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スマホ脳

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 アンデシュ・ハンセン 、 出版 新潮新書
私は依然としてスマホを持たず、ガラケーのみ。それも、常時カバン在中で、1日1回も使えばいいほうです。なので、スマホの使いすぎなんて、自分のことではありません。
孫たちの脳が、スマ時代でおかしくなってしまわないか、それが心配なので、読んでみました。なるほど、それは心配だと思わせる記述のオンパレードです。かといって、孫たちからスマホを取りあげるわけにはいかないでしょう。では、いったいどうしたらよいのでしょうか…。
スティーブ・ジョブズを筆頭に、IT業界のトップは、我が子にスマホを与えていないとのこと。その危険性を熟知しているからですよね。著者はスウェーデン生まれの精神科医です。
人間の脳はデジタル社会に適応していない。
現在、大人は1日に4時間スマホに費やしている。
コロナ禍によって実際に集まる会議が減って、ズーム形式の会議がほとんどになりました。先週、昼から2時間、午後3時からと夕方の5時から各1時間、合計4時間も画面を見ていましたら、帰宅したころには首と肩が異常にコチコチと固まっていて、頭までボーっとしてきました。たまに発言しようと身を乗りだした格好を4時間もしていたのですから、そのひずみ(反動)がないわけはありません。
精神的不調で受診する大人がますます増えている。
決断を下すとき、最後に人間を支配するのは感情。
やはり、好きか嫌いかは、司法の世界でも大きいです。
ストレスのシステムは、私たちが正常に機能するためにも大切だ。うつを引き起こす原因としていちばん多いのは長期のストレスだ。
私たちは1日に2600回以上もスマホを触り、平均して10分に1度、スマホを手にとっている。
スマホが及ぼす最大の影響は、「時間を奪うこと」にある。睡眠を十分にとる時間がなくなることだ。ところが、この睡眠時に、昼間こわれたタンパク質が老廃物として脳から除去される。老廃物は1日に何グラムにもなり、1年間にすると、脳と同じ重さの、「ゴミ」が捨てられることになる。夜、眠っているうちに、短期記憶から長期記憶へ移動してしまう。
つまり、睡眠は記憶の保存に重要な役割を果たしている。ところが、スマホが若者の睡眠不足を招いている。
電子書籍を読んだ人たちは、電子書籍を読むと、メラトニン合成がひどくなる。
ヒトの祖先は、毎日、1万8000歩、あるいていた。今の私たちは、1日5000歩にも満たない。
教室でスマホは禁止。でないと、学習能力が低下する。
記憶力や集中力といった知能がスマホのせいで低下している。毎日、スクリーンの前で4時間も過ごしていると、子どもや若者は遊んだり、「本当の」社会的接触をもったりする暇がなくなる。
スマホを使いすぎると、気が散り、よく眠れなくなり、ストレスを感じる。毎日2時間はスマホをオフにしよう。
スマホの表示はモノクロにすること。色のない画面のほうが、ドーパミンの放出量は少ない。
集中力が必要な作業をするときには、スマホを手元に置かず、隣の部屋に置いておく。
スマホを寝室には置かない。寝る直前に仕事のメールは開かない。
スマホに関する、とても実践的なアドバイスもたくさんある新書です。気をつけましょう、暗い夜道と便利なスマホ。
(2021年3月刊。税込1078円)

