法律相談センター検索 弁護士検索

アレクサンドロスの征服と神話

カテゴリー:アジア

(霧山昴)
著者 森谷 公俊 、 出版  講談社学術文庫
紀元前334年、アレクサンダー大王(本書ではアレクサンドロス)はマケドニアを出て東方遠征に出発し、わずか10年でギリシャから小アジア、フェニキア、エジプトさらには広大なペルシア帝国まで征服し、インダス川に至るまでの空前の大帝国を築いた。
なぜ、30代と若いアレクサンダー大王にそれが可能だったのか、そして、大王の死後たちまち大帝国が四分五裂してしまったのか・・・。
その謎を本書は解き明かしています。
アレクサンダー大王は、征服された側からみたら、まぎれもない侵略者だ。いったい何のための遠征だったのか・・・。反面、アレクサンダー大王は、諸民族・諸文明との平和共存を目ざしてもいた。
ところで、アレクサンダー大王の墓は発見されていない。各地に建設した都市アレクサンドリアもエジプトを除いて消滅してしまっている。
アレクサンダー大王の帝国は、変幻自在で、その中心は遠征軍とともに絶えず移動していて、留まることがない。そして、首都は、アレクサンダー大王のいる何ヶ月間かのことでしかなかった。
支配体制に一貫した原則は認められない。統治方法も、征服した都市や地域の多種多様な条件と伝統に適応して、多様だった。これを寛容政策と呼んでもいいが、放任とも言える。
アレクサンダー大王は、カメレオンのように姿を変えていった。まずマケドニアの王、エジプトのファラオ、バビロニアの王、そして、ゼウスの子であり、アモン神の子を自称した。
アレクサンダー大王は、すべてを星雲状態のままにして、この世を去った。
アレクサンダー大王を、マケドニア人将兵は絶対的に信頼していた。これが東方遠征の基礎だった。マケドニア軍の中核をなす騎兵部隊は、8隊1800人から成り、仲間とか朋友を意味するヘタイロイという美称をつけて、騎兵ヘタイロイと呼ばれた。
マケドニア歩兵には、ベゼタイロイという重装歩兵部隊があった。1500人の部隊が6隊、900人から成る。長さ5.5メートルにおよび長槍をもつ密集戦列を組んで戦う。前2世紀にローマ軍に敗れるまで、不敗だった。
そして、攻城塔をもち、石弾を打ち出す射出機をもって都市の城壁を攻め落とした。
ギリシア人はマケドニア人に制服された民族でありながら、アレクサンダー大王の帝国では支配者側の一員だった。しかし、両民族の間の壁は深いままだった。
アレクサンダー大王がペルシア帝国を倒して、そこを支配するときペルシア人を登用していったことに、マケドニア人たちの不満が高まった。
アレクサンダー大王は、旧ペルシア領を治めるには、ペルシア人貴族の協力が不可欠であることを認識していながら、肝心の彼らとの間に安定的な統治システムを構築することができなかった。
アレクサンダー大王は、将兵に対して機会あるごとに功績に応じた褒美を与え、部下たちを名誉のための競争へと駆り立てた。すべてのマケドニア人が追求したのは名誉だった。
すべての将兵の出世が王一人の決断に依頼している以上、宴会では側近同士が王の溺愛を求めて争い、激しいつばぜりあいを演じた。
古代マケドニアの社会は、ギリシアと同じく、男性同士の同性愛によって成り立っていた。アレクサンダー大王は、発病してわずか10日目で亡くなった。33歳になる直前だった。
アレクサンダー大王は、父の7回の結婚による騒動を経験しているため、王族の結婚は、王権にとって利益よりむしろ混乱をもたらすと考えたのではないか。自分が結婚すれば、妻の一族と、妹たちが結婚したら、その夫の一族との利害関係が王権にからんでくる。それによる王国の不安定化は避けなければいけないというのが父の結婚から学んだ教訓だった。そして、アレクサンダー大王自身が世継ぎをもうけて王朝を継続させようという観念をもっていなかった。22歳の大王は、まだ自分ひとりの名誉を追求することしか頭になかった。その代償は重かった。
結局、大王が死んだとき、まともな後継者がいなかった。それによって王家は滅亡するしかなかった。
とてもよく分かる分析がなされている文庫本でした。
(2016年2月刊。1230円+税)

虎徹幻想

カテゴリー:日本史(戦前・戦中)

