法律相談センター検索 弁護士検索

ハトと日本人

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 大田 眞也 、 出版  弦書房
身近にいるハトを豊富な写真とともに解説してくれる貴重な本です。
ハトと漢字で書くと鳩。九と鳥です。「九」は、手を曲げてぐっと引きしめた姿を描いた象形文字。つまり、ぐっとしぼって集まる鳥。仲間を引き寄せて群れる鳥、ということ。
ところが、漢字のはとはもう一つ、鴿とも書くそうです。合と鳥です。こちらは合わさる鳥。つまり、集まり合う鳥ということ。
ドバトは繁殖力が強く、平均寿命は飼育下で平均9年。15年以上も生きたドバトもいる。
ハトの抱卵は、昼間は雄がし、夜間は雌がする。雄は昼に8時間、雌は夜に16時間。
ハトのヒナに与える鳩乳(ピジョン・ミルク)は、雌だけでなく雄も分泌してヒナに与える。
ええっ、そうなんですか、父親も鳩乳をやるのですね・・・。
このピジョン・ミルクには乳糖やカゼインは含まれていない。黄色いカテージチーズのような粘り気のある濃厚な液体で、水分は65%、タンパク質や脂肪分に富み、ビタミン(A・B・B2)やミネラル(ナトリウム・カルシウム・リン)などが含まれていて、栄養価が高い。
鳩は、主として、果実や花など植物質を食べているが、ときにはミミズやカタツムリ、昆虫の幼虫なども食べる。
ドバトの羽色は一羽ごとにみな違っている。外見でオスとメスを見分けるのは難しい。
私は一度だけハトのラブシーンを見たことがあります。公園のフェンスに2羽のハトが並んでいました。すると、2羽は体をぴったりくっつけ、お互いのくちばしで、それこそ濃厚ラブシーンを展開するのです。前に、フランスの自然観察映画で、カタツムリのラブシーンを見たことがありましたので、すぐにそれを思い出しました。このときには交尾に至るのまでは目撃できませんでした(私が、途中で公園を離れたのです)が、きっと交尾までいったと思います。
日本には300種いるハト科の鳥が12種いるとのこと。身近なハトの生態をしっかり勉強することができました。
(2018年6月刊。1700円+税)

悪童(ワルガキ)

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 山田 洋次 、 出版  講談社
「悪童日記」というと、アゴタ・クリストフを思い出します。フランスのベストセラー小説です。フランス語を勉強していて出会いましたが、すさまじい悪口雑言のオンパレードでした。
こちらは、いたってつつましやかなワルガキの話です。我らが寅さんが少年時代を振り返って語ったという趣向です。
先日、法廷のあいまに立会書記官に映画「男はつらいよ」を観ましたかと尋ねたところ、二人とも「ノン」という答えが返ってきました。いえ、テレビでは観たことはあるけれど、映画館で観たことはないということです。
寅さん映画のはじまりは、私がまだ東京にいて大学生のころです。その後、弁護士になってから、お盆と正月には子どもたちと一緒に欠かさず観ていました。全部とは言えませんが、ほとんど映画館で観ました。大笑いしながらも、ほろっとさせるシーンが各所にあって、さすがに落語に詳しい山田監督のつくった映画だといつも感嘆していました。司法試験の受験中にも最大の息抜きとして寅さん映画を新宿まで出かけて観ていました。
寅さんは、実母ではなく、育ての母親を深く愛していました。父親は飲んだくれで、寅さんをちっとも可愛がってはくれません。そんなことから勉強せず、イタズラばかりの日々・・・。それでも妹さくらのことは人一倍気にしていたのです。
戦中・戦後の情景がよく描かれています。山田監督が体験した事実ではありませんので、取材の成果だと思います。満州(中国東北部)で育った山田監督の原体験と共通するところもあったのでしょうか・・・。
来年、再び新作の寅さん映画に出会えるとのこと、胸がワクワクします。今から楽しみです。山田監督の初の小説とのことです。あなたもぜひ、ご一読ください。
(2018年10月刊。1300円+税)

