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地域から創る民主主義

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 宮下 和裕 、 出版 自治体研究社
いまは「危機とも転換ともなりうる、せめぎあいの新しい時代」だと、この本にこう書かれていますが、まったく同感です。
臆面もなく嘘をつき通し、証拠はすべて「処分」して国民の目にふれないようにして、追及されたら平然と開き直るアベ政治がまかりとおっています。少なくない国民は怒っていますが、「多く」の国民は、またかと呆れ、怒りを表明することがありません。でも、いつまでもこんな状態が続くほど日本国民はバカではないと私は確信しています。今は、政治の大転換の直前にあると自分によくよく言い聞かせているのです…。
著者は、日本国憲法がなぜ70年も続いたのかを改めて考えています。
憲法制定時の主要な政治勢力、GHQも日本政府も、そして共産党も、誰も憲法がこんなに70年も存続するとは思っていなかった。憲法制定にかかわったGHQ、マッカーサーや日本政府、政権担当者によって、早くもその制定直後に見捨てられた日本国憲法なのに、なぜ70年も改正されることなく続き、成文憲法としては世界で最長命の憲法となったのか…。
それは、憲法自身が、人類の、世界の到達点を示すものであり、日本国民とアジアの民衆の願いに合致していたから…。
まったく、そのとおりです。歴代の自公政権によってキズだらけにされてはいますが、今なお9条ふくめ、しっかり生きていると言うことができます。私たちの毎日の暮らしと平和をギリギリのところで守ってくれているのが、今の日本国憲法です。
1968年6月に、アメリカ軍のファントム戦闘機が九大構内に墜落したとき、著者は九大の全学自治会副委員長(あとで学友会中央執行委員長)でした。つまり、九大ジェット機墜落事故に関する抗議行動の先頭に立っていたのです。
2019年6月には、九大でかつては反目しあっていた学生運動各派が思想の違いをこえて統一集会をもったことも紹介されています。「暴力」の問題は簡単にタナあげすることは出来ませんが、考え方の違いはわきに置いて、今のアベ政治は許さないという点で一致した集会として成功したようです。といっても、みんな70歳をこえています。今の若い人たちに、この成果をどうやって伝承するかが私たちの切迫した課題となっていると思います。
大牟田出身の著者は自治体問題を扱う団体の専従事務局長として長く活躍してきました。この3年間の論稿をまとめて本にしたものですが、これで6冊目とのこと。地方自治と日本の民主主義の発展のために今後ひき続き活躍されんことを心から願っています。
(2020年3月刊。2000円+税)

