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日本の戦争Ⅱ.暴走の本質

カテゴリー:日本史(戦前・戦中)

(霧山昴)
著者 山田 朗 、 出版  新日本出版社
安倍首相のいかにも軽薄な言葉に接するたびに、こんな無能なリーダーの下で我が子や孫たちが戦場に駆り出されて死んでしまったら、哀れというか無惨というか、悔み切れないだろうと、つくづく思います。
この本は、戦前の帝国軍の実情をさらけ出し、戦争というものがいかに無駄死をもたらすものなのか、じっくり考える素材を豊富に提供してくれます。いま読まれるべき本として、一読をおすすめします。
戦争は、決してある日突然に起こるものではなく、必ず国家の政策の延長、外交的対立の帰結として起こる。戦争とは、国家戦略・政策の延長線上にある武力行使であり、軍事力による他者(国家・民族)への意思の強要である。
日露戦争の前の日本は、まだ主力艦クラスの艦艇を国内では建造できなかった。国産の主力艦は一隻もなく、すべてイギリス製の戦艦であり巡洋艦であった。
日露戦争のあと、欧米の陸軍は、火力主義の強化、砲兵の重視を学んだ。ところが、日本陸軍は逆に火力主義から白兵主義へと基本理念を転換した。
日本海軍の飛行機搭乗員の養成方針は、完全な少数精鋭の「名人」をつくることに主眼を置いていた。そこで、航空戦で日本軍精兵が「消耗」してしまうと、戦力は急激に低下し、連鎖的に全体的崩壊をもたらした。
日露戦争において、実は、日本軍はホチキス式機関銃を268丁(これに対してロシア軍は56丁)を使用していて、戦線によっては日本軍がロシア軍よりも多数の機関銃を投入していた。
戦死した軍人を軍神に祭り上げることが多かったが、それは軍指導部の失敗・過程を隠蔽するためだった。旅順港閉塞作戦で戦死した広瀬武夫海軍少佐の戦死もそれだった。久留米の肉弾三勇士の戦死も同じこと。
日本には、日本陸軍と日本海軍は存在したが、一元化された日本軍は存在しなかった。
日清戦争のあと、戦時における最高司令部としての大本営が設置されたが、今度は、政府と大本営とがそれぞれ天皇に並立・直属し、国家戦略の統一的な決定機関が存在しないことになった。
弾薬を大量に消費することを嫌った陸軍は、機関銃の研究・開発を遅らせた。戦車は、おくまで歩兵の突撃を支援する物として研究・開発された。したがって、本格的な戦車戦で日本軍は完敗した。日本軍兵士にとって、日中戦争とは、つらい徒歩行軍の連続だった。
自動車化が遅れた(積極的に進めようともしなかった)ため、輸送手段は馬に大きく依存した。人員61万人に対して馬14万3千頭、つまり人員4.3人に馬1頭の割合だった。
日本軍は、広大な中国大陸において小人数の将兵を分散配置するしかなく、中国軍が小隊単位以上の組織的な攻撃を仕掛けてきたら、必ず包囲され、つねに「全滅寸前」の危機に陥ることになった。
航空特攻作戦は、それによる戦死者のことを忘れてはいけないが、さりとてそれをただ顕彰し、美化するだけでは、彼らの死を意味あるものに変えることはできない。特攻という、あってはならない行為を顕彰・美化することは、死者を使って戦争への批判的な言動を封じようとするものであり、かえって死者を冒涜する行為なのだ。
日本軍の真実から目をそむけ、ひたすら美化しようとする動きが強まっている社会風潮がありますが、それを克服するには、やはり私たち自身が戦場の現実をきちんと認識する必要があると思ったことでした。
(2018年12月刊。1600円+税)

