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天文学者たちの江戸時代

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)
著者  嘉数 次人 、 出版  ちくま新書
 星を見ていて、それを数式にあらわして計算できるって、私の理解をこえます。暦をつくるというのも同じで、月の満ち欠けを見て美しいなんて思ってないで、それを1年365日と結びつける、なんていうのも私の想像をこえます。そして、和算です。アラビア数字をつかわないで、漢数字で、どうやって微分・積分などの計算が出来たのでしょうか。もう、私の小さな頭は破裂してしまいそうになります。
 日本の天文学の歴史は古く、文献によると、6世紀にまでさかのぼる。そして「日本書紀」にも天文学が登場する。
中国の天文学は支配者のための学問として発展した。「天」は自らの意思をもち、支配者にメッセージを下す存在だった。
6世紀から日本の朝廷内に天文や暦学をつかさどる「陰陽(おんよう)寮」という役所がつくられた。
17世紀の終わりに、800年ぶりに新しい暦が一人の日本人によってつくられた。渋川春海である。中国の暦法に独自の改良を加え、日本の天象にうまく合うように工夫した。
渋川春海のバックには、保科正之や水戸光圀といった幕府の有力者がいた。また、陰陽頭の土御門泰福の援助もあった。
そのころ、星座の名前もつけていたのですね。おどろきます。もちろん、オリオン座なんてものではありませんよ。大宰府という名前の星座までありました。
渋川春海は、望遠鏡にも接しています。望遠鏡は、1613年、徳川家康にイギリスから献上されたそうです。
日本で地動説を本格的に研究したのは、18世紀の後半。伊能忠敬が日本全国を実測してまわったころの江戸時代です。彗星の正体をさぐる研究も日本で始まった。
ところが、1828年に有名なシーボルト事件が起きてしまった。国家機密だった伊能忠敬による日本地図の写しをシーボルトに渡したことが発覚し、高橋景保は逮捕され、翌年には獄死してしまった。45歳だった。
江戸時代の人々の天文学の研究は、それなりに進んで、成果もあげていたのです。ところが、明治維新になって、一時は、まったく価値ないものとされてしまいました。それが明治の半ばになって、ようやく見直されたのでした。
江戸時代の人を今の私たちがバカにできるはずはありません。
(2016年7月刊。780円+税)

物流ビジネス最前線

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 斉藤 実 、 出版  光文社新書
 コンビニは、なるべく利用しないように抵抗している私ですが、宅急便のほうは人並み以上に利用していると告白せざるをえません。
なにしろ、旅行のときにはたくさんの本を携行していて、読み終えると旅先から宅急便で自宅へ送り返します。これから読もうとする本は重くても仕方ありませんが、読んでしまった本まで持ち歩きたくないのです。
今やアマゾンは日本のネット通販の頂点に君臨し、断トツの売上高を誇っている。
 2015年のアマゾンの全世界の売上高は1070億ドル(13兆5400億円)。このアマゾンも深刻な経営危機に直面したことがあった。2000年にネットバブルが崩壊したとき、14億ドルもの大幅な赤字を出している。アマゾンは3万台以上の物流ロボットを導入している。
 アスクルはオフィス用品のネット通販を展開しているが、優れた流システムをもつネット通販に高い競争力が与えられるため、アスクルはとりわけ自家物流に力を入れてきた。
ラストマイル。注文された商品を購入者に届ける配送のこと。圧倒的な多数のネット通販事業者は、ラストマイルの商品の配送を宅配便を中心とした物流業者に委託している、ということはラストマイルでは宅配便が決定的に重要な役割を担っていることになる。
当日配送が拡大しているのは、返品を防止するためでもある。
送料無料が業界の標準になりつつある。送料無料という場合には、送料は販売価格になかに含まれている。アマゾンの売上高1070億ドルのうち、配送料金は115億ドルなので、配送コストは売上高の10.7%を占めている。
 佐川急便は、アマゾンの配送業務から撤退した。採算性を重視したからだ。
 不在によって再送達を余儀なくされる宅配便貨物の割合は2割近く、3.5%は2度以上の配達が必要だった。再配達は、ネット通販のラストマイルを担う宅配便事業者にとって、大きな負担となっている。
 宅配便が始まったのは1976年。初日の取扱いはわずか11個だった。今や、年間36億1400万個に達している。宅配便会社は21にまで減少し、最大手のヤマト運輸が45.4%、佐川急便が33.5%、日本郵便が13.6.%この上位3社だけで93%に近い。
 宅配便のトラックを運転するドライバーが不足している。
 それは低賃金、長時間労働のせいである。製造業の労働者の賃金を100として、トラックのドライバーは90~81にまで下がっている。
宅配便をめぐる状況を少し知ることができました。
(2016年8月刊。740円+税)

