法律相談センター検索 弁護士検索

スリ・コレクション

カテゴリー:アフリカ

(霧山昴)
著者  ナギ・ヨシダ 、 出版  いろは出版
 これはすごい。とてつもない美的センスです。想像もつきません。よくぞ、このような写真を撮った(撮れた)ものです。
 若い日本人女性ならではの突撃精神がなければ、並みの日本人男性には撮る勇気もないでしょう。なにしろ、舞台はアフリカのエチオピアの奥地。首都のアジスアベバから何と車で片道3日間、悪路を走った先に位置する。そのうえ、世界有数の虫大国だから、南京虫、ダニがうようよ。ダニで足がマシンガンで撃たれたような痕だらけになって若い日本人女性カメラマンがたどり着いたのです。
 撮影期間は、わずか5日間。待ったなしです。ここでは写真そのものは紹介できませんので、そのすごさの一端を想像してもらうために、この女性写真家の文章を引用します。
 まずは川で水浴び。そのあとは、思い思いの草花を手あたり次第に集めて、顔や身体にまきつけていく。石灰石や赤土を山から持ってきては水に溶かして自分の顔や身体に塗る。自分では見えないところや手の届かない場所は、友だち同士でメイクしあう。褐色の肌に葉柄のスタンプ。顔の周りに巻きつけた野生花のリース。見たこともない実をつけた樹木のクラウン。
日本の生け花の草月流もまるで顔負けの美的センスのオンパレードです。いやあ、まいりました・・・。すごいです。
スリ族のファッションは感情表現そのもの。太古の時代から、ほとんど変わらない姿のまま、自然の中で生きてきた。満月が出れば身のまわりにある草花で自分を着飾って踊る。うれしいことがあればメイクをして歌う。ファッションは自分の心を表現するための楽しいもの。
 この若き女性写真家は、まだ幼いころ、マサイ戦士を見て憧れたとのこと。中学2年生で学校をドロップアウトして英語もろくに話せなかったというのに、アフリカの奥地にまで出かけて少数民族の写真を撮り続けているのです。たいした根性です。
 一見の価値が十分にある写真集です。3400円(プラス税金)と、ちょっと値がはりますので、近くの図書館(に購入してもらって)でぜひ手にとって眺めてみてください。人生観がほんの少しだけ変わることを、私がお約束します。それにしても、どうやって、こんな奥地までたどり着けたのでしょうか・・・。そんな旅行記も読んでみたいものです。
(2016年4月刊。3400円+税)

コーヒーの科学

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者  旦部 幸博 、 出版  講談社ブルーバックス新書
 私は喫茶店に入ったら、カフェラテかカフェオレを注文します。ブラック・コーヒーはあまり好みではないのです。飛行機に乗ったら、もっぱら日本茶です。アツアツの日本茶が美味しくいただけます。ひところは紅茶党でしたが、外では美味しく紅茶を飲めるところが少ない気がします。
 コーヒーは、「コーヒーノキ」というアカネ科の植物の種子を原材料として作られる。
コーヒーノキは寒さに弱いため、熱帯から亜熱帯に位置する生産国のコーヒー農園で栽培されている。
 コーヒーの焙煎とは、生豆を乾煎(からい)りすること。つまり、残った水分を飛ばしながら、通常180~250度まで加熱する。コーヒー豆は焙煎されたあと、時間がたつと香りが抜けたり、成分が変質したりして、香味が劣化していく。そこで、焙煎は、生産地ではなく、消費地か、その近くで行なうのが一般的。
 コーヒーノキの祖先は、2730万年前にクチナシの祖先から分岐し、その後、1440万年前にシロミミズの祖先と分岐して、アフリカの下ギニア地方(現在のカメルーン周辺)で生まれた。これって、人類の祖先がアフリカを発祥の地とするのに似ていますね・・・。
 コーヒーノキ属には125の種があるが、「コーヒー」をとるために栽培されているのは、わずか2種のみ、アラビカ種とカネフォーラ(ロブスタ)種。我々がふだん飲むコーヒーのほとんどはアラビカ種。あるいは、アラビカ種をメインとして、カネフォーラ種をブレンドしたもの。
アラビカ種はエチオピア高原が原産地。アラビカ種は、標高1000~2000メートルの気温が低目。高地での栽培に適していて、世界中で高業栽培されている。ただし、病虫害に弱いという難点がある。
アラビカ種は、他家受粉に適したタイプの花をもちながら、自家受粉も可能だいう異色の存在である。
 コーヒーノキで、もっともカフェインが多いのは生豆、つまり種子の部分。カフェインには、他の植物の生育を阻害する作用がある。また、カフェインには、ナメクジやカタツムリに対して毒性を示し、これらを寄せつけない効果(忌避作用)がある。つまり、カフェインには、外敵による食害から新芽を守るために植物がつくり出した「化学兵器」の一つなのである。
 コーヒーを初めて利用していた人間はエチオピアで西南部の人々。今でも、お茶のように飲んだり、炒めて食べたり、薬にしたり、贈り物にしたり、さまざまな利用法がある。
 コーヒーは、さび病や、霜害、干ばつの被害を受けやすく、価格が大きく変動するため、経済的には不安定な作物である。
 缶コーヒーを、発明というか、実用化したのは日本人。1965年の「ミラコーヒー」。そして、 1969年のUCCのミルク入り缶コーヒーから一般的に売れた。
江戸時代の日本人は、コーヒーについて、「焦げ臭くて、味わうに堪えず」と評した。その後、「おいしい」とみられるようになった。
カフェインは熱には非常に強く、焙煎中に分解されたり、他の化合物と反応したりすることはない。
ボードレールは、毎日10杯のコーヒー、バルザックは1日50杯ものコーヒーを飲んだ。これは、いくらなんでも飲み過ぎでしょうね。
コーヒーは肝がんのリスクを低下させるし、糖尿病リスクも低下させる。
美味しいコーヒーをゆっくり味わう。そんな精神的余裕をもちたいものですよね。
(2016年4月刊。1080円+税)

