話すのはうまくありませんが、耳のほうは、さすがに文章レベルでかなり分かるようになりました。それでも、哲学的表現の多いフランス語の文章は理解に苦しんでいます。
 この本はパリで発行されている日本語の無料誌「オヴニー」の創刊者の苦労話が語られているものです。もちろん日本人です。フランスの男性と結婚して、単身パリに渡ったのでした。
 「オヴニー」の前身「いりふね、でふね」が発刊したのは1974年5月のこと。A4サイズ8頁。今では6万部発行され、うち2万部は日本人に搬入されている。無料誌なので、広告料が発行を支えている。長年の下支えがある。
 全共闘とか、新左翼そして日本赤軍、ひいてはテロリストとの関連を疑われて、警察の探索、差押を受けた。
 「オヴニー」創刊号が出たのは1979年4月のこと。1981年にエスパス・ジャポンを開館した。「日本空間」ということで、日本の文化を披露する場である。
フランスに滞在する日本人3万人の3分の1は官庁・企業関係者とその家族。あと3分の1は留学生・研究者。残る3分の1は永住者(12%)、芸術家など(9%)、その他(7%)からなる。
著者も70歳を迎え、フランスに日本人が住むことの意味をしみじみ考察しています。
 フランス語には、日本語のあうん呼吸、以心伝心の感覚はない。すべてが目には目を式に言葉対言葉の対話文化であり、男女関係でも最後は言葉が支配する。
 日仏カップルの大半は、離婚か離別に終わっている。
 一般にフランス人は言葉を操り、楽しむ習性をもっている。
 言葉の裏や抑揚にニュアンスを込められている日本語。ピンポンのように言葉と言葉でやりとりするフランス語。
 うーん、そう言われても・・・。まあ、ともかくボケ防止に、毎朝、NHKのラジオ講座を聴き、CDでフランス語の書き取りをしましょう。きっと、何かいいことがあるでしょう。
(2013年12月刊。2000円+税)

小説・外務省

カテゴリー:社会

著者  孫崎 享 、 出版  現代書館
 安倍首相は、靖国神社に参拝して、韓国や中国との親善交流よりも、戦争をひき起こすことに喜びを見出しているようです。本当に怖い首相です。そして、マスコミ(とりわけNHKや売らんかなの週刊誌)が、その強硬姿勢をもてはやし、戦争へ駆け出そうという恐ろしい流れが出来あがっています。
 これでは、日本は、外から見るとまるで「軍国主義、ニッポン」ではありませんか・・・。そのことを多くの日本人が自覚し、認識していないため、安倍首相の支持率が6割だなんて、とんでもない数字が出てくるのでしょう・・・。
 著者は、アメリカべったりの外交はもはややめるべきだ、もっと外交を通じて世界と日本の平和を守るために行動しようと呼びかけています。私は、何度も著者の話を聞きましたが、本当にそのとおりだと思います。
 安倍首相の言うような、軍事力に頼って解決することは何もないのです。そこでは報復の連鎖、暴力の応酬が始まるだけなのです。ぜひ、このことを分かってほしいし、広めてほしいと思います。
 この本は、小説とうたいながらも、実名で本人もふくめて登場してきます。だから、本当に分かりやすいのです。
 鳩山由紀夫首相が、なぜ行き詰まって首相の座をおりたのか・・・。
外務省では、アメリカの大学で研修し、在米大使館で勤務したことのある人々を「アメリカ・スクール」と呼ぶ。アメリカとの関係を最重視する人々だ。
 外務省の事務次官そして総合外務政策局長、北朝鮮局長は、歴代、「アメリカ・スクール」で占められてきた。だから、外務省では、アメリカとの関係を維持する、追随するという方針で、すべてが決まってきたし、決まる。
 「アメリカが望んでいない」は、すべての案件を論じるときの切り札となる。外務省では、上司の意見に従う、だけでなく、アメリカの意見に従う。これがすべてだ。
 外務省では、すべてが、この大切な日米関係を、○○事件ごときで損なってはいかんというモノサシがある。
アメリカは、人物破壊という手法をつかう。人物破壊とは、政敵を壊す手段である。特定の人間や組織の信頼性を失わせるために、間違っていたり、誇張されたりした情報などを執拗につかう政治手法だ。その人間を世間から永久に抹殺するという点では、人殺しと変わらない。いわば、殺人の代用方式である。
 アメリカにあるヘリテージ財団は、単なる研究所(シンク・タンク)ではない。スパイ活動と関係している。
石原慎太郎は、実際には、アメリカの評価を実に気にしている。
 アメリカが人を買収するときには、講演会を依頼する。その報酬には限度がない。
 研究所は講演料として、巨額のお金を渡す。そこでは、スパイ容疑はどこにもない。すべて合法だ。
外務省と読売新聞との関係は、きわめて良い。
谷垣は、リベラル色をもっていた。だから、完全にアメリカに追随するのか疑問があった。そこで、谷垣を自民党の総裁選挙の直前におろした。日本の自主政権は許さない。その芽が出たら、汚職で攻める。
 残念ながら、本書で書かれていることは本当だと実感することがあまりにも多すぎます。日本って本当に独立国なのでしょうか・・・。少なくとも、もっとアメリカに向けてきちんとモノを言うべきです。フランス並みに、とまでは言いませんが、せめて同じアジアのフィリピン並みに、アメリカ軍の基地を国内から早く全面撤去させたいものです。米軍基地を撤去したあとを商・工業ゾーンとしたら、みんな共存共栄できると思います・・・。
 いい本でした。小説ですから、さっと読めるようになっているのがいいです。
(2014年4月刊。1600円+税)

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