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法解釈の正解

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 田村 智明 、 出版  頸草書房
実務法曹の世界で活動している若き哲学者の目で書かれた法解釈の本です。
正直言って、私には少々難しい場面も少なくありませんでしたが、なるほど、そういうことだったのかと初めて認識させられるところの多い法解釈の本でした。
今は青森で弁護士をしている著者は司法試験に合格したあと、8年間も司法試験の予備校専任講師として受験指導をしています。その体験もふまえた哲学的見地から法解釈のあり方がとかれています。著者は法解釈には正解があるという立場です。
だからこそ自己の立場は有限なのであり、謙虚にふるまう必要がある。そして、一般意志ですくいきれなかった他の立場の人の思いに対して、きちんと思いやらねばいけない。
法の支配の原理、あるいは憲法上の個性尊重主義は、もともと正解志向こそが本質なのである。そして、法の支配の原理の論理学のなかには、他者排除、価値観の押しつけの論理が含まれている。
法の支配の原理にもとづく法解釈の論理とは、結局のところ、「支配者の論理」なのである。だから、他者との共存を排除する方向性をもつ危険を秘めた思想である。この点を自覚しておかねばらない。法解釈の実践とは、まさに、このような支配の論理学を駆使しているのである。このことの自覚が実務法曹には不可欠である。
司法試験では、法の支配の原理こそが重要な価値である。
自分が信じる正義の内容も示さずに条文の言葉だけで結論を導いたり、あるいは正義を示したとしても、あまりに形式的、独善的で社会的な説得力を欠くようではいけない。
実務家として、自分がどんな立場に立っていても、プロとして、社会の人々に対して自己の立場の正義を理論的に説得するという役割を担っていることを自覚すべきだ。
正解志向は決して悪いことではない。むしろ、これを自覚的に実践することは、自己批判を可能にし、自己を謙虚にさえする。なぜなら、正解志向は、自分がある特定の価値観を前提に正解を導いていることを自覚させるから。
プロの法律家に必要とされる能力は、与えられた、あるいは自己が現実を欲している実質的主義を法的な形式にしたがって表現、主張すること、これに尽きる。
真に自由になるためには、自分を知らなければならない。真の自分は、普遍的な法に従うことで幸福を感じるような自分である。
自由とは、一般に、自分が生活している社会の中で自分が発揮できる持ち味を発見し、その発見した持ち味を生かす道を選びとること。そのためには、目先の快楽などにはとらわれずに、自分や社会のことを知る必要がある。
子どものころ、私たちが勉強するのは、大人になってから自由になるため。自由とは、強制から解放されたらすぐに獲得できるというものではない。自分が従うべき普遍的法則を発見し、かつ強制から解放された場合にはじめて得られるものなのである。その普遍的法則を発見するためには、学校でみなが同じことを学ぶ必要がある。
自由とは、自己の個性の発揮である。だから、自由になるためには、自己の個性を知らなければならない。それには、さまざまな経験と勉強とが必要である。なぜなら、個性には、自分の属している社会との関係も含まれているから。自分がもっとも社会に貢献できる持ち味を発見することが自由獲得の条件である。
民主主義が正義である根拠は、討論や審議によって、さまざまな立場の意見が法案に反映される点にこそある。
多数派の意見は多数派の利益になる意見とは必ずしも合致していない。
裁判官の多くは、自分の頭で何が正しいかを判断する勇気をもたず、上級審判決がこうであれば、それに従うのが正義だという内容の判決を大量生産しているのが現状である。
なかなか考えさせられることの多い本でした。今度は、論文式合格答案の書き方の本も読んでみることにします。著者から贈呈を受けました。ありがとうございました。今後ますますのご活躍を期待しています。
(2010年10月刊。2500円+税)

