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弁護士業務の勘所

カテゴリー:司法

著者  官澤 里美 、 出版  第一法規
 驚きました。毎日、午前9時から朝礼、夕方5時に終礼をしている法律事務所が仙台にあるというのです。実は久留米にも、毎朝、朝礼をしている法律事務所があります。しかし、仙台では、朝礼だけでなく終礼までやっています。
 朝礼では、スケジュール確認と発声練習・笑顔をつくっての挨拶練習をします。
 終礼では、5分以上お客さんを待たせた件数と時間の報告もします。
職員の残業はかなり少ないようです。所長である著者は朝7時前には出勤し、ラジオ体操をし、一人朝礼をして、出勤してくる職員を笑顔で機嫌よく迎えるといいます。
 これって、なかなか出来ないことですよね・・・。
ここの法律事務所は、弁護士10人、職員14人(正職員8人、パート6人)という体制。相談に対しては、その日のうちに助言できる体制。休日も顧問先には、当日中の助言を可能としている。
 約束は守る。汚いことはしない。激しい言葉は使わない。
 書面は作品であり、法廷は舞台、裁判官は辛口の観客。
十分な準備を怠らない。十分な準備をした結果であれば、自分も悔いが残らないし、依頼者も納得してくれる。
 書面作成の締め切りを設定し、しっかりスケジュール確認を行う。
 次回期日までに、依頼者に対して通常4回の報告を行う。
 ええーっ、なんという多さでしょうか・・・。すべての事件について原則として当日、遅くとも翌日には報告する。
 依頼者との会話は、やさしく、ゆっくり、わかりやすく。
 電話や面談での第一声は、明るく、高く、爽やかに。
 言葉は人間の音色である。
 激しい言葉は、一時の感情的満足のみで有害無益なので、書面には書かない。
 弁護士が神経を使うのは、相手方との関係より依頼者との関係。
 相手を理解する。相手に理解してもらう。相手に喜んでもらう。そのため気配りをすることが大切。
 弁護士に対する三大クレーム。応対が横柄。処理が遅い。報告がない。
注意しなければいけないのは、実はものわかりの良さそうな優しい依頼者。優しい依頼者に油断して後回しにしていると、だんだん不満がたまって、最後に大爆発する恐れがある。
良い第一印象が大切。意識的に明るく、トーンを高く、爽やかにはじめる。相談内容が可哀想な内容のときには、その後、少し暗い顔に切り替えていけば、その落差で相談に来た人に弁護士の共感度が伝わり、弁護士に対する好感度がアップする。
 ロースクールの教授その他の公益活動もしっかりやって、趣味も多様な著者のようです。大いに参考になりました。
(2014年1月刊。2500円+税)

タックスヘイブンに迫る

カテゴリー:社会

著者  合田 寛 、 出版  新日本出版社
 私もときどき利用しているアマゾンが、なんと日本では納税していないとのこと。許せません。これも、タックスヘイブンのせいです。
アマゾンは日本での売上げは78億ドルで、アマゾンの世界売上総額の13%を占めている。アマゾンに注文すると、日本国内ですべてがまかなわれているのに、アメリカ・シアトルにあるアマゾンの販売会社の扱いになっている。納得できるものではない。本当に、ひどい話です。
 年間売上げ17兆円、毎年3兆円もの利益を上げているアップル社は、まったく納税していない。
 いやですよね、こんな不公平。許せません。
 日本の国税局がアマゾンに140億円の追徴課税したところ、アマゾンが不服申立して、日米政府が協議のうえ、日本はアマゾンに140億円を返しただけでなく6億円を加算して支払った。
 なんたることでしょう。ひどいものです。プンプン、許せません。
 日本の大企業はタックスヘイブンへの直接投資をますます増やし続けている。日本の対外投資残高の一位はアメリカ(127兆円)、二位は、なんとタックスヘイブンで悪名高きケイマン、55兆円。これは10年前の3倍。いやはや、これでは私たちの暮らしが良くなるはずもありません。
 トヨタは、史上最高の利益を上げていますが、ほとんど税金を払っておらず、消費税にしても、逆にもらっているというのです。世の中、本当に間違っています。プンプンプン。
 日本のトップ企業45社がタックスヘイブンに持っている子会社は354社、その資本金額の合計は8兆円をこす。誰だって、税金は払いたくないものです。しかし、超大企業が負担していないのは絶対に許せません。だって、もうけにもうかっているのですから・・・。
赤字の企業が税金を支払っていないというのではありません。もうかっているのに税金を払っていないのです。そして、そのもうけの一部を政治献金して、労働法制の自由化(規制緩和)をすすめているのです。つまり、労働者の使い捨てです。ひどい話です。
 イギリスではスターバックス社がもうけているのに、14年間も税金を支払っていなかった。
 これが明るみに出て、客からのボイコット運動が起きないように、スターバックス社は26億円をイギリス政府に支払った。
 では、日本ではスターバックス社は税金を支払っているのでしょうか・・・。日本のマスコミは、こんなことこそ報道すべきではありませんか?
 タックスヘイブンという、この巨大なまやかしに知恵をつけ、手を貸しているのは、ビッグ4と呼ばれる世界の巨大会計事務所。彼ら専門家こそが、税金逃れのテクニックを供給している。そして、巨大銀行も同罪。金持ちはますます金持ちになるという仕組みが出来あがっているというわけです。
 悪が栄えて、国が滅ぶ。
 こんなことを許してはいけません。怒りに燃えてきました。腹の立つ本ですが、目をそらすわけにはいきません。
(2014年9月刊。1700円+税)

