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やきとりと日本人

カテゴリー:社会

                               (霧山昴)
著者  土田 美登世 、 出版  光文社新書
 たまには美味しい焼き鳥を食べたいですよね。そして、この本を読むと、焼き鳥の世界も奥深いものがあることを思い知らされます。
 東京・銀座にある有名な焼き鳥店で食べたことがあります。さすがに、いつも食べているような焼き鳥とは格別の違いがありました。なんといっても素材が違います。
 キジは、日本のジビエ史におけるグルメ素材の一つ。奈良時代、平安時代、鎌倉時代、室町時代と、上流階級におけるとり料理の主役はキジだった。鶏も七面鳥も、キジの仲間である。
 江戸時代には、それ以前から人気のあったキジに加えて、カモもよく食べられるようになった。ただ、格があるとりと言えばツルで、将軍や大名の膳に用いられていた。
 フランスのブレス産の鶏は、自由放飼、飼料などに細かい規制がある。出荷されるのは空腹にして1500グラム以上のもので、日齢でいうと120日以上のもの。
1980年代のパリで、すでに本格的な日本の焼き鳥はウケていた。
 今は、店で鶏をさばくには食鳥処理の免許が必要で、それをもつ店はごくまれ。ほとんどの店は、さばかれた肉と内臓部分を別々に買って、それを店のサイズに切り、串にさしている。
 日本の「七大やきとり」は、北海道の美唄、室蘭、東北の福島、埼玉の東松山、愛媛の今治、山口の長門、そして福岡の久留米。
 鶏肉は朝絞めがいい。鶏肉に鮮度は大切だ。
 熟成に必要とされる期間が、牛や豚のそれよりもはるかに短く、参加されやすい不飽和脂肪酸を多く含んでいる。つまり、脂肪が酸化する前に食べてしまわなければならないのだ。ブロイラーは、日齢40~50日ほどで出荷される。地鶏の日齢は最長で150日。両者には100日間も差がある。
 1本を1分間で食べ終わる世界だが、たいていの名店では、6時間以上かけて何百本と仕込みをし、いつも同じ焼き手が、炭火に集中しながらチャンチャン焼いていく。
 この世界は、串打ち3年、焼き一生といわれる。二つの技術、とりを炭のうえに安定して置いて均一に焼けるように串を刺す技術と、それを焼きあげる技術が必要とされる。
 やきとりの魅力のひとつは、甘いたれが焦げたときの香ばしい香りである。
 たかがやきとり、されどやきとり、ですね。さあ、美味しいやきとりを食べに行きましょう・・・。
(2014年12月刊。780円+税)

モンサント

カテゴリー:アメリカ

                                (霧山昴)
著者  マリー・モンク・ロバン 、 出版  作品社
 アメリカって、本当にいやな国だとつくづく思いました。自分さえ良ければいい。目先の利益が最優先。あとは野となれ、山となれ、という国なのですね。もちろん、アメリカ人にも良心的な人々がたくさんいるとは思います。それでも、アメリカの軍隊、そして大企業の力の強さには、げんなり、うんざりしています。
 今回のテーマは軍事ではなく、企業のエゴの話です。その名も、モンサント。
 四日市コンビナートにもいましたよね。世界中を荒らしまわっている、とんでもない公害まき散らし、環境破壊の大企業です。
 1万7500人の従業員をかかえ、2007年には75億ドルの売上高をあげ、うち10億ドルが純利益。世界全体で遺伝子組換え作物の90%はモンサントが特許を有している。その耕作面積は1億ヘクタール。半分がアメリカ、次いでアルゼンチン、ブラジル、カナダ、インド、中国、パラグアイ、南アフリカ・・・。
 これらの国から農産物は輸入すべきではないということです。農薬まみれの野菜を食べさせられるからです。
 モンサントは、PCBが健康被害をもたらすことを1937年から知っていた。しかし、何も知らないかのように行動していた。モンサントは無責任という以上に、犯罪行為をしている。
そして、モンサントを訴えた人についての裁判では、強力な弁護団を組み、「不屈の敵」というイメージを相手に与えるべく、無限のお金をつぎ込んだ。もう裁判なんてしようと思わせないようにする魂胆だ。
 アメリカには、4つの「回転ドア」がある。その一は、ホワイトハウスからモンサントへ就職する。その二は、議会メンバーが、モンサントのためのロビイストになる。その三は、環境規制機関からモンサントへ天下りする。その四は、モンサントから政府機関その他へ向かうドアがある。
モンサントは、年間1000万ドルの予算と74人のスタッフを使って「調査」している。モンサントから買った種子をつかい、翌年、それによって得られた種子をつかうことは禁じられている。「同意書」にサインされているのだ。違反者に対する制裁金は巨額であり、破産するしかない。
 モンサントの供給する種子は、1回目は効果がある。しかし、次からは、化学肥料を大量投入しなければいけなくなるので、農地はダメになっていく。遺伝子組換えといっても、実際には、殺虫剤成分が組み込まれているだけ。だから、人間が食べると、殺虫毒素の残留物を摂取していることになる。
 うひゃあ・・・。こんなの、いけませんよ。
 ランドアップ耐性大豆の栽培地帯では、ガン患者が増加している。
 自分さえ良ければ、今さえ良ければ、お金さえもうかれば・・・、そんな企業って、この社会に存在する価値なんてありませんよね。
 フランス人女性のルポルタージュです。彼女自身が農家の生まれだといいます。
 私も完全無農薬の野菜を庭で育てていますが、すべてというわけにはいきません。
 ドキュメンタリー映画もあるそうです。ぜひ見てみたいです。
(2015年3月刊。3400円+税)