狼の群れは、なぜ真剣に遊ぶのか

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 エリ・H・ラディンガー 、 出版  築地書館
圧倒的な面白さです。オオカミたちの顔は輝き、畏敬の念を思わず抱いてしまいます。タイトルどおり、本当に真剣に遊んでいる様子もうかがえます。オオカミの研究がすすんでいることを、この本を読んで実感しました。
著者はオオカミとの接触が20年以上、オオカミとの出会いは1万回以上も体験した元弁護士です。弁護士として、犯罪事件、賃貸トラブル、離婚といった問題に次第にストレスがたまり、熱意をもって公正な勝利に導く代わりに、裁判が苦痛でしかなくなった。優れた弁護士が必要とする距離と非情さに欠けていた。ふむふむ、弁護士稼業も辛いのですよね・・・。
自然のなかで生きるオオカミの寿命は9年から11年ほど。囲い地オオカミだと15年ほど。
オオカミを身近に観察できる人は、静かで控え目な人だ。
人間と同じように、オオカミでも、本当に重大な問題は、最高位の女(メス)が決める。オオカミの家族にとって重要なことは、すべて最終的には彼女の必要性に適応させる。
アルファオオカミだけが交尾を許されているというのは誤った理解だ。これが訂正されるまで20年を要した。オオカミの4分の1は、ほかのパートナーと交尾し、その結果として、一家族内の多数の雌(メス)オオカミが赤ちゃんを産み、その一部は、家族みんなで育てる。
リーダー夫婦はたいてい生涯を通してともに暮らし、リーダーが死ねば、次に経験の豊富な雄がそれに代わる。リーダーの地位をめぐって家族内で真剣な争いが起きることは野生オオカミでは、ほとんどない。
リーダーのお気に入りは、子どもたちとじゃれあい、格闘すること。負けたふりをするのが一番の楽しみだ。これもオオカミの知性のあらわれ。
オオカミの狩りの80%は失敗に終わる。オオカミは純粋な肉食ではなく、死肉、魚、野菜や果物も食べる。最良のハンターは2歳から3歳。
獲物を倒すのは雄のほうに利があるが、雌は動きが敏捷で、狩り立てを得意とする。
オオカミの子どもたちは、遊びながら公正さや協力を学び、していいことと悪いことを区別するようになる。遊びの重要な特徴はセルフコントロールにある。
大人のオオカミも、追いかけっこ、引っ張りあい、かくれんぼといった遊びをする。
遊びは学習とトレーニングの時間であり、相手をよりよく評価するための経験を全員が積む。そのなかで、自分がしてほしくないことは、ほかのものにしないことを学ぶ。
オオカミの家族関係を知ると、人間はオオカミからも学ぶべきことがたくさんあると思いました。
(2019年2月刊。2500円+税)

出稼ぎ国家フィリピンと残された家族

カテゴリー:アジア

(霧山昴)
著者 白石 奈津子 、 出版  風響社
私の住む町にもフィリピン人女性はたくさんいます。以前は夜のショーパブなどに多く見かけました。今は、夜のにぎわいがかつてほどではなく、私も行かなくなったので、どうなのかよく分かりません。フィリピン人に代わって増えたのがベトナム人やネパール人です。
この本は、出稼ぎ大国とも言うべきフィリピンの実情を紹介しています。
10%。これは、フィリピンの全人口のうち、移民として海外に流出している人々の割合。そして、フィリピンのGDPにおいて、出稼ぎ者からの送金の占める割合でもある。
いやあ、すごい数字ですよね、まさしくフィリピンは出稼ぎ国家です。
そして、日本にいるフィリピン人は25万人。これは、中国、韓国の次に3位を占める。フィリピン人の1023万人が海外で生活している。1位のアメリカに350万人、2位はサウジアラビアで150万人。アラブ首長国連邦とマレーシアに各80万人、カナダに70万人。
毎年の出国者数は200万人。その渡航先の80%はアジア圏。
フィリピンでは、どこに行くにもカサマが必要であり、独りでいるのは好ましくないこととされている。カサマとは、「連れ」、誰かが一緒にいて、行動している状態をさす。
フィリピンは7000以上の島々から国土が成り立ち、10の主要言語があり、さらに100以上の地域言語、少数言語が存在する。
低地キリスト教徒であるマジョリティ集団がタガログと呼ばれる人々。ただ、フィリピンの人口全体のなかでタガログ言語者は30%ほどでしかない。
マンヤンとは、先住民として異質な人々とされる。タガログがマンヤンを草刈、稲などの収穫、建設現場での土砂運搬などで労働力として扱っている。
出稼ぎ国家フィリピンの実情を教えてくれる40頁ほどのコンパクトなブックレットです。
(2018年10月刊。600円+税)

