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弁護士になった「その先」のこと

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 中村 直人、山田 和彦 、 出版 商事法務
ビジネス(企業法務)弁護士として名高い著者が、所内研修で若手弁護士に話した内容がそのまま本になっていますので、すらすら読めて、しかも大変面白く、実践的に約に立つ内容のオンパレードです。
「企業法務の弁護士は、大半がつまらない弁護士である」、なんてことも書かれています。問われたことしか答えない、「それは経営マタ―だから、これ以上は、そっちで考えて」と知らん顔をして逃げる弁護士を指しているようです。
企業のほうからみると、大半の企業法務の弁護士は物足りない。上場会社の大半は、今の弁護士に満足していない。彼らは、常に優れた弁護士を探している。なーるほど、ですね。
昔は法務部に30年もつとめているという猛者(もさ)がいたが、今では法務担当も4年から5年でどんどん変わっていく。なので、新しい弁護士も喰い込む余地があるというわけです。
評価の低い弁護士は、結論を言わない、ムダにタイムチャージをつけて請求してくる。自己保身ばかり気にする、お金くれとうるさい…。
高い評価の弁護士は、仕事は速く、答えを明快に言い、その理由を説明してくれる。目からウロコの言葉をもっている。これまた、なーるほど、ですね。
法律論点は、事実関係の調査のあとに考えること。先に理屈を考えて、それに事実をあわせてはいけない。それでは説得力のない机上の空論になる。企業法務は、しばしばそれをやってしまう。頭のいい人の弱点。
血の通っていない主張は裁判官の心を打たない。先に法律ありきっていうのは、絶対にダメ。
楽しく仕事ができる弁護士が、一番良い弁護士。
弁護士、誰もが1件や2件くらい、気の重い事件をかかえている。いやだなあと思って逃げていると、犬と一緒で、追いかけられる。なので、気の重い事件は後まわしにしない。依頼者には正直に、そして正義に反する仕事はしない。
勝ったときには、しっかり喜ぶ。
毎日にスケジュールも中長期的なスケジュールも、自分で管理する。自己決定権をもつことが幸せの源泉。
会議は2時間以内。
書面を書き出したら一気に書く。途中で別の仕事をしない。文章が途切れてしまう。
起案するのは若手。それに先輩が深削する。そうやって学ぶ、
大部屋だと電話の受けこたえまで自然と身につく。
私よりひとまわり年下のベテラン弁護士ですが、さすがビジネス弁護士のトップに立つだけのことはある話の内容で、大変共感もし、勉強にもなりました。
(2020年7月刊。2000円+税)

博士の愛したジミな昆虫

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 金子 修治、鈴木 紀之、安田 弘法 、 出版 岩波ジュニア新書
このジュニア新書は、本来は子ども向けなのでしょうが、私の愛読する新書です。今回は10人の昆虫博士が登場する、楽しい昆虫の話です。
モンシロチョウの話も面白いです。モンシロ属の幼虫の食草は、すべてアブラナ科の植物。アブラナ科の植物にカラシ油配糖体という毒性のある防衛化学物質をもっている。このため、アブラナ科植物は多くの昆虫に食べられないですんでいる。ところが、モンシロ属の幼虫は、この防衛化学物質に対処する能力をもっている。しかも、それだけでなく、モンシロ属のチョウは、この防衛化学物質を手がかりとして、アブラナ科の植物を探し出し、そこに産卵する。
モンシロ属の幼虫に寄生しようとするヤドカリバエは、幼虫の食草の上を飛びまわり、葉にある幼虫の食痕(食べたあと)を目で見て探す。そして、それらしいと思うと、触角で点検する。そのときの決め手は、幼虫のだ液と植物の汁液が光合成してつくり出した化学物質。これでモンシロ属の幼虫だと分かれば、4~5分間に及ぶ丹念な探索をする。幼虫のほうも、寄生者を避けるべく、10分ほど食べてはその場を去り、50分間はなれたら戻ってくる。
モンシロのオスは、移動せず、平均2週間あまりの一生を羽化した畑で過ごす。モンシロが羽化するキャベツ畑は、寄生者も羽化する生息場所。キャベツ畑は、モンシロや寄生者が2世代から3世代くり返すと、キャベツの収穫期を迎えて消滅する。
モンシロがキャベツを好むのは、キャベツの栄養分が高くて卵をたくさん産めるからではない。キャベツは日向に植えられ、短期間で収穫される作物で、このことがモンシロに天敵から逃れる術(すべ)を与えている。
なるほど、ですね。私も前に庭でキャベツを栽培したことがありましたが、毎日毎朝の青虫とりに見事に敗退してしまいました。割りバシでとってもとっても、青虫が毎朝いくつも湧き出てくるのは、本当に不思議でした。
怖いヒアリにも強力なライバルがいるとのこと。タウニーアメイロアリ。このアリは、ヒアリに毒をかけれると、お尻から出した自らの毒液で、身体を洗浄している。この毒液の主成分は蟻酸で、ヒアリのアルカリ性の毒を中和する。なので、このタウニーアメリロアリもヒアリに代わる侵略種と化している。これまた怖い話です。
テントウムシが発育するには、エサになるアブラムシが必要。ナミテントウムシは最上位の捕食者。この強者と、それ以外の弱者が一緒に生活するヒケツは、強者のナミテントウムシのエサのアブラムシが減少して多種を捕食しはじめる前に、弱者は発育を完了するが、ナミテントウムシがいる寄生植物をさけて産卵すること。
昆虫は、4億年も前から地球上で生活し、100万種以上の種類に分かれ、地球上のあらゆるところで生活している。
自然界の共存する仕組が、とても巧妙であることを教えてくれる新書です。
(2020年4月刊。880円+税)

