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つちはんみょう

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者  舘野 鴻 、 出版  偕成社
ヒメツチハンミョウという小さな昆虫の一生が大きく美しく描かれた本です。子ども向けの絵本ではありません。科学絵本です。写真以上に微細に色と形が大きく再現されます。
メス(母親)は4000個もの卵を土の中に生みつけます。1ヶ月後、幼虫がふ化して、地表に出てきます。そして、コハナバチに乗って花にたどり着き、次にヒメハナバチの巣のなかに入りこみます。ヒメハナバチの幼虫を食べ、花粉団子を巣のなかで食べて大きくなります。そして、ヒメハナバチの巣を出て、地上に出て飛んでいきます。
写真もありますが、幻想的な絵として描かれていますので、ツチハンミョウの短い一生がすごく長いものに感じられます。4000個の卵のうち、親になって子どもをもうけるのは、ごくわずかなのです。
それにしても、自力では飛べない幼虫たちが、花にしがみついていて、たまたま飛んできたコハナバチにしがみついて、生きのびるとは、なんと偶然をあてにした生き方でしょう。
でも、人間の一生も偶然性に大きく左右されていますよね。ツチハンミョウの偶然を利用した生き方と、果たして、どれだけの違いがあるのでしょうか・・・。
よくぞ、これほど微細に観察して絵本にしたものです。そのご労苦に敬意を表します。
(2016年4月刊。2000円+税)

レア、希少金属の知っておきたい16話

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  キース・ベロニーズ 、 出版  化学同人
 ドロドロに融けた地球の中心(コア、核)は、90%が鉄。地殻の4分の3は酸素(46.6%)とケイ素(27.7%)が占める。金属のアルミニウム(8.1%)と鉄(5.0%)がそれに次ぎ、以上の4元素で、9割を占める。そのあと、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、と続く。そして、残るわずか1.4%に80種類もの元素がひしめいている。
 世界中で10億台レベルで販売されるスマホは、ほぼ全部でタンタルを使う。
 液晶テレビやモニターには、鮮やかな赤を出すユウロピウムをつかう。ほかの元素では、きれいな赤は出せない。
光ファイバーはエルビウム添加ガラスでつくる。永久磁石はネオジム。
レアといっても、地殻には、かなりの量が分散して存在する。でも、単離や加工がしにくいうえ、需要が多くて品薄になりやすい。だから「レア」なのだ。
 中国は、途方もない速さで、希土類金属の消費を続け、2016年には13万トンを消費するとみられている。この年13万トンというのは、2010年代初めに今世界が消費していた量と同じ。
 トヨタのプリウスには、1台あたり14キログラムもの希土類を使う。その大半はモーターと蓄電池の部材。希土類のうち5~7キログラムを占めるランタンは、ニッケル・水素化合物蓄電池の電極に欠かせない。
 パレスチナのアラファト議長は毒殺された可能性がある。ロシアのリトビネンコと同じポロニウムが使われていた。
 アフガニスタンには希土類の鉱脈が眠っている。3兆ドル(360兆円)の価値を有するというわけだ。また、アフガニスタンは、サファイヤやエメラルド、ルビー、ラピスラズリなど、宝石や準宝石の産地としても名高い。
 アメリカのF35戦闘機は比重が1.85と軽いベリリウムを使って飛行速度を上げて威力を高めている。有人戦闘機もドローンも、電気系統や爆弾誘導ミサイルを感知するレーダーなどに銅、ベリリウム鉄を使う。また、ベリリウム製の鉄は振動時にもひずみにくいので、戦車の監視用光学系にふさわしい。アメリカは、これまで、カザフスタンとドイツから1トンあたり6000万で高純度のベリリウムを買ってきた。
 レア・アースの初歩的知識を少しだけ身につけることができました。
(2016年3月刊。2000円+税)

ブラッドランド(下)