イモムシのふしぎ

カテゴリー:生物

著者  森 昭彦 、 出版  サイエンズ・アイ新書
 世の中の大きな不思議の一つが、イモムシがチョウになるっていうことですよね。いったい、どうして、あの葉っぱにへばりついている丸々したイモムシが大変身して、空をひらひらと飛ぶようになるのでしょうか・・・。万能の創造主の神様だとしたら、何もそんなまわりくどい発想をしなくても良さそうではありませんか。
 この本には、いろんな色と形と機能をもったイモムシがたくさんのカラー写真で紹介されています。不思議、フシギのオンパレードです。
 シジミチョウ科のウラギンシジミは、刺激を受けると、お尻の煙突から大きなホウキをにゅっと出し、掃き掃除をするように振り回す。
 その写真があります。タンポポの穂みたいなものを出しています。不思議というより、奇怪です。そのうえ、アリと交信するためか、ひっきりなしにお腹をこすって音を出しているとのこと。
シロチョウ科のキタキチョウは、放糞器をもっている。お尻からフンを放出する。飼育ケースで飼っていると、フンがピシッとかカツンとか音がして、うるさいほど。これは、自分の現在地を知られないようにするための撹乱戦法。うひゃあ、そんな芸当もするのですか・・・。
 はるばる海を渡る空の旅人、アサギマダラは、毒蝶。毒物を貯蔵することで、スタミナを蓄えた毒蝶となり、壮大な移動生活を堪能できるようになった。ふむふむ、そうなんですか。
 ヤママユガ科のウスタビガは、指で軽くつまむと、鳴き声を奏でる。それは、悲鳴なのか、怒号なのか・・・。そしてマユづくりをはじめるときには、「きゅうきゅう」と鼻歌をうたい出す。
そして、なんと、イモムシは美味しく食べられるというのです。
 シンジュサンは、幼虫はゆでてポン酢ジュレで食べる。小松菜の白和えを思わせ食べやすく美味。
 エビガラスズメは、サナギをゆでてポン酢で食べる。青大豆のトーフを思わせ、さわやかでクリーミーな食感。
モンクロシャチホコは、桜の香り、肉質のうま味。外皮の弾力と、どれをとっても最高。クセがないので、初心者にオススメ。
 ヒメヤママユは、毛が柔らかく、もずくのような食感で、とても心地が良い。
 ナミアゲハは、柑橘系の香りがしたり、山椒の芳香がしたりする。とても風味がいい。
 写真がついていますが、もちろん、みな、丸々としたイモムシです。これを食べて美味しいと叫んでいる女優さんを一度見てみたいものです。私は、そのあとにします。いくら食糧難(危機)といっても、ものには順序というものがありますので・・・。
 イモムシに関心のある人のほか、ゲテモノ食い好きの人にも、おすすめの本です。
(2014年8月刊。1200円+税)