産んじゃダメだと思ってた、産んでみたら幸せだった。

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 たんたん、カネシゲタカシ 、 出版 幻冬舎
愛する男性と結婚してやりたいことをやっている女性なのに、子どもをつくったらダメだと思い込んでいた…。なぜ、どうして??それは、自分が生きづらい人間だったから。
見捨てられた感、愛が足りないかん、子ども時代をやり残した感があるので、子どもを産まないことは正義だと考えていた。
小さいころの母親は、いつも不機嫌、口答えすると無視。見捨てられ不安がつのる…。
父親は自己愛の強い人。そのパパにバカにされないかな、嫌われないかな…。
母親は子どものために我慢しているという。だったら、母親なんかになりたくない。子どもなんて、つくらないほうがいい…。
父にはほめられず、母には叱られる。そんな家庭に育ったので、自己肯定感の低い人間になってしまった。
高校に入ってすぐに中退。でも定時制高校に入り、音楽に出会った。そして短大にすすむ。実家も出て一人暮らしをはじめた。
交際をはじめた彼に病院に行くように誘われ、医師から境界性パーソナリティ障害だと診断される。そして薬を飲みながら、生きづらい日々を穏やかな日々に少しずつ変えていったのでした。すべては自己肯定感をとり戻すために…。
子どもを産んだらダメな三つの理由。その一、不幸の連鎖を止めたい。その二、女性を卑下する女性は子育てしてはいけない。その三、子どもにヤキモチを焼く母親に子育ては無理だから。
だけど、愛とは無限のもの。ありのままの自分でいいんだ。
よく描けたマンガ(絵)が、このストーリーがよくよく伝わってきます。すごい絵です。
著者は2度の流産を経て、3度目は、ついに出産へ。苦しい苦しい出産だったようです。これまた、すごくよく分かる絵です。そして、ついに赤ちゃん(娘)が誕生し、かつて著者を追い詰めていた両親とも和解が成立するのでした。
タイトルの意味が本当によく分かる、すばらしいマンガ本です。
(2020年3月刊。1100円+税)

大名倒産(上)