「昭和の消えた仕事図鑑」

カテゴリー:日本史(戦後)

(霧山昴)
著者 澤宮 優(文)、平野恵理(絵) 、 出版 原書房   
 弁護士にも平成生まれの人がいますので、昭和時代は既に歴史になってしまいました。
 この本に紹介されている仕事のイラストの多くは、私にとって、子ども時代によく見かけたものです。東京に行くと、国鉄の駅には、赤帽さんがいました。手荷物を運んでくれるおじさんです。戦前には、女性がつとめる「白帽」というものもあって、幼児や病人の世話をしたとのことです。どちらもボランティアではなく、有料です。
 朝夕のラッシュのときには、山手線には押し屋がいました。学生アルバイトが多かったようです。電車の扉が閉まるように乗客を中へ押し込むのです。先日、朝の東京で山手線に乗って、久し振りに殺人的ラッシュアワーを体験しました。息がつまりそうです。とりわけ若い女性には耐えられませんよね。
 蒸気機関車も昭和51年まで全国を走っていました。黒い煙は息が詰まりそうで、乗客には大迷惑でした。
 昔は、バスは路線バスを乗り合いバスと呼び、前方にボンネットが突き出ている格好で、若い女性の車掌さん(バスガール)が乗っていて切符を車内で売っていました。この車掌の仕事が人気を失ったのは、抜き打ちで服を脱がされて身体検査されるからだというのを初めて知りました。
 エレベーターガールが「消えた仕事」として紹介されていますが、最近のデパートでは復活しているところも珍しくありませんよね・・・。
 ニコヨンとは、日雇い労働者のことです。1日240円つまり百円札2個と十円札4個が支払われることから来ています。公共の失対(失業対策)事業に従事する人をさすものとばかり思っていました。全日自労は、この現場で働いている人を組織した労働組合です。かつては、とても人数が多く、勢いがありました。今は名前も「建交労」と変わりましたね。
豆腐売りや納豆売りも路地裏までまわっていましたが、今は見かけなくなりました。なんでもスーパーとコンビニばかりというのでは本当に困ると思うのですが・・・。
ひととき、なつかしく子ども時代を思い出すことができました。
 
(2016年4月刊。2200円+税)

