法律相談センター検索 弁護士検索

子どもを追いつめるお母さんの口癖

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 金盛 浦子 、 出版  青樹社
子どもを育てるうえで大切なことの一つは、やれば出来るという自信をもたせることなんじゃないかなと今、私は考えています。どうせ自分はダメなんだとあきらめさせず、ほら、やれば、やる気を出せば、こんなことも出来たじゃないのと、励まし、自信をもたせたら、子どもはぐんぐん伸びていくものだと思います。
周囲が、ダメだ、ダメだと言っていると、本人もやる気を失い、本当にダメ人間になっていくしかなくなります。
我々が話す言葉は、感情あるいは心の状態の反映である。
自民党の大臣たちが、ポロポロと公の場で言ってはならない失言を性こりなく繰り返しているのも、それが彼らのホンネだからです。
政治は万人のためにあるのではない。強い者を、より強くするのが政治の役目だ。下々の者は黙って従っていればいい。
この本心が、安倍内閣の大臣たちの相次ぐ失言として日の目を見ているわけです。
喜びや楽しさや安心に、共感してもらいながら育った子は、喜びや楽しさや安心の表現が上手な子どもになる。
もちろん、不安や怒りや悲しみにも共感してあげることも大切だ。共感されて、不安、怒り、悲しみを取り除いてもらったり、取り除くことを手助けしてもらって育った子どもは、どのようにしたら自分のなかの不快な状態を上手に解決できるかを知る子どもになっている。
ところが、一方的に怒られたり強引に禁止されることが繰り返されるなかで育った子どもは、自分で感じることをやめ、本当の自分を封印し、ほとんど反発することもできずに従う術(すべ)を身につけてしまう。
親を許す。これは思った以上に大きな意味をもっている。親を許すということは、自分自身をも許すことだからである。
子育ての楽しみって、過ぎてしまえば、こんなにも短いものだったのかと思ってしまうもの。煩わしいけれそ可愛い子ども時代は、本当に本当に短い。
これは、私自身の実感でもあります。だから私は、いつも私のいる居間兼食堂の壁には、子どもたちが幼児のころの可愛かった当時の写真をべたべたと貼りめぐらしていて、折にふれて、それを眺め、古き良き時代を思い出しています。
子どもが反発するとき、それは、たいていの場合、「愛してほしいよ」という救援信号なのである。
うむむ、これは思いつきませんでしたね。でも、たしかに、私もそうだろうなと思います。
私たちの心は、こだわりや傷を一つ、また一つと解消するごとに、自由に、より自由にと解き放たれていく。
子どもに言ってはならない言葉をあげて、その理由が一つ一つ解説されています。いずれも、とっくに子育てを終了し、今では孫育てに関われるかどうかの私ですが、胸にぐさりぐさりと突き刺さってきます。子育て現役の人に一読をおすすめします。
(1997年1月刊。1200円+税)

原点

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 安彦 良和、斉藤 光政 、 出版  岩波書店
私は見たことも読んだこともないので、どんなストーリーなのかも全然知りませんが、『機動戦士ガンダム』の作者が自分の生い立ちなどを語っている本です。著者は私と同じ団塊世代で、弘前大学で全共闘のリーダーとして活動していて、大学占拠の罪に問われて警察に逮捕され、刑事被告人にもなったとのことです。
弘前大学というと、連合赤軍事件で生き残って逮捕された植垣康博と青砥幹夫という二人も著者と同じころの卒業生になります。
「弘前大学の全共闘運動をとおして、大まじめにばかをやった。いま考えると、たしかにこっけいだけど、シリアスな問題もかかえている」
著者は、このように語っています。
「憎しみをバネにした革命の時代は終わった。そういう革命は、人を幸せにしない」
この言葉には、私もまったく同感です。もしも全共闘が革命に成功して、天下をとっていたら、カンボジアのポルポト政権と同じようなこと、大虐殺をしていたことでしょうね。恐ろしいことです。なにしろ、「敵は殺せ」の論理でしたから・・・。
いま、著者のマンガは、分かりあえない時代や社会だからこそ、分かりあえたら、どんなにいいだろう、という考えに立脚しているとのこと。素晴らしいです。惜しみない拍手を贈ります。
著者は、北海道北部の北見地方に生まれ育った。父親は屯田兵二世。
幼いことから絵を描き、マンガを描いていた。ちばてつやも同じでしたね。
イラストやマンガは習うものではない。教えてくれる人はいなかったので、見よう見まねで幼いころから描いていた。自分の絵に師匠はいない。
著者は手塚治虫の虫プロダクションに入り、アニメの世界にもしばらくいました。そのうち、独自の世界を切り拓いていったわけです。
この本の最後にある著者の言葉を紹介します。
「いま、ぼくが描いている機動戦士ガンダム・ジ・オリジンは戦争の話だ。戦争に巻き込まれる人たち、これから巻き込まれるであろう人たちが、たくさん登場する。大量死の運命を避けられない市民や、大切なぬいぐるみを抱いて親に手を引かれ、逃げる子どもも出てくる。そんな絵を描くのはとても辛い。そこに生があり、生活があるのを感じるから、あったのを感じるからだ。生は死よりも重い。たぶん、ずっとずっと、重い」
大学解体なんて無責任なことを言って、建物だけでなく人間関係を破壊していた全共闘だった人のなかに、今、こんなに真面目に、人の優しさを大切にしようと考えている人がいるのを知ると、うれしくなります。また、同じような思いを抱いている人の存在を知って、力強く思います。
(2017年3月刊。1800円+税)
この連休中、近くの小山にのぼりました。頂上で知人一家が食事中なのに遭遇して驚きました。私は、いつもの360度パノラマの地点で、おにぎり弁当をいただき、帰りはミカンの白い花を愛でながらおりました。
庭にアスパラガスが毎日のように伸びています。連休中は一度に5本もいただきました。春の香りを口中に味わう幸せを感じます。
いま、庭は、キショウブの黄、ショウブのライトブルー、そしてオレンジなど、見事にカラフルです。ウグイスの声を間近にききながら、ジャガイモの手入れをしました。6月の収穫が楽しみです。