海ちゃんの天気、今日は晴れ

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 大和久 勝、 出版  山岡 小麦  クリエイツかもがわ
発達障害の子どもは、どんな状況にあるのか、その子を受けいれたときにはどう対応したらよいのか、絵(マンガ)で示され、親切な解説がありますので、門外漢の私にも状況がよく分かりました(もちろん、本当のことは分かっていないのでしょうが、その大変な状況を推測する手がかりは得られました)。
海田(かいた)くんは発達障害の子です。小学3年生。
ADHDとアスペルガーの診断を受けています。
学校で気にいらない状況に直面すると、すぐにキレてしまいます。
友だちのシャツをバケツに入れたり、叩いたり、みんなと別に一人で紙ヒコーキを飛ばしていたり、教師はなにかと大変です。
海(かい)くんは、すごいこだわりがあります。
子どもの行動には、わけがある。そのわけが分からなくても、抱きしめたり、うなずいたりして、困惑や苦悩を受けとめるようにする。どんな行動にも理由があると考えて、子どもと対話をする。その聴きとる姿勢が子どもの心を開いていく。
暴力をふるったり、キレたり、パニックを起こしたりするのは、困っていることの訴え、叫びなのだ。このことを理解するには、一定の時間が必要。自分の感情や行動を自分で思うようにコントロールできない苦しさが子どもにはある。
発達障害の傾向の子は、安心した居場所がもちにくく、活躍して認められる出番がないなど、自己肯定感や自信がもてない子が多い。
発達障害といっても、実は発達上のアンバランスだということ。それは障害というより、特性や個性として見ることができる。そのためには、周囲の理解が何より大切だ。
とてもよく出来たマンガでした。大変さと希望がズンズン伝わってくるマンガです。
(2012年4月刊。1500円+税)

おにぎりの本多さん

カテゴリー:朝鮮・韓国

(霧山昴)
著者 本多 利範 、 出版  プレジデント社
 韓国にセブン・イレブンを定着・展開させていく苦労話です。日本と韓国の食習慣の違いなどもよく分かり、面白い本です。
 ダイエット中の私は、ときにお昼をコンビニのおにぎり(ねり梅)1個ですますことがあります。パリパリした海苔と梅干がご飯によくあって美味しく食べられます。コンビニにとって、1個100円のおにぎりは主力商品なのですね・・。
現在、セブン・イレブンでは平均して1日1店舗が320個のおにぎりが売れている。店舗は1万8千店なので、セブン・イレブンだけで1日に576万個も売っている。コンビニ全体では1日に1228万個が生まれている。1年間にすると、44億8220万個という途方もないおにぎりが売られている。
 ところが、韓国人にとって、冷めた食べ物を食べる人は、お金のない人。だから、はじめのうち、韓国ではおにぎりが売れなかった。
 韓国海苔は、あえて繊維を残して厚さにムラを出し、硬い触感を楽しむタイプ。そして、塩と油で味付けされた味付け海苔が主流。海苔という食べ物は、すでに双方の国で、形も味も、ともに理想形が確立していて、国民的食べ物にまで昇華されている。そこで、妥協の産物として韓国のコンビニで売られているおにぎりは、シートに入った海苔は、ところどころ向こうが透けて見える韓国海苔風だが、食べると日本の絶妙なパリパリ感も味わえるものとなっている。
韓国ではキムチを具としたおにぎりは売れなかった。なぜか・・・。韓国の食堂では、キムチは無料。だからキムチおにぎりは、無料の具材を入れただけでお金を取ろうとしていると思われ、価値を見出してもらえなかった。なるほど、ですね。
 韓国でおにぎりがブームになったのは2001年から。そのころ、日本では年間28億個だった。この年、韓国は2000万個。翌2002年に、ようやく1億個になった。
ハンバーガーは年間17億個が売れているので、まだまだおにぎりも売れるはずと踏んだ。
著者は韓国のテレビに出演して「おにぎりの本多さん」として有名になったとのことです。
韓国では、天ぷらおにぎりもダメだった。韓国では天ぷらの地位が低すぎた。天ぷらは高級料理ではなく、屋台料理か刺身屋のおかずでしかない。うひゃあ、信じられません・・・。
この本を読んで、私はスーパーマーケットとコンビニの根本的な違いを認識しました。
スーパーマーケットは、生鮮三品(肉・魚・野菜)を核として売り場がつくられている。いつもと変わらない売場のほうが客にとって買い物もしやすいし、安心。変化は緩やかなほうが好まれる。
 コンビニは、季節はもちろん、その日その日の天候、店舗周辺のイベント、そして朝、昼、晩の時間帯と、消費者を取り巻くあらゆる微細な変化に対応していく必要がある。コンビニだからこそ出来る細やかな「変化対応」にこそお客は価値を見出す。そのための売り場づくりを日々考え抜いている。
コンビニの面積は、日本は30坪、韓国はもっと狭くて22坪。
韓国のコンビニの平均日販は20万円ほど。日本は50~70万円。
コンビニには、1日3回の商品搬入がある。コンビニでは、人は自宅にストックするための高い商品は買わない。その時々に必要になったものを買いに走る。商品の消費期間は短いものが多い。
韓国にはインスタントラーメンを食べさせる粉食店が街のいたるところにある。そして、町中が不動産屋だらけ。さらに、韓国の受験戦争は厳しく、子どもたちはコンビニのおにぎりを口にして塾を飛びまわる。
韓国人は、荷物を手に持って行動するのは貧乏くさいとして嫌う。周囲から軽く見られないためには、重い荷物を自分で持ってはいけない。
コンビニでコーヒーやフライドチキン・ドーナツを売るようになった。そのとき、「美味しすぎてはダメ」なのだ。美味しすぎるというのは、すぐ飽きられるということに直結する。ここが商品の開発の難しいところであり、肝でもある。
ふむふむ、そうなのか、そんなに日常生活習慣が違うものなのか・・・。驚くばかりでした。
著者は、私と同じ団塊世代ですが、今もファミリーマートの専務として、現役で頑張っています。
 