出島遊女と阿蘭陀通詞

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)
著者 片桐 一男 、 出版  勉城出版
江戸時代は厳しい鎖国がとられていたというのが定説でしたが、最近では、案外、日本は世界の情報をさまざまなルートで入手していたとされています(と思います)。
その窓口のひとつが、長崎は出島にあったオランダ商館です。そこに出入りするのは通詞(通訳です)と商売人(商工業者)だけでなく、一群の遊女たちがいました。
オランダ商館にいる異人たちは、その大半が10代か20代の青年たちでしたから、日本人女性との交流も盛んであり、実は商館内に遊女たちが寝泊りしていたようです。
日本最古の仏和辞書も、このオランダ語通詞たちが、オランダ語によるフランス語の辞書を翻訳してつくられたものでした。これは最近のNHKラジオ講座で得た知識です。長崎の歴史・文化博物館に原物が展開されているそうです。ぜひ見てみたいです。
この本によると、オランダ商館の人々が日本語を習得することは禁じられていたとのこと。キリスト教の布教を恐れたことと、密貿易を未然に防止する必要からのようです。ですから日本人通詞たちが活躍するわけです。ところが、出島での宴会風景を描いた絵(有名な川原慶賀の、写真のように精密な再現図)によると、そこに遊女が存在するのですが、必ずしも通詞がそばにいるわけではありません。要するに、出島に出入りする遊女たちは、どうやらオランダ語を聞いて話せていたらしいのです。
そして、遊女たちがオランダ人に宛てた手紙がオランダのハーグにある国立文書館に100通もあることが判明したのです。江戸時代の女性の手紙ですから、私にはほとんど読めませんが、それでも、いわゆるカナクギ流の文字ではなく、流れるような草書体の立派な筆づかいです。
著者は、オランダ語通詞たちが、ルビのようにオランダ語を手紙に書き添えているのに助けられて、その100通あまりの遊女の手紙を解読したのです。本当に学者って、すごいですね。盛大なる拍手を贈ります。意外な事実を知りました。オランダ人とのハーフの子どもたちもそれなりに生まれたことでしょうね。最近よんだ本(泡坂妻夫『夜光亭の一夜』)に、そのような生まれの遊女が登場します。
(2018年4月刊。3600円+税)

内閣官房長官の裏金

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 上脇 博之 、 出版  日本機関紙出版センター
内閣は月1億円という大金を自由に使えます。領収書は不要だし、会計検査院のチェックもなく、まさしく使途不明金です。権力を握った「うま味」なのでしょう。
たとえば、沖縄県知事選挙で与党側の候補を応援・テコ入れするための「実弾」、野党議員を丸めこんで荒れる国会を演じながら乗り切る。そして、マスコミ幹部との高級料亭での豪華お食事会・・・。そんなことで使われる黒いお金です。
そこに敢然とメスを入れようと著者たちが裁判を提起し、ほんの少しだけ秘密に閉ざされた扉をこじ開けるのに成功したのでした。
月1億円ですから年間12億円。もちろん、私たちの血税です。許せませんよね・・・。
この機密費には三つあるとのこと。政策推進費、調査情報対策費、活動関係。いやはや、どれもこれもあいまいな名称ですね。
日航機のハイジャック事件(1977年)の身代金600万ドル、ペルー日本大使公邸人質事件(1996年)、アフガニスタンの反ソ、ゲリラ組織への武器購入資金数万ドル・・・。
沖縄県知事選挙(1998年)のときに7千万円。そして、退任する日銀総裁、検事総長、会計検査委員長へ百万円単位。政治評論家やメディア幹部への付け届け。
マスコミが「内閣官房報償費」という裏金について報道したがらないのは、自らのトップにもこの黒い大金が渡っているから・・・。何ということでしょうか。
首相が退陣するときは、残ったお金を「山分け」して、金庫を空にするのが「礼儀」だった。ひえー、空前の税金のムダづかいですよね、これって・・・。
このような権力の裏金とは、つまるところ暗黒政治の産物にほかならない。
情報公開訴訟で裏金の一端が明るみに出たわけですが、裁判官の大半は、権力の報復を恐れてか、公開を是とする判決を出そうとしない現実があります。困ったことです。
国政の闇に光をたあてた画期的なブックレットだと思います。
(2018年10月刊。1600円+税)