新しい日本外交を切り拓く

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 猿田 佐世 、 出版  集英社
著者はアメリカと日本を結ぶ若手の国際弁護士であり、美人弁護士としても有名です。そのバイタリティーあふれる行動力には、驚嘆せざるをえません。アメリカでロビー活動をし、沖縄でシンポジウムを開き、沖縄の翁長知事や稲嶺市長が訪米するときには、アポをとってアメリカの国会議員との面会のセッティングをこなします。そして、著者は日本の新しいシンクタンク「新外交イニシアティブ」を設立し、その事務局長として、運営するのです。
著者は若くして司法試験に合格したあと、アフリカのタンザニアに渡り、難民キャンプでの救援活動に従事した。大学生のときには、「アムネスティ日本」の会員として、10年以上ボランティア活動に従事している。そして、2002年から2007年まで、日本で弁護士をして、2007年にアメリカに渡り、2009年からワシントンに居住した。そして、ワシントンで、日米外交の偏ったシステムに強い疑問を抱き、それを克服することを目ざした。
アメリカの国務省の日本部長だったケビン・メアの言葉は忘れられません。
「沖縄の人は、ゴーヤもつくれない、なまけもの」
「沖縄は、基地をつかって東京からお金をもらう、ゆすりの名人だ」
とんでもない暴言です。日本語ペラペラの人ですが、まったく日本人を馬鹿にしきっています。
訪米団の企画・同行には、考えられる、すべての手段を駆使しながら、数週間、数ケ月間にわたるものなので、体力も精神力も消耗する厳しい作業となる。
日本政府は、アメリカのシンクタンクに対して、1億円をこす大金を提供し続けている。
そもそもは影響力のない存在であったとしても、日本のメディアや政府が繰り返し「アメリカの声」として取りあげることで、日本の国会をふくむ世論に大きな影響を与えるようになる。その結果、「神話」が現実化していく。
アメリカの対日外交に関する発言には、「日本の誰かがアメリカに言わせている」のと、「アメリカ自らが言っている」という両方の構図がある。
そんな状況で、本当の日本の声をアメリカの連邦議会にきちんと反映させようとする著者の努力は大いに評価されるべきものだと思います。
私も、ささやかながらNDI(新外交イニシアティブ)に賛同しています。
(2016年10月刊。1400円+税)

