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バーニー・サンダース自伝

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 バーニー・サンダース 、 出版  大月書店
 思わず涙が出てくるほど感動しました。大学生時代の初心を、こうやって今なお貫いていること、そしてそれが多くの心あるアメリカ市民に支持されていること、それを知って私の心まで熱く震えてしまいました。すごい人です。
 バーニー・サンダースはアメリカで民主党の大統領候補にあと一歩というところまで迫りました。ヒラリー・クリントンが金持ち階級の代弁者だとして人気がないことにも助けられたのでしょう。でも、バーニー・サンダースの主張は、アメリカの多くの若者の心をがっしりつかんだのです。ここに私は、アメリカの未来があると思いました。
 バーニー・サンダースは社会主義者を名乗り、一貫して無所属だった。大統領選挙に向けてだけ民主党員になった。
 今のアメリカには貧困層と弱者を代表する主要政党がない。そして、貧困層を叩くことは、今や「上手な政治」だ。
「この国の貧困層は、母豚の乳を吸う大きな子豚だ。彼らは、この国のもたらす便益をみんなもっていってしまう。いつも人を食い物にしているんだ」
アメリカでも日本でも、保守反動の政治家は貧困層を叩いて、中間層の喝采を得ています。自らは金力も権力もある自民党の政治家が、ことあるごとに生活保護受給者を目の敵にして、ぜいたくな生活をしているかのように叩いています。そして、その尻馬に乗る、決してリッチではない中間層がいます。悲しい現実です。
 アメリカの現在の主たる危機は、失業ではなく、労働者階級の賃金が急送に低下していること。失業率が高いことは問題だが、それよりさらに深刻なのは、アメリカの労働者の実質賃金が過去20年間に16%も低下したこと。
 これは、日本も同じですよね。アベ政権下で、労働者の賃金が低下する一方なので、消費・購買力が低下しているため、日本の経営回復の目途がいつまでたってもたちません。アベノミクスの失敗は明らかです。
バーニー・サンダースは、シカゴ大学の学生のとき、人種平等会議、学生平和連合、青年社会主義者同盟の一員だった。図書館では、マルクス、エンゲルス、レーニン、トロッキー、フロイト、フロム、そしてもちろん、ジェファーソンもリンカーンも読んだ。すごいですね。そして、ベトナム反戦運動にも取りくんでいます。
サンダースが公職に立候補しようと思ったのは、今日この国の政治状況が本当に危険であることに多くの人が気がついていないと思ったから。
 はじめは1%、そして2%・・・。バーリントン市長に選出されたときには、わずか14票差(数え直しの結果、10票差)だった。ところが、その後は市長に3回も再選された。
サンダースの選挙運動の基本は戸別訪問。運動員が組んで、一軒一軒を歩いてまわり、対話して支持を広げていくのです。日本で戸別訪問が禁止されているのは、本当におかしいと思います。買収の温床になるというのですが、とんでもないことです。個別訪問を一律に禁止するのは憲法違反だとする下級審の判決がいくつも出ましたが、自民党は一向に公選法を改正しようとしません。買収で摘発されるのは圧倒的に自民党なんですけど・・・。
 アメリカ社会の重大な政治的危機は、働く人々が黙ってしまうことだ。もし組織労働者の5%が政治的に活発になれば、アメリカの政治的・社会的政策を根本的に変えることが出来るだろう。今日、大多数の低所得労働者は投票に行かない。働く人々の圧倒的多数は無力感を抱いている。
そして、投票率をあげるだけでなく、政治プロセスについて、市民への教育をもっとしっかりやらなければいけない。今こそ、学校で若者に民主主義の教育をすべきだ。
労働組合の積極的役割について、テレビのゴールデンタイムで語られ、紹介されるべきなのだ。
戦争は政治家が始める。そして、戦場で政府のために命を危険にさらした男女がいざ助けを必要としているとき、その同じ政府に背を向けられてしまう。許しがたい非道だ。
これは、アメリカのことですが、今、同じ状況が日本にも起きようとしています。
 アフリカ(南スーダン)へ日本の自衛隊を派遣して、なんで日本の平和が守れるというのですか。反対ではありませんか。日本の若者がアフリカの地で、殺し、殺されることを日本にいる私たちは黙って見ていいのですか。私は、そんなことは止めてほしいと思います。弁護士会も、そのための行動を起こしています。
 久しぶりにたぎる思いに接し、胸が熱くなりました。あなたも、ぜひ手にとってお読みください。 
(2016年6月刊。2300円+税)

