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ワタミの初任給はなぜ日銀より高い?

カテゴリー:社会

著者  渡辺 輝人 、 出版  旬報社
 えっ、天下の日銀、銀行の銀行である日本銀行より、かの有名なブラック企業であるワタミのほうが初任給が高いだなんて、そんなのウソ、ウソでしょ・・・。
 ところが、HPによるとワタミの大卒初任給は24万円超なんです。それに対して、日銀の大卒、初任給は20万円超でしかありません・・・。トホホ・・・、です。これは、おかしい。何かのカラクリがあるに違いない。本書は、そのインチキなカラクリを解説していきます。
ワタミの月収には、月平均所定労働時間数に対応する賃金に加えて、残業や深夜早朝の労働を前提にして、労働基準法で定められた時間外割増賃金、深夜早朝割増賃金があらかじめ織り込まれている。つまり、ワタミの賃金は、いわば水増しされている。
 賃金水増しの求人広告が禁止されていない。これは問題だ。
 割増賃金の未払いは犯罪である。労働基準法違反は、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる。そして、同額の付加金が課される。
 サービス残業は、経営責任を負っているものの甘えであり、経営リスクそのものである。サービス残業を放置しておくと、企業の投資家や債権者に対する背信行為ともなる。
 ワタミでは、1日8時間労働のうえに2時間の法定時間外労働が課され、労働時間全体のうち6時間程度は、深夜早朝の時間帯であり、休日は完全週休2日が必ずしも保障されない。このような職場では、いかに20代の若者でも、なかなかハードなのではないか。
 残業代は固定残業代として支払い済みになるため、ワタミでは月収24万円以外には、一円の残業代も支払われない。
 「年俸400万円」というように、年額を大まかな数字で提示する事業所も要注意。これも固定残業代などが「込み込み」になっている可能性がある。
 また、やたらと「楽しさ」「やりがい」などの精神論を強調する企業も注意すべき。
固定残業代が支払われていても、それに対応する時間をこえる時間外労働がある場合には、会社は残業代の計算をして、別に支給しなければならない。だから、本来、会社にとって固定残業代のメリットはあまりない。それでも、見かけの賃金を高くすることによって、労働者を誘引するなどの効果はある。
 残業命令は明示である必要はなく、黙示の指示があればよい。
 記録がないなら、自分で記録すればよい。そうなんです。自分が書いたメモでも、十分にたたかえるのです。はじめから、手元に証拠がないといって、簡単に残業代の請求をあきらめてはいけません。
 ただし、残業代は2年で消滅時効にかかってしまう。
京都の若手弁護士による、とても実践的な残業代の請求の手引書です。サービス残業地獄からの突破法というサブタイトルがぴったりくる本でした。ぜひとも、みなさん大いに活用してください。
(2015年1月刊。1500円+税)
 日曜日の朝は風もなく、を思わせる温かい陽差しでした。春の近さを実感しました。
 午後から庭に出て球根の植え替えをしました。いつものようにジョウビタキがやってきて、近くで畑仕事を眺めています。
 いま、黄水仙が咲きはじめ、クロッカスの黄色い小さな花も咲いています。チューリップの芽もどんどん出ています。
 日が長くなり、気がついたら、もう夕方の6時でした。空に月が輝いています。
 さあ、風呂に入りましょう。身体を温めて、疲れをとります。蚊も虫もいない今は、畑仕事が一番やりやすい季節です。

