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腸と脳

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 エムラン・メイヤー 、 出版  紀伊國屋書店
アメリカにおける肥満率は、1927年の13%から2012年35%へと増大した。
今日のアメリカでは、1億5470万人の成人と、2歳から19歳の子どもの17%、つまり6人に1人の子どもが太り気味か肥満だ。また、毎年、少なくとも280万人が肥満が原因で亡くなっている。糖尿病の44%、虚血性心疾患の23%、各種がんの7~41%は、その原因を太り気味と肥満に求めることができる。
消化器系と脳は、密接に関連していることが判明している。「脳腸相関」というコトバであらわされる。ヒトの消化器系は、これまで考えられていたより、はるかに精緻で複雑で強力だ。
腸は、そこに宿る微生物との密接な相互作用を通して、基本的な情動、痛覚感受性、社会的な振る舞いに影響を及ぼし、意思決定さえ導く。
腸は、他のいかなる組織も凌駕し、脳にさえ匹敵する能力をもつ。腸管神経系と呼ばれる独自の神経系を備え、「第二の脳」とも呼ばれる。この第二の脳は、脊髄にも匹敵する5000万から1億の神経細胞で構成されている。
ほとんど酸素が存在しない暗闇の世界たる人間の腸内には、100兆を超える微生物が生息している。これは赤血球をふくめた人体の細胞の数にほぼ匹敵する。すべての腸内微生物をひとかたまりにすると、重さは900グラムから2700グラムのあいだになり、およそ1200グラムの脳に近似する。
何かに脅威を感じ、不安や怒りを覚えたとき、脳の情動の中枢は、消化管の個々の細胞に指示を送ったりせず、腸管神経系にシグナルを送って日常業務を一時中断するよう指令する。ひとたび情動の発露がおさまると、消化器系は日常業務に戻る。
脳は、さまざまなメカニズムと通じて、腸内で、その種の運動プログラムを実行する。神経回路は、胃腸にシグナルを送り、活動に必要なエネルギーを浪費しないような、内容物の除去を要求する。だから、重要なプレゼンテーションの直前になると、トイレに駆け込みたくなるのだ。なーるほど、そういうことだったんですね・・・。
消化管で集められた感覚情報の90%以上は、意識的に気がつかない。
24時間、365日間、消化管と腸管神経系と脳は、常に連絡をとりあっている。
セロトニンは、腸と脳のシグナル交換に用いられる、究極の分子である。セロトニンをふくむ細胞は、小さな脳と大きな脳の両方に密接に結びついている。
ホロコーストの生存者が生んだ子どもが成人すると、自分自身はトラウマを経験せずに育ったにもかかわらず、うつ病、不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神障害を発症させる高いリスクを与えている。ストレスって、親から子に伝わるものなんですね。
腸の大切さを改めて認識しました。
(2017年10月刊。1600円+税)

刑務官が明かす刑務所の危ない話

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 一之瀬 はち 、 出版  竹書房
日本の刑務所の大変な実情がマンガで紹介されています。
刑務所内では年間4万3千件もの事件が発生しているというのには驚きです。
暴行事件2000件、自殺未遂400件、刑務官・受刑者の死傷事件が100件などです。
刑務官の採用試験の状況も紹介されていますが、仕事とはいえ、本当に気苦労の多い、大変な仕事だと思います。目に見えた成果などあろうはずもありませんし、毎日緊張の連続の仕事で神経を病まないようにしてほしいものです。
死刑執行は拘置所の職員の仕事だと思いますが、これも刑務官ですよね。私には、とても出来ません。国家が人殺しをしていいとは思えませんし、罪なき人(ここでは職員のこと)にさせてもいけないと思います。
刑務所の娯楽として映画が上映されるけれどそのなかでも「寅さん」映画は文句なしということです。全シリーズをみた受刑者もいるとのこと。その限りで、うらやましいです。
身元引受代行人とか面会サポート業という仕事があるのを初めて知りました。
福岡刑務所(宇美町)は山の奥深いところにありますが、ヨーロッパでは地元の人々と収容者とが交流できる機会をつくっているそうです。日本でも考えていいように思います。
こういうマンガで刑務所の実際が世間に知られるのも悪くないと思います。
アメリカでは200万人もの囚人がいて刑務所産業が栄えているというのです。悪いことした奴はみんな刑務所に入れておけという間違った世論誘導の結果です。日本はアメリカのようになってはいけません。
(2018年8月刊。1000円+税)

蘇我氏の古代学

カテゴリー:日本史(古代史)