キリン解剖記

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 郡司 芽久 、 出版  ナツメ社
子どものころからキリン大好きだった著者が、死んだキリンの解剖に明け暮れ、ついに大変な発見をしたという話です。好きなことに打ち込めるって、すばらしいことですね・・・。
この本に登場するのは、ひたすら死んだキリンの解剖の話だけです。いえ、キリンと対比させるため、オカピとかコビトカバも登場します。でもでも、主役はあくまでキリンなのです。
大人のキリンの身長は、メスで4メートル、オスだと5メートルにもなる。
体重はオスで1200キロ、メスで800キロ。車1台分くらい。
キリンの首の長さは2メートル。重さは100キロから150キロ。頭の重さは30キロ。
明の時代、アフリカにまで遠征した鄭和(ていわ)は、ケニアからキリンを持ち帰り、永楽帝にキリンを献上した。うひゃあ、知りませんでした・・・。
キリンの寿命は、動物園で飼育して20年から30年。
解体と解剖は、似ているが、まったく違う。解剖には知識も技術も必須。身体の構造が頭に入っていなければ、解剖はできない。
キリンは1種だけと思われてきたが、今では4つの集団に分けられている。アミメキリン、マサイキリン、ミナミキリン、キタキリン。日本にはアミメキリンとマサイキリンの2種のみ。マサイキリンは、ギザギザした不規則な形の斑紋をもつ。アミメキリンは、多角形の斑紋から構成される、きれいな網目模様をもつ。
キリンが亡くなるのは冬に多い。すると、解剖するのは、クリスマスも正月もなく1週間ぶっ通しですることになる。すべてはキリン最優先の生活だ。
キリンの第1胸椎が機能的には「8番目の首の骨」である。これを著者は実証したのです。
キリンの第1胸椎は、決して頸椎ではない。肋骨があるので、定義上は、あくまで胸椎。しかし、高い可動性をもち、首の運動の支点として機能している。キリンの第1胸椎には、胸椎ではあるが、機能的には「8番目の首の骨」なのだ。これは、キリンが首を動かすときには、頸椎だけでなく、第1胸椎も動いているということ。
キリンが高いところの葉を食べ、低いところの水を飲むという相反する2つの要求を同時にみたすためだ。
キリンは、水を飲むために頭を下げるだけで、5メートルほども頭の位置が変化する。キリンが頭を下げたときには、血圧が急上昇する。一度下げた頭を再び上げるときには、頭部の血圧が急減少する。
日本に現在いるキリンは150頭。これは584頭のアメリカについで、世界第2位(2011年)。野生のキリンは10万頭、過去30年間で4割も減少した。
著者のつとめる博物館には、「3つの無」という理念がある。無目的、無制限、無計画。たとえ今は必要がなくても、100年後、誰かが必要とするかもしれない。それで、標本をつくり、残し続けていく。それが博物館の仕事だ。
正月返上でキリンの解剖を1週間もぶっ通しで敢行するなんて、並みの人間にはできませんよね・・・。科学の進展には、こんな地道で粘り強い研究が必要なことを自覚させられました。
それでも明るく調査、研究をすすめている著者の姿を想像して、救われました。
(2019年9月刊。1200円+税)

古墳時代に魅せられて

カテゴリー:日本史(古代史)

(霧山昴)
著者 都出 比呂志 、 出版  大阪大学出版会
三角縁(さんかくぶち)神獣鏡が日本で大きな話題となるのは、これが邪馬台国論争の重要資料だから。邪馬台国は九州にあったと考えている人は関西でも多い(6割)。ただ、これは、弱者(判官)びいきのせいかもしれない。私は、もちろん九州説です。日本の文明は九州に始まったと頭から信じているのです…。
土井ヶ浜で発掘された弥生人の骨格をみて、金関丈夫先生は、この長身の人々は朝鮮半島から新しい長身の渡来人がやってきたと説明した。今では、だいたいその説で落ち着いている。
現代日本人の血液型を調べると、A型が西に多く、東に少ないことが判明している。西高東低の配置だ。
新モンゴロイドの特徴は、胴長短足、顔は扁平で、デコボコが少ない。目はくりくりと丸いものではなく、細長い。これが現代日本人の平均的な姿。これは、2万年前のもっとも寒冷な氷河期を生きのびた東北アジア人のなかで形成されたと考えられる。私も新モンゴロイドなのかな…。
雄略大王は、中国の南宋に使いを派遣し、それまでと違って王一人だけの将軍の称号を受けとった。そして官僚制度を取り入れ、中央政権が指揮する軍事制をすすめ、各地の有力首長連合体制を解体させて、中央権力を強化し、国家形成を大きくすすめた。
6世紀の継体大王の時代に使われた土器には、朝鮮系のものが多く含まれている。
馬を飼っていたのは日本ではなく、朝鮮半島だった。日本には渡来系の人々が移住して始まった。文化的に高い渡来系集団が政治的に力をもち、継体大王を支える勢力になる盟主墳を築くようになった。
前方後円墳がもっとも巨大となったのは5世紀。
6世紀に入ると、前方後円墳の性格は大きく変貌する。6世紀になると、畿内では、さらに前方後円墳そのものが急速に減少していく。しかし、関東では逆に増加した。
古墳時代の中央政府は、地方の有力首長連合に支えられていた。しかし、中央政府は着々と力を蓄え、5世紀後半の雄略大王は地方の最大勢力である吉備や毛野を打ち負かし、管制、軍制、前方後円墳の祭祀イデオロギー定着で飛躍した。
ところが、雄略大王のあと、中央政権は磐井(いわい)の大きな反逆を受け、磐井を鎮圧したにもかかわらず、その後継者である息子は赦免するほかなかった。そのうえ、反逆者である磐井の墓(八女市)は九州最大の規模に築かれた。これは、中央権力は地方有力首長連合体の力を無視できなかったことを示している。
5世紀の倭の大王権力が朝鮮半島に執着していたのは、鉄資源を確保するためと考えられる。
6世紀も後半になると、岡山や京都北部で鉄を生産していたが、5世紀までは朝鮮半島に頼っていた。
急流の河川をもつ日本の稲作は、水を管理する非常に高度な灌漑技術が必要で、首長は高度な土木技術を身につけ、住民を組織して日本の河川を制御し、生産量を大きく伸ばした。その経験が首長のなかに受け継がれており、農民と固く結びついて共同体を支配する主張たちの力は大きく、中央の大王の力は相対的に低くなるので、前方後円墳体制につながった。
古墳時代をもっと知るには天皇陵とされている古墳を学術的に掘って解明していく必要があると思います。改めて勉強になった本でした。
(2018年12月刊。1700円+税)

