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生き残った人の7つの習慣

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 小西 浩文 、 出版  山と渓谷社
56歳の著者は、8000メートル峰の無酸素登頂に挑み続けてきたプロの登山家です。
これまで山でケガしたことはなく、五体満足。凍傷のため手や脚の指が1本、2本なくなっているところもありません。これって、実に素晴らしいことです。奇跡的です。
標高8000メートルの高さは、「デス・ゾーン」(死の地帯)と呼ばれている。酸素が平地の3分の1しかないので、息苦しいどころではない。すぐに視力は減退し、脳機能障害が引き起こされ、正常な思考ができなくなる。
ジャンボジェット機が飛ぶ高さが標高8000メートル。普通は酸素ボンベを背負って、マスクで酸素吸入しながら登頂していく。酸素ボンベがなければ、普通の人は30秒で失神し、急性脳浮腫や肺水腫になり、死に至る。
それなのに、著者は酸素ボンベを使わず、8848メートルのエベレストをふくめて、8000メートルの山が14座あるうちの6座を制覇したといいます。信じられません。
デス・ゾーンでは、ほんのわずかな迷い、ためらい、そしてわずかなミスが致命的な危機を招いてしまう。危機の90%以上は何かしらの予兆がある。
気の緩みが危機につながる。あともう少しで安全地帯だと思う気の緩みは危ない。ゴールや目標が間近に迫ったとき、人は緊張が緩む。すると、身体はまだゴールしていないのに、頭のほうはゴールしたかのような錯覚に陥る。これが危ない。
「危機」というものの多くは、その組織や人物の心が引き起こしているケースがほとんど。つまり、「危機」の90%以上が「心」に起因している。
山の事故のほとんどは下山中に起きている。それは「気の緩み」と「焦り」から来る。「心」の乱れが道迷いや事故を引き起こす。
「おごり」(過信)は、目の前にある「危機」から目を背けさせて、自分たちに都合のいいように物事を解釈してしまう。人間は、どうしても自分に都合のいいように「危機」を考えようとする。そうではなくて、常に「最悪」を想定しなければいけない。
「いつもと同じ」というのが、きわめて重要。いつものように冷静に判断できる。いつものように高い技術を発揮する。いつもと同じことを苛酷な状況下で行えるかどうかが生死を分ける。そして、そのためにも事前準備に9割の力を注ぐ。
なるほど、とんでもない高山で大変な危機に何度も直面してきた著者の体験にもとづく提言なので、一つ一つの提言がしごく素直に受け入れられます。
(2018年12月刊。1200円+税)

かぴばら

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 岩合 光昭 、 出版  クレヴィス
今では、すっかり猫写真家として有名は動物カメラマンがブラジルのパンタナール大湿原に出かけてカピバラの生態をとらえています。
カピバラは、大地に芽生える新鮮な食物を食べる動物です。ジャガーに狙われ、その食事メニューの一つとされています。
カピバラは、いろんな声をもっている。家族とのやりとりはもちろん、危険を知らせるための大きな警戒音も出す。
ジャガーが近くに出現すると、「ピーッ」とホイッスルを鳴らしたような鳴き声が響くとともに、目にもとまらぬ速さでカピバラは鉄砲玉のように川へ飛び込む。
家族で常に用心し、警戒しながら暮らしている。癒し系と称される、おっとりとした雰囲気を保ちながらも、鍛えられ引き締まった体は、ときにおどろくほどの瞬発力を発揮する。
カピバラは円陣を組んで360度、気をつける。
川の真ん中の浅瀬が安全なことを知っていて、そこでしばし静止する。
川の中に広がる砂洲は、親子でのんびりできる安全地帯だ。
泳ぎが得意なので、水際にいると安心。
夕方になると、家族で草地に向かう。
泥遊びするのは、暑さよけ、虫除けのため。気持ちいい。
ほっこり癒されるカピバラの写真集です。
(2018年8月刊。1000円+税)

