法律相談センター検索 弁護士検索

鳥の不思議な生活

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ノア・ストリッカ― 、 出版 築地書館 
わが庭のスモークツリーの木にヒヨドリがいつのまにか巣をつくっていたところ、へびに襲われ、二羽のヒナが哀れ生命を落としてしまったことは、前にこのコーナーで報告しました。
今度は、キンモクセイの大きな木にドバトが巣づくりを始めたのですが、こちらは、どうやら中止したようです。姿を見かけなくなりました。鳥たちの巣づくり、そして子育ても大変のようです。
ハトの帰巣能力を利用した鳩レースは、普通150キロから300キロの距離。ハトは、ニワトリよりも早く5000年前にメソポタミア付近で初めて家畜化された。紀元前1000年には、エジプトは伝書鳩を訓練していた。
チンギスハンやユリウス・カエサルなどは、ハトを長距離通信に利用していた。
第一世界大戦中には、50万羽のハトが連合軍によって使われた。
ハトの二つ鼻の穴には、目に見える違いがある。海や気流が起こす低周波音(可聴下音)を感知して、それに応じて方向を定めている。
ハトはかなり社会性があり、空中で階層的な序列を維持している。
ムクドリは、夜になると集まる習性をもち、夏の終わりには数十万羽にのぼることがある。夕方、眠りにつく直前、ムクドリは、ねぐらの上空を集団で時には1時間以上も巡回する。
スズメも似たような行動をとっていますよね。夕方暗くなる寸前、駅前の街路樹に大集団が集まって、うるさいほど鳴きながら、枝から枝へ飛びまわっているのを、よく見かけます。
コンドルは細菌だらけの死骸を食べても病気にならない。コンドルの胃は炭疽菌の芽胞を悪影響を受けることなく処理し、殺菌できる。ボツリヌス菌に汚染された死骸を食べても菌を殺し、免疫系は菌の出す毒素に対処できる。ウィルスを含んだ死骸を無毒化することがコンドルには可能だ。
コンドルが、重大な病原体や毒素をどのように処理しているのか、それを正確に解明できれば、それを人類に応用できれば、伝染病の予防に大きな意味があるだろう。
ガスパイプラインが漏れると、ヒメコンドルの集団が、すぐにその真上に集まってくる。
ハチドリは、世界でもっとも小さな鳥だ。体重がわずか1.8グラムしかない。小さな温血脊髄動物だ。
ハチドリは、ほとんど捕食者に襲われない。あまりに小さくて動きが早いので、捕食者が規にもとめないのだ。
ハチドリは、物理的可能性の瀬戸際で生きている。ハチドリは、他の鳥に比べて、体温を保つためだけでも体重の割りにたくさん食べなければいけない。ハチドリは、体重との割合では、鳥のなかで最大の心臓をもち、動物のなかでもっともはやく鼓動する。人間の最大心拍数の6倍以上だ。
ハチドリは、夜にはエンジンを切って体幹部のエネルギー消費を、死ぬ寸前の休眠状態にまで下げる。眠っている時は仮死状態にある。
ニワトリは、大きく成長するにつれ、攻撃性が増す。初めニワトリは、食用としてではなく、闘鶏のために家畜化された。
書名のとおり、不思議な能力をもち鳥たちの興味深い話が満載の本でした。
(2016年1月刊。2400円+税)

