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権力の背信

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 朝日新聞取材班 、 出版  朝日新聞出版
森友・加計学園問題で朝日新聞はよくよく健闘していると思います。そのスクープの現場が実況中継されている本です。
 それにしても、これだけ明らかに一国の首相が国会で平然とウソをつき、そして高級官僚の多くがそのウソを必死でカバーするという構図がまがり通る日本って、これから一体どうなるのでしょうか・・・。
私は、何より日本人の投票率の低さがウソつき首相の開き直りを許している最大の原因だと考えます。政治家不信、バカバカしいと、棄権してしまったら、それこそアベ首相と取り巻き連中の思うツボなんですが、現実には投票所に足を運ぶのは、有権者の半分ほどでしかありません。でも、決してあきらめてはいけないのです。
モリ・カケ騒動で野党の追及が甘いという人がいます。だけど、決してそうではありません。アベ・チルドレンとそのお仲間たちが国会の議席を多数占めているため、国会でまっとうな正論が無視されているだけなのです。
モリトモ学園は、アベ首相と思想を同じくするカゴイケ夫妻が「安倍晋三記念小学校」を設立しようとしていたのでした。
「大人の人たちは、日本が他の国に負けぬよう、尖閣列島、竹島、北方領土を守り、日本を悪者として扱っている中国、韓国が心改め、歴史教科書でうそを教えないよう、お願いいたします。安倍首相がんばれ、安倍首相がんばれ。安保法制、国会通過よかったです」
これが幼稚園の運動会で代表の園児4人が声をそろえて叫んだセリフです。涙が出てくるほど、私は悲しいです。
カゴイケ理事長は、自分の幼稚園について、「日本国を良くしようとする教育機関」と言ったそうです。驚き、かつ呆れてしまいます。子どもたちの豊かな人間性をはぐくむというのではなく、国に奉仕する人材育成のための幼稚園だったのです・・・。信じられません。
モリトモ学園は表面上は8億円の実損(税金)のようです(本当は、もっと高額でしょうが・・・)。それに対して、カケ学園はケタ違いです。アベ首相のアメリカ留学仲間のコータローのためにありえないことが起きたのです。100億円ではすみません。「総理案件」ということで、「特例」に次ぐ「特例」。このことが愛媛県庁の職員の報告文書で明らかになっているのに、アベ首相は今なおシラを切り、コータローは国会で証人喚問もされません。
アベ首相から今やバッサリ切られたカゴイケ氏は拘置所に長く閉じ込められたのに、コータローは「文春砲」をふくめて、マスコミの突撃取材もないまま、もうウンザリ、人の噂も49日・・・、を待っているようです。許せません。
この本を読んで、日本の民主主義を守るためには、私たちはもっと怒り、もっと声を上げ続けなければいけないと改めて強く思いました。
(2018年6月刊。1500円+税)

