法律相談センター検索 弁護士検索

パフィン

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 中野 耕志 、 出版 河出書房新社
鳥が空を飛ぶのはあたりまえですが、パフィンは海も飛べるというのです。
ええっ、ど、どういうこと…。パフィンは海に潜って、海面下50メートルまで潜れるんだそうです。えっ、えっ、そんな…。海中を50メートルもの深さまで潜れる鳥だったら、海も飛べるという表現は、あながち嘘とは言えませんよね…。
パフィンって鳥は、あくまでもカラフル。黒い背中に白いお腹、そして目立つのが虹色のくちばしとオレンジ色の足です。こんな鳥は日本では見かけません。それも、そのはず。
パフィンにはニシツノメドリ、ツメノドリ、エトピリカの3種類がいて、ニシツノメドリはイギリスやアイスランドといった北大西洋に、ツメノドリとエトピリカは、アメリカのアラスカ州など北太平洋に生息している。
パフィンは一年の大半を海上で過ごしていて、陸上で会えるのは、繁殖期の5ヶ月ほどだけ…。
パフィンは、いずれもハトくらいの大きさ。海に潜るため、パフィンの翼は面積が小さい。そして、パフィンのくちばしの裏には細かい「返し」がついているため、一度つかまえた魚をくわえたまま、たくさんの小魚を次々に捕まえることができる。著者が数えた魚は最高で84匹だった。うそでしょ、信じられません…。
エトピリカの名前は、アイヌ語のエトゥ(くちばし)と美しいの意のピリカに由来する。
パフィンの巣は、断崖にある。なので、撮影は大変な苦労をともなったと思います。ところが、著者はやりたいことをやれてよかったと、本気で関係者に感謝しているのでした。
それにしてもパフィンって、なんてカラフルな鳥なんでしょう。ちょっと困ったような、その眼差しに、虜(とりこ)になった野鳥と飛行機を専門の写真家による、とても素敵なパフィン写真集です。
(2020年7月刊。1350円+税)

椿井文書

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)
著者 馬部 隆弘 、 出版 中公新書
『東日流(つがる)外三郡誌』は偽書と確定していると思いますが、古代の東北に未知の文明があったとするものですから、ロマンをかきたてるものではありました。
『武功夜話』も偽書だと断言する本(洋泉社新書)を読むと、そうだよね、偽書だろうねと思うのですが、今でも偽書だと思わず平気で引用したり、いや全部が嘘ではないとする人がいたりして当惑させられます。
この椿井(つばい)文書(もんじょ)は、椿井政隆(1770~1837年)が依頼者の求めに応じて偽作した文書の総称。中世の年号が記された文書を近世に移したという体裁をとることが多いので、だまされやすい。
なるほど、コピー機がないわけですから、人の手で写しをとるしかないときに、元の文書はどこに行ったか知らないけれど、これがその写しだと言われると、紙質の新しさなんて問題にならないわけです。椿井文書は近畿一円に出まわっていて、今でも村おこしに活用されているとのこと。恐ろしいことですね…。
村と村とが対立・抗争している状況で、その有力な解決策の根拠として椿井文書が登場する。必要に迫られ、求めに応じてつくられた偽文書だった。
椿井政隆は、意識的に未来年号を使用したと考えられる。つまり「平成33年1月」というような、ありえない年号を表記したのです。これは、偽文書だと訴えられたとき、戯れでつくったものと言い逃れができるような伏線だと考えられる。さすがに考えていますね…。
国絵図にしても、描写に描写を重ねたとすることで、紙や絵の具が新しいことを怪しまれないように工夫した。
信じたい人々に、その信ずる材料をせっせと供給していたというわけです。
トランプ大統領がインチキ選挙があったと叫ぶと、「そうだ、そうだ」と応える人がいるのと、本質的に変わらない現象ですね…。
(2020年4月刊。900円+税)