時間はどこから来て、なぜ流れるのか?

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 吉田 伸夫 、 出版  講談社ブルーバックス
昔、『バックトゥーザ・フューチャーズ』というアメリカ映画がありました。私は日本でみたあと、フランスのエクサンプロヴァンスの映画館でもみました。40代前半のころ、1ヶ月間の外国人向けフランス語集中講座に参加したときのことです。午前中の授業が終わると、午後は何の予定もありませんでした。女性をナンパする語学力も勇気もありませんでしたから、ひとりでフランス語の勉強をかねて映画をよくみていたのです。
人間が過去にさかのぼることができたとしたら、自分の親の子どものころに出会うことだってありえます。そして、その親を殺してしまったら、私は存在しえなくなります。そうなったら、おかしなことになってしまいます。存在しえないはずの私という人間が現在、この世にいるとは、大いなる矛盾です。これを「親殺しのパラドックス」と呼ぶのだそうです。
相対論によると、時間は宇宙全域で均一に流れるのではない。時間は空間と一緒になって、時空と呼ばれる物理的実体を構成する。時空の構造によっては、連続的なルートをたどりまがら過去や未来に行くことも不可能ではない。
このように、理論的にはタイムトラベルはありうるというのです…。
野球のバッターは、ピッチャーが球を投げて、その球種が分かるまで待って、バットを振っているのではない。そんなことしていたら、バットにボールがあたることはない。バッターは、ピッチャーがボールを投げるのを予測してバットを振っている。ピッチャーの腕の振りや、投げ出されたときの球速やコースをかなりの確度で予測できるのだ。球種が分かるほどボールが進んでからでは、バットを振っても遅い。
時間は物理的に流れるのではない。流れがあるかのように人間は頭のなかで再構成している。「時間の流れ」とは、物理現象ではなく、人間の意識に由来するものである。
現代物理学の知見によれば、現在という特別な時間は存在しない。
多くの人は、さまざまな体験が時間の流れに沿って順に生起すると感じるだろう。しかし、そんな時間感覚は、脳が捏造(ねつぞう)している。
脳は、リアルタイムで変化する情報をそのまま受け入れることに時間の推移を感じるのではない。入力された情報をいったん神経細胞のネットワークで処理し、その結果として時間感覚を含む意識を形づくる。
「時間が流れる」という感覚も、こうした脳の処理過程を通じて生み出される。
あらゆる出来事が、ビッグバンの整然した状態が崩れていく過程の一部であり、ビッグバンから遠ざかる向きに進行する不可逆変化なのである。
アインシュタインの相対性理論にもとづく摩訶不思議な説明のオンパレードでした。
むずかしすぎましたが、なんとなく理解できるところもありました。
(2020年1月刊。1000円+税)