セブン・イレブン、鈴木敏文帝国崩壊の深層

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  渡辺 仁 、 出版  金曜日
 鈴木敏文は1932年生まれだから84歳。イトーヨーカ堂の伊藤雅俊は92歳。この二人が争ったようですね。やはり老害なのでしょうか。本人は認めていませんが、鈴木敏文は二男の鈴木康弘を後継者にしようとして、社内で猛反発を受けたと書かれています。
「オムニチャネル」とは、スマホやネットで注文した商品を全国のセブン店で、24時間いつでも受けとれるという、次世代ネット通販の総称。
 ところが、これでは、本部は利益を得るけれど、加盟店はわずかな手数料収入だけになってしまう。商品のショーウィンドーであり、単なる配送拠点でしかなく、店舗オーナーは完全に無視される。これは反発必至ですよね。
 セブン・イレブンの3代目社長は、陸上自衛隊の師団長(陸将)をつとめた人間だった。レイテ沖海戦の「謎の反転」で有名な栗田健男・海軍中将の息子でもある。自衛隊上がりの栗田元社長が、社内の組織を自衛隊式に変えた。
 セブン・イレブンには、売上金の毎日送金を拒む「未送金オーナー」を力でねじ伏せる非合法組織がある。鈴木敏文会長直属の特殊部隊だ。
その写真も紹介されていますが、不気味です。レジから売上金を抜きとってしまうのです。
 セブン・イレブンの広告量が莫大なだけに、スポーツ紙や夕刊紙も、広告大スポンサーである「天下のセブン」にだけは完全なる沈黙。何の批判にもさらされていない。
セブン・イレブンの広告宣伝費は2525億円。しかし、現実には、オーナー夫妻の自殺や過労死は後を絶たない。セブンは、自殺遺族の口封じをしている。
セブンの利益率31%はあまりにも異常に高い。あのトヨタ自動車だって、利益率は6%でしかない。売上金の毎日送金システムが、この異常利益を支えている。
セブン本部には、全国1万5800店から、100億円もの現金が入ってくる。月3000億の大金をどのように運用しようと、セブン本部の勝手だという仕組みになっている。
コンビニ商法一般の恐ろしさでもありますが、ちょっとひどすぎますよね・・・。
現場で働く人は、本当に大変と思います。ますます、コンビニには近寄りたくないと思いました。
(2016年5月刊。1400円+税)

