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朝鮮戦争は、なぜ終わらないのか

カテゴリー:朝鮮・韓国

(霧山昴)
著者 五味 洋治 、 出版  創元社
北朝鮮の最新のミサイル発射台は、タイヤのついた可動式なので、発射地点を衛星から特定するのは非常に困難。また、固形式燃料を使えば、発射準備から発射するまで30分しかかからない。北朝鮮から発射されたミサイルが日本に着弾するまで8分ほどでしかない。
ですから、イージスアショアに2000億円もかける意味なんてないのです。そして、日本には全国50ケ所以上に原発(原子力発電所)がありますので、戦争になったら、日本列島に住むところはありません。なので、朝鮮半島で戦争を起こさせないようにすることこそ最優先の課題だということは、はっきりしています。そのため、米朝協議は必要です。
1950年に始まった朝鮮戦争は、1953年に「休戦」になっただけで、法的には今なお戦争継続状態にある。そして、「国連軍司令部」はいまも韓国にあり、東京の横田基地には国連軍後方司令部が置かれ、日本国内の7つのアメリカ軍基地は後方基地として指定されている。
平時の作戦指揮権は韓国軍に返還されているが、戦時の作戦指揮権はアメリカ軍が依然としてもっている。
朝鮮戦争の直後に7万人いたアメリカ軍は、今は2万8000人まで減っている。2万人の陸軍と、8000人の空軍である。朝鮮の国連軍は、朝鮮半島で戦争が起きたときは、日本国内のアメリカ軍基地を自由に使う権利をもっている。
朝鮮国連軍の指揮権はアメリカ軍司令官が握っていて、国連の安保理の許可を得ることなく、自由に軍事行動できる。
アメリカは、北朝鮮と中国に対抗するため、アメリカ軍司令官の指揮のもとで機能する「日本韓の軍事協力体制」を強化したいのだ。
朝鮮戦争で大量の中国義勇軍が参戦してアメリカ軍が劣勢になったとき、それを押し直すためにマッカーサーは、原爆26発さらに追加して8発の使用をアメリカ政府に求めました。マッカーサーの考えはこうです。朝鮮戦争を10日で終らせるため、満州に30~50発の原爆を投下し、強烈な放射線を出す「コバルト60」のベルト(地帯)をつくる。それで60年間は中国から陸路で北朝鮮に侵入することはできなくなる。
 いやはや、マッカーサーって、とんでもないことを言い出す将軍でした。トルーマン大統領が怒って(心配して)マッカーサーを解任して、本当に良かったですね。
安倍首相のように、朝鮮半島の危機をあおるだけであってはいけません。
「米朝対話」が少しでも進展するように日本政府も努力すべきです。
(2017年12月刊。1500円+税)

北斎漫画(1)

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)
著者 葛飾 北斎 、 出版  青幻舎
江戸時代を生きていた日本人がどんな生活をしていたのか、ビジュアルに分かる漫画です。
「北斎漫画」は葛飾北斎(1760~1849)が弟子たちに絵の手ほどきをするための教科書として描いた絵手本。弟子はかりでなく、一般の庶民にも親しまれ、江戸時代のベストセラーとして、10編で完話しても、さらに続編が続き、ついに15編がプラスされた。
ただし、その15編完話編が出版されたのは明治11年といいますから、なんと西南戦争の翌年なのです。もちろん北斎自身は30年近く前に亡くなっています。
「北斎漫画」の総ページ数は970。図版は4000をこえる。
人物、動植物、風俗、職業、市井の暮らしぶり、建築物、生活用具、名所、名勝、天候、故事、説話、妖怪、幽霊と百科事典さながら。
この第一巻は、「江戸百態」として、市井の人々の姿や風俗、生活用具や建物などの江戸の日常が描かれている。
「北斎漫画」は19世紀後半にヨーロッパで巻きおこったジャポニズム旋風の引き金となった。かのシーボルトは、「北斎漫画」をひそかにオランダに持ちかえったとのことです。
江戸時代の後期には、江戸だけで学術書を扱う出版社が70軒、娯楽性の高い絵草紙などを扱った出版社が150軒あった。そして、600軒以上の貸本屋があり、本が買えない庶民でも、気軽に読書できる状況がつくられていた。
子どもたちが将棋をして楽しんでいる絵もあります。
人々が農作業をしていたり、また旅姿の人々がいます。日本人は昔から旅行大好き民族だったことがよく分かります。
私も江戸時代のことについては、いろいろ本を読んできましたが、やはりこのようなイメージをしっかりもちながら、江戸時代の社会を論じる必要があると思ったことでした。少々値がはりますが、読む価値は十二分にあります。
(2017年10月刊。1500円+税)
春らんまんの候です。形も色もとりどりのチューリップが全開、青紫と紅いアネモネと美を競っています。シャガの白い花、白いなかに黄色の気品あるアイリスも咲きはじめました。足元にはピンクのシバザクラも地上を飾っています。
春の味覚、アスパラガスが昨日にひき続いて今日も一本、収穫できました。