腸と脳

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 エムラン・メイヤー 、 出版  紀伊國屋書店
アメリカにおける肥満率は、1927年の13%から2012年35%へと増大した。
今日のアメリカでは、1億5470万人の成人と、2歳から19歳の子どもの17%、つまり6人に1人の子どもが太り気味か肥満だ。また、毎年、少なくとも280万人が肥満が原因で亡くなっている。糖尿病の44%、虚血性心疾患の23%、各種がんの7~41%は、その原因を太り気味と肥満に求めることができる。
消化器系と脳は、密接に関連していることが判明している。「脳腸相関」というコトバであらわされる。ヒトの消化器系は、これまで考えられていたより、はるかに精緻で複雑で強力だ。
腸は、そこに宿る微生物との密接な相互作用を通して、基本的な情動、痛覚感受性、社会的な振る舞いに影響を及ぼし、意思決定さえ導く。
腸は、他のいかなる組織も凌駕し、脳にさえ匹敵する能力をもつ。腸管神経系と呼ばれる独自の神経系を備え、「第二の脳」とも呼ばれる。この第二の脳は、脊髄にも匹敵する5000万から1億の神経細胞で構成されている。
ほとんど酸素が存在しない暗闇の世界たる人間の腸内には、100兆を超える微生物が生息している。これは赤血球をふくめた人体の細胞の数にほぼ匹敵する。すべての腸内微生物をひとかたまりにすると、重さは900グラムから2700グラムのあいだになり、およそ1200グラムの脳に近似する。
何かに脅威を感じ、不安や怒りを覚えたとき、脳の情動の中枢は、消化管の個々の細胞に指示を送ったりせず、腸管神経系にシグナルを送って日常業務を一時中断するよう指令する。ひとたび情動の発露がおさまると、消化器系は日常業務に戻る。
脳は、さまざまなメカニズムと通じて、腸内で、その種の運動プログラムを実行する。神経回路は、胃腸にシグナルを送り、活動に必要なエネルギーを浪費しないような、内容物の除去を要求する。だから、重要なプレゼンテーションの直前になると、トイレに駆け込みたくなるのだ。なーるほど、そういうことだったんですね・・・。
消化管で集められた感覚情報の90%以上は、意識的に気がつかない。
24時間、365日間、消化管と腸管神経系と脳は、常に連絡をとりあっている。
セロトニンは、腸と脳のシグナル交換に用いられる、究極の分子である。セロトニンをふくむ細胞は、小さな脳と大きな脳の両方に密接に結びついている。
ホロコーストの生存者が生んだ子どもが成人すると、自分自身はトラウマを経験せずに育ったにもかかわらず、うつ病、不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神障害を発症させる高いリスクを与えている。ストレスって、親から子に伝わるものなんですね。
腸の大切さを改めて認識しました。
(2017年10月刊。1600円+税)

刑務官が明かす刑務所の危ない話

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 一之瀬 はち 、 出版  竹書房
日本の刑務所の大変な実情がマンガで紹介されています。
刑務所内では年間4万3千件もの事件が発生しているというのには驚きです。
暴行事件2000件、自殺未遂400件、刑務官・受刑者の死傷事件が100件などです。
刑務官の採用試験の状況も紹介されていますが、仕事とはいえ、本当に気苦労の多い、大変な仕事だと思います。目に見えた成果などあろうはずもありませんし、毎日緊張の連続の仕事で神経を病まないようにしてほしいものです。
死刑執行は拘置所の職員の仕事だと思いますが、これも刑務官ですよね。私には、とても出来ません。国家が人殺しをしていいとは思えませんし、罪なき人(ここでは職員のこと)にさせてもいけないと思います。
刑務所の娯楽として映画が上映されるけれどそのなかでも「寅さん」映画は文句なしということです。全シリーズをみた受刑者もいるとのこと。その限りで、うらやましいです。
身元引受代行人とか面会サポート業という仕事があるのを初めて知りました。
福岡刑務所(宇美町)は山の奥深いところにありますが、ヨーロッパでは地元の人々と収容者とが交流できる機会をつくっているそうです。日本でも考えていいように思います。
こういうマンガで刑務所の実際が世間に知られるのも悪くないと思います。
アメリカでは200万人もの囚人がいて刑務所産業が栄えているというのです。悪いことした奴はみんな刑務所に入れておけという間違った世論誘導の結果です。日本はアメリカのようになってはいけません。
(2018年8月刊。1000円+税)

蘇我氏の古代学

カテゴリー:日本史(古代史)