(2016年8月刊。1500円+税)

きばれ長崎ブラバンガールズ

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 藤重 佳久・オザワ部長 、 出版 学研 
福岡の精華女子高校の吹奏楽は私も一度だけ見聞したことがあります。そのマーチングしながらの吹奏楽には、つい見とれてしまいました。その精華女子高の吹奏学部を全国屈指の名門校に押し上げた指導者が定年退職し、長崎の活水高校に移り、そこでも吹奏学部を指導して、またたく間に九州大会を勝ち抜いて全国大会へ出場したというのです。すごいです。
この本には、そこに至る苦労が女子高校生たちの思いとともに明かされています。読み物としても、本当によく出来ています。幕明け前の心理状況そして、演奏が始まってからの音楽の推移が豊かに再現されていきます。その筆力にも圧倒されます。
その指導者の名前は、藤重佳久。実は初心者が大切。演奏は半年がんばったら、どうにか一人前まで成長できる。先輩が初心者の面倒をみることで、バンド全体の力が上がってくる。人間関係も良くなる。初心者でもやれるという可能性を生徒にも周囲の人々も見せてやりたい。
活水には、精華からの転校生もいたし、東京からやってきた生徒もいた。そして、人数が足りないのを中学生が補った。
マーチングは体を動かすので、非常に健康的。そして動きを視覚的にとらえられる。これは重要なこと。座奏は基本的に音だけで、聴覚の世界。目には見えない。形もなければ、言葉も、具体的なものもない。ところが、マーチングでは、音楽と連動した動きによって、視覚と体で具体的に取り組むことができる。生徒の姿勢も表情も良くなる。それに、お客さんも喜んでくれる。やはり動きがあったほうが目で見え楽しめるし、分かりやすい。
つくろうとしているのは、うねるような、しなやかな音楽。
音楽はデジタルではない。一定でないところに音楽の面白さ、人間らしさがある。
コンサートでは、まず演奏者が楽しんで演奏すること。そして、作品を完成させ、その感動を観客に伝え、楽しんでもらう。これが何より大切。
コンクールも、コンサートのように人を楽しませ、自分たちも楽しむ。これが基本。
笑い顔がいい。それは、口のまわりの筋肉をもっともうまく使える形だから。演奏が非常にフレキシブルで楽になり、ハイトーンも低い音も出るようになる。
演奏が上手な生徒は、生活態度もきちんとしていて、真面目。上手な人のやり方を真似ること、観察して盗んで自分のものにすることが必要。
コンクールで良い成績を収めるより、人柄の良い人間として育ってほしい。そのためには、たくさんの人間のなかでもまれる必要がある。社会に出てからでは遅い。
相手が喜ぶ演奏をする。相手に伝わる音楽をすることが大切。思いやりがあるから、良い演奏ができる。
女子高生に接するときには、決して嫌われないこと、必ず平等に接すること。まんべんなく全員に目配りし、差をつけず、一人ひとりに声をかけるのが大切。
良い音楽を奏でる生徒は共通している。性格が明朗活発で、元気がいい。声も大きい。それだけ日常においても表現力が豊かだ。日常の表現力と音楽の表現力はリンクしている。
ここまで読んでくれば、いちどぜひ活水のブラスバンドとマーチングを見て聞きたいですよね。読んで元気の出る、いい本でした。
(2016年5月刊。1300円+税)