人類との遭遇

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 イ・サンヒ 、 出版  早川書房
人類の発祥の地がアフリカ大陸にあることは確固たる定説だと思いますが、欧米の学者はそんなはずはないと、なかなか信じなかったようです。優れた白人の祖先が知能の劣った黒人であるはずはないというわけです。
人間のような優れた種の祖先がアフリカ大陸を出どころとするというのは、西洋の科学界が容易に受け入れられるものではなかった。
ネアンデルタール人はクロマニヨン人とちがって、現生人類とは無縁の存在だと考えられてきた。しかし、DNA解析によって、ネアンデルタール人の遺伝子を4%も私たちは受け継いでいることが判明した。そして、この4%は、嗅覚、視覚、細胞分裂、精子の運動能力、免疫系筋収縮など日々の生の営みにとって重要な機に関連したものだった。そして、言語に関連する遺伝子まで含まれていた。
ヒトは直立二足歩行することができるようになって、自由になった手と腕で道具をつくり、使えるようになった。また、上半身が動きまわることから解放されて横隔膜が自由になり、呼吸の制約がなくなったことから発声が可能になった。発声によって言語が実現した。
農業は人類にとって、決していいことずくめではなかった。しかし、悪いことばかりでもなかった。それは、遺伝子の多様性をもたらした。農業がはじまると、食生活の質が明らかに落ちた。そして、定住生活するようになると、人類は感染症に弱くなった。
非農耕民族の母親の出産間隔は4~5年だったが、農業に従事している母親はわずか2年の出産間隔で子育てができるようになり、人口が急速に増えた。
チンパンジーは類人猿であって、サルではない。類人猿とサルは尾があるかどうかで区別される。サルには尾があり、類人猿には尾がない。
人類とは何なのか、どこから来て、どこへ向かうのか・・・。韓国人の女性人類学者による面白い本です。
(2018年12月刊。2300円+税)

日本の「中国人」社会

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者 中島 恵 、 出版  日経プレミアシリーズ
中国人の旅行客をよく見かけます。春節のころは、とくに目立ちました。大型客船(クルーズ)からの団体旅行の人たちというより、家族連れが多かった気がします。
日本の景気は彼らの「爆買い」にかなり支えられていますよね。天神や川端の商店街のあちこちにドラッグストアーが乱立していて、大丈夫なのかしらんと余計な心配をしています。
この本を読むと、今や100万人近くの中国人が日本に住んでいるそうです。そして、タワーマンションの最上階を自宅用として中国人が買っているとのこと。上海のマンションより安いから買っているそうで、単なる転売・投資(投機)目的ではないようです。
そして、中国人といっても、広い中国ですから、実は言葉も習慣も民族までも大いに違うのですから、トラブル発生は必至です。
埼玉県川口市の芝園団地は、中国人がもっとも多い団地。4500人の住民のうち2300人が中国人。横浜市立南吉田小学校は、全校児童740人のうち、中国人が307人を占める。4割だ。この学校では、休み時間は何語を話しても自由、にしている。
東京都内には20万人の中国人が暮らしている。
日系ブラジル人の多い愛知県豊田市の保見団地。インド人が多い横浜市の霧が丘グリーンタウン。多国籍の人が多い横浜市の公営住宅いちょう団地。
富裕層の中国人が、自宅用としてタワーマンションを購入している。最上階は「風水がいい」として好まれる。
北京や上海では、富裕層、中間層、低所得者層は、それぞれ住居エリアが分かれている。中国では、いい学校がある地区にあるマンションを「学区房」と呼ぶ。いい学校とは、政府が資金を重点的に投入していて、「重点校」と呼ばれる。多くの人が重点校に子どもを入れようとするため、その学区の不動産は異常なほど値上がりする。中国ではマンション価格が高騰していて買えないけれど、日本でなら、自分の家が手頃な価格で買える。
日本には中国系企業が316社あり、アメリカ・ドイツに次いで3番目だ(2016年)。とくにサービス業の増加が顕著だ。
那三届(ナーサンジェ)とは、1978年から3年間に大学に入った人たちのこと。文化大革命が終って、とくに競争が激しかったので、「那三届」世代は一目置かれている。
「老三届」は、文化大革命が始まった1966年から68年に高校生だった人をさし、不運な時代を意味している。
私は1967年(昭和42年)に大学生になりましたので、この不運な「老三届」世代になります。でも、中国とちがって、大学には(途中、長いストライキもありましたが・・・)ずっと通えました。
中国にいる日本人は、12万4千人。在日中国人の6分の1でしかない。中国の10都市に11校の日本人学校がある。
中国では、魅力的な投資先がなかなか見つからない。すでに中国への投資をし終えたので、日本に目が向いている。とにかく、余剰資金があるので、日本企業に投資し、技術を買いたい。何でもいいので、お金を使いたい。そんな相談が多く寄せられている。
うひゃあ・・・、そ、そうだったんですか・・・。すごいことですよね、これって・・・。日本と中国の密接な関係を再認識させられました。それでも、「中国」の軍事的脅威なるものを真面目に心配している日本人が少なくないのが、私は信じられません。
(2019年1月刊。850円+税)

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