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百人一首の謎を解く

カテゴリー:日本史(平安)

(霧山昴)
著者 草野 隆 、 出版 新潮新書 
 お正月のころに登場してくるカルタと同じ、みなさんもよくご存知の百人一首には実はたくさんの謎があるのだそうです。
 「百人一首」は、その歌を選んだ選者が誰なのか、その作成目的は何だったのか、よく分かっていない。
 「百人一首」には、神様仏様や、菩薩と呼ばれるような徳の高い僧の歌は選ばれていない。経文や仏法を歌う釈教の歌もない。
 選ばれた歌人には、幸福な一生を過ごした人は少ない。また、「読み人知らず」の歌は全然ない。
「百人一首」が歴史に浮上するのは、室町時代のころ。定家が没してから190年もたっている。
 この本では、「百人一首」を定家が選んだとか、その名前にかかわったという説が否定されています。
 「百人一首」には、中納言や権中納言、または前中納言という身分の歌人が妙に多い(10人いる)。そして、内裏や政治的中枢から追われたことがある、ないし非業の死をとげた悲劇の歌人が目立つ(17人)。隠者や僧侶の歌人も多い(14人)。
 「百人一首」の歌の多くが、めでたいものではなく、悲しみに満ちたものである。
 全国を旅してまわっていた連歌師は、和歌の師匠として、「百人一首」に注釈を付して流布につとめた。地方の名士や和歌初学の人に示す教科書として、「百人一首」は格好のものだった。「百人一首」は、初学者向けの学習テキストとして重宝された。
「百人一首」に謎があることを知り、また、その謎の本質を知ることができました。引き続き、お教えください。
(2016年2月刊。740円+税)

光陰の刃

カテゴリー:日本史(戦前・戦中)

(霧山昴)
著者 西村 健 、 出版 講談社 
 九州新幹線の新大牟田駅は田圃のなかにポツンとたっていて、周囲には店らしい店は何ひとつありません。在来線の駅から車で20分以上も離れていますので、乗り継ぎは考えられません。しかも、1時間に1本くらいしか停車しませんので、とても不便です。
その新大牟田駅前に巨大な銅像が佇立しています。そう、大牟田の三池炭鉱を三井の「ドル箱」にした団琢磨です。
団は75歳のとき、日本の経済界のまさに総帥だった絶頂の時点で、右翼(血盟国)の「一人一殺」によって暗殺されてしまいました。
この本は、団琢磨と井上日召(にっしょう)の生きざまを詳しく描きながら、交差させてたどっていきます。
なにしろ557頁もある大作です。しかも、活字が細かくて、読み通すのに骨が折れます。
でも、明治、大正そして昭和のはじめころの時代情景が詳細に書き込まれていますので、
団琢磨の苦労ぶりが手にとるように読めます。
 井上日召は、苦労したあげく予言者として名高い存在になったのですね。
 団琢磨は暗殺されたときに75歳。井上日召は、死刑にならず無期懲役となっていたが、早くも昭和15年10月には仮釈放となって刑務所を出た。死刑どころか、昭和42年3月まで生きていた。
 団琢磨と井上日召には、それぞれ詳しい研究書がありますが、この二人を組み合わせた読み物として完成度は高いと思いました。
(2016年2月刊。1900円+税)

回想、二人で生きた36年

カテゴリー:日本史(戦前・戦中)