ちょっとケニアに行ってくる

カテゴリー:アフリカ

(霧山昴)
著者 池田 正夫 、 出版 彩流社
団塊世代より少し上の著者がフランス経由でアフリカに渡って、ケニアでオーナー・シェフとして活躍する話です。日本人男性も捨てたものではありません。最近の日本人の若者も料理の世界でがんばってるよね、感心だなと思っていると、そんな日本人男子は昔からいたのですね…。
著者はケニア人女性と結婚して、ケニアで無国籍料理(フュージョン料理)で人気のフランス料理店「シェ・ラミ(友だちの家)」をはじめた。2009年にケニアの内乱のため営業不可能となって閉店して日本に帰国し、今もコックとして活躍しているとのことです。
静岡の中学校を卒業して上京し、芝大門の精養軒での修行を皮切りに国内でコック見習いを始めた。そして、海外に行きたくて、まずはフランスへ。
パリの屋根裏部屋(7階)に日本人の若者3人で住む。家賃は1ヶ月900フラン。フランス語学校の学費は1ヶ月40フラン。日本食レストランのアルバイトは1ヶ月600フラン。1フランは70円。1968年のパリ「五月危機」のころのこと。
パリの次は南フランスのエクサンプロヴァンス。ここは私も2回訪れたことがあります。1回目は40代前半で、学生寮に3週間泊まりました。外国人向けのフランス語集中講座を受講したのです。今思えば夢のような毎日でした。2回目は、還暦前祝い記念旅行で2泊3日しました。ともかく夏の南フランスは最高です。夜は8時まで昼間と同じく明るく、雨は降らない。そのうえ、食べもの、飲みものが美味しくて、たまりません。著者はフォアグラの美味しさに魅せられたようです。そして、フランスの生クリームの味…。
そして、ついにアフリカへ…。コンゴ、アルジェリア、サハラ砂漠。羊の丸焼きは4時間ほどかけて焼く。柔らかい。ただただ、焼いた羊を手づかみで食べる。肉をはぎ取って、「熱い、熱い」と言って、手で食べる。うむむ…、そんな食べ方、したことがありません。
ケニアに、日本人向けのスワヒリ語学院を開設した人がいるのですね。星野芳樹という1909年生まれの人です。戦前の活動家で、戦後は撰議院議員も1期つとめ、1974年アフリカ・ケニアに移住したのでした。
著者の営むレストラン「シェ・ラミ」では野生の肉も供したとのこと。シマウマのフィレ肉が一番柔らかかった。ダチョウの肉も柔らかいが、シマウマにはかなわない。
店の庭の隅にバーベキュー小屋をつくった。ゲームミート(野生の肉類)専用のバーベキュー。インランド(鹿の一種)、シマウマ、キリン、ヌー、ガゼル、そしてダチョウとワニ。欧米人の客が好んだ。フォンデュ鍋にゲームミートを入れて、6種類のソースをつけて食べるのは、フランス人に大好評だった。
ワニ肉料理は、ムニエルにする。ワニの肉質はチキンと同じで、匂いもなく、黙っていたらワニ肉とは分からない。ワニの焼き鳥風は、鶏肉の焼き鳥を食べている感じ…。
著者は、各国をまわって、郷に入れば郷に従えを実践したとのこと。そうですよね、大切なことですよね。そして、フランス語、英語、スワヒリ語を話せたのが人々と交流するうえで欠かせなかった。語学は大切だ、と強調しています。なので、私は、今もフランス語を毎日、勉強しているのです。
とても面白い本でした。読んで元気が湧いてきます。ますますの活躍を祈念します。
(2020年8月刊。税込1980円)

花粉症と人類

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 小塩 海平 、 出版 岩波新書
10年ほど前から花粉症に悩まされています。まず、クシャミと鼻づまりです。夜、鼻が詰まっているため鼻で呼吸できず、口で息をしていると、ノドがやられます。クシャミと鼻水のため、ティッシュが欠かせません。ポケットティッシュなんて、1袋がすぐなくなってしまいます。そして、目です。痛痒(いたがゆ)いのです。目薬をさしたら、なんとかおさまってくれます。5年以上も前から、花粉症予防のためにはヨーグルト(BB536)がいいというので、毎朝のんでいますが、どれだけ効き目があるのか、自分でもよく分かりません。それでも続けています。信じるものは救われるの精神です。
ただ、コロナ禍で右往左往している今年は、それでも軽いのです。夜中に鼻づまりで苦しくなって目が覚めることがありません。これは助かります。朝までぐっすり眠れるのはいい感じです。とりあえず、ヨーグルトのおかげにして自分を慰めています。
スギ花粉は、大きさは直径30マイクロメートル(0.03ミリメートル)ほど。落下速度は、無風だったら1秒あたり2センチメートルほど。これは1メートル落下するのに1分近くかかることを意味している。ところが、その間に、少しでも風が吹けば、すぐに飛行物体と化してしまう。
昔の人たちは、今とちがって花粉について驚嘆と敬意をもって接していた。
花粉や胞子の外壁は、炭素数90の高分子であるスポロポレニンという化学的にとても強固な物質でできている。そのため、塩酸や水酸化ナトリウムなどの強酸や強アルカリで処理しても溶解しない。泥炭のなかに、古い時代の花粉や胞子を顕微鏡で見ることができるのは、そのため。
花粉症は1819年にイギリスで生まれた。そのころは「夏カタル」と呼ばれていた。
イングランドの牧草花粉症、アメリカのブタクサ花粉症、そして日本のスギ花粉症が、現代世界の花粉症。
ブタクサは、1個体から3万2000もの精子をつけているところが目撃されたことがある。
日本の花粉症患者の発見は、1961年にブタクサ花粉症、1964年にスギ花粉症だった。そして、1980年代後半に患者が爆発的に増加した。
日本では、英米とは異なり、エリート階級のみが花粉症になる現象は起きていない。
1987年、ニホンザルまで花粉症を患うことが確認された。
日本全国にスギ林は450万ヘクタール、つまり九州の面積ほど存在する。林業に従事する人は、1980年に15万人いて、2015年には、その3分の1以下に4万5千人しかいない。
スギ花粉症は、日本という国が、私たち庶民やその周囲の環境を置き去りにして経済成長を追い求めてきたことへの警告ではないか、著者は、そのように指摘してます。なーるほど、ですね…。
花粉症に悩む人々への慰めや励ましを与えることができたら…、と著者は強調しています。これまた同感ですが、やっぱり早くなんとかしてほしいです。
(2021年2月刊。税込880円)