(霧山昴)
著者 下里正樹・宮原一雄 、 出版  新日本出版社
 戦前、特高警察のやったことを元特高課長夫妻に取材した結果をレポートした本です。
 取材に応じたのは、元警視庁特別高等警察課長・纐纈弥三(こうけつやぞう)です。
 纐纈は一高から京都帝大法学部に進み、内務省に入った。特高課長を経て、大分県知事などを歴任した。戦後は公職追放となったが、戦犯解除後には自民党の衆議院議員を4期つとめた。3.15と4.16という共産党弾圧の功績に対して、双光旭日勲章が授与されている。 
戦前の特高係員は、刑事訴訟手続きをまったく超越して仕事をしていた。
3.15弾圧のとき、特高課が把握していた共産党員は70人。ところが、1600人も検挙した。その九割までが検挙する必要もない人々だった。
 女性革命家は、性格が強すぎて困った。男とちがって、女性の政治犯はしぶとい。あのしぶとさは閉口させられた。女性はいったん「こうだ」と思い込んだらテコでも動かない。絶対しゃべらないんだ。なだめても、すかしても、脅かしてもダメ・・・。男のほうは比較的簡単だった。ちょっと迫れば、べらべらじゃべるものもいた。なかには、特高にしゃべらなくてもいいことまで、すすんで話すようなサービスのいい男性党員もいた。鍋山貞親もその一人。
 初代の特高部長に纐纈は当然に自分がなるものと考えていたところ、安倍源基が二階級特進して、特高部長となった。この人事は、纐纈にとって、よほど腹にすえかねるものだった。
纐纈は、客のもってきたものは、まず妻君に毒味させ、客が食べたあと、自分が食べるというように用心を重ねていた。妻君は、特高のやったことがひどかったから、恨みを受けて、いつかは夫は誘拐され、仕返しされると恐れていた。
 スパイは、「組織に知られないように頼みます」とか「殺獄しないでほしい」となんども懇願しながら、夫に秘密を守ってくれるように念押しをしていた。
 纐纈は特高課長としての機密費をもっているから、党内情報と引き替えに、お金をスパイに与えていた。纐纈は特高課長をやったことを誇りに思っているけれど、妻の私は、とてもそういう気分にはなれない。特高の家族もまた被害者だということを知ってほしい。
 特高課長の妻であっても、内心では特高のやっていることは、感心できることではないと思っていた。 
特高課長の妻だった女性の告白は、なるほどと思いました。
機密費は、課長分だけで月5百円あった。月給は月百数十円だった。
 スパイの要請なくして共産党対策はない。スパイをつくるためには、党員個人の持つ弱点を徹敵的に研究する。そして狙いをつけた者にじわじわと接近する。ときに、本人の弱点が党の機関に知られておらず、知られるとこっぴどい処分を受けるような弱点にかぎる。
 公安係の子どもとして育った人の話をきいたことがありますが、家庭内がなんとなく暗い雰囲気だったとのこと。子どもに話せないような仕事をしているのですから、それも当然でしょうね。スパイを養成し、スパイを操って党内情報を探るのを一生の仕事にしている人の人生って、どれだけの価値があるのでしょうか・・・。お天道様の下を堂々とあるけるほうが、よほどいいですよね。
 生前の特高警察の実態を暴いた貴重な本です。
(1991年1月刊。1800円+税)

ブータン、これでいいのだ

カテゴリー:アジア

(霧山昴)
著者 御手洗瑞子 、 出版  新潮文庫
ブータン、何だか名前の響きからだけでも惹かれるものがありますよね。
GDPではなく、GNHを打ち出したのはブータンです。GDPは国内総生産。GNHは、国民総幸福量。国は人々の幸せを一番に考えるべきであるという考えです。いまの自民・公明のアベ政権とはまさに真逆の方向です。
そんなブータンで日本人女性が官僚の一員として働くようになった体験談が楽しく語られています。
ブータンンの人たちは、政府で働く官僚をふくめ、ほとんどの人が手帳もカレンダーも持っていない。彼らは頭で記憶できる範囲、せいぜい2日後までしか予定を立てない。うひゃあ、こ、これは大変なカルチャーショックです。
ブータンは、九州と同じくらいの大きさの国で、人口68万人。島根県や大田区と同じほどの人口。
ヒマラヤ山中に位置し、チベット仏教を国教とし、ゾンカ語というブータン独自の言語が国語。立憲君主制。
小学校から、すべての授業は英語でおこなわれる。ブータンでは、生前退位が認められていて、2006年に51歳の国王が退位し、26歳の長男が国王になった。
ブータン人は、いつも自信満々。自信にみちあふれ、物おじせず、しっかりと相手の目を見すえて話す。
ブータンでは人見知りする子どもを見かけたことがない。
ブータン人はプライドが高いから、上から指示されるのを嫌う。失敗しても反省しない。何度でも同じ間違いをする。
ブータン人は、喜怒哀楽を、とても素直に、しっかり表現する。よく笑い、よく怒る。
ブータンでは、仕事のあとに飲みに行くことはしないし、夜に外食する習慣もほとんどない。通常は、夕食前に家族全員が家に帰り、手分けして夕食をつくり、一緒に食事をする。
ということは、ブータンではレストランがあまり繁盛していないのでしょうか・・・。
ブータンは、もともと女系社会。男性が婿入りする。相続するのも息子ではなく娘。基本的に妻のほうが一家の主(あるじ)。若い夫婦は妻のほうの家族と暮らすので、嫁姑問題はほとんどない。男性は、自分を婿にもらってくれる家を探すという習慣。
ところが、ブータンの男性は自他ともに認める浮気性。
結婚しても姓の変更はない。そもそも家族を表す姓がない。一部の金持ち以外は結婚式をあげることもない。重婚も可能。ただし、浮気がバレたら、たいてい即、離婚。家を追い出される。
ブータンでは、夜這いの習慣がまだ残っているらしい・・・。
私も一度はブータンという国に行ってみたくなりました。まさしく、ところ変われば、品変わるですね。
(2016年6月刊。590円+税)
福岡・天神でドイツ映画『アイヒマンを追え』をみてきました。ナチス・ドイツのユダヤ人大量虐殺に深く関与した元ナチス親衛隊中佐アイヒマンの捕獲・裁判について『ハンナ・アーレント』『アイヒマン・ショー』に次ぐ映画です。
ドイツのヘッセン州検事長フリッツ・バウアーは映画『顔のないヒトラーたち』で紹介されましたが、ナチスによるユダヤ人のホロコースト実行犯たちに対するアウシュヴィツ裁判を推進した立役者でもありますが、この映画ではアルゼンチンに潜伏していたアイヒマン捕獲の手がかりをつかんだ重要人物として描かれます。当時、ドイツの官僚システムのなかには、旧ナチ残党がまだまだ幅をきかせていて、ナチスの残党の摘発を躍起となって妨害していたのでした。
ユダヤ人の大量虐殺をはじめとするナチスの蛮行はおぞましいものがあります(この映画では、その点の描写はまたくありません)が、それにドイツが正面から向きあおうとしてきた努力がフランスをふくむ周囲の国々から評価され、今日のEUが成立しているわけです。その点、日本では過去の歴史的事実にきちんと向きあおうとすると「自虐史観」だとかいって足をひっぱる声がかまびすしいのは本当に残念です。
韓国や中国と仲良くしないで、日本の豊かで平和な生活がありえないのに、今の安倍政権はそれと真逆の政治を突っ走るばかりで、許せません。