食い尽くされるアフリカ

カテゴリー:アフリカ

(霧山昴)
著者 トム・バージェス、 出版  集英社
 巻末の解説文を紹介します。
 中国はアフリカ経済を発展させるといって資源開発を次々にすすめている。しかし、今までのところ、アフリカの人々には、その恩恵はまったく及んでいないというのが現実だ。エネルギーを輸出するためにつくられた交通インフラは、人々のために役立っていないどころか、むしろ安価な中国製品が大量に流出するルートになり、アフリカ現地の工業化を大きく妨げている。そのうえ、そのインフラ建設費の3割は汚職によって消えている。
 天然資源関連の産業は、国内に雇用を生まない。そのため、アフリカの人々のあいだに大量の貧困が発生している。
 中国の汚職官僚たちは、中国内で略奪システムを構築し、そのシステムを通して蓄えた富を秘匿性の高いタックスヘイブンに隠すテクニックを身に付けた。今のアフリカの天然資源国における略奪システムは、中国の高級官僚によってつくられた汚職システムが修正されて、アフリカに輸出されたものと言ってよい。
 中国とアフリカとは、今このような関係になっているのですね・・・。
 植民地時代のヨーロッパの帝国や冷戦時代の超大国が姿を消し、資源の宝庫であるアフリカ大陸には新たな支配の形が生まれている。アフリカに生まれた新たな帝国を支配するのは、もはや国家ではない。何ら国民に責任を負わず、影の政府を通じて国土を支配するアフリカの政治家、彼らを世界の資源経済と結びつける仲介者、企業秘密を盾に汚職をおこなう東西の多国籍企業、この三者の連合勢力がアフリカを支配している。
 中国は、ニジェールでウランを採鉱し、未開発の油田を掘削する権利を受けとる代わりに、独裁者タンジャが独裁政治を遂行するために必要な手段を提供した。そして、5600万ドルのうちの4700万ドルは反乱を鎮圧するための武器の購入にあてられた。
 中国は、アフリカの変化にあわせてアフリカ諸国に支援の手を差し伸べている。中国は2004年にアンゴラで協定を結んだあと、コンゴやスーダンとも同じ取引をした。いずれも、インフラを提供する見返りに天然資源をもらうという数十億ドル規模の取引である。
中国の海外での契約の3分の1はアフリカとの契約である。アフリカにおけるインフラ支出の3分の2は中国に資金が占めている。
アフリカの主要水力発電ダム10基の建設資金の大部分を中国が提供する。これらのダムによって、アフリカ大陸全体の発電量の3分の1の電力を生産する。
 エピオチアでは中国が構築した携帯電話鋼が利用され、中国が建設した空港を通じて貨物が流通している。アフリカ連合の新しい本部ビルは2億ドルかけて、エチオピアの首都アディスアベバにつくられたが中国が資金を提供した。
アフリカへの融資の最大の資金源は、国有の中国輸出入銀行だ。
中国の国有企業は、シエラレオネから南アフリカに至るアフリカの天然資源をもつ欧米の企業から230億ドルを費やして持分を購入した。
中国は、欧米の諸国と競争だけでなく、協力もしている。
アフリカの資源国家の支配者は、国民の同意を得なくても国を統治できる。それが資源の呪いの核心にある。資源ビジネスがあるかぎり、支配する側と支配される者との社会契約は成立しない。
アフリカにおける中国の存在感は日に日に強大となっていますが、そこには大きな問題もあることを認識させられる本です。
(2016年7月刊。1900円+税)

