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女たちのシベリヤ抑留

カテゴリー:日本史(戦後)

(霧山昴)
著者 小柳 ちひろ 、 出版 文芸春秋
戦前の満州にいた日本兵がソ連軍によってシベリヤに連行され、極寒の地で過酷な労働を強いられたことはよく知られていますが、この本は、シベリヤに連行・抑留された日本人看護婦など日本人女性も多数いたことを発掘しています。
1945年8月、満州にいた日本軍兵士60万人がソ連の収容所に連行され、強制労働に従事された。これが、いわゆるシベリヤ抑留だ。そして、実は、そのなかには数百人もの日本人女性がいた。たとえば、チャムス(佳木斯)第一陸用病院の看護婦150人。
看護婦は二つの系統があった。陸軍看護婦と日赤看護婦。日赤看護婦になるのは非常に難しく、合格倍率は、ときに100倍をこえた。当時の軍国少女たちにとって、憧れの存在だった。
この本には「独ソ戦の直後に満州に攻め込んだソ連のしたたかさ」という間違った歴史記述があり、また、シベリア抑留された元日本兵のなかの「民主化」グループについても偏見にみちた記述としか言いようのない決めつけがあったりして、歴史認識に欠けるところが気になるのが残念でした。しかし、それでもシベリヤに抑留されていた日本人女性の存在、その生活状況を掘り起こした点は高く評価したいと思います。
シベリヤで日本人女性はたくましく生きのびたことを紹介しているのには目を開かされました。やはり、女は強しです。
男性が栄養失調になってフラフラしているときにも、同じものを食べているのに女性はやせなかった。同じものを食べて、男性は下痢したり病気したりしたが、女性は病気しなかった。食べる量が少なくてもガマンできた。女性は、体力も気力も男性に比べて強かった。男性は、気持ちでも体力でも、ポキッと折れてしまった。ただし、男性は、「あの食事で、あの重労働じゃ、耐えられない」のもあたりまえだった。
班単位でまとまってシベリヤに抑留されたのはチャムス第一陸軍病院467班だけだったが、少なくとも450人以上の看護婦が満州でソ連軍の捕虜とされた。
引揚第一便は1946年11月に日本に帰国したが、そのなかにはチャムス第一陸軍病院の看護婦20人もふくまれていた。ソ連は国際社会からの非難をかわすために、人道的姿勢をアピールすべく女性を第1号帰還者リストに加えたのだった。
NHKのBS番組を本にしたものです。シベリヤ抑留に関心のある人には欠かせない本だと思いました。
(2020年3月刊。1700円+税)
 雨上がりの日曜日、午後から庭に出て畑仕事をしました。朝のうちにアスパラガスを4本収穫していましたが、その隣に大きなアマリリスが見事に咲いていて、つい、「ややっ、キミもいたんだね」と叫びそうになりました。去年も咲いていましたが、今年ははるかに大きいのです。
 ジャガイモ畑の雑草を孫と一緒に取り除きました。隣の畑のジャガイモは地上部分が盛大に葉を大きく伸ばしていますが、私の畑は、それに比べると、いかにも貧相です。でも、それは去年もそうでした。それでも、地中のジャガイモは、ちゃんと大きくなってくれましたので、今年も、きっと地中では大きな実をつけてくれることと固く信じています。
 畑仕事を終えようとすると、梅の実がいくつか落ちていました。来週は梅の実ちぎりをしなくてはいけません。梅酒用です。
 夕食のとき、2歳の孫がアスパラガスをむしゃむしゃ食べてくれました。
 夜7時半、ようやく暗くなりましたので、毎年恒例のホタル探索に出かけました。歩いて5分足らずのところの小川にホタルが出るのです。いるかな…、あっ、いた、いた。いました。ほのかに明滅するホタルが、フワリフワリと飛びかっています。今年は、コロナのせいか、「ホタルの里」の手入れがされていないため、そこより、むしろ近辺の小川あたりにホタルをたくさん見かけることができました。
 歩いて5分もかからないところにホタルを見て楽しめるのは、田舎暮らしの良さのひとつです。