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者  ディモシー・スナイダー 、 出版  筑摩書房
 ミンスクに住むベラルーシ人やロシア人は、しばしば友人が同僚がユダヤ人かどうか知らなかったり関心がなかった。
森林や湿地に恵まれたベラルーシは、パルチザン戦にはもってこいの土地だった。ヒムラーとヒトラーは、ユダヤ人の脅威とパルチザンの脅威をひと括りにした。ナチス・ドイツは、しばしばユダヤ人男性の妻子を人質にとり、もう一度、家族の顔が見たければ、森へ行って情報を持ち帰れと迫った。だから、ユダヤ人のスパイは少なくはなかった。
パルチザン活動は、しばしば成果をあげたものの、結果として、必然的に民間人の命を奪ってしまうことがあった。
ゲットーに残ってドイツのために働くユダヤ人も、ゲットーを出て自主的に行動できる能力を見せたユダヤ人も、いずれにせよ、スターリンに言わせれば、要注意人物だった。
 1941年から42年にかけて、ナチスの機関に入ってユダヤ人を殺したベラルーシ人が、43年には、ソヴィエト・パルチザンに入った。いずれかの側について戦い、死ぬはめになったベラルーシ人にとって、それはしばしば「運」の問題だった。いずれの陣営も、新入りがその場の成り行きで加入を決めたことを知っていたので、新入りには、敵として戦って捕まった友人や家族を殺すという冷酷きわまる任務を与えて、忠誠心を試した。
ポーランドのパルチザンは、非道で知られるドイツとソ連の武装集団にはさみ撃ちにされる形になってしまった。
ドイツ軍が殺戮ゾーン作戦という手段に出たことは、まもなくソ連がベラルーシに戻ってくることを意味した。ドイツ占領下ソ連のどの地域でも、ナチス・ドイツはほとんどの住民がソ連の復帰を望むように仕向けてしまった。ドイツ人のほうが殺人者としては残忍だったし、ドイツ人による殺戮のほうが記憶に新しかったため、現地住民の目にはソ連政権のほうがまだましに見え、解放者とさえ思えた。
ベラルーシほど、ナチスとソ連のシステムが重なりあい、影響しあった地域はない。そこは、ヨーロッパでもユダヤ人がとくに多かったが、住民の抵抗能力が並外れて高い地域でもあった。ミンスクをはじめとするベラルーシのユダヤ人は、ほかのどの地域のユダヤ人よりも激しくヒトラーに抵抗した。ドイツ国防軍の報告書にパルチザン1万人以上を殺害したと書かれているが、押収した銃は90挺のみ。つまり、殺害された人のほとんどは実際には民間人だった。そして、他方のソヴィエト・パルチザンは、ベラルーシで1万7千人を裏切り者として殺害したと報告している。
ワルシャワ蜂起は、ドイツを負かすことが出来ず、ソ連にとっては、ちょっとした不快の種でしかなかった。赤軍はワルシャワの手前で思いのほか頑強なドイツ軍の反撃にあって足止めを食っていた。ドイツ軍は東部戦線で結束した。ソ連にとって、ワルシャワ蜂起は望ましいことだった。なぜなら、ドイツ人だけではなく、独立のために命がけで戦うポーランド人も大勢が死ぬことになるからだ。スターリンは、アメリカに対して、自分がポーランドを支配するつもりであり、ポーランド人闘士が死んで蜂起が失敗に終わったほうが望ましいと考えていることをアメリカに伝えた。
ヒトラーとスターリンによる大虐殺の真実が繰り返し明らかにされている労作です。上下2巻もあり、実に重たい本ですが、真実から目をそむけるわけにはいきません。戦争というもののむごさをひしひしと感じさせられました。
(2016年2月刊。3000円+税)