ベネズエラ

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 坂口 安紀 、 出版 中公選書
南米のベネズエラのチャベス大統領には期待していたのでしたが、この本を読んで、しっかり幻滅してしまいました。
チャベスは、国民を「敵と味方」に二分し、ベネズエラ社会を二極化させた。
たとえば、住宅をつくったら、チャベス支持派を優先入居させるというのです。それはいくらなんでもひどいでしょう。
今、チャベスが後継者として指名したマドゥロ大統領が政権を握っていますが、ベネズエラの経済は破綻し、民主主義は見る影もなくなり、国家制度や国のインフラの多くが崩壊しっています。経済成長率は2014年以降、ずっとマイナス。貧困率は9割をこえ、石油の産出量は5分の1にまで落ち込んでいる。
食料や医薬品が欠乏し、国民の64%が平均して11キロも体重が減ってしまった。総人口3000万人のうち500万人が海外へ脱出した。治安もひどく悪化し、世界でもっとも治安の悪い国になっている。
マドゥロ政権を支持する人も、チャベス派の政権の継続を願っているだけで、マドゥロ大統領個人を支持する人は多くない。
私がこの本を読もうと思ったのは、なぜ、そんなひどい状態になってしまったのに、マドゥロ政権が続いているのか、なぜ軍部によるクーデターが起きないのかを知りたかったからです。その答えの一つが軍部にありました。
マドゥロは軍人出身でないため、みずからの支持基盤や影響力をもたない。そこで、第一に、多くの軍人が政治ポストについている。32人いる大臣のうち11人、23の州知事のうち11人が軍人。また、国営石油会社をはじめ、経済的恩恵の大きいポストも軍人に割り当てられている。さらに、次々に将軍に昇進させ、2000人もの将軍をかかえている。このように軍の政治化がすすんでいる。
ベネズエラの国軍内部には「太陽カルテル」という麻薬取引に関わるグループが存在し、マドゥロ大統領以下の政府高官そして軍高官と親族たちが関わっている。
汚職や麻薬取引、そして拷問や人権弾圧などの人道的犯罪に手を染めてきたチャベス派幹部や軍の高官らは、政権が交代すると、法の裁きを受けることになるのは必至。なので、彼らは、必死でチャベス派、マドゥロ政権を死守しようとする。厳しい国内外の状況にもかかわらず軍の支持が揺るがないのは、ここにも理由がある。
なーるほど、そういうことだったんですね。でも、それにしても、こんな異常な政治体制がいつまでも続くはずはありませんよね…。
これからなお、多大の苦難と犠牲をともなうのでしょうが、それでもきっと近いうちにベネズエラが正常化されるだろうことを心より期待しています。
(2021年1月刊。税込1870円)

にほんでいきる

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 毎日新聞取材班 、 出版 明石書店
外国から来た子どもたちは日本語が話せないまま、放置されているのではないか…。
在留外国人は過去最高の293万人(2019年12月)。
100の地方自治体に住民登録していた義務教育年齢の6~14歳の外国籍の子ども7万7000人のうち、就学不明(学校に通っているかどうか確認できない)子どもが2割、1万6000人。全国には2万2000人。その多くは、日本に「デカセギ」に来た外国人労働者の子どもだ。
久里浜少年院には、「国際科」がある。日本語のほか、ごみ出しなどのルールや日本の習慣・文化を教える。1993年に設置され、2020年までに300人が学んだ。
全国の1100超の自治体は、学校に通っていない子どもがどんな状況に置かれているか、まったく確認していない。
前川喜平・文科省の元事務次官は、外国籍の子どもの保護者にも就学義務があることを適用すべきだとしている。本当にそうですよね。便利な「人材」として受け入れたのは日本なのですから、その子どもに日本は責任をもつのが当然です。
法令に「外国籍を除外する」という文言はないので、当然のこと。まったくそのとおりです。人間を大切にしない政治はダメです。
子どもに通訳をつけてもダメ。通訳は、あくまで言語サービスであり、日本語教育ではない。うむむ、なーるほど、そうですよね…。
日本国内の学校や教室に通う日本語学習者は26万人。1990年度の4倍超。これに対して日本語教師が4万人のみ、しかも、その大半はボランティアと非常勤。
これはいけません。こんなところにお金を使わないなんて、政治が間違っています。人間を大切にするのが政治の役目です。
2019年に公表された日本語指導調査によると、日本語教育が必要な児童・生徒は5万人超(外国籍4万人超、日本籍1万人超)で、2016年の調査より7千人近く増えた。無支援状態の児童・生徒が1万1千人もいる。
15~19歳の不就学・不就労は、フィリピン16%、ペルー11%、ブラジル11%、ベトナム10%。学校に通っているのは、中国と韓国・朝鮮で8割超。ブラジル63%、フィリピン57%、ベトナム53%。
外国籍の生徒の高校中退率は10%近く、全体の7倍にもなる。
コンビニのレジに外国人が立ち、日本語で応対するのはもう日常の風景です。そんな彼ら彼女らが、どうやって日本語を身につけたのか、あまり考えたことがありませんでした。もっと小さい、小学生のときに日本に来たら、どうするのか、どうしたらよいのか、私たち大人はもっと周囲に目を配る必要があります。そして、そこにきちんとお金と人を手当てすべきだと改めて思ったことでした。
(2021年2月刊。税込1760円)

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