僕たちのカラフルな毎日

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者  南 和行、吉田 昌史 、 出版  産業編集センター
 「同性愛者として社会のど真ん中を歩いて行こうと決めた『弁護士夫夫(ふうふ)』のありのままの日々の記録」
これがオビのフレーズです。男性弁護士カップルが出会いのときから弁護士としての日々を紹介しています。
同性愛者だからって、不幸なわけじゃない。
これを書いている費の夕刊に、アメリカでゲイの集まるナイトクラブが襲撃されて50人もの人が亡くなったことが報道されていました。ゲイに対する社会の偏見は根強いものがあります。私自身のなかにも、ないわけではありません。ところが、表向きはゲイをののしっていたFBIのフーバー長官が実は本人はゲイだったというのは歴史的事実のようです。
 二人は同じ京都大学の出身。片や農学部、そして他方は法学部。同じ学年ではない。そして、今では、二人とも弁護士。
 南君の父親も弁護士だった(故人)。そして、母親は吉田君の弁当までつくってくれた。この母親もえらいと思います・・・。
母親は、同性愛者とトランスジェンダーの違いも分かっていなかった。母はこう言った。
「いつか、あなたたちのうちのどちらかが女性になる手術をすると思ってたわ・・・」
今の私にも、そんな気分が心の底に潜んでいます。そして、二人は、人前結婚式を敢行するのです。
 牧師の資格をもっている友人に進行を頼んだのは、学生時代に自分がゲイだとカミングアウトしたとき、「将来、結婚式をするんだったら、牧師役するよ」と言ってもらったから。2001年のときの冗談が、10年後の2011年に本当に実現した・・・。
 自分に素直に生きるって素敵なことなんだよね・・・。そのことを実感させてくれる本でした。私のなかの偏見の皮が一枚はがれた気がします。とりわけ、二人が仲良く楽しそうに一緒にうつっている写真をみると、その意を強くします。
(2016年5月刊。1400円+税)

コンビニ店長の残酷日記

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 三宮 貞雄 、 出版 小学館新書 
 私はなるべくコンビニは利用しないようにしています。でも、他に商店がなければ仕方ありません。コンビニがなければ生きていくのが難しい世の中になってしまいました。
私の住むまちは、駅の周辺に喫茶店がありません。もちろん、以前はあったのです。
この本はコンビニの店主が自分の体験を語っています。店主って、コンビニ本部の言いなりに働かされている、現代版奴隷のような存在だと、つくづく思います。もちろん鎖なんかありません。でも、見えない鎖で、がんじがらめにからめとられ、ほとんど自由のない生活を24時間、過ごさざるをえないのです。
コンビニの仕事でもっとも重要なのは、売上を大きく左右する発注だ。発注は納品の2日前、端末からする。発注の権限といっても、本部が推奨する範囲で選ぶ権限でしかない。
建前上は「独立した経営」とされながら、「売りたいものを売る自由」はない。
コンビニで、たばこは粗利率こそ低いけれど、売上の2割を占めるので、重要な商品だ。
「自爆」というのは、営業ノルマをクリアするため、自社商品を従業員が自分で買うこと。暗黙の了解によって買わされる。
毎日、食品だけで10キロ前後の廃棄が出る。廃棄が増えれば増えるほど店の利益が減る。食品系のごみの多さはコンビニという業態の特徴。
廃棄を大量に出し、それをオーナー、家族そしてアルバイトがせっせと食べる。
廃棄分はコンビニでは売上原価にふくまれない。廃棄分は売上原価ではなく、営業費に分類され、加盟店が負担する。廃棄を食べると気になるのが添加物。
養豚業者に廃棄した弁当をまわしていたら、豚に異常が多発し、売り物にならなくなったという話がある。ええっ、本当でしょうか・・・。恐ろしいですね。本部は、自らの取り分を増やすために、廃棄ロスを原価に含めず、営業に含めて見かけ上の粗利を膨らませている。
日本全体では食品廃棄物中のまだ食べられる部分が年間500~800万トンにのぼる。世界全体の食糧援助が400万トンというから、それよりはるかに多い。
これは消費期限や賞味期限より早く「販売期限」を設定していて、販売期限を過ぎた商品は棚から排除しているため。
「機会ロス理論」はコンビニ店だけに押しつけられ、スーパーマーケットには適用されていない。
コンビニの仕事として、毎日の送金がある。売上の金額を本部に毎日、送金しなければならない。
コンビニのアルバイトを募集しても、最近は人が集まらない。時給1000円近くにしても確保できない。
コンビニ1店に10~20人のアルバイトを雇っていて、1年で半分は入れ替わる。日本全国のコンビニ従業員は70万人に及ぶ。
コンビニの平均客単価は600円弱。トラック運転手は1000円~2000円と高い。
全国にコンビニが5万3千店以上あり、年間売上高は10兆2千億円ほど。年間167億人の客が来るので、日本人は1年のうちに130回はコンビニに行っている計算になる。
ATM、公共料金の支払いがコンビニで出来るというのは大きいですね。そして、100円コーヒーもあります。私も缶コーヒーより何となく良さそうなので、よく利用します。
便利さのかげに、日本は大きな良いものを失いつつある気がしてなりません。
(2016年4月刊。740円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.