金日成と亡命パイロット

カテゴリー:朝鮮・韓国

(霧山昴)
著者  ブレイン・ハーデン 、 出版  白水社
 朝鮮戦争が休戦となってまもなく、北朝鮮のパイロットがソ連製の新鋭ミグ15戦闘機に乗ったまま韓国に亡命した。本当にあった話なんですね、驚きました。
ミグ戦闘機といえば、函館空港に降り立ったソ連のパイロットがいたことを思い出しました。ベランコ中尉と言ったでしょうか・・・。函館でも、韓国の金浦空港でも、警戒されることもなく、無事に着陸できたのでした。
北朝鮮のパイロットの父親は、実は、日本の「日窒コンツェルン」の幹部社員でした。あのチッソの前身の企業です。このような父親の出身成分をうまく隠して、北朝鮮のエリートとも言うべきパイロットになったのでした。
1950年6月25日、北朝鮮は南侵を開始した。朝鮮戦争の始まりです。北朝鮮軍は怒涛の勢いで南下していった。しかし、北朝鮮には、戦闘の初日から克服しがたい弱点があった。空から攻撃されたら、壊滅しかねないということ。空軍は生まれたばかりで、訓練されたパイロットは、まったく足りない。当時の朝鮮人民軍にはパイロットが80人しかいないうえ、いくらか役に立つのは、そのうち2人だけだった・・・。
北朝鮮の空軍は、パイロットの飛行技術より、政治的忠誠を重視していた。政治将校はパイロット訓練生を注意深く観察し、単独飛行の機会をとらえて韓国に亡命しそうな者を特定して排除しようとしていた。亡命を考えていた盧は、それを隠すために愛国心の隠れ蓑を着る必要があった。そこで、親共産主義の新聞を創刊し、熱狂的共産主義者として、その編集長に就任した。
ソ連製のミグ15は、アメリカのどの飛行機より時速160キロも速かった。ソ連は、ミグ戦闘機を1万2000機も製造した。しかし、ミグ15は、速度は速くても、壊れやすく、乗り心地は悪く、操縦が難しかった。
1953年3月5日、スターリンが死んだ。
1953年9月21日、盧は北朝鮮を朝9時7分に飛び立ち、韓国の金浦空港に9時24分に着陸した。5年8か月かけて亡命計画を立てたが、実際の亡命飛行に要したのは17分間のみ。金浦空港にいたアメリカ軍は不意打ちを喰った。誰も敵のミグ戦闘だとは気がついていなかった。
北朝鮮はこの亡命を発表できずに「無視」した。そのため、ミグ15機は、今もアメリカの空軍博物館にあって展示されている。そんなこともあるんだねって、不思議な気がしました。
(2016年6月刊。2400円+税)

姉・米原万理

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者  井上 ユリ 、 出版  文芸春秋
 私は米原万里のファンです。彼女の本のすべてとは言いませんが、かなり読みました。
 毒舌に近い、舌鋒鋭い文章に何度となくしびれました。私よりいくらか年下ですが、尊敬していました。まだ56歳という若さでなくなってしまったのが残念でなりません。本人も本当に心残りだったと思います。
 ロシア語通訳として「荒稼ぎ」もして、「グラスノチス御殿」を建てて鎌倉にすんでいたようです。結婚願望がなかったわけでないようですが、「終生、ヒトのオスは飼わな」かったというのも、男の一人としてなんとなく分かる気がしています。
 妹から見た姉・万里の実像が惜しげもなく紹介されていますので、読みごたえがありました。父親の米原いたるは鳥取の素封家に生まれ、共産党の代議士にもなった大人物です。 
両親とともにチェコに渡って苦労した話から始まります。両親は、どちらもかなりおおらかな人柄で、娘たちを伸び伸び、自由奔放に育てたようです。
 米原家は、みんな大食い、早食いだったとのことです。そして、食べ物に目がなく、食べ物を愛したようです。料理研究家である著者は、まさしく、その趣向を一生の職業としたわけです。
 タルタルステーキの話が出てきます。私が初めてフランスに行ったとき、マルセイユで同行してくれたフランス人が目の前でいかにも美味しそうにタルタルステーキを食べました。生の牛肉に生卵をのせた料理です。私も食べたかったのですが、旅行中なのでお腹をこわしたらいけないと思って、なんとか我慢しました。日本に帰ってから探しても、タルタルステーキを食べさせてくれるところはなかなか見つかりませんでした。魚のカルパッチョはあるのですが・・・。ついに東京のホテルでメニューを見つけたとき、すぐに注文しました。
 怖いもの知らずの万里は、実は、知らないもの、食べなれていない物はダメだった。食べ物に限らず、新しい事態にぶつかると、ちょっと怖じけて、二つの足を踏んだ。
 ええっ、これは意外でした。そして、万里はアルコールコーヒーもたしなまなかったというのです。ウォッカなんて何杯のんでもへっちゃら、そんなイメージのある万里なのですが、意外や意外でした。そして、万里は抹茶をたしなんでいたとのこと。びっくりします。
 そして、米原万里はモノカキになる前、詩人だったのですね。なかなか味わいのある詩が初公開されています。たいしたものですよ・・・。
 トルコあたりのリルヴァというお菓子が世界一おいしいとのこと。私もぜひ食べてみたいと思いました。
 米原万里ファンの人なら必読の本です。
(2015年6月刊。1500円+税)

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