法律相談センター検索 弁護士検索

銀河の片隅で科学夜話

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 全 卓樹 、 出版 朝日出版社
コロナ・ウィルスのせいで、毎日、気が滅入ってしまいそうですが、そんなときには、宇宙のスケールで考えてみるのもいいことですよね。
1日の長さは、1年に、0.000017秒ずつ伸びている。0がコンマの下に4つ並んでいます。
3億5千万年前は1年は385日だった。このとき1日は23時間。6億年前は1日が22時間、9億年前だと20時間しかなかった。
今から500億年すると、地球がまだあるとして、1日の長さは今の45日になってしまう。
もちろん、そんなころには、あなたも私も星のくずの彼方を原子にでもなって浮遊しているだけなんでしょうが…。
天の川銀河の中心には太陽を2千の2千倍、400万倍集めて、極限まで縮めたような、想像を絶する怪物、超巨大ブラックホールが鎮座している。あらゆる存在の中心に暗黒が棲んでいるのだ。しかも、この暗黒はただの虚無ではない。なんともはや、想像を絶する世界です。
宇宙飛行の費用は、今のところ、1回68億円。10年後には20億円にまで下がる見込み。いやはや、そんな大金を出せる超大金持ちが世界にも日本にもいるというのが信じられません。
この本は東大のなかでも難関で天才たちの集まるところと言われる理物(りぶつ。理学部物理学科)卒の著者が縦横無尽に語っているのですが、最後に紹介されるアリの話にもっとも心打たれました。なんと、奴隷になったアリたちも反乱をすることがあるというのです。
アリも人間と同じく、自由を愛し、そのために命さえ投げ出すのだ。
こんなことを知ることができるのも多読しているからのことです。なので、本読みはやめられません…。
(2020年4月刊。1600円+税)

誰も見ていない書斎の松本清張

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 桜井 秀勲 、 出版 きずな出版
これは面白い本です。
松本清張の作品鑑定は「面白いかね?」の一点に尽きる。なので、松本清張は文芸評論家にはなれない。小説は面白くなければならない。これが松本清張の単純持論だった。
松本清張は光文社の編集者である著者に対して、プロットを話して聞かせ、「どうかね、面白いかね?」を連発した。
松本清張は話したものと書いたものとが、ほとんど違わなかった。著者が顔をしかめたり、首をひねると、そこを修正していく。
昭和40年前後、松本清張はあまりに書きすぎて、手が震えたりする書痙にかかった。このとき、速記者が口述筆記をして助けた。大作でも松本清張は口述速記が可能だった。
松本清張には下調べして下書きするライターがいると聞かされたことがありますが、どうやら嘘のようです。あまりの多作と、資料の発掘がすごすぎるので、みんなが憶測したのでした。
松本清張はよく旅をしたし、丹念に現場取材した。電話取材も巧みだった。取材力を駆使して、短い一遍を書くときでも、惜しみなく時間、労力、資料を注ぎ込んだ。
松本清張には、作家の資質は才能ではなく、原稿用紙を置いた机の前に、どれくらい長く座っていられるかという忍耐強さによるという特異な考え方があった。
著者が作家になろうと決意したとき、1日16時間、机の前に座れとアドバイスした。司法試験のための受験勉強なみですね…。すごい努力です。
松本清張の忍耐力こそが、巨大な作品量を生み出した起爆剤になった。
松本清張は、著者が過去の作品をほめても、ちっともうれしそうな顔をしなかった。松本清張の真骨頂は、次に何を書くか、自分にはどんな才能が眠っているかの二点についてだけ、生き生きとした関心を示す点にあった。
著者は22歳のとき、43歳の松本清張に出会った。
徴天才の松本清張の人間性が惜しみなく語られていて、とてもとても面白い本でした。
著者は210冊をこえる本を書いた作家でもあるそうです。失礼ながら知りませんでした。
(2020年1月刊。1500円+税)

考えるナメクジ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 松尾 亮太 、 出版 さくら舎
わが家の台所の板張りの床に、ときにぶっといナメクジ様が鎮座しておられます。そんなときは、うやうやしく白い紙に包み外に放り出させていただいています。もう、もったいないので塩を振りかけて溶けるのを待つようなことはいたしません。
そんな身近なナメクジを研究対象とし、研究室で何千匹も飼って育てているという奇特な学者がこの世にいるのです。信じられませんね…。
日本でよく見かけるナメクジは外来種のチャコラナメクジで、在来種のほうはフタスジナメクジ。こちらは体が大きくて、這い方がスローモー。でしたら、わが家に出没するのは在来種のフタスジナメクジでしょうか…。
著者の研究室では20年近く、常時3000~5000匹のナメクジを維持・繁殖している。現在、なんと38世代目とのこと。飼育箱を取り替え、エサを補充するのに1回あたり3時間かかる。エサは野菜くず。
ナメクジは単細胞生物なので、「動物」ではない。
ナメクジは、水さえあれば、絶食しても1ヶ月半は生きている。
ナメクジは明るい場所を嫌い、暗い場所を好む。それは乾燥を避けるため。カタツムリと違って殻をもたないナメクジの宿命。
ナメクジの寿命は1年から2年ほど。
ナメクジを生(なま)で食べると、寄生虫が脳まで達して重篤な病気になることがある。
ナメクジには脳も心臓もある。その血は赤くない。
ナメクジは頭部右側の孔(あな)から受精卵を産み落とす。
ナメクジの脳は、大きさ1・5ミリ角ほど。ナメクジには、脳で記憶するだけでなく、触覚にあるニューロンにも保持されている。
そうなんです。ナメクジには脳があり、きちんと記憶できるのです。
ナメクジの脳(前頭葉)をピンセットで潰しても、1ヶ月で前頭葉は再生する。大小二対ある触覚も、切断されても自発的に再生する。
ノロノロというペースのナメクジは、1分間に18センチ進む。1時間では10.8メートル進む計算だ。
つかまえどころのないナメクジを研究し続けているなんて、すばらしいことだと思います。それにしても、よりによってナメクジを研究対象とし、さらに人間との相違点を探ろうというのに、ほとほと驚嘆するばかりです。
(2019年10月刊。1600円+税)