眠れる美しい生き物

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 関口 雄祐 、 出版 エクスナレッジ
鳥は飛びながら眠ることができる。高高度で、上昇気流に乗っているときは、捕食のリスクもなく、衝突・墜落のリスクもない。ただし、グンカンドリは地上では10時間も眠るのに、飛行中はわずか40分ほどしか眠らない。
鳥類は半球睡眠できる。大脳半球を交代に休ませるのだ。鳥類の先祖は恐竜なので、恐竜も半球睡眠していた可能性はかなり高い。
ウシは、食べる時間と眠る時間の両立を図った。食べながら、うとうと眠り、眠っているあいだも食べ続ける。
動物園のカバのオスは毎日20時間も眠っている。ところが、メスが同居すると、わずか5時間しか眠らなくなった。相手のメスは、一貫して7時間以上は眠っているのに…。
イヌも、近年、ヒトと同じく、睡眠時無呼吸症候群があるのが発見され、問題となっている。
オオカミには天敵がいないので、ぐっすり眠るが、仲間とぴったりくっついて眠ることはない。
オオカミ1頭が暮らすのに30平方キロが必要とされ、7頭の群れを維持するのには東京都全域の相当する自然が必要となる。
ミーアキャットは、群れの順位は厳しく、ボスは日中37%も休んでいるのに、下っ端だとわずか10%しか休めない。
ライオンとトラが併存しているところではトラが強い。トラの安眠を妨害する唯一のものは空腹だ。なーるほど、ですね。
ナマケモノは、野生の環境では9~10時間しか眠っていない。それほど怠け者ではない。
コアラの活動時間は、夜中の6時間だけ。
マッコウクジラは海の中で、垂直姿勢で眠る。睡眠時間は7時間で、最長30分は眠っている。
タコは夜行性で、睡眠中に筋肉が無意識で動いてしまうので、色を激しく変化させながら眠っている。
脳のないクラゲも実は眠っている。
ゴリラが眠るのは、寄生虫のいないところで、眠りを妨害するゾウの群れから離れているところ。
睡眠は生き物に必要不可欠なものですが、生き物がいろんな眠り方をしているのが写真でよく分かりました。ほほっとする、楽しい写真集でもあります。
(2020年1月刊。1600円+税)

知りたい!ネコごころ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 髙木 佐保 、 出版 岩波科学ライブラリー
私はイヌ派で、ネコ派ではありませんし、ネコを飼ったこともありません。
それでも、わが家の周囲には絶えずネコが巡回していますし、庭にまで平気で入ってきて、追い出そうとしても、遠くだと、なんで怒ってるの…、と平然としています。
この本はネコ派の著者がネコのこころを科学的に究明しようと、涙ぐましい実験をくり返した成果を紹介しています。
ネコカフェ。海外にもあるけれど、これほど町中にありふれているのは日本だけ。わが町にもありましたが、そんなにもたずに閉店してしまいました…。
縄張りをもつネコにとって、自分のテリトリー以外は、すべて「そと」。そこに飼い主がいようと関係ない。
ネコはとっても気まぐれで、人間の思うようには決して動いてくれない。
ネコはとても鋭敏な感覚をもっているので、「雰囲気」という、目に見えない空気感のようなものを本当に鋭く察知する。
ネコもイヌと同様に、「さっきはおやつがあった」ことを思い出し、それに応じてお皿を探索できることが実験で判明した。
実験にあたって、一度機嫌を損ねたネコの機嫌を取りなおすのは、それはそれは大変。ネコは嫌なことはすぐに覚えるので、モニターの前に2度と落ち着いて座ってくれなくなる。
飼い主の声を聞かせたあと、知らない人の顔写真を示したとき、知らない人の声がしたのに飼い主の顔写真を示したとき、ネコは画面を長く見ることが分かった。これを期待違反の結果という。つまり、ネコも飼い主の声を聞いて顔を想像していることを示唆する実験結果なのだ。
ネコカフェのような、毎日、知らない人に接触している超特殊な環境にいるネコを調べることによって、同じ刺激を見せても成育環境によって反応に違いが生じることが分かった。
いやはや、たくさんの気位の高いネコを相手に地道な実験を繰り返したなんて、本当にお疲れさまでした。でも、おかげで、こうやって猫の心理状態を少し解明できたのです。大きな拍手を送りたいと思います。
(2020年2月刊。1200円+税)

せき越えぬ

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)
著者 西條 奈加 、 出版  新潮社
東海道は箱根の関をめぐる人情話です。ころは文政の時期。シーボルトが時代背景として登場してきます。そうです、蘭学に目を向ける人々もいた時代です。
私は、この本を読みながら山田洋次監督による時代劇『たそがれ清兵衛』に出てくる下級武士のつつましい暮らしぶりの情景を思い出しました。
主人公は武士といっても、わずか四人扶持でしかない武藤家の跡取りです。勉学よりも行動力で世の中をまっすぐ渡ろうという正義感があります。
主人公が少年時代に通った道場では、出自や家柄はまったく斟酌(しんしゃく)されず、平等に扱われた。この道場には町人の子も参加していたことになっています。果たして本当にそんな「平等」優先の道場が江戸時代にあったのでしょうか…・。
また、主人公の親友は、蘭学を教えてくれる塾に通っていたということになっています。そして、それが周囲の圧力から閉鎖されたというのです。
これまた、本当にあった話なのだろうか、と疑問を感じました。
恐らく、どちらも本当のことなのでしょう。身分制度が固定していたと言われている江戸時代でも、お金をもつ町人が大金を出して武士になれていたようです。やはり、お金の力は偉大なのですね…。
関所の役割、関所破りの実態、そもそも江戸時代の旅行というのは、どんなものだったのか…。関所破りは、どれほどあっていたのか、失敗して処刑されたという人はどれほどいたのか…、いろいろ知りたくなります。
それにしても、じっくり読ませるストーリーでした。いろんな伏線がどんどんつながっていくのには、小気味の良さも感じられます。江戸情緒たっぷりの良質の時代劇映画をみている気分で、最後まで一気に読みすすめることができました。
(2019年11月刊。1500円+税)

