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社宅ぐらしのきんこちゃん

カテゴリー:日本史(戦後)

(霧山昴)
著者 やまぐち きみこ 、 出版  モイブックス
大牟田市に三池炭鉱があり、人口20万人時代だったころの子どもたちの元気に遊ぶ姿が生き生きと描き出されている本です。
炭鉱社宅は、2階建ての五軒長屋。子どもたちがわんさかいます。テレビもない時代ですから、子どもたちは外で遊ぶしかありません。
社宅内は子どもたちの安全地帯でした。朝から夕方、暗くなるまで、子どもたちが群がって、社宅内のあちこちで遊んでいました。
私は小学1年生まで、小浜の炭鉱社宅のすぐそばで生活していましたので、この光景をしっかり覚えています。メンコ(パチと呼んでいました)を高く積み重ねて、一番上の1枚だけをふわりと飛ばす遊びは、まさしく芸術的でした。カンケリ、陣取り、六文字、書き出すだけでなつかしさが胸のうちにこみあげてきます。
ところが、大牟田は公害の町でもありました。大牟田川は「七色の川」と呼ばれるほど、石炭化学コンビナートの工場から廃液がたれ流されていて、ときに川が燃えるのでした。そして、大気汚染も最悪でした。コークス製造工場からは、昼夜を問わず白い煙、黒い煙が吐き出され、粉じんとともに、周辺住民の肺を侵していきました。著者の弟も、ぜんそくに苦しんだようです。のちに大牟田市は大気汚染指定地域となり、大量の認定患者をかかえました。
社宅の朝はパーフーパーフー、リヤカーをひいた豆腐屋さんのラッパの音で始まる。
「あさりがーい、しじみがいー・・・」
「つけあみー、がねづけ」
モノ売りの声がにぎやかだ。
本当にそうでした。スーパーなんてまだない時代です。商品は各家庭の近くまでまわってくるのです(このころは、地域生協もありませんでした)。
私の通った上官小学校は4組まであり、延命中学校は13組まであって、3学年全部で1000人をこえていたのではないでしょうか・・・。
三池炭鉱が閉山したのは、平成9年(1997年)3月30日のこと。もう21年も昔のことです。その前、1963年(昭和38年)11月9日午後3時12分ころ、三川坑で大規模な炭じん爆発事故が起きました。戦後最大の爆発事故で、死者458人というものすごさです。やはり、安全を手抜きにしたら、大変なシッペ返しをくらうのです。
ぜんそく児をかかえた親としては社宅周辺の大気汚染地帯から郊外へと転地しようと考えるのも当然です。著者たち一家は社宅を脱け出すことになり、泣きました。私も長男がぜんそく発作で苦しむのを見て、すぐさまホタルが住んでいる田園地帯にひっこしました。
郊外には緑豊かな自然がありますが、友だちが乏しいきらいがあります。やっぱり子どもにとっては、たくさん子どものいる世界に浸っていたいのでした。
150頁ほどのコンパクトな、絵本みたいな本です。カットの少女たちも絵も、可愛らしくもあり、純朴そうで、意思堅固な少女が描かれています。
昭和30年代の日本社会の様子、そして子どもたちが走りまわる様子は団塊世代の私たちとまったく変わりません。
なつかしさで胸が一杯になり、涙があふれ出そうになってしまいました。
ぜひ、あなたも手にとって読んでみて下さい。
(2018年9月刊。1300円+税)

