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朝鮮・東学農民戦争を知ってますか?

カテゴリー:朝鮮・韓国

(霧山昴)
著者  宋 基淑 、 出版  梨の木舎
  日清戦争が始まったのは1894年。その年に、朝鮮半島で、農民が立ちあがりました。
  はじめ、敵は中国でも日本でもなく、朝鮮王朝の横暴な政治への抗議行動でした。
  1000人で始まった農民軍の戦いは、次第に増えていき、ついには、何万人、何十万人へとふくれ上がっていきます。朝鮮王朝の政府軍に対しては、農楽隊が景気づけをしながら、鶏かご作戦など、知恵と工夫で連戦連勝していきます。
  ところが、中国軍が登場し、さらには、日本軍が出てくると、農民軍は竹槍主体でしかなく、武器・弾薬がたちまち欠乏して、日本軍の近代兵器の前には、なす術もなく敗退していきます。日本軍は戦上手なうえに冷酷無比。農民軍を圧倒し、虐殺の限りを尽くすのです。
  日本人として、日本が朝鮮半島を植民地化していく過程をきちんと認識しておく必要があると痛感しました。
  この本には、初めにマンガで少し背景の説明があります。それで、イメージをもって本文にとりかかれます。本文は、子ども向けのように分りやすい文章で、農民軍のたたかいの苦労がよくよくしのばれます。
この本の最後に訳者あとがきのなかで、1995年に北海道大学の研究室で発見された「東学党首魁」の頭骨のことが紹介されています。日本にとっては単なる反乱軍のリーダーだったのでしょうが、朝鮮・韓国の人々からすれば、まさしく英雄です。遺骨を韓国へ無事に送り返すことができたのは大変すばらしいことだと思います。
  このあと、朝鮮では、日本の植民地支配に抗して1919年3月1日に3,1独立運動が起きます。民族の独立と自由ほど尊いものはないのです。
  この本は、そこに至る朝鮮の人々の姿を生き生きと描いています。
  
(2015年8月刊。2800円+税)

インバウンドの衝撃

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者  牧野 知弘 、 出版  祥伝社新書
 今、福岡港には連日のように大型客船が入港し、中国人による「爆買い」が進行中です。なにしろ一隻で4000人もの客が乗っていますので、福岡県内の観光バス100台が港に集結し、市内の各所で渋滞騒ぎが起きるのです。一部の商店は大もうけしているようですね。
 中国人爆買いの対象は、医薬品、化粧品そして温水便座。中国では日本製をうたったニセモノが横行しているので、日本でホンモノを買う。
2003年の訪日外国人521万人のうち、トップは韓国で146万人、28%だった。 
2014年には台湾283万人(21%)、韓国276万人(20%)、中国241万人(18%)。中国と台湾の人々が激増している。東南アジアからも160万人(12%)と増えている。
「円安」もその要因になっている。各国で旅行する余裕のある中間所得層が増え、ビザが緩和されたことも急増した理由。
中国人は、日本をふくめた海外の不動産に投資することが増えている。都内に新しく建設されるタワーマンションは、中国人富裕層に圧倒的な人気がある。
東京のホテルが絶好調で、今やお得意様は、すっかり外国人。東京には1万室のホテルが足りない。京都に行って泊まりたくても「宿がない」状況になっている。
外国人観光客が増えること自体は歓迎すべきことです。異文化交流は、もっと進めたほうがいいと思います。それこそ草の根からの平和外交です。自衛隊の軍備を強化するより、観光地の整備・立て直しにお金をつかったほうが、どれだけ建設的なことでしょうか。
 アベ政権の危険な軍備拡張路線は一刻も早く止めさせましょう。
(2015年10月刊。800円+税)

