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漫談で斬る、自民党改憲案

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  小林 康二 、 出版  新日本出版社
 老後、定年退職したあと、何をするか、それが問題です。そして、そんなことは40代や50年代では考えられません。ましてや、30代のときなんて、発想の外でしかありません。
 ところが、時は等しく、あっというまに過ぎていきます。私も、はっと気がついたら、還暦なんて、とっくの昔のこと。今や、古稀が近づきつつあります。うひゃあ、お、おとろしい・・・。
 定年を楽しく過ごすための三条件。その一、健康でなければ自由は手に入らない。70代も後半の著者は週に3回もジムに通い、1時間半は汗をかいている。その二、じぶんのやりたいこと、課題・目標・夢を明確にして、その実行ノートを枕元に置く。大切なことは継続。その三。すこしばかりのお金を確保しておく。妻に退職金を全額渡してはいけない。
 私は、週一回のスイミング。30分間に自己流のクロールで1キロを泳ぎます。これで体調が分かります。その二、毎日の書評ノートを15年以上続けていますし、ときどき本にまとめています。その三、お金も少しばかり自由になるお金がありますので、出版したり、本の広告を出したりしています。
 著者は労働組合一筋で生きて31年間。55歳のときに組合専従を勇退し、笑作家として演芸の世界に入った。そから21年たつ。全国に励ますの笑いを届ける「笑工房」を設立してからも18年がたつ。この18年間、9人の作家で、100本以上の新作をつくってきた。売上はトータルで3000万円、かの吉本興行に、あと499億7000万円だけ足りない。「あと一息」というところ・・・。まあ、ものは言いようです。
 台本を書くときの注意は三つだけ。あまりに非実現的だと、客が引いてしまう。やたらギャグを連発すると、作品の質が低下する。メッセージを詰め込みすぎると、理屈くさくなって、面白みに欠けてしまう。
 戦後の日本国憲法になってから今日までの70年間に、日本は一度も戦争をしたことがない。ところが、明治憲法が制定されてから、第二次世界大戦が終了するまでの56年間に、日本は海外で8回、平均すると7年に1回の割合で戦争をしてきた。
 アメリカは、もっと好戦的で、1950年の朝鮮戦争以降、2013年までの63年間に、30回以上、平均すると2年に1回は戦争や紛争を起こしてきた。
 そして、日本に協力・加担するように求めてきたが、日本政府は9条を口実として断ってきた。
 国のやるべきことは、戦争になったらどうするか、なんていうことではなく、戦争にならないようにする、そして地方自治体への、きめこまやかなアフター・フォローではないでしょうか・・・。
 大阪の大川真郎弁護士からプレゼントしていただきました。笑いながらケンポーを学べる内容になっています。
(2016年4月刊。1200円+税)
 熊本に行ってきました。驚きました。JR熊本駅でタクシーに乗ろうとしたら、タクシーが1台もいないのです。結局、20分以上も待たされました。今、保険会社が損害(被害)査定のために1日2万5千円でタクシーを借り出しているこのあおりを受けて、まちを走るタクシーが不足しているのです。
 熊本城の周辺を走りましたが、見るも無惨に石垣や建物(塀)が崩れていました。
 そして、あちこちの民家に赤紙が貼られていました。それでも行くところがないので、なかに住んでいる人もいるとのことです。
 余震がまだ続いていますので、本当に熊本は大変だと思いました。少しでも復興の力になりたいと考えています。