総力戦としての第二次世界大戦

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 石津 朋之 、 出版 中央公論新社
第二次世界大戦の実際をたどった貴重な労作です。
総力戦とは何か…。戦闘員(軍人)と非戦闘員(一般国民)の区別を無視して戦われる戦争のこと。そこでは、軍事力はもとより、交戦諸国の経済的、技術的、さらには道義的な潜在能力が全面的に動員される。
そして、国民生活のあらゆる領域が戦争遂行のために組織され、あらゆる国民がなんらなかの形で戦争に関与することになる。したがって、敵に対する打撃は、単に敵の軍事力だけでなく、「銃後」の軍需生産はもとより、食糧ならびに工業生産全般の破壊、およそ国民の日常生活の麻痺にまで向けられる。
さらには、国民の士気の高揚、逆にまた敵国民の戦争への意欲をそぐための宣伝、すなわち戦争の心理的側面もきわめて重要な意味をもつことになる。端的にいうと、「総力戦」の時代においては、戦争の勝敗は、もはや戦場で決まるのではなく、国家の技術力や生産力の動員能力の有無によって決定される。
ドイツは西方戦線で圧倒的な物量をもって攻撃を始めたのではない。ドイツ軍と英仏軍は戦力はほぼ互角だった。ドイツ軍は空軍力では優位だったが、戦車の数では劣っていた。フランス軍3000車両、イギリス軍200車両に対し、ドイツ軍2700車両だった。そして戦車の性能に決定的な差異はなかった。ドイツ軍は、歩兵部隊や砲兵部隊の一部は最後まで馬に頼っていた。
「電撃戦」でのドイツ軍の勝利は、優れた運用の結果であり、物量の差ではなかった。
英仏連合国軍の大多数の将校にとって、戦車は「馬車の延長」でしかなかった。
政権を掌握したあとのヒトラーは、あまり大衆の面前での演説を好まなくなった。これに対して、チャーチルは、ラジオなどを通じて常に国民に語りかけた。
わが安倍首相は記者会見のときでさえ、プロンプターというカンニングペーパーなしでは話せないようです。その点、ドイツのメルケル首相とは格別の開きがあります。
ドイツのロンメル将軍について、現在では必ずしも名将と呼ぶに値する軍人ではなかったという評価が歴史家のあいだでは一般的だとのこと。要するに、兵站(へいたん)を無視して、戦術的な勝利ばかりを追求していた軍人だと酷評されているわけです。
ノルマンディー上陸作戦の始動が知らされたとき、ヒトラーは寝ていたわけですが、仮りにすぐ起床して動き出したとしても、連合軍の上陸地点の本命はパ・ド・カレー地区であって、ノルマンディーは陽動作戦だと思っていたので、たいした対策はとらなかっただろう…、としています。なーるほど、ですね。
それにしても、ドイツ軍の目くらましのために連合軍は、いろんなことを準備していたことを改めて知りました。要するに、パ・ド・カレー上陸作戦を本物だと勘違いさせるため、パットン将軍を責任者とする軍団を新設し、しきりに無線で連絡をとりあっていた様子まで演じていたわけですし、お金も手間ヒマもかけていました。
ノルマンディー上陸作戦のとき、アメリカ軍はオマハ海岸で苦戦したが、それはドイツ軍の戦力を過小に評価していたことによる。
日本では戦前・戦後の現代史について、学校では十分な教育がなされていない。それで、日本人は十分に戦争を認識していない。もどかしい限りです。
第二次世界大戦における日本の果たした役割や現実について、もう少し分かりやすい解説があればよかったのですが…。
あなたも、図書館で手にもって通読してみてください。
(2020年3月刊。3500円+税)

未来のアラブ人

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 リアド・サトゥフ 、 出版 花伝社
シリア人の父とフランス人の母のあいだに生まれ、幼年期をリビア、シリアそしてフランスで過ごした著者が、誕生から6歳までの自分の体験をマンガで紹介しています。
リビアはカダフィ政権下にありました。自称・社会主義を目ざしていたようですが、とにかくモノが極端にない生活だったようです。
そして、シリアではアサド政権下です。おそらく父アサドの時代でしょう。シリア人の父は成績優秀、奨学金を得て、パリのソルボンヌ大学に留学し、そこでブルターニュ出身の母と出会ったのです。
父はシリア出身で、イスラム教はスンニー派でした。そして、ドクターを目ざし、ドクターを得ると、リビアに渡って大学の教員になったのでした。
そして、いったんフランスに戻ったあとシリアに渡ります。ところが、フランス人の母をもつ子ども(著者)は、「ユダヤ人」とされ、シリアの子どもたちから、親戚でありながらもいじめられたり、大変な日々です。
それでも、著者は母親とともにたくましく生き抜いていくのでした…。
リビアそしてシリアでの過酷な生活がマンガで実によく描かれていると思いました。
オビにフランス発200万部の超ベストセラーと書かれています。ほんとかしら…と疑ってしまいますが、そんじょそこらの薄っぺらなマンガ本とはまるで違っていることは間違いありません。世界を複眼的にみるためには必読(見)の本だと思いました。
(2020年3月刊。1800円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.