働く青年と教養の戦後史

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 福間 良明 、 出版  筑摩書房
今からちょうど50年前(1967年)の4月に上京して、大学生活を始めました。そして、高校の先輩に誘われて学生セツルメント活動に足を突っこんだのです。
私は、子ども会ではなく、青年部に所属し、地域の若者サークルにセツラーとして加わりました。私たちのサークルではグラフ「わかもの」という雑誌をつかっていましたが、近くに「人生手帖」をつかった緑の会という労働者のサークルがあり、その会合に私も参加したことがあります。いかにも真面目な労働者のサークルという雰囲気でした。やがて、そのなかのごく一部の人たちが「京浜安保共闘」を名乗り、赤軍派になり、連合赤軍へとつながっていったようです。もちろん、それはごくごく一部の人たちです。日本安保を考える無数の若者サークルが出来ていたころのことです。
この本は、その「人生手帖」と緑の会の歴史的な歩みを解明していますので、私にとっては、ぜひ読みたい本でした。
「人生手帖」は8万部近くを発行していたが、「中央公論」の12万部、「世界」が10万部、「新潮」6万部に比べて、決して少なくはない。
中卒で集団就職して大都会に出てきた勤労青年層には、進学への希望を抱きながらも、高校に進学できず屈折した思いを抱く人が少なくなかった。彼らは安穏に書物に親しめる環境にはなかった。長時間労働で、休暇は少なく、安い賃金は思う存分に書物を買うゆとりはなかったし、経営者から思想傾向を知られて警戒されたりもした。
それでも、彼らは学歴エリートとは異なる形で、教養を求めて駆り立てられた。
「人生手帖」のような人生雑誌には、知識人層へのいら立ちが吐露されていたが、同時に知や知識人への憧れも強かった。
「人生手帖」に対しては、「マルクスみかん水」という批判もあった。マルクス主義を水でうすめ、糖分や香料も加えて口当たりを良くしているというのだ。
高校進学率はどんどん上昇していた。1950年代半ばに5割ほどだったのが、1961年に62.3%、1963年に66.8%、1965年には7割をこえた。そして、1970年には82.1%に達した。
大学進学率は、1968年には、23.1%でしかなかった。今日の半分以下の水準である。
「人生手帖」のような人生雑誌は、高校進学率が70%をこえ、8割を上回るよいうになると、衰退していくしかなかった。進学できない理由が家計の問題から学力の問題へと移行していった。
私が「人生手帖」の緑の会を知ったのは1967年から68年にかけてだと思いますので、中卒の集団就職組のなかの知識への渇望に踏み出していた労働者の集団を目撃していたということになります。ちなみに、そのころテレビはもちろんありましたが、まだ白黒テレビでしたし、カラオケはなく、ボーリング全盛時代でした。オールナイト・スケートとか早朝ボーリング大会などを若者サークルの連合体として企画していました。もちろん、若者がたくさん集まり、それはそれはにぎやかなものでした。若者たちが群れをなして、話し合い、歌っている時代です。
(2017年2月刊。1800円+税)

保健と健康の心理学

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 大竹 恵子 、 出版  ナカニシヤ出版
日本は長寿国ですが、幸福度はそれにともなっていません。
平均寿命は女性87歳(世界2位)、男性81歳(世界4位)。ところが、幸福度は世界53位。
健康心理学は、人間の健康に関するさまざまな問題を心理学の観点から検討し、そこから得られた知見を社会に役立てることを目指した心理学の応用領域の一つ。
感情は、病気にかかる率だけでなく、寿命にも影響を及ぼしている。
ポジティブ感情には、ネガティブ刺激による交感神経系の活性化を速やかに活性化させる「元通り効果」をもっている。
日常的にポジティブな感情を多く経験しているほど、中枢神経系、自律神経系、内分泌系、免疫系に良い影響を及ぼし、これらのシステムの相互作用により、結果として健康状態や寿命に良い影響を及ぼす。
日本のうつ病の患者は、平成8年に20万人、その他の気分障害をふくめて43万人だった。ところが平成20年度には、うつ病患者が70万人、その他をふくめると100万人。3倍にも増えた。
同じ心的外傷体験をしても全員がPTSDになるわけではない。レジリエンスという、一時的に心理的不健康の状態に陥っても、それを乗りこえ、精神的病理を示さず、よく適応する人がいる。
交代制勤務は、睡眠覚醒リズムを乱れさせる。乳ガンのリスクが高まり、前立腺ガンのリスクが2倍から3倍も高まる。
望ましくない出来事はコントロールできるという信念は、健康的な生活習慣やストレスへの上手な対処をもたらし、健康への悪影響を少なくする。
首尾一貫感覚(SOC)は人生経験によって形成され、とくに一貫性、負荷のバランス、結果の形成への参加という3つの経験が重要である。
ルールや責任の所在が明確な一貫性のある経験は把握可能感の基礎となり、また、処理可能感を育む。
自分だって、やれば出来るんだという感覚は大切ですよね。
やや難しいところもありましたが、私の生き方から共感できるところが多々ありました。
(2016年12月刊。3400円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.