経済学者の勉強術

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者  根井 雅弘 、 出版  人文書院
たくさん本を読み、たくさん書評を書いている人のようですが、申し訳ないことに、私はまったく知らない人でした。私もたくさんの本を読み(この30年間、年間500冊を下回ったことはありません)、たくさんの書評(この20年近く、1日1冊の書評も欠かしていません)を書いていますので、大いに共感するところがある本でした。
読書は、自分の好きな本を読めばよい。
時間は、30分でも1時間でもよいから、無理してでも作ったほうがよい。30分でも、毎日、継続的に読書に励めば、1年、5年、10年とたつうちに大きな力となるだろう。
30分でも、長年実践していると、新書1冊ぐらいは読めるようになる。私も電車のなかで、たいていの新書は30分で1冊読んでしまいます。専門書でも、30分で1章ほどは読めるようになる。継続が大事である。
私が著者に絶対かなわないのは、専門書のなかに英文も含まれているということです。私は法律書(もちろん日本文)なら、それなりに早く読めますが、英語もフランス語も、まるでダメです。
本は買って読む。自分の所有物なら、どこに線を引こうと書き込みをしようと自由である。
文章は理路の通ったものであるだけでなく、魅力ある生きた文章を書きたいもの。あまり平板な文章が続くと、読者がついていけない。
いやはや、本当にそのとおりなのです。その点も、私の永年の課題です。分かりやすく書けるようにはなったつもりなのですが、味わい深さがまだまだです。
書評は読んだ本の悪口は書かない。欠陥の多い本なら取りあげなければいいだけのこと。本当にそのとおりです。私は読んだ本の7割を書評として紹介するようにしています。それも、なるべく本の内容を紹介するのを主体としています。忙しい読者に、ほら、こんな内容なんですよ。もっと読みたくなったでしょ。ぜひ、手にとって、あなたも読んでごらんなさい。そう呼びかけています。
「私が」とか「我々は」、「彼らは」といった主語は、日本語の文章では省略されるもの。ただし、学術雑誌は違う。英文では、必ず主語が必要だ。
自分の稼いだお金で本を買い続けることが大切だ。自分の蔵書が少しずつ確実に増えていくことは「知的生活」のために必須だ。
私もこれを永らく実践してきましたが、70歳になって、一大決心し、蔵書の2割を捨てて、本箱は背表紙が見える状態に整えることにしました。この10連休に、かなり達成しました。すると、今までの読書遍歴をたどることも出来て、なんとなく豊かな気分に浸ることができました。
(2019年1月刊。1800円+税)

動物園から未来を変える

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 川端 裕人、本田 公夫、 出版  亜紀書房
アメリカはニューヨークのブロンクス動物園で働いている日本人がいるのですね。その本田さんを川端さんが取材して一冊の本になっています。
私も旭山動物園には二回行きましたが、なるほど行動展示というのはこういうものなのかと感動しました。自然の生態系に近い場所に動物たちがいて、それを間近で観察しているという実感をもてるのです。
ニューヨーク市内に4つの動物園と1つの水族館があるそうです。すごいですね。いったい東京には、いくつの動物園と水族館があるのでしょうか・・・。この5施設は、野生生物保全協会(WCS)が運営しています。
いま、動物園は絶滅危惧種を保全するセンターになっている。いわば種の方舟(はこぶね)だ。しかし、野生動物を飼育しながら繁殖させるのは、家畜の繁殖とは根本的に異なる。まず何より、その発想が違っている。遺伝的な多様性をできるかぎり維持するのが動物園。家畜はなるべくたくさん繁殖してくれたらいい。動物園の目標は、100年ないし10世代以上にわたって遺伝的多様性を90%より高く維持すること。
「アフリカの草原」では、ライオンとウシ科の草食動物ニャラが同じ平原で共存しているのかのように見える。しかし、実は、見えないところに濠があって、ライオンはそれを飛び越せないようになっている。
いま、アフリカで密漁しているグループは、ハイテクの赤外線カメラやGPSをもって、マシンガンで武装している。その背後には、国際的犯罪組織、マフィアとかテロ組織がいる。麻薬や武器を扱っている組織がアフリカの野生生物を喰いものにしている。
欧米では、ゴリラは群れ飼育されているので、繁殖は普通のこと。しかし、日本の動物園ではゴリラ飼育は残念な結末をやがて迎えようとしている。日本のゴリラ個体数の減少に歯止めをかけようとしたときには、時すでに遅し、だった。
うひゃあ、そうなんですか、残念ですね。なんとかなりませんでしょうか・・・。
子どもが小さいときには、私も近くの動物園によく行きました。私自身にも楽しいひとときでした。子どもが大きくなって動物園には縁が遠くなりました。今では孫と一緒に動物園に行くのを楽しみにしています。
最近の動物園の意欲的なさまざまな取り組みを知って、動物園にまた行きたくなりました。そう言えば、大牟田の動物園をテーマとした映画がつくられていますよね。武田鉄矢も登場しているようです。ぜひ、みんなでみにいきましょう。
(2019年3月刊。2000円+税)