ブラックアース(上)

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者  ティモシー・スナイダー 、 出版  慶応義塾大学出版会
 歴史の真実とは、ときに目をそむけたくなるものがあることを実感させてくれる本です。
 いま、たとえば日本では、中国軍が沖縄に攻めてきたらどうするんだと、真面目に心配している人が少なくありません。決して笑いごとではありません。そして、日本が武力をもつのは当然だ、核武装してもいいんだと高言する恐ろしく強気の発言を繰り返す政治家がいて、それをもてはやす国民がいます。平和を守るためには、武力拡張が必要だと真剣に考えている人もいるのです。
 そんな人たちからすると、私なんてまさしく卑怯者、弱虫、泣き虫としか思えないことでしょうね。良くて、せいぜい夢想主義者というところでしょうか・・・。でも、本当に武力さえもてば平和になれるでしょうか。世界一の最強国アメリカは、どこか平和をもたらしましたか。
 ユダヤ人のホロコーストを誰が実行したのか・・・。ヒトラーが主導したのは間違いないけれど、ヒトラーはドイツ国内で何百万人ものユダヤ人を殺したのではない。ドイツ国内ではユダヤ人をあまりに虐待すると、ドイツ人からの反発が強く、それを恐れて、あまり(他国ほど)ユダヤ人を手荒く扱っていない。
 ホロコーストで殺害されたユダヤ人のほとんどすべては、ドイツ国外に住んでいた。殺戮されたユダヤ人のうち、強制収容所を見たのは、ごく少数だった。
ユダヤ人殺害は、国家制度が破壊された地域でのみ可能だった。その一つがポーランドだった。
 ナチスの恐るべき思想を支えていた一つに、アメリカの西部開拓におけるインディアン絶滅があるのを知って驚き、かつ、考えさせられました。もちろん、インディアンの子孫は今もアメリカ大陸に生存していますが、わずかな居留地に押し込められ、「絶滅」が心配されているようです。
アメリカの白人がインディアンに対してしたことをナチスがユダヤ人迫害のときに模範にしたといって、それを誰が「そんな馬鹿なこと…」と否定できるでしょうか…。
ポーランドにヒトラー・ナチス軍が侵攻したとき、最初に粉砕されたのは国家機関だった。そして、ポーランドの法は廃され、ポーランドという国家は存在したことさえなかったとナチス・ドイツは宣言した。
ポーランド人は迫害されたユダヤ人のものを盗み、ユダヤ人を憎んだ。しかし、ドイツ人のポーランド占領は、ポーランド人の社会的向上にはつながらなかった。教育のあるポーランド人は殺害され、残りの人々は、もの言わぬプロレタリアートとして扱われた。
ヒトラー・ドイツのポーランド侵攻は、ポーランドは主権国家として存在していない。存在しえないという理屈にもとづいていた。捕虜にしたポーランド兵は射殺しても構わなかった。というのも、ポーランド国家というのがない以上、ポーランド軍なるものも現実に存在したはずがないからである。
3.11。1938年3月11日、オーストリア国家は崩壊し、一夜にしてユダヤ人は迫害の対象とされた。オーストリアの二大主要政党でユダヤ人は役割を担っていた。ところが、ユダヤ人は「舗道こすりパーティー」という屈辱的な行為をさせられた。医師や弁護士だったユダヤ人が路上でひざまずいて道路をブラシでこすり、それを大勢のオーストリア人が笑って楽しみながら見ていた。
オーストリアは、突然、反ユダヤ主義になり、ドイツ人にユダヤ人の扱い方を逆に教えることになった。ヒトラー・ナチスは、オーストリア人の反応を見て自信をもち、ユダヤ人迫害を先にすすめた。
このとき、多くのオーストリア人が「明日は我が身」と考えて、ユダヤ人を迫害しなかったなら、いかにヒトラー・ナチスといえどもユダヤ人絶滅作戦をそんなにすすめることは出来なかったはずだというのです。この指摘は重いですね。付和雷同して権力の望むように踊っていると、いつのまにか自分の身まで危いということを大衆はなかなか自覚しないというのが歴史の重たく悲しい教訓です。
1938年にオーストリアから6万人のユダヤ人が脱出した。しかし、ドイツを離れたユダヤ人は4万人でしかなかった。ドイツのユダヤ人がドイツを脱出しようとするのは、ナチスがウィーンで学んだ教訓を適用するようになってからだった。
読んでいくにつれ、心の重たさは深まるばかりでしたが、勇気をふるって最後まで読み通しました。いやはや・・・。「自虐史観」なんてネーミングの馬鹿らしさにも改めて気がつかされます。
(2016年7月刊。2800円+税)