決定版・受験は母親が9割

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 佐藤 亮子 、 出版  朝日新書
三男一女の子どもたち全員を最難関の東大理Ⅲ(医学部)に合格させた佐藤ママの最新刊です。といっても、実は先の単行本を増補・改訂した新書なので、とても読みやすくなっています。なにより先の単行本との違いは、3兄弟が東大理Ⅲに合格だったのが、下の妹まで東大理Ⅲに合格して4人になったこと、そして、入試制度が変わっても入試合格に必要なことは変わらないことが強調されています。
子育ては、30年以上先を生きて活躍する人間をつくっていくことなのに、親は意外に祖父母の考え方に影響を受けて、数十年前の考えにとらわれていることが多い。
いつの時代でも、どのような制度に下でも、大切なのは基礎学力だ。
今後の入試は読解力の勝負だ。本や新聞を読む生徒は「読解力」の点数が平均よりも高い。文章を頭の中でいかに映像化できるかが、読解力の強化につながり、これからの入試の要になる。
子どもが小学3年生になったら、新聞記事を1日15分だけ読むことをすすめる。新聞を毎日読んでいると、活字に慣れてきて、文章を読むのが少しずつ速くなる。
国語の読解力を身につけることが、英語力の向上にもつながる。親が、まず家の中に活字の文化をつくる。かつてのテレビ育児、今のスマホ育児をやめよう。佐藤家はテレビは見ない。2階にあるテレビを見るときは1時間だけ。
家庭で親が目を話すことなく手助けしてあげて、初めて、子どもは勉強する習慣を身につけることができる。
4人の子には虫歯が一本もない。母親が小学6年生間で、ひとりに20分ずつかけて毎日歯磨きした。また、3ヶ月に1回は歯医者に行き、チェックしてもらい、帰りに「ごほうび」として、ファストフードの店に行った。だから、子どもたちは歯医者を怖がらないどころか、みな大好きだった。
佐藤家の子どもたちが勉強するのは、みな1階のリビング。子ども部屋はない。3人の男兄弟はリビングの隣の和室で寝る。
子どもたちは、一切、比較しない。全員、完全に平等に扱う。お兄ちゃんだから…ということはまったくない。
ほめて伸ばすというけれど、あまり大げさにほめすぎるのもよくない。ほめなかったときに、子どもが落ちこんでしまう。どんなときにも母は感情的にならず、何事にも動じないことが大切。点数が良かったときも悪かったときも、テンションを変えずに子どもたちに接するのがよい。
子どもたちが勉強しているあいだは母は寝ないで起きている。小学生のころは夜0時半まで。中学生になったら、子どもがやりたい限り、やらせる。そして、母親は午前4時半に起床する。午前6時には子どもたちは出発し、1時間40分かけて神戸の「灘」へ通う。
佐藤家には家庭用のコピー機があり、大活躍した。
100頁の英単語帳なら、半分の51頁から始めさせる。
東大の英語は経験準一級合格レベルなので、それに挑戦し、みな合格した。
日本史はマンガで勉強する。服装までイメージできる。
佐藤ママの勉強法は見事なまでに合理的です。それでも、1歳半で公文式を始め、国語と算数を学ぶというのには、さすがに私には抵抗があります。うちの子は小学1年生に入るとき、自分の手の指を顔にあてて一桁の足し算をしていましたし、自分の名前をひらがなで書けるくらいでした。まあ、それでもなんとかなりました。とはいっても、子どもを学校に楽しく通わせたいと願う親にぴったりの本だと思います。佐藤ママの愛情の深さと精神力、そして計画どおりに遂行できる身体のつよさにも感服します。
佐藤ママの夫君(弁護士)から贈呈していただきました。
(2020年2月刊。810円+税)

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