ぼくは君たちを憎まないことにした

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者  アントワーヌ・レリス 、 出版  ポプラ社
 ここ数年、フランスに行っていませんが、ひところは毎年フランスに行っていました。
 毎日、毎朝、NHKのフランス語ラジオ講座を聴いて、聞きとり、書きとりをしているのもそのためです。英語は全然話せませんが、フランス語なら多少は話せます。駅やレストランでも大丈夫です。そんなフランス大好きな私にとって、パリで無差別テロだなんて、本当に許せませんし、信じられません。
 昨年11月13日、パリ中心部で同時多発テロが起きて、130人以上の罪なき市民が亡くなってしまいました。著者の奥様もその一人です。バタクラン劇場にいたのでした。
 ジャーナリストの著者は、1歳5ヶ月の長男とアパルトマンで留守番して、妻の帰りを待っていたのです。
憎しみは犯人への罪を重くすることに役立つかもしれない、被害を量る裁判のために。でも、人は涙を数えることはできないし、怒りの袖で涙を拭うこともできない。相手を非難しない人々は、悲しみとだけまっすぐに向き合う。ぼくは自分がそういう人間だと思う。
やがて、あの夜に何が起こったのかを訊いてくるに違いない息子と一緒に、向き合おうと思う。
もし、ぼくたちの物語の責任が他人にあるとしたら、あの子に何と言えばいいのだろう?
あの子は答えを求めて、その他人に、なぜそんなことをしたのはと問い続けなければならないのだろうか?
死は、あの夜、彼女を待っていた。彼らは、その使者でしかなかった。彼らはカラミニコフを撃って、ぼくたちのパズルをめちゃめちゃにした。ぼくたちが、それを一枚ずつ元に戻したとしても、もう前と同じにはならない。パズルボードの上には、もう彼女はいない。ぼくたち二人しかいない。けれどぼくたちは最後まで、ピースを埋めていくだろう。彼女はすぐそばで、見えないけれど、一緒にいてくれるだろう。
人は、ぼくたちの目の中に彼女の存在を感じ、彼女の炎がぼくたちの喜びを輝かせ、彼女の涙がぼくたちの血管の中に流れていることが分かるだろう。
元の暮らしには、もう戻れない。だが、ぼくたちが彼らに敵対した人生を築くことはないだろう。ぼくたちは、自分自身の人生を進んでいく。
 金曜日の夜、きみたちはかけがえのない人の命を奪った。その人はぼくの愛する妻であり、ぼくの息子の母親だった。それでも、きみたちがぼくの憎しみを手に入れることはないだろう。きみたちが誰なのか、ぼくは知らないし、知ろうとも思わない。
 きみたちは魂を失くしてしまった。きみたちが無分別に人を殺すことまでして敬う神が、自分の姿に似せて人間をつくったのだとしたら、妻の体の中の銃弾の一つ一つが神の心を傷つけるはずだ。だから、ぼくはきみたちに憎しみを贈ることはしない。きみたちは、それが目的なのかもしれないが、憎悪に怒りで応じることは、きみたちと同じ無知に陥ることになるから。
きみたちはぼくが恐怖を抱き、他人を疑いの目で見て、安全のために自由を犠牲にすることを望んでいる。でも、きみたちの負けだ。ぼくたちは、今までどおりの暮らしを続ける。息子とぼくは二人になった。でも、ぼくたちは世界のどんな軍隊より強い。それにもう、きみたちに関わっている時間はない。この幼い子どもが、幸福に、自由に暮らすことで、きみたちは恥じ入るだろう。きみたちは、あの子の憎しみも手に入れることはできない。
幼い子と二人で生きていくという、きっぱりとした行動宣言に、心が揺さぶられます。
日本の若者がアフリカの「戦場」で殺し、殺されたとき、日本全国がテロの現場になっていく危険があります。暴力に暴力で対抗することほど愚かなことはありません。
本当にいい本でした。お二人の今後の平和な生活を心から願っています。
(2016年6月刊。1200円+税)