CIAの秘密戦争

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者  マーク・マゼッティ 、 出版  早川書房
監訳者(小谷賢・防衛省主任研究官)の解説を紹介します。
冷戦後のCIAは、何とか生きのびているような状況だった。ところが、2001年の9.11のあと、政権から熱い眼差しを浴び、潤沢な予算と過大ともいえる調査権限が与えられた。
9.11のテロによって、CIAは組織の絶頂をむかえた。CIAは、予算と権限を与えられ、政権の命じるままに世界中でテロリストやその関係者を捕まえ、情報を集めた。その手法は、怪しい人物がいたら、とりあえず拘束して収監するというもので、ほとんど誘拐に近い。
誘拐とは言わず、「囚人特例引渡し」という。拷問とは言わず、「特殊強化尋問(EIT)」という。暗殺とは言わず、「標的殺害」という。
 CIAが軍事作戦までやると、ペンタゴンを中心とするアメリカ軍と軋轢を生じさせた。情報機関が戦争し、軍事組織が現地のインテリジェンスを収集しようとする。
アメリカ政府がテロとの戦いの莫大な資金を投じたことで、戦争は一大産業へと発展していく。アメリカの民間企業だけではく、外国の企業までもが、この恩恵に浴するため、戦争の片棒を担いだ。もはや戦争の最前線では、アメリカ軍、CIAに加え、民間企業の社員が代理戦争を行う時代となった。
CIAのドローン作戦は、「テロリスト」を殺害するだけでなく、巻き込まれた民間人にも犠牲者を出している。パキスタンだけでも400回以上のドローン攻撃があり、数千人が死亡している。一般市民の巻き添えも1000人を下まわらない。先日も、アフガニスタンで、国境なき医師団の病院が誤爆された。
ウサマ・ビンラディンの殺害状況を描いたアメリカ映画「ゼロ・ダークサーティ」は、私もみましたが、このとき居所特定に関与したパキスタン人医師についても、この本では触れられています。この殺害作戦では、CIAがパキスタン政府に事前通告していなかったため、CIAとパキスタン情報機関は関係が悪化し、この医師は逮捕された。
以上が解説です。深刻な状況の一端がよく分かりました。
CIAは、もはや外国政府の秘密を盗むことに専念する伝統的な謀報機関ではなく、人間狩りに入れあげる暗殺マシーンのような存在になっている。CIAは、スパイ活動と暗殺活動の両方を行うようになり、軍事・情報複合体となって、アメリカの新しい戦争を主導している。
オバマ大統領は、CIAによる秘密戦争を活用すれば、政府の転覆やアメリカ軍による長期的な占領政策が必要で、泥沼化しやすく、莫大なコストもかかる従来の戦争は不要になると考えた。しかし、現実には、そうはならなかった。刃物の使い手は、敵を消す一方で、新たな敵をつくり出していった。
アメリカ人は、パキスタンで大地震が起きたとき、人道支援の名目で現地に入り込み、さまざまな職業の民間人を装ってスパイ活動をした。
失敗した自爆犯の例が紹介されています。爆弾製造の技術者は、弟の直腸にニペリット(PEFN)を使ったプラスチック爆弾を差し込んだ。そして、服の下に手を差し入れて爆弾を起爆させようとしたところ、早まってしまい、道連れすべき対象を巻き込むことが出来なかった。それでも、タイル張りの床に、煙の漂う穴が開いたほどの威力があった。
アメリカの汚い戦争は今も続いています。もちろん、テロ行為は絶対に許せません。しかし、それをドローンなど、武力で軍事に制圧しようとしても、決してうまくいくはずがありません。アメリカ人も、早くそのことに気がついてほしいものです。心からのお願いです。
        (2016年2月刊。2200円+税)