イスラーム国の衝撃

カテゴリー:アラブ

                                (霧山昴)
著者  池内 恵 、 出版  文春新書
 イスラーム法では、カリフの存在の必要性は明確に規定されている。『コーラン』とハディース(預言者の言行録)に依拠して、歴代の法学者が議論で合意に達した見解を疑うことは宗教上許されない。イスラーム世界が統一されてカリフが統治するという理念に異論を挟むことは、イスラーム教徒のあいだでは困難である。
かといって、全世界のイスラーム教徒や政府が「イスラーム国」のバグダーディーにしたがって、「イスラーム国」への加入を求めるという事態は起こりようもない。
 バグダーディーは、預言者の血統を象徴する黒いターバンなど、「衣装」にも入念に気を配っている。
 欧米人人質の処刑については、処刑の対象者も、処刑の実行者も入念に人選し、時期を選んでいる。欧米人一般ではなく、まずはアメリカ人を、続いてイギリス人を選び、それらの国によるイラクあるいはシリアへの軍事介入を止めるよう要求する映像を流して、一定期間をおいたうえで、処刑して公開していった。それによって、少なくとも集団の側の論理では、これらの殺人に正当性があるという主張の根拠を示す形で情報発信を試みた。
 人質にオレンジ色の囚人服を着せることで、グアンタナモ(キューバ)やアブー・グレイブ(イラク)でのイスラーム教徒への不当な扱いに憤る者たちの目には、斬首や映像公開といった行為も、「正当」に見えるという効果を狙っているのだろう。
 アメリカによる「対テロ戦争の」圧力を受けたアル・カーイダが復活した最大の要因は、2003年のイラク戦争だった。
 2014年に「イスラーム国」を名乗るまで、この組織は少なくとも5つの別の名前を名乗っていた。2003年のサダム・フセイン政権崩壊のあと、反米武装勢力の中心組織として、「タウヒードとジハード国」が台頭した。
 欧米側は、「イスラーム国」と呼ばず、ISISとかISILと呼び続けている。「イスラーム国」がイスラームを代表せず、「国家」でもなく、その勢力範囲は、イラクとシリアに限定されているという認識を確認するためである。
 オバマ政権が、アメリカ軍の完全撤退を2011年来に完了すると、「イスラーム国」はまたもや息を吹き返した。「イスラーム国」は、旧フセイン政権の軍・諜報機関の関係者を指導部に多く含んでいる。土着化をすすめる「イスラーム国」は、旧フセイン政権幹部の秘密組織とのつながりを深めた。
 仮に「イスラーム国」の半数ほどが外国人であるとしても、その主たるメンバーはイラク、である。2013年以降は、シリア人も増えた。
 「イスラーム国」が自らの存在を宣伝するには、無関係な第三者によって興味本位で転送されて広まるのが、一番効果的である。そのためには、話題にあがるほど衝撃的な映像でなければならない。しかし、同時に、残虐すぎてはならず、視聴に耐える範囲の残虐さでなければならない。見た目の残虐さを緩和するのが、処刑人の演劇的なしぐさである。
 これによって、人々は映画やドラマを見ているかのように錯覚して映像を見てしまい、転送しているうちに、映像はホンモノだと思われてしまう。
 なかなか宣伝に長けた集団のようです。いずれにしても、安倍首相の言うようなアメリカ尻馬に乗って日本の自衛隊が戦闘行為をするようになったら、日本自体がテロ攻撃の対象になる危険があります。絶対そんなことにならないように安倍内閣の戦争推進法案に反対しましょう。
(2015年1月刊。780円+税)