ふくしま原発・作業員日誌

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 片山 夏子 、 出版 朝日新聞出版
東京新聞の記者が9年間にわたって福島第一原発の後始末処理にあたっている作業員に取材したものが一冊の本になっています。
作業員は大きなフィルターの付いた全面マスクをかぶらされるが、この全面マスクは毎回、返却し、アルコール消毒はされるものの、使い回しになるので、臭いがする。納豆、にんにく、アルコールなどの強烈な臭いがすると、気持ち悪くなるほど。うへっ、これは困りますよね…。
この全面マスクは慣れないうちは、かなり息苦しい。隙間から放射性物質が入ってくるのを恐れて、全面マスクをきつく締めすぎると、作業できないほど激しい頭痛に襲われる。緩くすると、外気でマスクが曇るだけでなく、放射性物質が入りこみ、内部被ばくする恐れがある。
防護服の素材はポリエチレンの不織布(ふしょくふ)で、放射性物質の付着は防ぐが、ほとんどの放射線を通してしまう。防護服といっても、完全に身を守ってくれるものではない。
原発の仕事の受任は複雑に入り組んでいる。
東電が、日立や東芝、大手ゼネコンなどの元請企業に仕事を発注し、元請企業の下に、第一次下請企業、さらに第二次下請企業と、いくつもの企業が重なる多重下請構造になっている。実際には、7次や8次下請までいるし、下請企業のあいただに、作業員を紹介して紹介料や仲介料をとる仲介業者が入っていることもあり、何次下請企業までぶら下がっているのか分からない場合もある。そして、なかには暴力団関係者がからんでいることがある。
下請企業同士で仕事のとりあいをすることもあり、そんなときには、元請や上の下請の幹部を接待することがある。
福島第一原発の復旧工事の現場では、作業員が次々に亡くなっている。ところが、病名が心筋梗塞だったり、急性白血病だったりして、会社は責任ないと逃げるばかり。
作業途中で汚染れを頭からかぶってしまい、バリカンで丸坊主にされたという人もいる。
3.11のときは菅首相でしたが、そのあとの野田佳彦首相は、12月16日、「事故そのものは収束に至った」と、無責任に断言した。これは、安倍首相の東京オリンピック向けの「アンダーコントロール」発言につながるわけです。
現場作業員は被ばく線の上限がある。3.11の事故前は15~20ミリシーベルトだったのが、事故後は30~50ミリシーベルトへ大幅に緩和された。そして、5年で100ミリシーベルトという国の制約もあった。ところが、これは、年度で「リセット」されるのだった。もちろん、生身の人間への影響が「リセット」されたからといいてゼロになるわけではない。
3.11事故によって、1号機から4号機まで、みな「炉心溶融」したことは今では間違いない事実だ。ところが、今なお東電も政府も公式にはこれを認めていない。東電は清水正孝社長(当時)が、「炉心溶融という言葉は使うな」と指示していた。原発事故の恐ろしさをそのまま伝えてしまうコトバなので、あくまで軽く見せかけようとしたのです。
また、高濃度汚染水も、「滞留水」なるコトバに置き換えられました。これまた、ひどい隠蔽工作です。
3.11事故のあと、東電の社員は次々に辞めていった。社員数3万9千人のうち、例年だと130人くらいの退職者が460人にのぼり、29歳以下が4割超だった。
現場の作業員は仕事をしてお金を稼ぎたいがために、線量を低くしようと工作する。すると、将来、病気になったとき、こんな低線量では病気との因果関係はないと会社から反論される恐れがある。
日当が2万5千円だったのが、1万3千円となり、残業手当がつかなくなった。そして危険手当として1日1万円出ていたのが4千円になった。食費も1日1500円出ていたのがゼロになった…。
現場作業員にガンが多発しているのでは…というレポートがありますが、なんと著者自身が喉頭ガンと診断されたとのこと。これには驚きました。のどのポリープから出血し、吐血したのです。
460頁にのぼる大作ですが、この9年間はあっというまのことです。そして、肝心の原子炉のデブリはまったく手つかずの状態なのです。いったいあと、何十年、何百年と続くのでしょうか…。それでも原発が必要だと言いはる人の気がしれません。
フクイチの事故は決して他人事(ひとごと)ではないのです。
ちなみに、私は映画『フクシマ50人』もみています。吉田所長以下の皆さんが必死でがんばったというのはまったく間違いないわけですが、原発そのものは人間の手にあまる存在だというのを、もう少し強調してほしかったというのが私の感想です。
よく出来た本です。一人でも多くの人に読んでもらいたいと思いました。
(2020年4月刊。1700円+税)

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