私が原発を止めた理由

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 樋口 英明 、 出版 旬報社
原発の運転が許されない理由が明快に説明されている本です。
その理由(根拠)は、とてもシンプルで、すっきりしています。原発事故のもたらす被害はきわめて甚大。なので、原発には高度の安全性が求められる。つまり地震大国日本にある原発には高度の耐震性が求められる。ところが、日本の原発の耐震性はきわめて低い。だから、原発の運転は許されない。このように三段論法そのもので、説明されています。そして図解もされています。
著者は福井地裁の裁判長として原発の運転を差止を命じた判決を書いたわけですが、退官後に判決文を論評するのは異例のことだと本人も認めています。それでも、原発の危険性があまりにも明らかなので、これだけはぜひ知ってほしいという切実な思いから、広く市民に訴えてきましたが、今回はそれを本にまとめたというわけです。私も福岡県弁護士会館での著者の講演を聞きましたが、この本と同じく口頭の話も明快でした。
福島原発事故によって、15万人をこえる人々が避難を余儀なくされ、震災関連死は2千人をこえている。しかし、実は、4千万人の人々が東日本に住めなくなり、日本壊滅寸前の状態になった。2号機は不幸中の幸いで欠陥機だったので大爆発しなかったし、4号機も仕切りがなぜかずれて水が入ってきたのでメルトダウンに至らなかった。偶然が重なって壊滅的事態にならなかっただけだった。
日本は、いつでもどこでも1000ガル以上の地震に襲われる可能性がある。M6クラスのありふれた地震によって、原発は危うくなる。
ところが、関西電力は、700ガルをこえる地震は大阪飯原発のところにはまず来ないので安心していいと言う。本当か…。この関西電力の主張は、地震予知ができると言っていることにほかならない。しかし、地震予知ができないことは科学的常識。つまり、理性と良識のレベルで関西電力の主張が成り立たないことは明らか。
原発訴訟を「複雑困難訴訟」とか「専門技術訴訟」と言う人がいるが、著者は法廷で、「この訴訟が専門技術訴訟と思ったことは一度もない」と宣言したとのこと。
多くの法律家は科学ではなく、科学者を信奉している。しかし、著者は、あくまで科学を信奉していると断言します。そのうえで良心的な弁護士でも、権威主義への誘惑は断ちがたいようだと批判しています。私も胸に手をあてて反省してみる必要があります。
学術論争や先例主義にとらわれると、当たり前の質問をする力がなくなり、正しい判断ができなくなる。
リアリティをもって考える必要があり、それは被災者の身になって考えるということ。
地震については、思わぬ震源から、思わぬ強い揺れがあるかもしれない。このような未知の自然現象については、確率論は使えない。
この指摘には、思わずハッとさせられました。なるほど、そうなんですよね…。
10年たらずのあいだに、全国20ヶ所ある原発のうち4ヶ所について、基準地震動をこえる地震が襲っている。ということは、基準地震動にまったく実績も信頼性もないことを意味している。
国と東電は、廃炉までに40年かかるとしているが、実はまったく根拠がない。こうやって、楽観的な見通しを述べることで、国民が原発事故の深刻さに目を向けないようにしている。
160頁ほどの本ですから、手軽に読めます。ぜひ、あなたも手にとって、ご一読ください。
地震列島ニッポンに原子力発電所なんてつくってはいけなかったのです。一刻も早く全部の原発を廃炉にしてしまいましょう。ドイツにできないことが、日本にできないはずはありません。
(2021年3月刊。1300円+税)

シャオハイの満州

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者 江成 常夫 、 出版 論創社
シャオハイとは、中国語で子どものこと。
日本敗戦時、中国東北部(満州)にいた日本人家族は軍隊(日本軍・関東軍)から見捨てられ、ソ連軍や現地中国の人々から激しい攻撃を受け、多くの人々が殺され、また集団自決して死んでいきました。そして、大勢のいたいけな日本人の子どもたちが中国大陸残されたのです。その子どもたちは日本人であることから、いじめられながら育ち、また、かなりたってから自分の親が日本人だったことを知らされ、機会を得て探しはじめます。しかし、何の手がかりもなかったり、日本の家族(親族)が死に絶えていたりして、みなが日本に帰国できたわけではありません。
そんな中国に残留していた日本人の顔写真がたくさん紹介しています。なるほど、日本人だよね、この顔は…と、納得できる顔写真のオンパレードです。
東京荏原(えばら)郷開拓団というのがあったのですね。今の品川区小山町の武蔵小山商店街商業組合を母体とした千人規模の開拓団です。1943年(昭和18年)10月に先遣隊が現地に入り、翌1944年3月から6月にかけて入植したのでした。千人が5回に分かれて入植しました。敗戦前年には日本の敗色も濃くなっていたわけですが、それにもかかわらず、東京から満州に千人もの日本人が渡っていたというのは驚きます。
電灯はなく、ろうそくを立て皿に油を注いだ灯心のランプ生活。井戸は村に1ヶ所のみ。
そのうえ、敗戦の年の1945年7月までに、開拓団の男性が次々に兵隊にとられていったのでした。現地応召者は、180人にもなったのです。8月9日のソ連軍侵攻時点で、開拓団880人のうち、頼られる男性は80人のみ。若い男たちは、ほとんど兵隊にとられていた。そして、集団自決で300人もの人々が麻畑で死んでいった。
敗戦の8月15日まで、日本の敗北を予想していた開拓民は一人もいなかった。これまた恐ろしいことですね。肝心な情報がまったく伝わっていなかったわけです。
「王道楽土建設」という大義を合言葉にしていた時代だった。他人の国へ土足で踏み込むという罪の意識をもっていた日本人は皆無だった。現実には、それまで農作していた農民を追い出して日本人家族を住ませていた。
軍人はもとより、官吏も民間人も、日本人の誰もが、神国日本への過信と、現地中国人に対する優越意識におぼれていた。それだけに、日本敗北による在留日本人の屈辱は大きかった。8月15日が過ぎても、日本の敗戦を信じなかった日本人が満州には大勢いた。
中国人は日本人の子どもは優秀だからというので、子どもをさらっていったり、困っている日本人家族から子どもをもらおうとする中国人が大勢いて、子どもを死なせるよりはましだと食料をもらう代わりに子どもを手放す親も少なくなかった。
これは、本当に誰にとっても悲劇ですよね。
人間の死体が野ざらしで山積みにされていた。着ていたものはみんなはがされて、丸裸にされた状態だった。死体はカチカチに凍っていて、材木置場みたいになっていた。
満州の冬は、氷点下30度、40度にもなる。寒風のなかでの水汲みはきつい。用便するときは、山のようになって凍りついた人糞を金槌のようなもので突き崩す必要があり、これは若い女性にはこたえた。
開拓団員は、誰もが皇国の関東軍に絶対の信頼を寄せていた。「軍が必ず助けてくれる」と言いあっていた。ところが、いざとなったとき、関東軍の主力部隊はいなくて、まっ先に逃げ出してしまっていた。威張りちらしていた軍人たちは、いったいどこへ姿をくらませたのか…。怒りと不安のなかで逃亡生活がはじまった。
いやはや、国の政策に踊らされた開拓団の悲惨な末路に接し、寒気がしてなりませんでした。目をそむけたくなる論述のオンパレードなのですが、唯一の救いは、置き去りにされて40数年たっている、紹介された顔写真の誇らしげな表情です。
集英社から1984年に出版されていた本のリニューアル版です。
(2021年1月刊。2400円+税)