スノーデン・ファイル

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者  ルーク・ハーディング 、 出版  日系BP社
 権力は知らせたくない、しかし知りたい。自分に都合の悪いことは一般に知られたくないので、「特定秘密」に指定する。そして、国民が何をしているのか、何を考えているのかは知りたいので、無断で傍聴する。どこの国でもやっているのですが、アメリカの場合は、それがケタはずれです。そして、日本の自公政権も、アメリカに習って特定秘密保護法を制定・施行してしまいました。
 今や、世界はスパイ天国と化している。グーグル、スカイプ、ケータイ、GPS、ユーチューブ、トーア、Eコマース、インターネットバンキングなどは、監視マシーンと化している。
 アメリカのNSAはGCHQと協力して、海底の光ファイバーケーブルに盗聴器を仕掛けていた。そのおかげで、アメリカとイギリスは、全世界の通信内容の多くを読みとることができた。
NSA本部には、4万人が働いている。アメリカ最大の数学者の雇用主だ。
 スノーデンは、10代になったころ、日本に熱を上げていて、日本語も1年半ほど勉強した。
諜報機関は、ケータイをマスクや追跡装置に変えられる。
 2009年にイギリスのロンドンでG20サミットの会議があったとき、GCHQは諸外国の首脳を盗聴していた。
 アメリカのNSAには、光ファイバーケーブルの盗聴という、大きな極秘任務がある。
 NSAは外国の情報だけでなく、アメリカを通過する、すべての通信を収集している。アメリカ本土には、通信が監視・収集・分析されずに出入りできる地点は一つもない。
 2003年の電話通信1800億分のうち、20%がアメリカを発着し、20%がアメリカを通過していた。通信会社にとって、NSAとの協力関係は、ずい分とお金になった。国際通話の81%にアクセスする見通りにアメリカ政府は、毎年、大手通信会社に何億ドルもの大金を払っている。
 フェイスブックは、2012年後半に、1万8000~9000人のユーザーの個人データを、NSAだけでなく、FBI、地方警察など、さまざまな法執行機関に提供した事実を認めている。
 スノーデン・ファイルの恐ろしい現実が紹介されています。
(2014年5月刊。1800円+税)

NHK-危機に立つ公共放送

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  松田 浩 、 出版  岩波新書
 私はテレビを見ませんので、NHKを利用しているのは、毎朝のラジオ・フランス語講座と日曜日の「ダーウィンが来た」(録画しておき、寝る前に見ます)だけです。
 昔々は、朝の連続テレビ小説の「おはなはん」(樫山文枝の主演)を楽しみにしていました。その後は、「Nスペ」などの真面目な番組を見ることもありません。映像よりも活字の世界で生きていたほうが、私の要求を満たしてくれると思っているからです。
 それにしても、いまの籾井(もみい)という会長はお粗末すぎます。恥を知らない日本人という典型ではないでしょうか。いくら安倍首相のお気に入りといっても、これほど愚劣な人物が日本を代表する天下のNHKの会長とは信じられません。自分に、資格がないことの自覚がないのは安倍首相と同じで、救いようがありません。
 三井物産出身ということですが、その会社も大したことがないと言うしかありませんよね。だって、こんな大会社の副社長が、こんなつまらない男でもつとまるというのですから・・・。いやはや、日本の大会社のレベルも地に墜ちたものです。
 NHKの元総合企画室局長が、「NHKは、創設以来、過去最大の危機に直面している」と言うのに、同感するばかりです。
 公共放送にとって大切なことは、政治家を監督すること。「籾井発言」の問題の本質は、公共放送にとって生命である「自主・自立」が根底から脅かされているということにある。
 NHKには、公権力に対峙して、国民の「知る権利」や言論・表現の自由を守るためにたたかったという実績はない。常に永田町(自民党)の動向にばかり気をつかい、政府による政治介入に対して妥協と譲歩を重ね、自主規制に終始してきた。したがって、「権力監視」の意識はNHKでは育ちようがない。なんだか、そこまで言われると、悲しくなってきます。
 戦争に反対し、抗議デモをしている人々について、全国的そして国際的な現実の一部として報道すべきなのだ。
 私も、本当にそうだと思います。いまのNHKは、本当に不甲斐ないとしかいいようがありません。
 公共放送の「自主・自立」を守るためにたたかわない、そしてたたかってこなかったNHKの不甲斐なさに問題がある。
 まったく同感です。あまりにも安倍政権の言いなりになりすぎです。
 NHKのなかにも、リベラルな人材や見識を持った幹部がいないわけではない。しかし、そんな良識派が多数派になり、主流派になることができない権力構造がある。組織として権力とたたかってでも自主・独立を守ろうという伝統はない。
 これって、本当に残念ですよね。そこが、イギリスのBBC放送とNHKの最大の違いではないでしょうか・・・。困りました。
(2014年11月刊。840円+税)

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