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「弁護士の平成」(会報第30号)

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 会報編集室 、 出版 福岡県弁護士会
法曹養成制度
 法曹養成制度については、この分野に一貫して関与してきた牟田哲朗弁護士が改革の歩みと今後の課題を紹介しています。
 法科大学院は失敗だった、失敗したと簡単に決めつけてすむ問題ではありません。新しく「法曹コース」が始まるとのことですので、次世代の法曹をどのように養成していくのか、現状をきちんと認識したうえで大いに議論したいものです。あわせて、予備試験というバイパスのあり方についても再考すべきではないでしょうか・・・。
法科大学院
 「2004(平成16)年4月に68校、翌年に6校の合計74校の法科大学院が24都道府県に開校した。2004(平成16)年の入学者数合計は5767人(定員5590人)であり、そのうち、未修者が3417人(59.3%)、非法学部卒業者が1988人(34.5%)、社会人が2792人(48.8%)で、医師や公認会計士等の有資格者も入学していた。
 福岡では九州大学、福岡大学、西南学院大学、久留米大学の4校、九弁連管内では熊本大学、鹿児島大学、琉球大学の3校が開校し、2004(平成16)年の7校の総定員は330人(福岡240人)、入学者数は314人(福岡219人)であった」(112頁)
新司法試験の合格者
 「2006(平成18)年から新司法試験が始まった。初年度は、既修者のみ2091人が受験して合格者1009人(合格率48.25%)、翌2007(平成19)年は未修者も受験して4607人が受験し、合格者1851人(合格率40.18%)であった。
 2008(平成20)年から合格者は2000人台になった。・・・・2010年からの司法試験合格者3000人は見送られ、2014(平成26)年からは1800人台、2016(平成28)年からは1500人台に減少され、また、2012(平成24)年からは予備試験合格者も司法試験受験をするようになったので、法科大学院終了者の司法試験合格率は2009(平成21)年から20%台になった。
 そのためか、法科大学院への入学志望者数も4万人台から1万人台になり、入学者も2006(平成18)年の最大5784人が2011(平成23)年には3620人に減少した。他方、予備試験受験者は、2011年の6477人が2014年からは1万人を超え、予備試験合格者の司法試験合格者も2012(平成22)年の58人が2014年には163人、2016年には235人と増えていき、2018(平成30)年には336人、2019(平成31)年には315人になった」(112頁)
合格率
 「2005(平成17)年から2014(平成26)年度までの直近10年間の修了者は3万8771人、合格者は1万9745人なので、この10年間の修了者の累積合格率は50.9%。また、直近の2014年修了者の累積合格率は、57.4%。そのうち、既修者は、70.0%であるが、未修者
41.1%である。
 したがって、司法試験の合格率に関しては、既修者は審議会意見書が基本点とした約7~8割を実現しているので目標達成である」(114頁)
 「予備試験が、法科大学院を中核とする『プロセス』による法曹養成のバイパスとなったため、司法試験予備校は盛況である。予備試験合格者の司法試験合格率が80%前後であるのに対し、予備試験自体の合格率は4%前後と抑制されている」(114頁)
新しい「法曹コース」
 「2020(令和2)年から『法曹コース』を開始し、2023(令和5)年から『法科大学院在学中受験』を実施することとした。
 これは、法曹資格を得るには、現状では、大学4年、法科大学院既修2年、司法修習1年で、最短でも7年8カ月を要するので、これを6年に短縮して時間的・経済的負担を軽減して、法曹志望者を増やし、予備試験志向者を法科大学院に入学させようとするものである。
 『法曹コース』は、法学部を設置する大学が法科大学院と連携して、法科大学院既修者コースと一貫的に接続する教育課程『法曹コース』を編成し、学部3年終了時に早期卒業して法科大学院既修者コースに入学する『3+2』の精度である」(114頁)
ロースクール生と九弁連
 「九弁連管内弁護士会に登録した新60~62期生274人中の100人(36.4%)が管内法科大学院修了生であり、同100人は弁護士登録した管内法科大学院修了生127人の78.7%である。・・・・2015(平成27)年から久留米、鹿児島、熊本、西南学院大学法科大学院が、順次、募集停止になった」(118頁)
弁護士会の責務
 「審議会意見書から20年、法大学院設立から17年経過したが、法科大学院を中核とした『プロセルによる法曹養成』は未だ完成せず、『点のみによる選抜』から脱却できずに多くの課題を抱えている。
 しかし、弁護士会・弁護士が、あるべき次世代の弁護士・法曹を養成することは、弁護士・弁護士会の当然の責務である。したがって、福岡県弁護士会においても、法曹養成を法務省や最高裁に一任することなく、日弁連にも一任することなく、地域の弁護士・弁護士会の責務として、地域のために、また地域から全国に広がる有意な法曹を養成していく道を見付けていく必要があり、そのことが法曹の多様性の拡大につながると考える」(120頁)