ルポ・老人地獄

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  朝日新聞経済部 、 出版  文春新書
有料老人ホームは高くて入れないために、無届け有料老人ホームが増えている。
2025年問題が迫りつつある。戦後生まれの団塊世代が2025年には75歳以上の後期高齢者となり、高齢者の医療や介護の問題が深刻になる。
最近、定員10人までの小規模デイサービスの事業者が、「お泊まりデイ」と呼ばれるサービスをすることが急増している。それは、単純計算で月々300万円が事業者の収入になるから。
厚労省によると、2013年度までの7年間に、通常のデイサービスが5千ヶ所ふえたのに、小規模は1万1000ヶ所も増えた。
特別養護老人ホーム(特養)には、なかなか入れない。全国に8000施設、定員50万人というが、入居待ちしている人も同じく50万人はいる。
特養や老健施設において、職員による「虐待」が2割弱で起きている。その背景には、人手不足と過重労働がある。そこからくるストレスが「虐待」につながっていくのです・・・。
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)は、特養の不足などに対応するため、2011年に制度が始まった。1部屋あたり100万円。建設費の補助や税の軽減があるため、制度が始まってから全国で6000棟の19万戸に増えている。
東京では退院後の行き場がない高齢者が多くいる。都外は安く施設をつくれるので、所得の高くない高齢者を救うことができ、それがビジネスにもなる。つくば市が「サ高住」の入居者を調べてみたら、都内23区で生活保護を受けている人ばかりだった。
受け入れ先のない高齢者が増えている。とりわけ深刻なのは、認知症の高齢者だ。
65歳未満で認知症を発症する若年性認知症も3万8千人の患者がいる。
介護職は、深刻な人手不足にある。人手不足のため職場環境が悪化し、さらに人が減っていくという悪循環に陥っている。
介護の現場では、介護福祉士の資格が重視されているとは言い難い。
介護は人件費の割合が高いため、経営者としては人件費を下げたくなる。しかし、それは人を大切にしないことになるので、結局は人が集まらず、うまく回らなくなる。
介護の現場では、好景気とは裏腹に経営難と人材不足が深刻化している。
社会福祉法人の一部では理事長たちが高齢者を食いものにしている。ファミリー企業を通じて巧みに規制を逃れ、巨額の利益を手中にしている社会福祉法人の幹部たちがいる。
若者と同じように老人も大切にされる社会であってほしいものです。大企業本位、なんでも自己責任の社会では弱者が切り捨てられるばかりで、夢もチボー(希望)もありません。
(2016年2月刊。780円+税)

微生物が地球をつくった

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者  ポール・G・フォーコウスキー 、 出版  青土社
微生物は地球上で最古の自己複製する生物なのに、見つかったのは最後で、ほとんどのあいだ知られていなかった。
地球の生命の圧倒的多数は微生物だ。細菌の種は、動物と植物とをすべて合わせた種の数より、はるかに多い。その数は、少なくとも何百万種にもなる。
 生命は電気的勾配を用いてエネルギーを生成する。生命はエネルギーを使って電気勾配を生み出す。要するにすべての生物は電気発生装置だ。陽子のようなイオンを膜ごしに移動させ、それぞれの電気勾配を生成する。陽子と電子の元は水素だ。水素は宇宙に一番豊富にある元素である。電気勾配は膜を必要とする。これがないと、陽子などのイオンの濃度差もなく、したがってATPをつくるエネルギー源もない。
 共役因子と呼ばれるナノマシンは、膜の内側にまたがる文字どおり超小型モーターである。その基本的な造りは極微のメリーゴーランドのようなものだ。
 光合成の過程は、ほとんど魔法のようだ。光合成では、光は特定の分子、たいていは葉緑素という緑の色素に吸収される。特定の葉緑素分子が特定の波長、つまり特定の色の光を吸収することが、化学反応をもたらす、反応中心に収まった一個の特定の葉緑素分子が光子からエネルギーを吸収するとき、光子のエネルギーは、葉緑素分子から電子を一個押し出すことができる。およそ10億分の1秒のあいだ、葉緑素分子は、正(せい)に帯電することになる。
 光のエネルギーは、葉緑素分子から、たんぱく質複合体の提供側から需要側へと電子を押す。その結果、10億分の1秒のあいだ、正電荷をもった分子と負電荷をもった分子がタンパク質の足場にあり、両者は10億分の1メートルの距離で隔てられている。正電荷は負電荷を引き寄せる。タンパク質の足場は実際には電荷の引力のせいでわずかに崩れ、そうなると圧力波が生じる。圧力波は両手を叩くようなものだ。反応中心が電子を動かすたびに、両者はミクロの拍手となり、非常に高密度のマイクなら文字どおり検出できるような音を立てる。この現象は光音響効果と呼ばれる。ベルは、この効果をつかって光から音波を生成し、光電波という、音を伝える装置をつくった。光のエネルギーの約50%が反応中心の電気エネルギーに変換される。
最初の光合成をする微生物は嫌気性だった。つまり水を分解することができなかった。微生物が水を分解する能力を進化させるには数億年がかかった。
酸素は、地球の大気に独特のものだ。24億年前の地球には、植物も動物もいなかった。微生物しかいなかった。酸素は光合成作用の廃棄物だ。地球は、光合成によって水分解サイクルを回して酸素をつくり、呼吸によって水の清算を行うのだ。酸素は相手かまわず反応し、単独でいることを好まない。非常に反応性の高い分子で、多くの金属など他の元素と科学的に結合する。
 人間が呼吸する酸素は、恐らく100万年前につくられて、大気圏のおかげで遠くから運ばれてきた。遠い昔、植物や植物プランクトンが、地球のどこかであなたが今呼吸している酸素を生み出した。
遺伝子の伝達の間違いは、すべての生物のすべての遺伝子に、絶えず自然発生的に生じていて、場合によっては利益になることもある。絶えず生じているランダムな間違いが、遺伝子に厖大な多様性をもたらす。その多様性のほとんどすべてが微生物にある。
10の24乗の微生物が生きている。
日本人の腸内微生物は、改葬の消化を助ける遺伝子をもっている。その遺伝子は、白人の腸内微生物には見当たらない。人間の腸にいる微生物の総数は、体の細胞の総数の10倍ほどである。腸内微生物は、人間の代わりにビタミンをつくってくれる。
アメリカで消費される抗生物質の80%は、家畜生産のために使われている。そして、多くの微生物が普通の抗生物質には、免疫になっている。有毒の微生物が人間に対する反転攻勢を始めている。
微生物を知らないと、人間そして生命を知ることは出来ないということのようです。
               (2015年10月刊。2300円+税)