(霧山昴)
著者 坂 靖 、 出版  新泉社
蘇我の蝦夷(えみし)、入鹿(いるか)父子が謀殺されたのは皇極4年(645年)の乙巳(いつし)の変。これによって蘇我氏の本宗家は滅亡した。しかし、その他の蘇我氏の血脈は連子(むらじこ)、亜麻呂、赤兄(あかえ)、果安(はたやす)らが政権の中枢で活躍し、蘇我氏の血統は脈々と受けつがれた。
連子の娘である蘇我娼子(しょうし)は、中臣(藤原)鎌子の子である不比等に嫁ぎ、武智麻呂(むちまろ)、宇合(うまかい)を産んだ。このように蘇我氏の血筋は藤原氏に受け継がれた。
5世紀の倭の5人の大王は、その政権の実在性は疑う必要性がなくとも、その実態は、はなはだ心もとないものだった。
江田船山古墳の被葬者は、中国南朝、百済王権、そして倭王武とつながっていた。
倭の5王の支配拠点や墳墓は、大阪平野南部や奈良盆地にあった。
ヤマト王権は、決して一枚岩ではなかった。
蘇我氏の出自は百済高官ではなく、全羅道地域を故地とする渡来人である。
5世紀において、倭(ヤマト王権)、百済・新羅のいずれも広域支配は達成しておらず、ヤマト王権はその足元すら危うい状況にあった。
東漢氏は、常に蘇我氏のもとにあった渡来人集団だった。
稲目・馬子・蝦夷・入鹿の蘇我氏4代が飛鳥に拠点をおき、渡来人生産者集団を主導しながら、政権の中心にあったことは争う余地がない。
飛鳥に大王を招き入れたのは蘇我氏である。蘇我氏は渡来人のリーダーとなり、洗心的開明的な思想をバックボーンにもちながら、飛鳥の地を大規模開発し、そこに大王を招き入れた。飛鳥時代のはじまりである。
蘇我馬子が百済の渡来人集団を統率し、法興寺をつくった。蘇我氏の権力の象徴を飛鳥の地につくることにより飛鳥文化を開花させた。まさに、蘇我氏は飛鳥をつくった。
蘇我馬子は、敏達・用明・崇峻・推古の4代にわたって、飛鳥を基盤にしながら権勢をふるった。馬子の墳墓には石舞台古墳と考えられる。この石舞台古墳は、墳丘と固濠斜面に貼石を施した1辺50メートルの二段築成の大型方墳である。石舞台古墳の造営意図は、蘇我氏の実力が大王よりの上位にあったことを墳丘や石室の上で表現しようとしたものだった。
渡来人は帰化人とは違う。日本国が成立する前に「帰化」人というのはおかしい。「帰化人」は、『日本書紀』をつくった人の歴史観によるもので、今では使われなくなった。
 そうか、そうだったのか、蘇我氏も渡来人のリーダーだったのですね・・・。なるほど、と思いました。
(2018年5月刊。2500円+税)

ホロコーストの現場を行く

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 大内田 わこ 、 出版  東銀座出版社
ポーランドには、ナチスがただユダヤ人を殺す、それだけのために建て、計画が終わったら事実を消すために、すべてを取り壊した絶滅収容所がある。そこで200万人のユダヤ人を殺した。
ナチスは肉体的に殺しただけでなく、ユダヤ人がこの世に存在していたという事実をも消そうとした。しかし、彼らすべてに名前があった。家族もいれば、生活もあった。未来もあったのだ。そのすべてが一瞬にして葬り去られた。
ところが、このひどい歴史がいまだに広く知られていない。
ナチスは200万人をこえるユダヤ人をガス殺した。そのあと、施設をすべて破壊して更地にした跡に樹木を植えて、殺戮の跡をきれいに消し去った。だから、アウシュヴィッツのような引込み線、ガス室跡は何もない。
著者は、そこへ出かけ、虐殺を感じとるのです。
ベウジェツ絶滅収容所で虐殺された50万人のうち、脱走に成功したのは、わずか5人のみ。その一人が体験記を書いている。
移送は、毎日、1日も絶えることはなかった。1日に3回、1列車は50車両、1車両に100人が詰め込まれていた。ナチスの隊長が大声で叫ぶ。
「きみたちは、これから浴場へ行く、それから仕事場に送る」
人々は、瞬間、うれしそうになる。仕事に就けるという望みから、目が光った。しかし、実際には裸にされてガス室へ追いたてられ、たちまち苦悶死に至る。
「ママ―、ぼく、いい子にしていたよう。暗いよう、暗いよう・・・」
なんという叫びでしょうか・・・。
ユダヤ人を放っておくと、優秀なアーリア人(ドイツ人)が逆に絶滅させられるという危機感をヒトラーたちはあおっていたのでした。ひどすぎます。
アウシュヴィッツ強制収容所に音楽隊がありましたが、ベウジュツにも音楽隊があったようです。アコーディオンをかかえた人、バイオリンを弾いている人、トランペットを吹いている人などがうつっている写真があります。これらの人々も、きっと殺されてしまったことでしょう。
決して忘れてはいけない歴史です。日本から現地に行った人がとても少ないようで、心配です。といっても、残念ながら私も行ったことはありません。
(2018年6月刊。1389円+税)

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