腸内細菌が健康寿命を決める

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 辨野 義己 、 出版 インターナショナル新書
cacaミュージアムが福岡で開催中。これが先週のフランス語教室で話題になりました。フランス人講師は、フランスでは考えられないと断言します。でもでも、日本の子どもたちには、「ウンコ・ドリル」が大人気で、みんなベストセラーになっているようです。
この本の著者は私と同じ団塊世代。23歳から、この道一筋で研究してきた、「便の」先生です。なにしろ日本人2万人のウンチ(大便)を集めて、分析してデータバンクをつくりあげたというのです。すごいことです。
長寿の家系だと聞いたら、島に渡って、祖母・母・娘という三代の女性のウンチをいただいて帰って、分析するというのです。それが、まったく臭くない話なのですから、こうなると著者の人徳なのでしょうね。これまで著者が書いた本は150冊、研究論文は350報。これまた、すごいですね…。
腸は考える力をもつ重要な臓器。
医学的には、肛門から排泄されるのに72時間かかると便秘。24時間以上かかるのは便秘傾向。
日本人も欧米人も腸の長さは変わらない。人間は人種や食習慣が異なっても、腸の長さに違いはない。世にある誤解を解消すべき。私も誤解していました。肉食と穀物食の違いからくるものと思っていましたが…。
大腸が吸収するのは水分とミネラルくらい。その重要な仕事は、飲食物のカスをウンチに加工して留めておくこと。それでも、大腸は、よりよく生きるためには大切な臓器。
大腸は、病気の種類がいちばん多く、また多くの病気の発生源になっていたり、身体の調子を左右する臓器だ。
腸内細菌は、少なくとも500種以上、おそらく1000種類はある。ウンチ1グラムのなかには、なんと1兆個もの細菌がいる。うひゃあ、す、すごーい。それにしても、1兆個いるって、どうやってカウントするのでしょうか…。
1グラムのウンチのなかに、6000億個から1兆個近い腸内細菌がふくまれている。
良いウンチは酸性のもの、肉をたくさん食べる人のウンチはくさくなる。野菜や果物中心の食生活をしている人のウンチは、あまり臭わない。
便秘をしていない人に宿便はない。小腸の粘膜は3日毎に再生されている。腸壁から古い粘膜がはがれてウンチになって排泄されるから…。
腸は、人体のなかで最大の免疫臓器。腸は、免疫系の主戦場。また、人体のなかで最大のホルモン生産器官。
がん細胞のほとんどは大腸で生じている。野菜を食べないと、がんになるリスクが高まる。なので、食べた肉の3倍は野菜を食べたほうがいい。
腸から脳へ情報が伝わっている。
腸のセロトニンは、腸全体に運動の指示を出して、ぜん動運動を起こさせる役割を担っている。
腸内細菌は、人間の脳はもちろん、感情や健康に関与している。
もともと、脳の大もとは腸だった。
いやあ、すごい学者がいたものですね。同世代ですが、心から尊敬します。
(2021年2月刊。税込880円)

徒然草

カテゴリー:日本史(鎌倉)

(霧山昴)
著者 川平 敏文 、 出版 中公新書
「徒然草」の著者を「吉田兼好」とするのは正しくないとのこと。驚きました。「卜部(うらべ)兼好(かねよし)」か「兼好法師(けんこうほうし)」が正しいというのです。というのも、「吉田」というのは、卜部(うらべ)氏の一流が室町時代以降に名乗った姓だから、なのです。
兼好は、在京の侍のような存在だったが、30歳のときに出家し、「遁世者」(とんせいしゃ)として公家社会にも出入りするようになった。世の交わりを絶ち、ひとり静かに草庵に暮らしていた「隠者」ではない。ええっ、そ、そうなんですか…。
兼好は、公家に出入りしながら歌人として活動し、40歳から50歳のころに「徒然草」を執筆し、75歳ころに亡くなった。兼好自筆の「徒然草」原本は存在しない。
兼好が章段番号を割り振ったこともない。
「徒然草」には、「枕草子」のような文学性、「大草子」のような実用性、漢籍の「随筆」および「詩話」、「歌話」のような学術性、いくつかの特徴がごちゃまぜに存在している。話材の多様さ、表現の的確さ、評論の鋭利さにおいて「徒然草」に伍しうる作品は、それ以前にも以後にも、おそらくない。
「徒然草」には、朱子学をベースとして現実主義的・合理的な思弁が認められる。
「つれづれなるままに」は、「退屈なので」「手持ち無沙汰で、所在ないままに」の意。「なすこともない所在なさ、ものさびしさにまかせて」と解される。かつては、「さびしき」であって、「退屈」と解するのはなかった。
「つれづれ」は漢語の「徒然」)とぜん)と同義で、「冷然」「寂莫」の意。
筑後地方の方言に、「とぜんなか」というのがあります。ひまで退屈しているという意味で使われる言葉だと思います。この本によると、「とぜんなか」という方言は全国各地に残っているとのこと。これまた驚きです。古語が方言として残ったからでしょう。同じように、お腹が減ったという意味で「ひだるか」とも言いますが、これまた古語の「ひだるし」からきた方言です。
大学受験で必須の古文を改めて勉強した気分になった本です。
(2020年3月刊。税込990円)