日本国憲法は希望

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 白神 優理子、 出版  平和文化
いま大いに注目されている若手弁護士です。そのさわやかな話しぶりは、憲法の伝道師を名乗る伊藤真弁護士に匹敵します。
なにより、弁護士生活3年だというのに、憲法を語る学習会の講師を100回以上もつとめたというのですから、ただものではありません。私なんか、3年間で片手もあるかなという体たらくなのです。まあ、なんといっても若さにはかないません。
白神は「しらが」と読みます。著者から講師として憲法を語るときのポイントを聞きました。
まず第一に、憲法の魅力を自分の生き方を紹介しながら具体的に語ること。中学生までは、どうせ世の中は変わらない、変えられないと思っていた。ところが高校に入ってから、いや世の中は変わるし、変えられる。憲法は国民の自由を保障するもの、権力を縛るものだと知って心を動かされた。歴史は着実に前へ進んでいることを教えられた。
第二に、憲法を改正しようとする人たちの狙いは、日本を戦争できる国の体制につくり変えることにある。戦争と言えば、イラクでもアフガニスタンでも、大勢の罪なき市民が殺され傷ついている。子どもの手足が爆弾でもがれる、そんな悲惨な戦争を日本の権力者は再びしょうとしている。黙っていては危ない。
第三に、自民党の憲法改正草案は国民の基本的人権をまったく無視し、公益に反しない範囲でしか守られないとしている。つまり、国民は国家に逆らってはいけない存在になっている。
第四に、経済の視点からの話も欠かせない。戦争する国づくりは、福祉国家をこわすことになる。つまり、国民の貧困化が一層すすんでしまう。
白神弁護士は、ここまで話してきて、頭を上げてニッコリほほえみました。でも、最後に、希望を語ることが大切だと強調したのです。私も、まったく同感でした。せっかく憲法について学習しようと足を運んでくれた人を暗い足どりで帰してはいけません。しっかり元気を取り戻して、明るい気持ちで、家に帰って、周囲の人に声かけあうようにしなくてはいけないのです。
その点を白神弁護士が最後に強調したので、さすがに多くの憲法学習会で鍛えられている人は違うな、そう感嘆しました。
「ワインで語る憲法の話」という企画にも講師として参加したそうです。ワインのソムリエをしている人がアメリカ、ドイツ、スペインのワインの特長を紹介すると、この三国の憲法状況を白神弁護士が語ったというのです。すごい発想です。こんな柔軟な発想が年輩の私たちにも必要です。
都知事選挙のなかでのネガティブ・キャンペーンに踊らされる人がいかに多いか。その現実を前にして、日頃から私たちの言うことに耳を傾けてくれる人々をいかにたくさんつくっておくかがポイントだ。この白神弁護士の指摘にも、私は共感を覚えました。
このブックレットは、そんな豊富な憲法講師活動のエッセンスがまとまっています。年金・福祉や教育・予算を削る一方で、軍事(防衛)予算だけは、一貫して右肩上がりに増え続け、ついに5兆円を突破しました。そんな流れをぜひ変えたいものです。
憲法を守って、私たちの平和と人権を守り抜きたいものです。
80頁、800円(プラス消費税)という、とても手頃で味わい深い冊子です。表紙にある白神弁護士の笑顔の写真を眺めるだけでも心が癒されます。あなたに、ご一読を強くおすすめします。
(2016年7月刊。800円+税)

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