太王四神記(上)

カテゴリー:朝鮮・韓国

(霧山昴)
著者 安 秉道 、 出版  晩餐社
高句麗の広開大王の愛と戦いのドラマを描いた面白い本です。まだ、上巻のみですが、手に汗握る面白さなので、記録ファイルそっちのけで一日中よみふけってしまいました。
高句麗と百済が戦う時代です。のちの広開大王は、若き太王として談徳(タムドク)と呼ばれています。周辺国を連破して一大強国を打ち立てた英雄、征服王です。
日本にとって広開大王とは、その石碑で有名です。日本軍が朝鮮半島まで進出し、かなりの土地を支配していた証(あかし)とされていました。しかし、今では研究が進んで、日本(倭)が朝鮮半島(の一部)を支配していたのではなく、逆に朝鮮半島の勢力が九州の一部に上陸し、支配していたということのようです。「任那日本府」なるものも、日本の支配勢力の証明ではなかったとされています(私の理解です)。
ただし、朝鮮半島の南部と北部九州は相互に緊密な連携関係にあったことは事実で、そのため、太宰府には水城(みずき)があったりしたわけです。九州が朝鮮半島の勢力から攻めこまれたときののろし火の連携プレーなど、それなりの対策が確立していました。
この本では、朝鮮半島から中国の山東半島にかけての戦いが描かれています。
談徳(広開太王)は知恵と勇気ある若き太王として、雄々しく戦い、勝利をおさめていきます。城を立て籠って戦う将兵を攻城器が出動して攻めたてます。石や火炎球を投げ込むのです。守る側は石垣を補強して対抗します。
敗走するとみせかけて追いかけてきた敵軍を伏兵で取り囲んで全滅させるなど、知恵比べの戦いも展開します。
広開大王の人智を尽くした戦いをたっぷり堪能できる古代朝鮮史をめぐる小説です。下巻が楽しみです。
(2008年4月刊。1500円+税)

母の家がごみ屋敷

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 工藤 哲 、 出版  毎日新聞出版
いま全国各地で問題になっているゴミ屋敷について、その現状と対策が具体的に紹介されていて大変勉強になりました。
ゴミ屋敷を生み出している当の本人やその家族には既に問題解決能力を喪っている人が多いようです。ですから、行政的に解体・撤去すれば終わりということではなく、そのケアも大切だということです。なるほど、そうだろうなと思いました。
セルフネグレクトは、自己放任。自分自身による世話の放棄・放任だ。この状態が続けば、室内(家屋内)にゴミや物がたまって不衛生になり、何かのはずみで引火して火災を起こして本人ないし周囲に迷惑をかける。また、本人の健康も悪化していく。
本人が認知症にかかっていたりして、自覚がなく、ときに開き直るので、行政もうかつに手出しができないことも多い。
たまっているゴミが歩道を占拠しているときには、道路交通法違反として逮捕した例もある。また廃棄物処理法違反で摘発した例は少なくない。自治体が行政代執行で撤去することもある。放置されたゴミの撤去費用として200~300万円かかることがある。
地方自治体では、このための条例を政令したり、専門部署を設けて対応しているところも少なくない。埼玉県所沢市では、「ゴミ出し支援制度」をもうけていて、利用者が10年間で500世帯超と、3倍に増えた。
この本を読んで驚いたのは、実は、20代、30代の若い人でもゴミ屋敷のようになってしまう人が増えているということです。何らかのきっかけで、無気力、ひきこもり状態になってしまった結果なのです。
モノはあふれているけれど、住む人はますます孤立しているというのが、現代の日本社会だということです。直視すべき日本社会の現実のひとつだと思いました。
(2018年2月刊。1400円+税)