(霧山昴)
著者  神戸 直江 、 出版  文芸出版
 神戸と書いて、「こうべ」ではなく、「ごうど」と読むそうです。
著者の夫・神戸今朝人は1952年(昭和27年)4月30日に長野県の辰野(たつの)警察署と駅前派出所そして伊那税務署など5ヶ所をダイナマイトで爆破、あるいは火焔瓶で放火したという事件(辰野事件)の犯人として逮捕された12人の被告人のうちの一人だった。
 この刑事裁判は20年あまりをかけて無罪となりました。この1952年には、2月に青梅事件、4月に辰野事件、5月に皇居前広場でのメーデー事件、6月に大分県で菅生(すごう)事件、6月に大阪で吹田(おいた)事件が相次いでいます。いずれも、ほとんどアメリカと日本の支配層による謀略事件です。
 著者は被告人とされた夫と結婚し、苦難を共にした53年を明るく回想しているので、読んでいて救われます。じとーっとした、じめじめ感というより、からっとした爽快さが伝わってきます。
 著者は昭和33年2月、会費制の結婚式をあげました。実は、私の結婚式も会費制でした。私のときは月末で暑いのに、エアコンもない労働会館の会議室を会場としたのです。式の映像が残っていますが、みんな暑そうです。若さからの配慮のなさを恥じいるばかりです。
 著者は、新郎が被告人だというのを承知のうえだったのですから、よほど肝がすわった女性だったのでしょうね・・・。新婦26歳、新郎30歳でした。結婚するにもお金のない新郎に結婚資金カンパが取り組まれたようです。その呼びかけ人の一人に、林百郎弁護士がなっています。
 私も結婚するときにお金がないので、親から10万円をもらい、別に10万円を借りました。司法修習生になった翌年で、本当にお金がなかったのです。弁護士になって数年して、金利をつけて返済しました。ちなみに、会費制の結婚式は余剰金が出ましたので、ペンタックスの一眼レフカメラを購入できました。
 辰野事件の一審判決は有罪でした。裁判官の書いた判決文は目を疑うものです。当日、法廷で訊かされた被告人たちは心の底から怒ったと思います。それが、有名な「さしあたり有罪にする」という判決です。
 警察が提出した証拠では、鑑定した結果、発火しないことが明らかになった。被告人と弁護人は発火しないと言っているが、警察官と被告人の一部自白では発火して爆発したと言っている。どちらが正しいか、にわかに判断できないが、警察官と被告人の一部の自白が正しいと思うから、さしあたり有罪にする。
 とんでもない判決です。裁判官によほど勇気がなかったのだと思います。理屈をこねくりまわすことは出来ても、上を見てタテつくまでの勇気はないという裁判官がいかに多いか、弁護士生活も40年以上になっていますが、本当にいやというほど見聞きし、体験してきました。
 辰野事件の裁判は、こんなこともありました。
「導火線というのは、シュッシュッと音をたてていたと検察官は言っていますが、導火線は音を立てないで燃えるものです。芯が燃えていくと、色が少しかわるだけで、音なんかしません。私は鉱山で働き、工事現場で、いつも導火線を扱う仕事をしています・・・」
そうなんですね。映画では、いつも「シュッシュッ」とか「シュルシュル」という不気味な音を立てて導火線が燃えていきますが、あれって視覚と聴覚に訴える映画用の仕掛けだったのですね・・・。大衆的裁判闘争ということで、広く市民の声を裁判に反映するなかで貴重な証拠(意見)を得たのでした・・・。
 歌集もたくさん出している著者の本なので、すっと読むことができました。お元気にお過ごしください。大阪の石川元也弁護士のおすすめで読んだ本です。石川先生、ありがとうございました。
(2015年12月刊。1429円+税)

南シナ海

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者  ビル・ヘイトン 、 出版  河出書房新社
 「中国の脅威」があおりたてられています。その実体を紹介している本です。
 世界の海上貿易の半分以上がマラッカ海峡を通じて行われている。世界の液化天然ガスの半分、原油の3分の1がここを通って運ばれている。その船の流れが止まったら、それほどたたないうちに世界のどこかで明かりが消え始める。ことほどさように、南シナ海は世界貿易のかなめであり、衝突のるつぼでもある。
 かつて、南シナ海は「日本の湖」だった。この状態は1945年1月まで続いた。
 領土紛争において、国際法の体系では、近さよりも発見者の権利のほうが優先される。国際法は、長らく過去数世紀のあいだ、征服者や探検家にとって有利な規則だった。
資源量と埋蔵量は雲泥の差がある。資源量とは、地下に存在する量のこと。埋蔵量とはそこから取り出せる割合のこと。一般に技術的に採掘可能なのは、資源量の3分の1ほど。採掘して商業的に採算がとれるのは10分の1ほどにすぎない。
 マレーシアの人口の4分の1を中国系の人々が占める。シンガポールでは、国民の4分の3を中国系が占めている。
 カンボジアのフン・セン首相の3人の息子は全員がアメリカで軍事訓練を受けている。そしてこのフン一族を中国が大枚をはたいて「買収」しつつある。
「中国の脅威」は、なるほど数字だけを見ると、空恐ろしい。いまの中国は、海軍力は世界第二位、軍事費も世界第二位。中国の2012年の防衛費は1660億ドルで、前年比12%増。
 ところが、中国の艦船は、アメリカに比べて、二、三世代も遅れている。中国は狂ったように軍艦を建造してるが、1990年代のアメリカの水準にも達していない。中国の航空母艦「遼寧」は、航空機を射出するカタパトルを持たず、スキージャンプ甲板を使っている。したがって、艦載ジェット機J-15は、射程の短い軽いミサイルしか搭載できず、燃料満タンで発艦するときには、電子妨害措置を搭載できない。
 中国海軍は近代的な海軍になったとは言えない。ほとんどの兵士がろくな教育をうけていない。下士官兵は主として小農の子で、14歳以降に教育を受けてきた者はほとんどいない。士官にも大卒者は3分の1もいない。新兵補充は、今も徴兵制だし、兵役はわずか2年なので、高度な技術を身につける機会もない。
 中国の人民解放軍海軍は、すべての面において、現代戦の経験をもたない。対潜水艦船や長距離ミサイル攻撃はまったく経験していないし、掃海艇すら十分に保有していない。現在の中国海軍は、ほとんどアメリカの脅威になっていない。
 外国の政府では、中国軍の戦力増強ばかりが話題になっているが、当の中国軍内部では自軍の相対的な弱さばかりが話題になっている。
 南シナ海で大々的な撃ちあいが始まったとしたら、おそらくベトナム海軍が最強だろう。中国海軍にとっては、リスクが大きすぎる。ベトナム海軍には、新型の対艦ミサイル「バスチオン」があり、攻撃できる潜水艦があるうえ、損傷したら、すぐに基地に戻れる。ところが、中国海軍は損傷したら1000マイル先まで戻るしかない。
 中国海軍って、見かけほどでもないんですね・・・。
 緊張の続く南シナ海問題には、簡単な解決法はない。どちらの側も武力対決は望んでいない。しかし、領有権の主張で譲歩して、緊張を緩和したいとも考えていない。
 中国の領有権の主張には歴史的な「根拠」はないけれど、その「理由」はたしかにある。そのあたりが分らないと、南シナ海問題は理解できないし、ましてや解決の糸口すら見つけられないだろう・・・。
 なーるほど、問題の一端が、よく分かりました。
(2015年12月刊。2900円+税)