財は友なり

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 髙岡 正美 、 出版  浪速社
現代日本では残念なことに労働組合というものの存在がほとんど見えない状況です。過労死・過労自殺そしてブラック企業の横行、さらにはパワハラ・セクハラが止まない職場・・・。いったい、労働基準法・労働組合法はどこにいってしまったんだろうかと心配します。
この本を読むと、労働組合は労働者の生活と権利のために欠かせないものなんだということを改めて教えてくれます。そして、労働者の生活を守るためには、労働組合が会社経営に関与することもあるし、労働組合の幹部が会社の取締役になることだってあるのだと著者は力説するのです。
これは単純な労使協調路線ではありません。資本に労組のダラ幹が抱き込まれ、懐柔されるとは少しばかり違うのです。だって、目の前には工場閉鎖・企業倒産が迫ってくるときの話なのですから・・・。
もちろん、お金をもらえるだけもらって、そんな会社とは見切りをつけてさっさと辞めてしまうほうがいい場合もあるでしょう。でも、他に職を探すのも容易ではありませんし、少しでも会社再建の可能性があるなら、それに賭けてみようという気にもなりますよね。
この本のなかでは、著者が関わったものとして、無責任な旧経営陣を退陣させて、労組が会社を管理し、新しい社長には労組幹部が就任したり、既に引退していた有能な元社長をひっぱってきて社長にすわってもらって見事に企業を再建した例も紹介されています。たいしたものです。
著者のたたかいは、なによりも企業を存続させて労働者の雇用を確保しようとするものだった。そのため、企業を敵視せず、企業再建のためには、労使が一緒になって取り組むことを著者は求めた。これは、使用者言いなりの「労使協調路線」ではなく、労働組合が自ら方針を立て、主体的に経営にかかわり、合意に達しなければ、裁判闘争・労働委員会闘争などの法的手続をとることも辞さない。
著者は、頭の良さに加えて、持って生まれたエネルギーの量と負けん気、手を抜かない自己に厳しい姿勢と努力でこのような力を身につけ、難局にあたってきた。
著者は紙パルプ労連の中央執行委員をつとめ、各地の労働争議に関わってきました。
労働組合のなかには、組合費を基本給の3%にしているところもあるそうです。その高さに驚かされます。3%の組合費を払うだけのメリットがあると一般組合員が受けとめているからこそ続いているのでしょうが、すごいことです。実に素晴らしいです。別のところでは、1人月1万8千円という高い組合費のところもあるとのこと、信じられません。
著者は大阪府地労委の労働者委員となり、4年間に審査事件84件、調査事件50件を担当しました。相手にした企業は91 社。結果は命令交付が25件、和解等で解決したのが23件、訴訟になったのが18件だった。いやはや、大変だったでしょうね。
大商社の伊藤忠を相手にした大阪工作所事件では、残った組合員はわずか18人。ところが、まいたビラは1日4万枚、トータルで100万枚をこえ、2千人からの労働者による抗議行動が御堂筋で展開するという華々しい活動を展開した。その成果として、労組が億単位の解決金に加えて、土地や技術を譲り受け、会社の経営権を握って見事に再建することができた。今も、この会社は存続しているというのです。たまげましたね・・・。
読んでいるうちに、そうか労働組合って、こんなことも出来るのか、やれば出来るんだねと勇気が湧いてきて、心がぽっぽと温まってくる本です。大阪の大川真郎弁護士より贈っていただきました。いい本を紹介していただいてあつく、お礼を申し上げます。
(2018年10月刊。1667円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.