デジタル化する新興国

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 伊東 亜聖 、 出版 中公新書
相変わらずガラケーですし、1日に1回も使えばいいほうの私ですが、さすがにメール(FB)は読んでいます。といっても、送信するのは秘書の仕事です。とてもあんなに速くは送信できません。ブラインドタッチなんて、考えただけでもうんざりです。私なんかにできるはずがありません。IT化には、うしろからボチボチついていくしかありません。
かつて多くの新興国が、固定電話を経ずに携帯電話に移行したように、いま銀行口座をとびこえてモバイル決済の利用が広がっている。
デジタル経済は巨大な価値を生み出した。2019年の夏時点(コロナ禍より前)で、世界企業価値乱金付上位10社のうち7社がIT企業。GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)にマイクロソフトを加えたアメリカ企業5社と、中国のアリババとテンセントの2社。コロナ禍のなかで、巨大IT企業への資金の集中の傾向はさらに強まっている。
ネットワーク端末は、2003年に5億台だったのが2010年に世界人口より多い125億台となり、2020年には500億台に達すると予測された。世界のインターネットユーザーは、7年間に16.6億人も増えている。このうち9割近い14.7億人はOECD諸国ではない。
中国は2010年に、日本の経済規模をこえて世界第2位の経済大国となった。このことは、世界経済に大きな構造変動をもたらした。
アフリカでは、銀行口座はもたないけれど、ケータイをもつ人々が通信会社の口座内にお金を預ける形で、モバイル・マネーが広がっている。
インドのデジタル化の中心を担うのは、生体人証のIDの発行と決済プラットフォームの構築。2019年12月時点で12億5千万人が登録ずみで、成人の95%がアダールIDを保有している。貧困層への補助金の直接給付の必要性、つまり中抜きされず、確実に補助金を本人に届けるためのものになっている。
アメリカの雇用のうち5割近く(47%)の人が、今後10年から20年のうちに自動化されるリスクがあるというレポートが発表され、注目された。これに対して、自動化されるリスクの高い職種は全体の9%にとどまるという報告もある。
また、技術革新によって、職が自動化される一方、新たにつくり出される職種や部門もある。たとえば、コンテンツをつくり出すクリエイターとしての能力。また、「ラスト・ワンマイル人材」も必要。
プラットフォーム企業は中立公正な立場に立つ存在ではなく、あくまでも市場競争を戦うプレイヤーである。
デジタル化の進展は、選挙活動にも影響している。トランプ陣営は、FBが保有する膨大な個人データを活用して、激戦州におけるトランプへの投票を「説得可能」な有権者1350万人を特定した。そのうえで、個々人の性格や信条に応じた宣伝をして、トランプへの投票を説得しようとした。
このように、過去には考えられなかった精度の個人情報を用いた介入が今では実行可能になっている。いやはや、本当に恐ろしい時代・世の中になってしまいました。だから私は、マイナンバーなんて嫌なのです。私がどんな存在であるのか、私以上に誰かが知っているなんて、想像しただけでも寒気がします。とは言いつつ、ネット社会には適応しないと生きていけないというのも現実です。困ってしまいます。
(2020年10月刊。820円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.