ほとんど想像されない奇妙な生き物たち

カテゴリー:生物

著者  カスパー・ヘンダーソン 、 出版  エクス・ナレッジ
 この長いタイトルの本は正式には、「ほとんど想像すらされない奇妙な生き物たちの記録」です。そのタイトルどおり、いろんな不思議な生き物たちが登場します。
 トップバッターは、アホロートル。かつて、メキシコの先住民にとっては重要な食材だったが、今では、野生のアホロートルは絶滅の危機に直面している。そして、最大の特徴は、その手足は何度切断されようが、傷跡も残さず繰り返し再生することが可能だ。
 その姿形は異様です。まぶたのないビーズのような目。首から突き出た柔らかいサンゴのようなエラ。トカゲに似た身体から生えた優美な手足に小さな指。オタマジャクシのような尻尾。大きな頭と、いつも微笑んでいるような顔、白いピンク色の皮膚は、気味悪いほど人間そっくり。まるで異星人のようだ。
 オニヒトデは、口が下にあって、肛門が上にある。これは、海底に沈殿している餌を食べるには理想的。
人間とイルカは共同で漁をする。この慣習には、非常に長い歴史がある。
 オーストラリア南東のウルンジェリ族はイルカを聖なるものと考えていたので、イルカを殺すことは禁じられ、漁のときもイルカの餌となる魚はとらなかった。
 イルカは、ボノボと同じくらい性行動が盛んだ。一年中、求愛や性行為を行い、前戯も多く、相手をこすったり、愛撫したり、お互いの性器に口や鼻をすり寄せたりする。
 オスもメスも性器の開口部をもっているため、両方ともに挿入が可能であり、ペニスや鼻先、下あご、背びれ、胸びれ、尾びれなど、すべてが使われる。ハシナガイルカは、10匹以上のオスやメスが一緒になって乱交することがある。イルカは、ハンターとして冷酷かつ優秀だ。
 イルカは互いに協力し、コミュニケーションをとることに長けた生物だ。
 イルカは噴気孔から空気嚢に空気を吹き込み、1000分の1秒にもみたないクリック音を発する。クリック音のパルスや周波数には幅があり、ドアがきしむ音にたとえられる低周波のクリック音は、対象物をざっと把握したり、遠くにあるものを認識したりするときに使われる。より細部を把握するときには、高音のブザーのような高い周波数のクリック音を出す。状況に応じて、イルカは1秒あたり8回から2000回のクリック音を出す。
 人間にはカチカチ、キーキーとしか聞こえないこうした音を利用して、イルカは何キロメートルも離れた場所にある物体を認識している。この音は、数メートル先にいる人間やイルカの皮膚を突き抜け、体内で鼓動する心臓や子宮内の胎児の動きを「見る」こともできる。人間の女性が妊娠していることを、本人よりも前にイルカが気づき、妊娠したイルカに対するのと同じように、その女性を扱った例もある。
 アカゲザルに対して行われた実験では、ごほうびがもらえるレバーを引くと、ほかのサルに苦痛を与えることを目にしたサルたちが、頑としてレバーを引くことを拒否した。
 ミツオシエは、蜜ろうが大好物だけど、蜂の巣を第三者にこわしてもらう。目をつけた助っ人の近くの枝に止まり、独特なさえずりを何度も繰り返す。相手の注意を引くことができたら、蜂の巣の方向に飛びつつ、道すがら頻繁に舞い降りては薄い色の尾羽をちらつかせ、相手がちゃんと見ているか確認しながら誘導する。相手がついてこないようなら、また元の場所に戻ってやり直す。そして蜂の巣に到着すると、最初のさえずりとは明らかに違う声で鳴き、アナグマが人間が巣を壊してハチミツを取り、後に蜜ろうを残してくれるのを気長に待つ。
 ウミガメは、かなり早い時代に陸地から再び海に戻り、それ以来、もっとも長く存続している種の一つだ。陸生だった祖先は、恐竜の時代が始まった2億2500万年前に出現した。
 1980年代初め、太平洋に面したメキシコ浜辺に7万5000匹のオスガメのメスが営巣していた。今では、200~300匹にまで減ってしまった。
 タコは、少なくとも犬と同じくらい賢い。シンボルマークを見分けることに関しては、タコには人間の3歳児か4歳児くらいの能力がある。そして、タコは遊ぶこともある。
 タコは、身体の色や質感を自在に変えられる。類いまれなカモフラージュ能力がある。
 タコは、顔を赤らめるどころか、好みに応じてどんな色にも変化できる。身体にある何万という色素胞を開いたり閉じたりして、周囲の環境の微妙な変化に合わせて、その配列を組織することができる。同時に、岩やサンゴ、そのほかの物体に擬態するべき、皮膚の表面を立体的に収縮させたりねじまげたりもできる。
 さまざまな奇妙な生き物がいますが、なんといっても、その最大のものは人間でしょうね。
 もちろん、この本も扱っています。
(2014年10月刊。2200円+税)