シベリア最深紀行

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者  中村 逸郎 、 出版  岩波書店
 この本を読むと、ロシアという国は、とてつもなく奥の深い国だということがよく分ります。
 シベリアの奥地には、プーチン大統領もモスクワも、まったく及びではないという人々が住んでいるのです。なにより、シベリアという土地が広大すぎて、まるでつかみどころがありません。
 帝政時代に抑圧されたシベリアに住む少数民族にソ連政府が政治的に配慮することはあったが、ほとんど形式上の見せかけにすぎなかった。15世紀、そして16世紀の西シベリアは、まだロシア領ではなく、タタール人の領地だった。チュルク語系民族が15世紀半ばにシベリア・ハーン国を建設した。そして、16世紀になってロシア人の部隊が進出してきて、戦闘の舞台となった。
 土着のタタール人の家系であり、イスラム教徒でありながら、修道院でも祈りをささげている。西シベリアのイスラム教徒は、フルシチョフ政権下の1960年代に状況が急変し、迫害を受けるようになった。
北極海に近い地方ではトナカイを飼育し、トナカイに頼った生活をしている。遊牧民は800頭から1000頭のトナカイを飼っている。トナカイの肉は遊牧民のネネツ人にとっては主食であり、たんぱく質の供給源として貴重だ。トナカイの主食は良質なコケ。人工飼料はまったく口にしないので、トナカイの肉はとても繊細で美味しい。とりわけトナカイの心臓は高級肉で高い。
人々が一定の距離をもって暮らすのは、トナカイの食料となるコケを確保するため。たくさんのトナカイを飼っていても、一頭ごとに体の模様が異なり、顔つきにも性質にも個性があるので、家族の一人ひとりが自分のトナカイをもっていて、瞬時に見分けることができる。
 都会には住めない。騒音のため頭痛がして、平衡感覚がなくなり、調子が狂ってくる。車の排気ガスの臭いが鼻について、まともに呼吸できない。
チュームには、カレンダーも時計もない。家族全員の誕生日が不明であり、正確な年齢も分からない。まったく時間に拘束されない生活を過ごしている。
 このような先住民の正確な人数をロシア政府は把握していない。出生届がなされても死亡届が出るというのは、とてもレアケースだ。
シベリアを一つの言葉でくくることは出来ない。シベリアの中心地がどこにあるのか、誰も答えることが出来ない。すべてが隣りあわせに存在するのだから、中心がないのも当然のこと・・・。
 不思議で、つかみどころのないシベリアのことを、なんとなく少しだけわかった気がしてきました。そうすると、戦後、多くの日本人がシベリアに抑留されたとき、その所在と責任があいまいになっていったのに関係するのかもしれません。
 世界は広いということを大いに「実感」させられる本でもありました。
(2016年2月刊。2400円+税)

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