高瀬庄左衛門御留書

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)
著者 砂原 浩太朗、 出版 講談社
いやあ読ませる時代小説です。久々にいい時代小説を読んだという余韻に浸っていると立川談四楼が本のオビに書いていますが、まったく同感です。
司法修習生のときには山本周五郎を読みふけりました。弁護士になってからは藤沢周平です。そして、最近では葉室麟でした。
ちなみに、「士農工商」という言葉が学校の教科書から消えていることを、つい先日、知りました。武士の下に農民、工業従事者そして商人という階層があると教えられてきましたが、武士が支配階級であることは間違いないとしても、農・工・商には上下の格差はないというのです。なるほど、なるほど、です。もともと、この言葉は中国に起源があり、そこでは、フラットな「たくさんの人々」という意味で、使われているのであって、階層間の格差の意味はないというものだというのです。
しかも、士については、商売人が成り上がることもあったし、できたことが、いくつもの実例で示されています。そして、士をやめて商を始めた人もいたわけです。
時代小説ですから、当然のように班内部の抗争を背景としています。ただ、小さな藩だからなのか、それほどの極悪人は登場しません。
主人公は郡方(こおりがた)づとめの藩士。妻は病死した。一人息子は、父親の職業を引き継ぐのだが、あまりうれしそうでもない。郡方は領内の村々をまわって歩く。
野山を歩き風に吹かれると、おのれのなかに溜まった澱(おり)がかき消える。どろどろとしたものが、空や地に流れて、溶けていく…。この心地良さは他に代えがたいものがある…。
登場人物が、実は複雑にからみあっていて、それぞれの役割を果たしながら、謎が解明されていく趣向はたいしたものです。今後ますますの活躍を祈念しています。
(2021年3月刊。税込1870円)

愛をばらまけ

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 上村 真也 、 出版 筑摩書房
大阪は西成(にしなり)区の釜ヶ崎にある小さなキリスト教の教会(メダデ教会)の牧師(西田好子さん、68歳)と信者たちの苦闘の日々が紹介されている本です。
西田牧師は、学校の教師を辞めて、関西学院大学(関学)で神業を勉強して牧師になり、60歳から西成で牧師として活動している。
釜ヶ崎は、かつては「労働者の街」だった。東京・山谷(さんや)、横浜・寿(ことぶき)町をしのぐ日本最大のドヤ街(簡易宿泊街)として、日本経済を下支えした。暴動もたびたび起きた。ところが、長引く不況と高齢化によって、今では「福祉の街」に変容した。住民2万人の4割超が生活保護を受給している。
メダデ協会のメダデって、聞き慣れない言葉だが、旧約聖書に出てくる人物の名前。ヘブライ語で「愛があふれる」という意味。
西田牧師は、野宿者に声をかけて信者を増やしていった。ところが、トラブル勃発。ケンカをふっかける者、暴れる者、酒やギャンブルにおぼれる者、ついには教会のお金を持ち逃げする者まで…。
西田牧師は、キリスト教の伝道とあわせて、福祉制度や酒・薬物依存症への対処法を学んだ。信徒と一緒に寝泊まりし、特売品を買い、病院に付き添い、働き口を探す。
24時間、365日、生活のすべてを教会にささげる。
釜ヶ崎での生活保護は野宿者も受給しやすくなった。
20人ほどの信徒は全員が生活保護を受けている。家賃などを差し引いて生活費に回せるのは月6万円。酒やパチンコ・外食にまわして散財したら、たちまち生活に窮する。
西田牧師は、聖人君子や聖母のイメージではない。本人も、派手な性格で誤解されやすいと言う。それでも離婚しながら、二人の息子を立派に育て上げている。失敗、失敗の人生と西田牧師本人は言うけれど、これも本人が選んだ人生なので、悔いはなさそう。
徘徊を繰り返す認知症の信徒、暴れる薬物依存症者、寝たきり患者の信徒…、20人の信徒に正面から向きあう西田牧師…。
「メダデ教会は、毎日が綱渡り。今日一日が無事に終わるのは奇跡やねん」
この本を読むと、まさしくその「奇跡」の連続のなかで、よくも心と身体の平穏がたもてるものだと驚嘆するばかりです。ナニワのおばちゃんって、すごいもんやなあ、とつい慣れない関西弁が口から出てきました。
こんな人もいるのか、ほなら、わたしも、もう少しがんばりまひょか…。
そんな気分にさせる本でした。読売新聞の大阪版で連載されて大反響を呼んだ記事が一冊の本にまとめられたものです。
(2020年11月刊。税込1540円)

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