火薬のはなし

カテゴリー:社会

著者  松永 猛裕 、 出版  講談社ブルー・バックス
 火薬研究者の著者のいちばんの悩みは後継者がいないこと。今や大学に火薬を教える講座がなくなってしまった。
 火薬とは、空気中の酸素を使わなくても燃えたり、爆発したりするもの。多くの火薬は、原料の中に酸素を含んでいる。
 火薬の話で興味深いのは、なんといっても花火。そして、ロケットと車のエアバックです。
 まずは、花火。中国では16世紀の明代に花火がさまざまに打ち上げられていた。日本には、徳川家康が明人がイギリス人を静岡(駿府)に案内してきて花火を披露したという。それから30年後には、むやみに花火を町なかで打ち上げるなという触書が出ている。
 有名な玉屋は、天保14年(1843年)に火事を出して、江戸払いとなってしまった。鍵屋のほうは、今も15代として続いている。
花火が真ん丸く開くようになったのは、明治7年(1874年)から。さまざまな色が出せるようになったのは、明治10年(1877年)から。
 世界で一番大きな打ち上げ花火は、「片貝まつり」のもので、重さ420キロ、直径120センチもあり、800メートルの高さまで上げられる。
花火の良さは、座り、盆、肩のはり、消え口の4つの要素で評価する。
 花火にまつわる事故は、今も日本でも世界でも起きている。自然発火による事故も少なくない。
 次に、ロケット。スペースシャトルの打ち上げにも火薬が使われていた。ロケットブースター1基あたり500トン。日本の「はやぶさ」をのせたロケットで120トン。イプシロン・ロケットで80トン。
そして、車のエアバッグ。エアバッグは、火薬を使っている。エアバッグは、衝突したことを感知するが、それは時速20キロ以上の衝撃のこと。自動車が衝突したとセンサーが感知すると、点火信号が送られてガス発生剤が瞬時に燃焼する。すると、気体が急激に発生し、ハンドルの真ん中が割れて、袋(バッグ)が風船のようにふくらむ。こうして衝突から人間を保護する。
 怖い火薬について、いろんなことを学ぶことのできる本です。
(2014年8月刊。980円+税)

今、あらためて八鹿高校事件の真実を世に問う

カテゴリー:社会

著者  兵庫人権問題研究所 、 出版  同
 今から40年前ですから、ちょうど私が弁護士になったとき(1974年)の秋(9月から11月にかけて)に起きた八鹿(ようか)高校事件について、40周年を記念して振り返った本です。
県立高校で教職員が集団で監禁され、暴行・障害を受けたという大変な事件です。
加害者たちは、全員が有罪となりましたし、民事上の賠償責任も認められました。また、事件を放置した兵庫県の責任も認められ、和解が成立しています。
私自身はまったく関わっていないのですが、現代日本で、こんな無法なことが起きることに大変な衝撃を受けたことを、今もはっきり覚えています。そして、なにより驚くべきことに、日本の警察は、目の前で監禁・暴行・傷害事件が進行しているのに、何の助けにもならない、まったく動かないのです。さらに、マスコミは、タブーとして報道しない(できない)のです。これでは、日本の民主主義は、あまりにも根が浅いとしか言いようがありません。
でも、救いがありました。教職員集団は、みな暴行・障害に耐えるしかなかったのですが、八鹿高校の生徒たちは立ち上がったのです。広い河原に1000人もの生徒たちが集まり、町なかへデモ行進しようとしました。
それを見て、泣き寝入りするかと思われた町民が立ち上がり、ついには、事件直後におこなわれた町長選挙で暴力反対派が勝利したのです。
暴力に屈せずたたかえば、やはり、いつかは世の中から認めてもらえるということを、身をもって証明した貴重な記録集です。高校生たちの激しい怒りと、集会を成功させた力を改めて見聞きして、昔も今も、日本の若者は捨てたものではないと思いました。
もう40年もたってしまったのかという思いとともに、40年たって、良く変わったところと、今なお変わらない悪い面と、日本の現実を知った思いです。
当時、八鹿高校に在学していた高校生も、すでに定年間近になっていますよね。皆さん、元気なのでしょうね・・・。こんな大事件に遭遇して、その後の人生に、どんな影響を与えたのか、その点も知りたいところでした。
(2014年10月刊。3500円+税)