ハンターキラー(上・下)

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 ジョージ・ウォーレス、ドン・キース 、 出版  ハヤカワ文庫
原子力潜水艦同士の息づまる戦いが詳細に描写されていて、頁をめくるのももどかしいほどです。上下2冊の文庫本です。それぞれ400頁をこす部厚さですが、車中で3日かけて読み通しました。こんな速さで読めたのも、ゴールデンウィークの途中にこの本を原作とする映画をみたからでもあります。潜水艦の構造などは、やはり映画をみないと視覚的イメージがつかめないのですが、話のディテール(詳細)は文庫本のほうがはるかに勝っています。
文庫本のほうは、株式取引という金もうけの話と連動した陰謀、そしてクーデターが進行していきますが、映画のほうは経済的な側面は全面カットされ、ひたすら原潜同士そして駆逐艦との戦いに焦点があてられています。
それにしても、ロシアで軍部がクーデターを起こし、アメリカとの全面戦争をのぞむという筋書きで話は進行していきますが、同じことはアメリカでだって、そして、わが日本でだって起こりうるのではないかと、私はひそかに恐れました。
そして、アメリカの原潜には女性兵士が乗り込んでいるのにも驚きました。いくら男女同権といっても、女性兵士は考えものです。しかも、潜水艦という狭い密室のなかに、大勢の若い男の兵士のなかに女性兵士が何人かいるって、あまりにも危険ではないのか・・・と、ついつい「余計な」心配をしてしまいました。
訳者あとがきは大変参考になりましたので、少し紹介します。
第二次世界大戦のころは、潜水艦は、「海にも潜れる水上艦」だった。エンジンや技術の制約上、潜航できる時間が短かったので、ここぞというとき以外は、水上を航行していた。それが、原子が潜水艦の登場によって状況は一変した。ほぼ無限の重力と電源、そして空気を得られたことで、乗組員の体力と食糧が尽きないかぎり、半永久的に潜航できるようになった。
探知されることなく、速力よりむしろ静かに潜航すること、つまり静粛性が緊要だ。このため、世界の海軍をもつ国は、潜水艦を重視し、静粛性を高めることと、敵の潜水艦を探知する技術を磨くことにしのぎを削っている。潜水艦には窓がなく、周囲の音だけを頼りに漆黒の暗闇を航行する。光の届かない、鋼鉄に囲われた狭い密閉空間で長時間生活することから、乗組員のストレスは大変なものがあるだろう。このため、潜水艦の乗組員には、高い能力もさることながら、高い協調性が求められる。誰でもなれるというものではない。
いやあ、閉所恐怖症の私なんかとても、いえ絶対に潜水艦で何ヶ月も生活するなんて、ご免蒙るしかありません。超近代的なはずの原子力潜水艦は、実は超古典的なしろものなのです。海中での潜水艦の働きもよく分かる本でした。
ロシアもアメリカも、そして日本だって軍部独走にならないよう、しっかりと国民が声を上げる必要があると実感させられました。
(2019年3月刊。900円+税)

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