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)
著者 浅田 次郎 、 出版 文芸春秋
ときは文久2年(1862年)8月のこと。
越後丹生山(にぶやま)三万石の松平和泉守(いずみのかみ)信房(のぶふさ)21歳は、老中に呼び出された。
献上品の目録はあるが、現物が届いていない。いったい、いかなることか…。
「目録不渡」であった。これは一大事…。どうしてこんなことが起きたのか。
借金総額25万両。年間の支払利息1割2分は3万両。ところが、歳入はわずかに1万両。いったい、どうやって支払うのか…。
藩主は前藩主の父に問うた。
「父上にお訊ねいたします。当家には金がないのですか」
隠居の身である父は気魂を込めて返した。
「金はない。だからどうだというのだ」
質素倹約、武芸振興、年貢増徴。これしかない。
次に考えついたのが、計画倒産と隠し金。いったい、どうやって…。
25万両の借金に対して1万両の歳入しかない藩財政。この財政を再建する手立てなど、あろうはずもない。
ところが、ひょっとして…。
さすがに手だれの著者です。ぐいぐいと窮乏一途の藩政のただなかに引きずり込まれてしまいます。さあ、下巻はどんな展開になるのでしょうか…。
(2019年12月刊。1600円+税)

日本の古墳はなぜ巨大なのか

カテゴリー:日本史(古代史)

(霧山昴)
著者 松木 武彦、福永 伸哉ほか 、 出版 吉川弘文館
3世紀中ころすぎ、大和盆地東南部に全長280メートルの箸墓(はしはか)古墳が誕生した。古墳時代のはじまりだ。弥生時代には各地でそれぞれ独立した勢力が存在しつつ地域ごとにまとまりをみせていたが、古墳時代にいたって、少なくとも西日本一帯の勢力をまとめる政体が成立したと理解されている。
箸墓古墳については、「日(ひる)は人作り、夜は神作る」という神秘的な仏承が『日本書紀』に記されている。
6世紀に入ると、継体大王陵とされる今城塚(いましろづか)古墳を経て、墳丘長が300メートルをこえるような巨大な古墳がつくられる。大規模な墳丘を築造するためには、大きな権力が必要なことは自明のこと。
王墓が3回も巨大化したが、これは、いずれも複数の王統間における争いが激しくなるときに進行した。逆に言うと、世襲的王権が確立されたら、自らの正統性を巨大な墳墓で表示する必要度は下がることになる。
なーるほど、ですね…。
日本列島では、3世紀の半ばから7世紀の前半にかけて、16万基もの墳丘墓がつくられた。この400年間につくられた墳丘墓を日本考古学では「古墳」と呼び、この時代を「古墳時代」と名づけている。
弥生時代の墳丘墓(ホケノ山)は、体積1万立方メートルで、労働量は4.5万人。これに対して箸墓古墳は30万立方メートルで、135万人を必要とする。桁違いの差異がある。
箸墓古墳が巨大化したのは、倭人社会で初めての統一王の葬送にふさわしいとみることができる。
墳丘長280メートルの箸墓古墳で出発した倭国王陵は、5世紀初頭のミサンザイ古墳で365メートルに達した。そして、さらに5世紀初・中期には400から500メートルという超巨大な規模の古墳となった。倭国王陵の巨大化は、ヤマト政権の国内向け戦略の産物であった。
既存の大和盆地の王陵をはるかに凌(しの)ぐ規模の前方後円墳の築造によって、新勢力の「実力」を列島内に広くアピールする狙いがある。
日本の古墳には、古墳時代を通じて、基本的に4種がある。前方後円墳、前円後方墳、円墳、方墳の種類がある。この4種もの併存は、エジプトなどには認められず、きわめて珍しい。規模も500メートルから10メートルのものまで、大小の変化にとんでいる。
古墳時代は、中央政権たるヤマト政権を中心に、推定で300万人をこえる人々が、緩やかながらも政治的統合を果たした初期国家の社会である。
文字は、ほとんど普及していない段階ではあるが、エリート層の葬送儀礼の場である古墳が墳丘の巨大性に比べて、エリート層の居館や砦集落の発達が不十分であることも、古墳時代の大きな特徴だ。
人類史上の大型墳丘墓築造には、エリートたちが互いに勢力の大きさを誇るために築いた「競いあいの墳丘墓」と、圧倒的な大きさと顕著な多様によって、王を頂点とした社会の秩序を示した「統治のための墳丘墓」という二者があり、日本の古墳はもちろん後者だ。
日本の巨大古墳と比較するため、エジプト、ユーラシア草原の国家、アンデス、南米そしてアメリカと全世界のそれが詳しく紹介されていて、それらと対比して理解することのできる貴重な本です。
(2020年3月刊。3800円+税)

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