未来ダイアリー

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 内山 宙 、 出版  金曜日
 もしも、自民党改憲草案が実現したら?
 静岡の若手弁護士によるイメージあふれる本です。自民党改憲草案の本質が、その不気味さが余すところなく紹介されていて、心底からゾクゾク悪寒を覚えてしまいます。
 さしずめ寅さん映画で、タコ社長が、ああ、気分が悪くなってきた、まくら、サクラをくれ(「サクラ、枕をくれ」の言い間違い)を起こしてしまいます。
 安倍首相は、今国会で憲法改正論議を始めると宣言しました。おっと待ってください。首相も国会議員も、憲法を守り尊重する義務があるのを忘れてはいけませんよ・・・。
著者に面識はありませんが、「あすわか」に所属して、最近メキメキと売出し中です。「宙」って、なんと読むのかと思うと、「ひろし」だそうです。
「あすわか」って、何ですか・・・。「明日の自由を守る若手弁護士の会」の略称です。ですから、私には残念ながら加入資格がありません。「あすわか」の作成した「司法芝居」も良く出来ていますよ。私も小さな学習会で活用させてもらいました。
この本は、自民党改憲草案が草案でなくなり、現実のものになったとき、日本はどうなっているのかをリアルに再現(?)しています。いやあ、実にソラ恐ろしい世の中です。
 まるで、戦前の域詰まる日本の再来です。
 「改正前の日本国憲法を学ぶことは、今の新憲法の秩序を破壊しようとする行為に該当する」
 「以前の憲法を学ぶことすら、公の秩序違反と言われるようになってしまった」
 「いろいろ政府に文句を言っていると、内乱予備罪の疑いをかけられてしまう」
 「たしかに国民投票があったけれど、まさか、こんなに変わってしまうなんて、思ってもみなかったもんで、投票には行かなかった・・・」
 「憲法なんて、よく分からない。難しくて、考えるのが面倒。自分には関係がない。収入が少ないから目の前の生活で手一杯で、考える余裕なんてない。まじめに投票に行くなんて、カッコ悪いし・・・」
 「NHKなんて、ひたすら政府をよいしょしてて、気持ち悪いです・・・」
 いまの日本は、憲法改正するかどうかの瀬戸際にある。そして、すでに安倍政権は国会で3分の2の議席を占めている。ところが、国民の多くは、まだまだ憲法が自分たちの生活と平和を守ってくれるという自覚が薄いようです。そのスキを安倍政権はついているのです。
 この本は、その隙をつかれたあげく改憲が現実化したときの日本の恐ろしい状況を、とても分かりやすく示しています。
 私も、著者のような若手弁護士と一緒に、日本の平和と世界の平和を願って、すこしずつでも引き続き声をあげていくつもりです。
 いい本をありがとうございました。ぜひ、みなさん、手にとってお読みください。
 