罪の声

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  塩田 武士 、 出版  講談社
1984年に始まったグリコ・森永事件は、ついに犯人の一人も逮捕されることなく迷宮入りとなってしまいました。
この本は、グリコの犯人集団の内側を分析していて、とても説得的です。
犯人たちは子どもの声をつかって「指示」を出していましたが、その子どもが成人してから、自分の声がグリコ事件で使われたことを知り、誰が、なぜ、どのようにして犯行が遂行されるに至ったのか、謎解きをすすめていきます。同時に、同じ動きがジャーナリスト内部でも起きていて、ついに両者は出会うことになります。
それにしても、このグリコ事件が起きたころに豊田商事の永野一男会長がマスコミの面前で刺殺されたり、8月に524人乗りの日航ジャンボ機が御巣鷹山に墜落したとあって、そうか、同じころに衝撃的な大事件が相次いでいたことを少し思い出しました。
この事件で、警察は何度も犯人たちを取り逃しています。警察庁の指揮下の兵庫県警、大阪府警、滋賀県警の連携プレーがうまくいってなかったことに主因がありますが、技術的な困難もたしかにあったようです。今のように誰も彼もケータイを持っているのではありませんし、GPSもありませんでした。
無線機20台と臨時中継器1台が活躍したとのことですが、中継器が足りずに、各府県警の連携プレーがうまくいかなかったようです。それにひきかえ、犯人一味は警察の無線連絡を傍受していたのでした。
警察庁の公安的手法による捜査は「一網打尽」を狙うものであるため、むやみと職務質問をかけてはいけないとしていた。そのため、目の前にいる犯人を取り逃すことになった。
犯人チームのリーダーは、株価の値下がりと値上がりによって利益を得ることが目的だった。グリコの株には市場での浮動様が少なかったので、株価操作がしやすかった。
ただ、暴力団をバックにした連中は、身代金を確実にゲットすることに意欲があった。
結局、「株価操作組」は暴力団グループに打倒されます(本当でしょうか・・・?)。
振り込み詐欺グループと同じ運命なのですね・・・。
グリコ・森永事件を思い出し、その犯人像を考えるうえで手助けになる本です。400頁もありますが、なかなか面白く読ませますので、事件の真相を考えたい人はご一読ください。
(2016年8月刊。1650円+税)

法テラスの誕生と未来

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者  寺井 一弘 、 出版  日本評論社
 3.11の朝、法テラス理事長の退任が閣議で了解されたという著者による、法テラスの過去と将来を語った貴重な本です。
 九州は長崎に縁の深い著者は、いま、安保法制違憲訴訟に全力投球の身です。私も、福岡で、少しばかりのお手伝いをしています。
 法テラスの理事長をつとめた著者の本ですから、さすがに法テラスが発足するまでの経緯と、スタートして今日まで、そして将来展望が熱く語られています。
 司法改革はアメリカから押しつけられたもので、改悪だという主張があるが、自分はそうは考えていない。その点、私も著者と同じ思いです。
 司法部門の強化拡充は規制緩和・市場主義の行き過ぎを是正して、社会的・経済的弱者の権利を擁護するために不可欠なものであった。なにしろ、法テラスの発足する前の法律扶助制度は、まったく「日陰の身」で、予算増大など夢のような話だった。
 亀井時子弁護士(東京)は、20年ものあいだ、国庫補助金は年間8000万円前後で推移し、広報もままならなかったと指摘し、嘆いていた。ところが、2004年6月、総合法律支援法が公布され、2006年4月に法テラス(日本司法支援センター)が発足した後、予算規模は格段に拡充した。2010年度は法テラスへの政府予算は310億を超えている。
法テラスと契約している弁護士は2010年度に1万5千人をこえ、司法書士も5千人超である。
 同じく2010年度、法テラスを利用する法律相談援助件数は25万件をこえ、代理援助も11万件を上回っている。そして、法テラスは自前のスタッフ弁護士を養成し、かかえているが、2010年度に300人をこえた。
 法テラスは、独立行政法人に準じた法人格を持っている。職員はすべて非公務員とし、徹底した民間主導型の組織となっている。
 弁護士の独立制を制度的に担保する仕組みもある。弁護士のなかには、国の所管する法テラスとは契約したくないという考えの人も少なくありませんが、私は、かつての国選弁護人と本質的に変わりはないと考えています。
 実際、民事事件で言えば、いま私の扱う借金整理関係と離婚関係の事件の大半は法テラス利用です。法テラスと契約しなければ、私の事務所の存続自体も危ういというのが率直な実情です。
 そして、刑事事件は9割以上が法テラス利用です。私選弁護の依頼は年に1件あるかないかという状況になっています。
 司法過疎地に法テラスの主宰する法律事務所が出来ていて、ところによっては地元弁護士会と摩擦を生じているところもあるようです。でも、それは、お互いの運用で解決できる問題ではないでしょうか。小都市、田舎であっても法的トラブルは発生していますし、そのとき、関係者が多数いるというケースは決して珍しいことではありません。そんなとき、法テラスのスタッフ弁護士と地元の弁護士とは平和的に共存できるはずなのです。
 2002年、小泉首相のとき、全国に3300ある市区町村の85%には弁護士が1人もいないという状況でした。今は、どうなのでしょうか・・・。
 実は、この本は2011年11月発刊であり、その翌年ころ著者より増呈されたのではなかったかと思います。長らく積んドク状態だったので、今回読んでみたのです。そんなわけで、データが古くなっているのは決して著者の責任ではありません。
 引き続き、憲法違反の安保法制の廃止のために、ともにがんばりたいと思いますので、よろしくお願いします。
(2011年11月刊。2500円+税)