日米〈核〉同盟

カテゴリー:社会

著者   太田 昌克 、 出版  岩波新書
 核兵器と原子力発電所が、根っこで共通した問題のあることを明らかにした本です。
 そして、西山記者が暴いた「核密約」が今も生きていて、私たち日本人の生命、安全を脅かしていることも明らかにしています。
 2011年3月15日は、日米同盟の盟主である米国が驚愕し、菅政権と東京電力に、その当事者能力に見切りをつけた「運命の日」である。
 海兵隊の特殊専門部隊CBIRF(シーバーフ)は、1995年の地下鉄サリン事件を機にアメリカ軍内に設置された専門集団で、部隊は二つしかない。うち一つは常時、アメリカの国家機能の中枢である首都ワシントンでの有事に備えて即応体制をとっている。そんなアメリカ有数の資産であるCBIRF(隊員50人)がアメリカ本土から遠く離れた外国(日本)に派遣されたことの政治的意味は格別に重い。
 日本側の「当事者能力」喪失を疑ったアメリカは、「複合的人災」と呼べる福島の原発事故の初期対応に能動的に関わった。
 核超大国であるアメリカは、冷戦時代から今日に至るまで、「核の傘」という「核のパワー」に依拠した軍事的手段を日本に供与し続けると同時に、原子力という民生用の「核のパワー」を「平和利用」の名の下に被爆国ニッポンに担保し続けてきた。
 核搭載艦船の日本への通過・寄港を無条件で可能にする「核持ち込みに関する密約」が必要だった。1954年5月、アメリカの国防総省は、国務省に対して、日本に原爆を持ち込み貯蔵したい、在日米軍基地から核攻撃できるよう、日本政府から事前の許可をとってほしいと要求した。
 アメリカ軍は、1945年末から1955年初めに沖縄への配備を断行した。そして、1955年春に西ドイツ、57年にフィリピン、58年に韓国、台湾へと、順次、核の前線配備をすすめ、「核の脅し」を具現化していった。
 核兵器にきわめて敏感な反応を示す日本人に、いずれ核配備を受け入れさせるためにしたのが、「原子力の平和利用」による「核ならし」という、日本国内世論のマインドコントロールだった。
 「平和利用」と「軍事利用」とは、コインの裏表の関係をなすものである。アメリカのCMRT(被害管理対応チーム)は、核事故の特殊専門チームであり、ホワイトハウスは、3.11の原発事故から3日たった時点で、福島の現場に投入することを決めた。
 CMRTは、二つのチームに編成されており、一つは西部ネバダ州のネリス空軍基地に、もう一つは首都ワシントン郊外のアンドリュース空軍基地に常駐している。
 CMRTのメンバー33人が3月16日に横田基地に到着し、アメリカ軍機に乗り、福島の上空700メートルから放射線の空間線量を測定した。CMRTが海外における核危機の現場に投入されたのは、福島での原発事故が初めてだった。
 ところで、このCMRTから日本政府に届けられた初期の重要データを日本側が有効活用していない疑いが強い。
 村田良平・元外務事務次官(1987~89年)は、回想録のなかで、「核密約」の存在を認め、歴代自民党政権は国民に虚偽の答弁をしていたと書いた。
 外務省の事務方中枢は、長続きしそうで、「立派な」(口の軽くない)外相だけに「核密約」のことを教えていた。
 冷戦終結を受けて、アメリカ政府は核搭載した艦船を日本に寄港させなくなった。このアメリカ軍の戦略の変化を反映して、「日米核同盟」の象徴的存在だった核密約の政策的な重要性が低下した。
 日本は2013年の時点で、使用ずみ核燃料を再処理して抽出した45トンのプルトニウムを保有している。45トンのプルトニウムから製造できる核爆弾は5000発以上になる計算だ。
 いま、全世界にある核兵器は1万7000発ほど。うちアメリカが7400発(そのうち2700発は解体待ち)、ロシアが8000発(うち3500発が解体待ち)。アメリカに次ぐ原子力大国のフランスは57.5トンの民生用プルトニウムを保有する。ロシアは50トンのストックをもつ。イギリスは91トン、中国は20キロにみたない。ドイツは6トン。すなわち、日本の45トン、5000発分のプルトニウムは、とてつもない量なのである。
 日本を取り巻く核兵器と原発の危険性を改めて認識しました。広く読まれてほしい新書です。
(2014年8月刊。800円+税)

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