(2016年8月刊。1000円+税)

戦争まで

カテゴリー:日本史(戦前・戦中)

(霧山昴)
著者 加藤 陽子、 出版  朝日出版社
 30人ほどの中高年に向けて、大学教授が日本が対米戦争に踏み切るまでの経緯を問答形式をとり入れながら語っている面白い本です。心と頭の若くて柔らかい中高生時代をとっくに過ぎた私ですが、最後まで面白く読み通しました。
話を聴いていて、ときにある著者からの問いかけに対する中高生の答えの素晴らしさは声も出ませんでした。これって、ヤラセじゃないのと、つい頭の固いおじさんは疑いたくなるほど見事な回答なのです。
戦争とは、相手方の権力の正統性原理である憲法を攻撃目標とする。
戦争は、相手国と自国とのあいだで、必ず不退転の決意で守らなければならないような原則をめぐって争われている。相手国の社会の基本を成り立たせてる基本的な秩序=憲法にまで手を突っ込んで、それを書き換えるのが戦争だ。
天皇は2015年8月15日の全国戦没者追悼式の式辞において、戦後の日本の平和と繁栄を築いたものは、「平和の存続を切望する」国民意識と国民の努力によると語った。
この点、私もまったく同感です。安倍首相の言葉には、まったく欠落している視点です。
1931年9月の満州事変のあと、国際連盟は現地にリットン調査団を派遣した。そして、翌1932年10月にリットン報告を発表した。
日本側は、中国国内の国共対立、日本製品ボイコットの実情をリットン調査団に見せようとした。必ずしも日本の不利になるとは考えていなかった。
リットン報告書は、日本軍の軍事行為は自衛の措置とは認められない。満州国は日本のカイライ国家であり、現地の人々の支持を受けていない。日本製品ボイコットは国民党政府が組織したもの。この三つが持論だった。
リットン報告書は、十分過ぎるほど、日本側に配慮していた。そして、中国側はこの報告書に不満だった。つまり、リットン報告書は、日中両国が話し合うための前提条件をさまざま工夫したものだった。
戦前の日本の外交・軍事の暗号がアメリカ軍にあって解読されていたことは、有名です。山本五十六元帥も、そのため撃墜されてしまいました。ところが、この本によると、日本側もアメリカの外交電報の9割は解読していたというのです。
アメリカほどではないにしても、かなり高い解読能力を有していた。これは、ちっとも知りませんでした。
戦争が、相手国の権力の正統性原理への攻撃であったとすれば、その攻撃の為に敗北し、憲法を書き換えられることとなった当事者である日本人として、戦争それ自体の全貌をちゃんと分かっていなければならない。しかし、沖縄を例外として、戦場が主として海外であったこと、戦争の最終盤があまりにも悲惨だったことで、日本人は戦争を正視するのが、なかなか難しかった。
飛耳長目の道。あたかも耳に翼が生え、遠くに飛んでいって聞いているように、自国にいながら他国のことを理解することであり、また、あたかも望遠鏡のように遠くを見通せる「長い目」で眺めるように、現在に生きながら昔のことを理解できること、という意味。つまり、自国にいながら他国にことを理解し、現在に生きながら昔のことを理解するのが学問であり、その極めつけが歴史なのだ。
中高生を目の前にして戦前の日本を振り返ると、話すほうにも得られるものが大きい。このように書かれています。なるほど、そのとおりだろうと、この本を読んで思いました。
巻末に参加した中高生全員の氏名が学校名とともに紹介されています。すごい子たちです。日本も、まだまだ見捨てたものではありません。
(2016年8月刊。1700円+税)

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