シマエナガちゃん

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 小原 玲、 出版  講談社
これは可愛い。まさしく雪の妖精です。北海道でフツーに見られる小さな小鳥の写真集です。
シマエナガは北海道に暮らすエナガの亜種で、真っ白な顔ころんとした小さな体が特徴。
ほんとうに真白い、丸々とした小鳥です。つぶらな黒い目と小さな鼻があるだけ。まるで白いマシュマロです。
体の長さは14センチ。体重8グラム。日本最小の鳥。冬には樹液のつららをなめています。大好きなのです。
飛ぶときにはロケットのように!まさかと思いますが、羽を広げているのではなく、羽を閉じたまま昇ったり、降りたりする姿が写真にとらえられています。もちろん、羽を広げても飛んでいます。
冬のあいだは群れで過ごし、冬が終わるころにつがいになる。
シマエナガは、コケやクモの巣をつかって、木の幹の二又に分岐しているところに大きな卵形の巣をつくる。見た目は草や葉の塊のようになって外敵の目を欺く。
小さな卵を10個ほど産み、2週間でかえってヒナとなる。しかし、1年後まで生き残っているのは一羽か二羽ほど。エサがなかたり、冬の寒さに耐えられなかったり、タカや昆虫に食べられたりする。寿命は長くて3年から5年ほど。
それにしてもヒナたちが木の枝に一列に並んでいる様子は愛らしくてたまりません。
シマエナガは人里に近い環境を好むので、札幌の大通公園など、緑の多い公園や緑地で普通に見られる。
いやあ、こんな可愛い小鳥が身近に見られるなんて、北海道の人は幸せです。
今朝(12月28日)、この冬一番にジョウビタキを見かけました。御用納めの日に出勤する寸前の我が家の庭です。このジョウビタキも愛嬌たっぷりの小鳥で、可愛いですよ。
(2016年12月刊。1300円+税)

正倉院 宝物

カテゴリー:日本史(奈良)

(霧山昴)
著者 杉本 一樹 、 出版  新潮社
 校倉造(あぜくらづくり)の巨大な高床式(たかゆかしき)の倉庫として有名です。
 奈良・平安の当時、日本文化が生みだした宝物をたくさん収蔵していますが、そのなかには遠くペルシアなどから渡来してきたものもふくまれています。国際色豊かな8世紀の文物が当時の姿で残っている、まさに宝庫です。
 バンジョーのような形の楽器があり、古琵琶もあります。いずれも見事な装飾です。
 奈良時代は、囲碁と双六が大流行していた。双六は、賭博に傾きやすいとして、持統天皇は禁止令を出し、何度も取締の対象となった。
 先の国会で自民・公明・維新が多数の横暴でカジノ法を成立させてしまいました。人の不幸で金儲けしようという亡者集団だというほかありません。こんな政権が子どもたちに学校で道徳教育を押しつけているのですから、世の中に間違いが多くなるのも当然です。
 軽業をしている人や、大道芸人を描いた絵もあります。みんな楽しそうですよ。
 その微細きわまりない細工には声が出ないほどです。昔の人は偉かったとしか言いようがありません。ぜひ、一度、実物を手にとって(というのは無理でしょうが・・・)じっくりと拝んでみたいと思いました。
(2016年12月刊。2000円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.