佐藤ママの子育てバイブル

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 佐藤 亮子 、 出版  朝日新聞出版
学びの黄金ルール42。これがこの本のサブ・タイトルです。
佐藤ママの本は、その配偶者よりいつも贈呈されて読ませていただいていますが、さすが子育てのプロだと、いつも感嘆・驚嘆しています。
この本の「はじめに」を読んで、私は思わず、のけぞりそうになりました。いえ、これは単なるたとえではなくて、本当に机の前から腰を浮かして、うしろにそりくり返ったのです。そこに、いったい何が書いてあったのか・・・。これを知るだけでも、この本を読む価値があるというものです。
長男が生まれるとき、わが子が生きていく社会を具体的に把握するため、小学1年生から6年生までの、体育、家庭科、美術まで、すべての学科の教科書を購入し、その教科書をじっくり読み、わが子がこれから生きていく学校教育の世界を理解することが出来た。
いやはや、これって、並の人間の発想ではありませんよね・・・。小学6年間の全教科の教科書を母親が買って読んだ、そんなこと聞いたことはありませんし、考えられもしません。
著者は高校の英語教員だったのを止めて育児に専念する主婦になることを選択したとのこと。ものすごい決断です。
子育てのスタートは、童謡と絵本。IT化がすすみ、SNSが発達するなかで、人間らしさはますます大切になるという発想もすばらしいです。
子どもは、すぐには賢くならない。人間の脳力を開花させるのは積み重ねなのだ。絵本を読み聞かせるときには、読み手も心から楽しんでいること、親が読み聞かせる。機会にまかせてはいけない。
佐藤ママの配偶者は、私もよく知る弁護士です。結婚当初の若々しい青年弁護士の写真も載っていますが、日本共産党の国会議員候補になったこともあります。映画『男はつらいよ』の主題歌もよく歌います。
父親が朝早く、駅頭で街頭宣伝している前を通学途中の息子たちが手を振って行ったという光景もあったそうです。
なかなか、そこまではとてもやれないと思えますが、大変参考になる、ヒント満載の本です。買って読んで損をすることは絶対にないと思います。それより何より、元気が出ますよ。ぜひ、手にとってみてください。
(2018年7月刊。1500円+税)

取調べのビデオ録画

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 牧野 茂 ・ 小池 振一郎 、 出版  成文堂
今市(いまいち)事件の判決には驚かされました。裁判員をふくむ裁判所が録画されたビデオ映像を見て、被疑者の様子から有罪の心証を得たというのです。
これは、とんでもないことです。いったい、何のために取調過程を録音・録画するのか・・・。それは取調過程の透明化、つまり、密室での取調べのとき、被疑者に対して不当な追及、違法なことが行われないように監視するためのものなのです。
ところが、実質証拠として機能してビデオ映像が使われ、有罪の証拠になりました。そうなると、調書を証拠採用して判断するという、いわば調書裁判を強化する方向へ、取調室を法廷としかねない方向に行ってしまいます。
ビデオ録画するときには、本来の目的からするならば、むしろ取調にあたっている捜査官の態度・表情こそ録画の対象とすべきです。せめて、取調室を横からビデオ録画して、被疑者がウソを言ってるのかどうかなど、見た人が考えられないようにしたほうがいいのです。
お隣の韓国では、ビデオ録画は実質証拠として利用することを禁止している。また、弁護士は取調での際に被疑者のそばに立ち会える。
ところが、日本では依然として弁護士立会は認められていません。
ビデオ録画が実質証拠に使われると、皮肉なことに、公判中心主義ではなく捜査取調べ中心主義になってしまう恐れがある。
先進国で弁護人立会権の保障がないのは日本だけ。有罪無罪の判断のためには、悪性格証拠は使わないようにとルール化されている。ビデオ映像をみたら錯覚はまちがいなく起きる。この影響を与える可能性を完全に払拭することはできないが、この危険性を減少させるためのものが、せめて横から操るという方法なのである。
なるほど、そうだったのかと思わず、うなってしましました。まさしくタイムリーな本です。
(2018年8月刊。2000円+税)