日米地位協定

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 明田川 融 、 出版  みすず書房
読めば読むほど腹の立つ本です。いえ、もちろん著者に対してではありません。歴代の日本政府に対して、そのだらしなさというより、もっとはっきり言えば、ひどい売国奴(ばいこくど)根性に怒りを覚えます。
日本はアメリカの全土基地方式を受け入れている。これは、アメリカ軍がいざとなれば、日本国内のどこであっても好き勝手に基地として使えるというものです。こんな屈辱的な方式を日本政府は受け入れているのです。許しがたいことです。そして日本の外務省は、その日本政府の方針の下で唯々諾々とアメリカの言いなりに動いています。日本の官僚機構として恥ずかしい限りの集団というほかありません。
日本占領軍のトップだったマッカーサーは、一貫して強固な沖縄要塞化論者だった。日本本土は徹底した非軍事化でよいが、沖縄は徹底した軍事化でのぞむという二つの顔があった。マッカーサーは沖縄の人々は、民族的にも文化的にも日本本土の人々とは異なると考えていた。とんでもない思い違いです。
日本地位協定についてのアメリカの基本的な考え方は、アメリカ軍の駐留を日本から要請し、アメリカが同意するという論理、つまり、日本に頼まれてアメリカ軍を置いてやるのだから、アメリカ軍や軍人・軍属・家族の権益くらいは日本は受忍してもらわないといかん。そして、そこは、当然に治外法権だし、すべての駐留費用は日本が負担すべきだというものです。ひどい話です。
アメリカ軍が基地としていたところに環境汚染物質が埋められていたとき、その現状回復義務をアメリカは負わず、すべてを日本側の負担となっている。情けない話です。まるで日本はアメリカの植民地です。
沖縄国際大学にアメリカ軍ヘリコプターが墜落したとき、その一帯をアメリカ軍がたちまち立入り禁止区域とし、日本の警察・消防の立入まで拒否した。ええっ、ウソでしょ。そう叫びたくなりますが、そんなアメリカ軍の横暴を許しているのが日本地位協定なのです。
アメリカ軍の将兵が日本で犯罪を起こしても日本側は一次裁判権を放棄するという密約にしばられて手を出せません。いかにも不平等・不公平・不条理です。これは、日本政府のアメリカへの忠実さと誠実さですが、同時に日本国民への不忠・不誠実でもあります。
日本は憲法にしたがって十分な防衛力をもっていないので、自国の安全をアメリカに依存しているのだから、モノ(基地)とカネ(防衛支出金)でアメリカに「貢献」しまければならない。この論理に自民党政府と外務省はとらわれている。
アメリカ軍の駐留経費の7割を日本は負担している。ドイツは3割でしかなく、韓国・イタリアだって4割なのに、異常な比率となっている。しかも、日本は光熱水料を全額負担している。
日本は、モノ・カネ・ヒトの三分野で、アメリカに全面的に協力させれているが、そんな国はほかに存在しない。いったい日本はアメリカに対し、どこまで「協力」したらよいのか・・・。
憲法についてアメリカ押しつけ憲法だと叫ぶ人は、日本地位協定の屈辱的な内容と運用については沈黙を守っています。すべてはアメリカに日本の安全を守ってもらっているからという幻想によります。一刻もはやく目を覚ましてほしいものです。
本分282頁の堂々たる研究書です。ご一読下さい。
(2018年2月刊。3600円+税)

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