漂流の島

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)
著者  髙橋 大輔、 出版  草思社
 あまりの面白さに、乗るべき列車を乗り過ごしてしまいました。ホームに立って列車を待ちます。カバンから本を取り出して読みはじめました。実は、読む前は期待していなかったのです。いくつかの漂流記を、そのさわりを紹介する本なんだろうという誤った先入観があったからです。ところが、これは探検家である著者が、かの鳥島へ行って苦労したという体験記なのです。面白くないはずがありません。ホームに立って列車を待っていると、いつまでたっても来ません。実は、この時間は別のホームから列車が出るのです。案内放送が耳に入らないほど、本の世界に没入していました。列車が出ますというので、ふり向くと、ちょうどドアが閉まったところでした。ええっ、まあ、いいや、この本をじっくり読もうと思って、また別のホームに向かったのでした。
 探検家の著者は、何とロビンソン・クルーソのモデルが実際に生活していた住居跡を探しあてたといいます。すごいですね。モデルはスコットランド生まれの船乗りで、アレクサンダーセルカーク(1676-1721年)。南太平洋の無人島での4年4ヶ月間の一人で生きのびた体験をダニエル・デフォーが28年間にひきのばした小説にしたのだ。
 島は南米のチリにあり、今ではロビンソン・クルーソー島といって、700人ほどの住民がいる。そこで、次は日本。そして、あのアホウドリで有名な鳥島を狙います。なにしろ、この鳥島には、ジョン万次郎をはじめ江戸時代の160年間になんと13回、およそ12年に1度の割合で漂流民がたどり着いて、無人島での生活に耐えて生きのびた記録があるのです。でも、鳥島はアホウドリの貴重な生息地であり、再生プロジェクトが進行中ですから、漂流民の発掘なんて、とても許可がおりそうにありません。
 著者は、アホウドリの支援、そして火山島の調査、そんなグループの下働きの一員としてついに鳥島に上陸できたのです。まさしく執念の勝利です。
それにしても著者は、漂流民に関する記録を丹念に読みこなしています。そして、それを題材とした小説を読み、鳥島で生活したり滞在したことのある人々に何回となくインタビューしています。こんな下準備があってのことなんですね、探検に成果が出るのは・・・。
鳥島は活火山でいつまた大噴火があってもおかしくないところ。そこに、かの長谷川教授は一人で何ヶ月も寝泊まりするのです。火山の噴火があったら、逃げようがありません。
「覚悟を決めています」
なかなか言えるセリフではありませんね・・・。
 漂流民のなかには、アホウドリの肉だけを食べているうちに高脂血病になって病死した人もいたようです。やはり、人間が健康に生きるためには魚とか、いろんな食べ物をとったほうがよいのです。
 逆に、アホウドリは殺さず、その子に与えるエサを横どりするだけだった漂流民もいたとのこと。信じられません。
 この無人島で、漂流してくるものを待って集めて、5年がかりで船をつくったというのにも驚かされます。すごい執念です。そして、生きて帰れることが分かったとき、死者の名前を呼び、また、遺骨を拾って持ち帰ったのでした。
一番長い人は、なんと19年3ヶ月も一人で生きのびたのです。なんとも強靭な生命力です。恐れいります。
 私自身は、とても探検しようなんて勇気はもちあわせていません。本を読んで、その気分に少し浸るだけです。面白い本を、どうもありがとうございました。
(2016年8月刊。1800円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.