(霧山昴)
著者 坂 靖 、 出版  新泉社
蘇我の蝦夷(えみし)、入鹿(いるか)父子が謀殺されたのは皇極4年(645年)の乙巳(いつし)の変。これによって蘇我氏の本宗家は滅亡した。しかし、その他の蘇我氏の血脈は連子(むらじこ)、亜麻呂、赤兄(あかえ)、果安(はたやす)らが政権の中枢で活躍し、蘇我氏の血統は脈々と受けつがれた。
連子の娘である蘇我娼子(しょうし)は、中臣(藤原)鎌子の子である不比等に嫁ぎ、武智麻呂(むちまろ)、宇合(うまかい)を産んだ。このように蘇我氏の血筋は藤原氏に受け継がれた。
5世紀の倭の5人の大王は、その政権の実在性は疑う必要性がなくとも、その実態は、はなはだ心もとないものだった。
江田船山古墳の被葬者は、中国南朝、百済王権、そして倭王武とつながっていた。
倭の5王の支配拠点や墳墓は、大阪平野南部や奈良盆地にあった。
ヤマト王権は、決して一枚岩ではなかった。
蘇我氏の出自は百済高官ではなく、全羅道地域を故地とする渡来人である。
5世紀において、倭(ヤマト王権)、百済・新羅のいずれも広域支配は達成しておらず、ヤマト王権はその足元すら危うい状況にあった。
東漢氏は、常に蘇我氏のもとにあった渡来人集団だった。
稲目・馬子・蝦夷・入鹿の蘇我氏4代が飛鳥に拠点をおき、渡来人生産者集団を主導しながら、政権の中心にあったことは争う余地がない。
飛鳥に大王を招き入れたのは蘇我氏である。蘇我氏は渡来人のリーダーとなり、洗心的開明的な思想をバックボーンにもちながら、飛鳥の地を大規模開発し、そこに大王を招き入れた。飛鳥時代のはじまりである。
蘇我馬子が百済の渡来人集団を統率し、法興寺をつくった。蘇我氏の権力の象徴を飛鳥の地につくることにより飛鳥文化を開花させた。まさに、蘇我氏は飛鳥をつくった。
蘇我馬子は、敏達・用明・崇峻・推古の4代にわたって、飛鳥を基盤にしながら権勢をふるった。馬子の墳墓には石舞台古墳と考えられる。この石舞台古墳は、墳丘と固濠斜面に貼石を施した1辺50メートルの二段築成の大型方墳である。石舞台古墳の造営意図は、蘇我氏の実力が大王よりの上位にあったことを墳丘や石室の上で表現しようとしたものだった。
渡来人は帰化人とは違う。日本国が成立する前に「帰化」人というのはおかしい。「帰化人」は、『日本書紀』をつくった人の歴史観によるもので、今では使われなくなった。
 そうか、そうだったのか、蘇我氏も渡来人のリーダーだったのですね・・・。なるほど、と思いました。
(2018年5月刊。2500円+税)

ホロコーストの現場を行く

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 大内田 わこ 、 出版  東銀座出版社
ポーランドには、ナチスがただユダヤ人を殺す、それだけのために建て、計画が終わったら事実を消すために、すべてを取り壊した絶滅収容所がある。そこで200万人のユダヤ人を殺した。
ナチスは肉体的に殺しただけでなく、ユダヤ人がこの世に存在していたという事実をも消そうとした。しかし、彼らすべてに名前があった。家族もいれば、生活もあった。未来もあったのだ。そのすべてが一瞬にして葬り去られた。
ところが、このひどい歴史がいまだに広く知られていない。
ナチスは200万人をこえるユダヤ人をガス殺した。そのあと、施設をすべて破壊して更地にした跡に樹木を植えて、殺戮の跡をきれいに消し去った。だから、アウシュヴィッツのような引込み線、ガス室跡は何もない。
著者は、そこへ出かけ、虐殺を感じとるのです。
ベウジェツ絶滅収容所で虐殺された50万人のうち、脱走に成功したのは、わずか5人のみ。その一人が体験記を書いている。
移送は、毎日、1日も絶えることはなかった。1日に3回、1列車は50車両、1車両に100人が詰め込まれていた。ナチスの隊長が大声で叫ぶ。
「きみたちは、これから浴場へ行く、それから仕事場に送る」
人々は、瞬間、うれしそうになる。仕事に就けるという望みから、目が光った。しかし、実際には裸にされてガス室へ追いたてられ、たちまち苦悶死に至る。
「ママ―、ぼく、いい子にしていたよう。暗いよう、暗いよう・・・」
なんという叫びでしょうか・・・。
ユダヤ人を放っておくと、優秀なアーリア人(ドイツ人)が逆に絶滅させられるという危機感をヒトラーたちはあおっていたのでした。ひどすぎます。
アウシュヴィッツ強制収容所に音楽隊がありましたが、ベウジュツにも音楽隊があったようです。アコーディオンをかかえた人、バイオリンを弾いている人、トランペットを吹いている人などがうつっている写真があります。これらの人々も、きっと殺されてしまったことでしょう。
決して忘れてはいけない歴史です。日本から現地に行った人がとても少ないようで、心配です。といっても、残念ながら私も行ったことはありません。
(2018年6月刊。1389円+税)