動くものはすべて殺せ

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者  ニック・タース 、 出版  みすず書房
 アメリカのベトナム侵略戦争は、アメリカの退廃を加速化させた戦争でした。
 アメリカ兵はベトナムで何をしたか。ここでいうアメリカ兵というのは、当時の私と同じ20歳前後の青年です。5万人ものアメリカ兵が戦場で生命を落としています(ベトナムの青年は、それより桁が2つくらい多く亡くなっています)。若いときに人非人の行いをした人が、成人になったとき、まともに生きていけるはずはありません。無数の「殺人鬼」を内包するアメリカ社会が一段と病的なものになったのも必然です。
この本は、アメリカ兵がベトナムでした残虐行為を改めて明らかにしています。この本を読むと、ソンミ村虐殺事件は日常的に起きていたものの一つだったことがよく分かります。
上官は、兵士が「女性も子どもも殺すのですか?」と訊いたとき、こう答えた。「動くものは、すべて殺せ」。
アメリカ兵がベトナムの無抵抗な民間人を殺し続け、その死体の山を築いていったあと、何と公表したか。「手強い敵の部隊との正当な戦闘の末、アメリカ軍は、ひとりの戦死者も出さずに敵兵128人を殺害した」。
ソンミ事件(ミライ事件)では、C中隊のカリー中尉だけが罪に問われた。30人の将兵が関わり、28人が士官、2人が将官だとされながら・・・。そして、カリー中尉は民間人22人を計画的に殺害したとして終身刑を宣告された。ところが、ニクソン大統領はカリーを釈放し、自宅軟禁とした。カリーは40ヶ月間の刑に服したが、そのほとんどを快適な士官宿舎の自宅で過ごした。なんということでしょう。一人を殺したら、殺人犯だけど、大勢の人を殺せば英雄なんですね。
 私が大学2年生のころ(1969年)、アメリカン軍兵士は、ベトナムに54万人、ベトナム国外に20万人もいた。総計300万人ものアメリカ軍兵士が東南アジアに派遣された。ベトナム共和国陸軍は100万人。これに対して、北ベトナム軍は5万人の兵士と、軍服を着た人民解放軍兵士6万人、更にゲリラが数十万人いた。
アメリカ軍は、共産主義者の侵略から南ベトナムの人々を守るために戦っていたはず。しかし、現実には、ベトナムの農民の大半は敵と通じているか、日が沈めばゲリラになるものと決めつけ、平気で民間人を殺していた。
ベトナムの人々にとっては、家族のため、故郷のため、祖国のための闘争だった。
アメリカ兵の訓練の過程で、新兵士たちは、ためらうことなく人を殺すことを最善とする、暴力と残忍の文化に取り込まれる。
ベトナム人については、グーク、細目、キツネ目、吊り目、半食い虫といった、人間性を完全に否定するような呼び名を使っていた。
あいつらは動物みたいなもんだ。人間じゃない。
ベトナム人が人間であるかのように話すことは許されなかった。ベトナム人に対しては、どんな情けも無用だと言われた。これは、ナチス・ドイツ軍がユダヤ人を殺すときの状況とまったく同じですね。ユダヤ人は人間じゃないと、ドイツ兵は繰り返し叩きこまれていました。
戦場に出て6ヶ月で実力を証明しなければ昇進が望めなかった下位ランクの士官と彼らが指揮をとっていた戦闘部隊は、つねに敵の「殺害数」をあげなければならないというプレッシャーにさらされていた。事実上は殺人ノルマだったこの数値の達成や超過達成は、ベトナムでの任務に大きな影響を及ぼした。いちばんボディカウントの多かった部隊には、保養休暇か、ビールがひとケース余分に与えられた。