中国第二の大陸・アフリカ

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者  ハワード.W.フレンチ 、 出版  白水社
 今、アフリカ大陸には100万人もの中国人がいる。ええっ、これって驚きますよね。
 中国政府の後押しで中国企業がアフリカ大陸にどんどん進出していて、そこに中国人労働者が働いています。それだけではなく、中国人がアフリカで商売もしているのです。そんな状況をアメリカ人の記者が現地取材したルポルタージュです。
著者が行ったのはアフリカの、モザンピーク、ザンビア、セネガル、リベリア、ギニア、シェラレオネ、マリ、ガーナ、タンザニア、ナミビアです。
著者は、英語、フランス語はもちろん、中国語も話せる語学の達人記者なのです。
中国は、現代版バーター取引を実践している。アフリカの開発途上国は、新しい鉄道や自動車道や空港を中国に建ててもらい、その費用を炭化水素や鉱物資源を長期にわたって確実に提供することで支払う。この方式で、中国企業はアフリカ諸国の大規模契約を次々と獲得していった。
 習近平は国家主席に就任したあと、初の外遊先としてアメリカではなく、アフリカ大陸を選んだ。中国政府の幹部たちは1年のうちに何度もアフリカを訪問している。
中国は多くの中国人を実質的に輸出している。中国人は考えられる限り、あらゆる職業に急速に浸透している。
2001年~2010年までに、中国の輸出入銀行は、アフリカ諸国に対して世界銀行よりも125億ドルも多い627億ドルを融資した。
アフリカ全域で教育への投資が盛んになっている。2000~2008年のあいだに中学校の在籍者数は48%増え、高校進学率は80%も上昇した。
中国のプロジェクトの実行にあたって、中国企業は自社の作業員まで連れてくる。これがアフリカ人のよく口にする不満だ。
中国がアフリカへ投資するとき、しっかりとしたヒモが付いている。アフリカの借入国には、中国の事業者(企業)に発注し、中国の資材を使い、中国人労働者を雇うことが求められる。つまり、中国が貸し出した資金は中国に還元される。
いま、アフリカ各地で新しい幹線道路をつくっているのは、主に中国企業だ。
中国系企業がアフリカにおける市場シェア合戦で楽勝できたのは、強力なトリプルプレイのおかげだ。中国の国営銀行による低金利の資金調達、安い中国製資材、安い中国人労働力。この三拍子がそろえば怖いものはない。
市場への新規参入を果たすため、また巨大な国営建築セクターの完全雇用を維持するため、必要なら損失を出すことも、いとわない。
アフリカにやって来た中国人は、以外にもアフリカが気に入った。ここはチャンスが大きく広がる大陸で、たいていの国は居心地が良かったので、そこにとどまってひと旗あげようと考える中国人がたくさんいた。
草分けの中国人移住者たちは、あちらこちらで中国食品をつくり、互いに生活必需品を売り買いし、中国人向けの診療所や学校やレストラン、風俗店まで開いてコミュニティーをつくって、発展させていった。
中国の企業は、常にぎりぎりの状態で仕事をするから、品質に問題が出てくる。しかし、そのおかげで、中国の企業はいつまでも絶えず仕事が確保できることになる。なーるほど、ですね。
機器と労働者をアフリカの現地に送り込んでおいて、仕事がないというのでは困ってしまう。たとえ安値で利益が少なくても、仕事はあるほうがいい。だから、中国企業は安値をつける。
モザンビークには10万人の中国人がいる。
ナミビアの大統領は、娘を中国に留学させている。エリートは、みんな子弟を中国へ留学させている。中国が便宜をはかるのは、アフリカの政治家を操ろうという魂胆があるから・・・。アフリカと中国の深い関係をしっかり認識させてくれる本でした。
(2016年3月刊。2200円+税)

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