「イスラム国」の内部へ

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 ユルゲン・トーデンヘーファー 、 出版  白水社
 ドイツ人ジャーナリストが「イスラム国」(IS)に潜入したルポルタージュです。潜入といっても、ISの了解を得たうえです。
 ISは、2003年のイラク戦争の落とし子である。イラクのサダム・フセインが失脚したあと、アメリカの指導部にとっては、アメリカの有権者に対してイラクにおける先の見えない戦闘を正当化するために、記憶に残りやすい悪逆非道な敵のイメージが不可欠だった。
 アサド政権に反対する初期の平和的なデモが無慈悲な内戦に発展する要因は、アメリカの寛大な承認を得て、各種の武器が巨大な貨物コンテナに入れられて船や飛行機でトルコにもたらされたことによる。それらの武器は、シリアに運ばれ、やがて反抗勢力の手に渡った。武器がシリア領内に入ってしまえば、もうアメリカはコントロールできない。
シリアでは、濡れ手に粟で、武器取引が横行した。
この200年間、アラブの国が西側の国を攻撃したことは一度もない。攻撃者は常にヨーロッパの強国であって、何百万人というアラブの一般市民が、そのつど残忍に殺害された。
もしテロリストがいなくなったとしたら、アメリカはそれをつくり出すだろう。アメリカは、何度となく、それをやった。
 テロリストたちは、自分たちの国をガソリンタンクと見なして、自分たちから搾取しているアメリカの攻撃的な政治に対するまっとうな返答と考えて攻撃している。
 中東におけるテロリストの数は爆発的に増大した。ビンラディンのころの国際テロリストは数百人でしかなかったが、今では10万人をこえている。
イラク国民は宗派をこえて和解したら、ISは決定的に弱体化する。
我々は、虚偽にみちた世界に住んでいる。殺人的な戦争挑発者と殺人的なテロリストに満ちた世界だ。
シリアに向かったドイツ人は300人にのぼるとみられている。ISは、5万人以上もの外国人戦闘員がISに加わっていると高言している。
ISの歳入は、戦利品、石油の販売、そしてザカート。
 ザカートとは、税金のこと。戦利品のなかには奴隷がふくまれる。ヤズィード教徒女性1人の値段はカラミニコフ銃1丁と同じ、1500ドルほど。
ISでは煙草は禁止。公の場で吸ったら、30回のむち打ち刑。音楽も禁止。
シリアでは、ISの住民の7割は外国人で、3割がシリア人。女性の戦闘員はいない。
ISが学校で子どもに教えるのは三つ。コーランと法と戦闘。
 百万都市モスルをISが支配しているが、その戦闘員は5000人。ISは2コ師団2万人を潰走させた。
ドイツ人の親子がISの内側に入って、その生活の一端を紹介した貴重な本です。日本の大手マスコミにはとても出来そうもないルポライタージュだと思いました。今度、自衛隊と一緒にスーダンの現地取材をするのでしょうが、現地の実情を曇らない目で報道してほしいものです。
(2016年6月刊。2400円+税)

古文書の語る日本史(7)

カテゴリー:日本史(戦前・戦中)

(霧山昴)
著者  林 英夫 、 出版  筑摩書房
 江戸時代の文書がよく保存されていることに驚かされます。もちろん戦災にあって焼けたのもたくさんあるとは思いますが・・・。日本人が昔から書くことを大切にしてきたこと、識字率が高かったことを反映していると思います。
先日の映画『殿、利息でござる』は仙台藩のなかでの実話にもとづいていることを紹介しました。この本にも、似たような話が出ています。
尾張国でのこと。村内の有力者を語らって金銭を集め、貧民に支給するという「民恵銭(みんけいせん)」運動が実践された。言葉だけでなく、「恵(めぐみ)」(金銭)を支給して貧民を救済することが先決であることを村内の高持(たかもち)層に説き、毎月の集金積立をもって、天明元年(1781年)10月から80人の貧者に頭(かしら)百姓16人の出金と、67人の貸主の利子捨(すて)のもとに76両1分と890文の基金からスタートして、救い方を実践した。
 また、天明2年からは、木曽川の修築事業を「自普請」と称して村々の篤志家の協力を得て、いわば「民力」による改修事業をしている。それは窮民に職を与え、なんらかに日雇賃銭を得されるために、篤志家たちを集め、貧窮する農民たちに篤志者みずから賃銭を支給して人を集め、普請場に行って改修作業に参加することだった。普請場に2千余人の人々が集まり、にぎにぎしい「御冥加普請」がなされた。そこに藩主宗睦も鷹狩に託して工事現場にやってきて、床几に腰をおろし、責任者に酒をやった。
いやはや、まるで先の映画の世界です。すごいことをしていたのですね・・・。
 一揆のときにも「扱い人」と称する仲裁・調停人が仲介して紛争を収拾したという話も紹介されています。江戸時代というのは、まことに奥の深い社会だったようです。単に暗黒時代として忘れ去るべきではありません。本棚にあった古い本を読み返しました。
(1989年10月刊。3300円+税)

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