前川喜平が語る、考える

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 前川 喜平 ・ 山田 洋次 ・ 堀尾 輝久ほか 、 出版  本の泉社
世の中のことを、真面目に深く考えている人がこんなにたくさんいることを知ると、思わず私の身体も底から熱くなってきます。
山田洋次監督が夜間中学を舞台とした映画『学校』をつくりましたよね。本当にいい映画でした。
昼間の生徒たちは勉強するのがうれしくない。でも、夜の教室に行くと、みんなうれしくてしょうがないという顔をして勉強している。そして教員室も明るい。ちょうど劇団の事務所みたいに、生き生きとしている。
夜間中学では、生活基本漢字381文字を重点として教える。とりあえず大人の日常生活に必要な漢字を身につけさせる。
寅さん映画を見て厚労省に勤める人が山田洋次監督に次のような手紙を書いた。
「寅さんは、どうして健康保険に入ってないんですか。寅さんでも入れます。住所不定なら、さくらさんの住所にすればいいんです。私たちの仕事は一人残らず健康保険に入ってもらう。これが国民皆保険の思想ですから、ぜひ寅さんも入れてやってください」
この手紙は厚労省の本当に心ある公務員は、日本に暮らす人々の暮らしをちゃんと守りたいという気持ちを、強く持っていることを示している。
うむむ、なかなか感動的な手紙ですよね、これって・・・。
同じように、日本の法曹界にしても、まだまだあきらめてはいけない。前川さんのような人が、まだいるかもしれない。だめな人もいっぱいいるのかもしれないけれども、ちゃんと話の分かる人が、これじゃあ良くないと思いながら、悩んでいる人たちもたくさんいるんじゃないか、そう思った・・・。そうであってほしいと、私も切に願います。
教育学の堀尾輝久名誉教授の授業を前川さんは法学部でありながら、教育学部で「もぐり」で受講していたとのこと。私も教養課程のとき聴いた覚えがありますが、人間性を大切にする教育の真髄を教えられ、ズシンと来るものがありました。
いまの教員は忙しすぎて、子どものことを考えられない。マニュアルにしたがってやれば楽だし、文句も言われない。多くの教師が流されていて、労働組合も弱体化している。
右翼が「日教組、撲滅」と叫ぶほどに日教組の力は強くないというのは世間で公知の事実ではないでしょうか・・・。
前川さんも、私と同じようにテレビ『ひょっこりひょうたん島』をみていたそうです。私の旅行仲間の愛称が「ひょうたん島」です。
そこで勉強の歌がうたわれる。
子どもたちが、「勉強なさい、勉強なさい、大人は子どもに命令するよ、そんなの聞きあきた」と歌う。これに対して、先生が「いいえ、いい大人になるためよ。人間らしい人間、そうよ人間になるために、さあ勉強なさい」と歌う。
小学5年生の前川さんは、それで、「そうか人間になるために勉強するのか」、そう思ったとのこと。
学習することが、すべての人間らしい生き方のベースなんだ。人間にとって学ぶことの意味、自分らしく生きることの大切さ、個人の尊厳を大切にする多様性のある社会の必要性、そしてそれらを圧殺しようとする権力の危険性、これをずっと一貫して考えてきた・・・。
教育とは何か、その本質に迫る対談集でした。
大変勉強になると同時に、元気の出る本です。ぜひ、ご一読ください。
(2018年9月刊。1500円+税)

遊ぶ鉄工所

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 山本 昌作 、 出版  ダイヤモンド社
いやあ、思わず、ウソでしょ、そんなことありえないでしょ、と叫びたくなる破天荒きわまりない鉄工所の話です。しかも、書いたのはその鉄工所の副社長で、外部のライターではありません。
この鉄工所の、何がすごいのか、というと・・・、実はたくさんあるのです。
まず第一に、トヨタや日立のような超大企業の下請ではない。取引先の1社の占める比重は3割をこえないようにしていて、多品種少量生産ですから、製造原価を叩かれることがない。
第二に、工場内はフラットな空間で間仕切りがなく、大きな食堂ではゆったり美味しく食べられる。ついでにいうと、トイレも大変きれいだそうです。
第三に、残業なしで、モノづくりは24時間、無人加工。
第四に、新卒採用には入社二年目の社員をふくめて総あたりで取り組み、社員のモチベーションを大切にする・・・。
すごいですよね。なにしろ、見学する人が年間2000人といいます。
楽しくなければ、仕事じゃない。
自分たちにしか出来ない仕事で勝負する。
社員食堂こそが、社員を活性化し、会社を大きく変える。
1個の受注が68%、2個の受注が10.7%。両方あわせると、80%が、1個か2個の生産を受注している。これを無人化して、こなしている。ええっ、そんなので会社が成りたつのかしらん・・・。でも、見事に成り立っています。それどころか、年々、取引先は増えているとのことです。
取引先は3000社をこえ、アメリカにも支社がある。その取引先には、ディズニーやNASAもふくまれている。いやはや、すごい会社です。社員も工場内も見事にカラーで、気持ちよく働けそうな雰囲気です。ここで働いている人がうらやましい。
モノづくり、人間育成のポイントをしっかえいおさえた明るい見通しがもて、元気が出る、勇気百倍になる本です。
(2018年7月刊。1500円+税)

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