19歳の若造に、人殺しをしてもいいんだ、そうすればご褒美がもらえるぞというわけだ。頭がおかしくなっても不思議ではない。
ボディカウントに民間人死亡者数が含まれていることなど問題にならなかった。殺害数が足りないときには、捕虜や拘留したものをさっさと殺してしまった。
ジョンソン大統領は、ベトナムを「くだらないカスも同然の小国」と考えていた。ベトナムは「アジアの屋外使所」「文明のごみ捨て場」「世界のけつの穴」と蔑んだ。ところが、文明国・アメリカは、その軽蔑した「けつの穴」に見事に惨敗・敗退したのでした・・・。
「何も気に病むことはない。またグークの死体がいくつか増えるだけのこと。早いとこ、やつらを皆殺しにしてしまえば、それだけ早く、オレたちは帰国できるんだ」
アメリカ軍によるサーチ・アンド・デストロイ作戦は、むしろ革命軍を戦術上、圧倒的な優位に立たせてしまった。アメリカ軍はいつも必ず守勢にまわる破目に陥った。
ベトコンがアメリカ軍部隊に奇襲をかけたケースが全体の8割近かった。アメリカ軍は効果的に敵軍と闘えなかったため、とりあえず何でも攻撃できるものを標的にした。つまり、民間人がもっとも重い代償を支払うことが多かった。
「そこにいるのは、みんなベトコンだ。殺してしまえ」
これは、現在、アメリカ軍がイラクやアフガニスタンで置かれている状況とまるで同じですよね。侵略軍の宿命ですね・・・。
アメリカ軍でも、将官や佐官は戦場に出ない。彼らは基地でゆったりくつろぐか、ヘリコプター座席にすわって細かく指示を飛ばすだけ。兵士は汚れた体で腹を空かせ脱水症状に悔やまされながら、足を引きずるようにして泥や牛糞や水のなかを歩く。熱疲労に襲われ、ヒアリに咬まれ、蚊に刺される。
戦争が終わったとき、ベトナムでは50万人もの女性が売春婦に身を落としていた。
ベトナムの民間人にとって最大の脅威は、逃げる者は撃つというアメリカ軍の方針だった。
1971年アメリカ軍は、崩壊寸前だった。アメリカ軍の士気、規律、戦闘対応能力は、わずかな例外を除いて、史上最低にして最悪であった。ベトナムに残っているアメリカ軍の陸軍は崩壊に近づきつつある。各部隊が戦闘を避け、拒み、自分たちの士官や下士官を殺害し、麻薬漬けになっている。暴動寸前ではない部隊では、隊員がすっかり気力をなくしている。
第九歩兵師団は、ある作戦のなかで1万人以上の敵兵を殺害したと報告したのに、回収した兵器は、わずか750点でしかなかった。ある一週間に700人のゲリラを殺害したというのに、捕獲された武器はわずか9点でしかなかった。これは、どういうことか・・・。武器を持たない民間人を一方的に殺害したということ。
アメリカ軍のなかでは狂気にみちた殺人鬼のような兵士が出世していった。
戦争は人を気狂いにしてしまうこと、それを英雄視することから、社会全体が狂っていくことがよく分かります。今ごろ何で40年以上も前のベトナム戦争を振り返るのか・・・。それは、アメリカ軍が今もイラクやアフガニスタン、そしてシリアで空爆したり、戦争を仕掛けている現実があるから、この本はまさしく今日的意義があります。
武力に対して武力で対抗しても勝てないし、平和は生まれないということです。全世界の人々が一刻も早くこのことを自覚する必要があります。憲法九条の精神を国際社会に広めたいものです。
(2015年10月刊。3800円+税)