「歴史の町並」

カテゴリー:社会

著者  日本風景写真協会 、 出版  光村推古書院
 昔のままの景観を残している全国の町並風景が、きれいな写真にとられた、すばらしい写真集です。
 私も写真が好きですので、こんな写真集にあこがれてしまいます。それにしても、まだまだ行っていないところ、行きたいところがたくさん、実にたくさんあるのに気づかされます。
 弁護士生活40年のうちに、私は日本全国すべての都道府県をめぐることができました。佐渡島にも伊豆大島、淡路島にも行っています。
 でも、まだ奄美大島にも石垣島にも、そして屋久島にも残念なことに行っていません。
 この風景写真で出てくるところでは、長野県の妻籠宿に行っていないのが残念です。飛騨高山には昔、行ったことがあります。そして、白川郷にも行きました。ただし、雪に覆われた白川郷ではありません。
 うだつのあがる徳島県の美馬市は行ってきました。
 熊野古道も少しだけ歩いて、その良さを実感したことがあります。
 岐阜県の馬籠宿も良さそうですね。
 ペルーのマチュピチュに行くのは、とっくにあきらめていますが、この写真を眺めて、日本国内だったら、もう少し足を延ばして行ってみようと思いました。
 手にとるだけでも、楽しい写真集です。
(2014年7月刊。2200円+税)
 このブログの愛読者の一人、チョコさんから、かこさとし・ふるさと絵本館が福井県にあることを教えてもらいました。私も、ぜひ行ってみたいと思います。

時の行路

カテゴリー:社会

著者  田島 一 、 出版  新日本出版社
 弱者切り捨て、労働者を使い捨てする現代日本社会の実情をうまく小説にしていて、読ませます。
 読んでいて、身につまされ、目に涙がにじんできて、止まりませんでした。40年前の昔も、工場内には本工とは別に臨時工という人たちがいて、ひどく差別されていました。
臨時工の人たちが景気の変動で真っ先に首を切られます。そして、そのとき、目をつけた臨時工を職場からうまく排除するということもあっていました。しかし、大半の労働者は本工(正社員)として採用され、終身雇用ということで、定年まで働くことが可能でした。従って、人生設計も容易だったのです。結婚してマイホームを購入して、子育てしてという見通しがもてたものです。
 今では、多くの若者がそれを持てません。正社員ではなく、派遣会社から、あちこちの職場へ派遣されて働き、名前ではなく「ハケンさん」と呼ばれるのです。職場単位の飲み会にも参加することがありません。排除されることより、お金がないという現実が大きいのです。
 正社員になっても、成果主義とかで、経験年数にしたがって昇給していく保障もありません。ですから、人生設計がつくれないのです。これでは安心して結婚も出来ませんよね。
 この小説は、メーカーで派遣社員として働いていた労働者が会社の勝手な都合で雇い止めを通告されます。次の仕事を探してやるという甘言にもだまされ、今の会社への退職届を書いてしまうのでした。労働組合は、組合員でもない派遣社員なんか見向きもしません。
 仕方がなく、拾ってくれる労働組合に加入して、たたかいを始めるのです。
 今の世の中では、労働組合の存在感がとても薄くなっています。ストライキなんて、まるで死語です。ですから、フランスなどヨーロッパへ旅行したとき、ストライキが頻繁に起きているのを知ると、ひどくカルチャーショックを受けます。
 日本では、いったい労働三法がいつ死んでしまったのだろうかと思うほどです。
 この本は、不当な首切りを許さないとして起ち上がった労働者たちの苦闘が微に入り、細をうがって紹介されます。決してハッピーエンドの展開ではありません。まさしく、現代日本で現在進行形で起きていることが小説のかたちで淡々と紹介されていくのです。だからこそ、読んでいるほうが身につまされ、泣けてくるのです。
 主人公の男性はストレスから体調不良にもなります。病院通いをするためには生活保護を受けなければなりません。すると、青森の自宅へ仕送りなど出来ません。子どもたちも進学の夢をあきらめ、働きはじめるのです。それでも、たたかいに立ち上がった人同士のあたたかい交流も生まれ、そこに救いがあります。
 弁護士も、ありがとうございましたと依頼者から明るい顔でお礼を言ってもらったとき、仕事冥利に尽きると感じます。また仕事をがんばろう、そんな気になるのです。
 電車の往復2時間、必死の思いで読みふけった小説でした。続刊があるようですので、楽しみです。
(2011年11月刊。2200円+税)

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