社長争奪

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 有森 隆 、 出版  さくら舎
幸か不幸か、私は会社づとめをしたことがありませんので、サラリーマンの悲哀なるものを実感していません。この本を読むと、およそサラリーマンとは上司ともども失意の日々を過ごさざるをえないことが大いにありうる存在なのだなと、ついつい同情してしまいます。自分の能力とか努力・実績とは無関係なところで、いつのまにか自分の処遇が決まっていくのだとしたら、本当に嫌ですよね・・・。
会社というものは、やっかいなものである。つねに派閥が存在し、経営トップをだれにするかで揉める。社長派、反社長派の不満がたまって、いつ爆発するか分からない活火山みたいなものなのだ。ときどき噴火し、内紛、お家騒動、権力闘争として世間の耳目を集める。
会社には必ず派閥ができる。社員が3人いれば、2つの派閥ができるのが常だ。会社における派閥は、フォーマル(公的)なものと、インフォーマル(非公式)のものに大別できる。
フォーマルとは、会社の組織を単位とした派閥。大企業では、経営企画室が巣窟となるケースがある。経営企画室長は社長の側近で、経営トップの登竜門となっている。営業部門対総務部門。そして製造部門でも商品別に派閥ができる。デパートでは紳士服部門より婦人服部門のほうが集客・売上高が上まわって、力が強い。また、労働組合は絆(きずな)が強い。
インフォーマルな派閥は出身大学などの学閥、地縁閥、ゴルフなどの趣味閥、プライベートな人脈による派閥もある。
経営首脳の対立は、起きると派閥の出番となる。親亀こけると、子亀も孫亀も、みなこけてしまうからだ。なので、ボスのために体を張る社員が出てくる。
社内で、秘密警察さながら社員の動向を探る。怪文書が飛び交う。相手が倒れるまで戦いは止まない。勝てば官軍、負ければ賊軍。粛清人事と論功行賞人事が同時並行的におこなわれる。
大塚家具の父と娘が激突したときには、プロキシ―ファイト(委任状争奪戦)があった。これは、株主総会で自らの株主提案を可決するために、他の株主の委任状を、経営側と争奪する多数派工作のこと。
このとき、社員取締役の弁護士が「軍師」として活躍することがある。東京丸の内法律事務所の長沢美智子弁護士は「女軍師」と呼ばれた。娘側に立って次々に先手を打ち、父親を敗退させて名をあげました。
ただし、問題は、その先にあります。勝った側が会社を支配したのにかかわらず、会社の業績をひどく低下させてしまったのでは、本当に「勝った」ことになれるのか・・・、そんな疑問が湧いてきます。まさしく今の大塚家具の浮沈は瀬戸際にあります。そして、このとき弁護士として、いかに関わるかが問われます。そこが難しいところです。
野村証券の元会長の古賀信行は大牟田出身。ラ・サール高校から東大法学部に進み、野村証券では大蔵省の接待担当(MOF担)をつとめた。MOF担は、各金融機関のトップへの登竜門だった。悪名高い、ノーパン・シャブシャブ接待をしたのが、このMOF担です。
この本で古賀信行は、みるべき実績をあげることのできなかった無能な社長・会長だったと酷評されています。たしかに学校の成績が良ければ会社の成績も上げられるというものではないでしょう。営業を知らないエリート官僚タイプの社長が野村を決定的にダメにした。ここまで断言されています。気の毒なほどです。
同時に、この本は野村証券の闇の勢力との結びつきも明らかにしています。
総会屋に便宜を図っていたこと、銀行から270億円ものお金が貸し付けられていたこと、そして、第一勧銀の元頭取は自宅で首吊り自殺をしたことも明らかにされています。
ノルマ証券という別名をもつ悪名高い野村証券も、先行見通しは明るくないようです。
会社は、社長で決まる。結局、会社は社長はすべて。会社が存続できるか、つぶれるかは、9割以上は社長の力量で決まる。新任の社長は、社長として未熟なのに、すぐに結果を出すことが求められる。それが社長の現実である。
パナソニック(松下電器)の歴代社長の決して表に出せない、しかし最大の経営課題は、松下家の世襲をいかに阻止するか、だった。ええっ、これって会社が私物化されているっていうことの裏返しの話ですよね。信じられません。
経営の神様とも呼ばれた松下幸之助の最大の誤りは、自分の後継者に無能な娘婿(むすめむこ)の松下正治を選んだことにある。無能といっても正治は東京大法学部を卒業し、家柄も良く、スポーツマン。それでも、会社経営では無能だったということ。
経営トップの交代がうまくいく会社は栄える。それかうまくいかない会社、後継争いでゴタゴタする会社や無能な人をトップに選んだところは衰退に向かう。
無能な経営者ほど、寝首をかかれることを怖れ、自分より器の小さな人間を後継者に選ぶ。
会社経営の難しさがなんとなく伝わってきます。果たして弁護士は、そこまで気を配ることが出来るでしょうか・・・。
(2018年7月刊。1800円+税)

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