優しいサヨクの復活

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  島田雅彦 、 出版  PHP新書
  政権中枢にいる人々の発言には唖然とするばかりで、ある朝、目覚めたら、日本は全体主義国家になっていたようなもの。
  安倍首相「みっともない憲法ですよ」
中谷・防衛大臣「憲法を安保法案に合わせる」
西田昌司・副幹事長「国民に主権があるのがおかしい」
船田元・憲法改正推進本部長代行「公益のために私有財産を没収できるようにしたい」
礒崎陽輔・同本部事務局長「立憲主義なんて聞いたことがない」
石破茂・前幹事長「出動を拒む兵員は死刑。反対デモはテロ行為と同じ」
これは、みな悪い冗談なんかではなく、公の席で高言したものです。言った本人だけでなく、それに頷く人々がいるのも恐ろしい。公然と国会議員に課された憲法擁護尊重義務に反し、平和主義に反する主張をしている人々が、現在の日本の舵取りをしている。これって、本当に危険ですよね。
これまで、多くの日本人があまりに政治に無関心だったことを深く恥じ入らなければいけない。
国家が戦争に加担し、原子力発電を推進するなら、市民は国家に対する不服従運動を展開するしかない。今、実に40年ぶりに人々が路上から声を上げている。
図らずも、安倍政権は若者に大いなる政治的錯覚を促すことに逆説的に貢献したといえる。そもそも自民党は、戦後、アメリカが日本を反共の防波堤にしようとしたときに受け皿としてつくられたもの。その出自から、アメリカへの服従を宿命づけられている。そして、民主党は、自民党に劣化版でしかない。おおさか維新は自民党と一体のようですね。
いまこそサヨクの存在価値を見直すときが来た。日本には共産党という、自民党よりも古い歴史をもつ政党があり、ブレない野党として、異議申立し続けている。国会論戦での志位和夫委員長は舌鋒鋭く、発言も真を突いている。
現行憲法を「平和ぼけ」と攻撃する人は、憲法に背いてでも、「世界の警察」であるアメリカの片棒を担ぎたくてしようがないようだ。しかし、「世界の警察」としての正義は達成されたことがない。
現行憲法を押しつけたからと言って改めようとするくせに、おなじ押しつけである日米安保条約はかたくなに守ろうとする。つまりは、日米安保条約を憲法の上位に置こうとする。
彼らは国家を最優先するように見せかけながら、実は国家を私物化している。
表向きは勇ましいことを高言しながら、その実、戦争法をテコに産業界を大もうけさせ、賄賂をせしめようとするさもしい連中に負けてなんかおれません。
どの子も殺させない。本当に大切なスローガンです。
安保法制が運用される前に、ぜひともその息の根を止めましょう。
読んで元気の湧いてくる新書です。
(2015年10月刊。800円+税)

ベテラン弁護士の「争わない生き方」

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者  西中 務 、 出版  ぱる出版
  私も弁護士生活が40年以上となりましたが、この本の著者は45年以上ですので、さらに先輩となります。
  弁護士の仕事というと、人の争いごとでもうけていると思われるかもしれないけれど、大きな誤解だ。弁護士ほど「争わない生き方」を望んでいる職業はない。なぜなら、争いをして人生に良いことはなにもないと実感しているから・・・。
  私もまったく同感、と言いたいところではありますが、残念ながら、それほど簡単に断言することはできません。というのも、人の社会(世界)に争いごとがなくなるはずはないというのも日々、実感しているからです。争いごとは、金銭・男女・親子関係・政治・思想など、さまざまな要素で発生します。そのとき、一定のルールに従って処理しようとする専門家は不可欠だと思うのです。また、「もうける」というが、それによって「食べていくプロ」が生まれるのも必然のように思うのです。なぜなら、プロだからこそ職業倫理でしばることができるからです。これは行政による監督もあれば、弁護士会のような自治組織であっても言えます。
  まあ、そうは言っても、争いごとが少ないほど人生は充実している気がしています。無用な争いに時間を割くのは人生のムダだと日々、私は実感しています。
  高級老人ホームを経営している理事長は、子どもの教育に熱心な親ほど、老人ホームに入所したあと、子どもが親に面会に来ない。子どもを一流大学に入れ、一流会社に就職した子どもほど、面会に来ない。ところが親が亡くなると、すぐに駆けつける。
  老人ホームの保証金がいくら返ってくるかをめぐって、子ども同士の争いが始まる。高学歴で、一流の会社に働いていると、自らの能力が高いために、おごり高ぶり、相手の至らぬ点を改めて自分の利を得ようとする考えになりやすいようだ・・・。
 うむむ、胸の痛む指摘です。幸い、私の両親が亡くなったとき、我が姉兄で争族問題は起きませんでした。
  大阪で活躍しているベテラン弁護士が書いた本です。大阪には、かの橋下のような嘘八百を並べる鉄面皮の弁護士がいて、弁護士の社会的評価を下げているのが残念でなりません。
(2015年11月刊。1300円+税)

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