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江戸の旅行の裏事情

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)
著者 安藤 優一郎 、 出版 朝日新書
コロナ禍のせいで、私はこの2年間、福岡県の外へ一歩も出ていません。本当は、国内どころかフランスにも旅行するはずだったのですが…。
日本人は昔から旅行が大好きでした。それは戦国時代の宣教師たちのレポートでも明らかです。江戸時代は治安が良く、道路網も旅館も整備されましたから、殿様の参勤交代だけでなく、庶民も連れだって旅行に出かけていました。それは伊勢であったり、温泉であったりしました。成田山詣でには講が組織されていました。
伊勢参宮には御師(おんし)が活躍した。御師は、祈祷に携わる神職ではあるものの、営業部員ないし、旅行代理店のような仕事もしていた。800家を数えた。
御師と講が団体の参詣宮を増加させ、ひいては江戸の旅行ブームを牽引した。
また、江戸後期には、身分の上下にかかわらず、湯治(とうじ)つまり温泉旅行がブームになっていた。湯治は7日を一廻りと数え、三廻りするのが一般的だった。東は熱海・箱根、西は有馬の人気が高かった。
女性も旅行に出かけていた。関所破りも珍しくはなかった。
江戸も旅行の対象となり、『江戸名所記』や『江戸買物独案内』が刊行されて喜ばれていた。
吉原は人口8千人のうち遊女は2千人。吉原には男女を問わず、昼も夜も全国からの観光客でにぎわい、観光客相手の飲食業が盛んだった。
そして、江戸では、全国の寺社が出開帳(でかいちょう)を企画した。
私は最近『弁護士のしごと』という冊子を刊行しましたが、そのなかで、江戸の庶民がいかに旅行を楽しんでいたか、また、男女を問わず旅日記を書いていたことを書きつづったのですが、これが予想した以上に驚きをもって受けとめられ、大好評でした。
江戸時代の250年間というのは庶民にとって決して暗黒の時代ではなかったのです。ほとんど戦争のない、平和な時代を庶民はそれなりに楽しく過ごしていたのだと私も今では考えています。
(2021年11月刊。税込891円)

もっとディープに!カラス学

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 杉田 昭栄 、 出版 緑書房
著者はカラス博士として著名です。カラス研究をはじめて25年になります。
カラスの脳は、機能性の高い大脳皮質に相当する部分が多くを占めていて、さらに高次の働きをする外套(がいとう)の連合部位が、他の鳥よりも発達している。
カラスのくちばしは、人間の指のように敏感、かつ器用だ。
カラスのくちばしは、武器というより巣づくりや羽繕(つくろ)い、子育てのときのエサ運びやような働きをする。また、くちばしは、体温にも関係している。くちばしには、多くの血管が分布している。
カラスの神経節細胞は360万個もある。これは、ニワトリの250万個、フクロウの200万個に比べても多い。
鳥の視覚が優れている理由として、網膜の血管がないことがあげられる。
カラスは、紫外線をふくめて4種の光波長で色覚の世界をつくっている。紫外線がなくなると、カラスは繊細な色彩の区別がつかなくなる。紫外線は鳥類の生活で、重要な役割を担っている。
カラスには怖い色とか嫌いな色はない。ごみ袋を黄色にすると、中の物が見えなくなるというだけ。カラスが物を識別するとき、色は非常に重要。
カラスは鳴き声による意思疎通が豊富な鳥。
ハシブトガラスの終脳の神経細胞数は2億3千万個。カモは6千万個、ニワトリが4千万個に比して、断然多い。
カラスはヒトの顔写真を認識できる。これは、どのような向きになっていても言える。
カラスは、少なくとも12ヶ月間は記憶を保つことができる。
その年に生まれたカラスの半数近くは、厳しい冬をこせずに死亡する。飼育したハシブトガラスは12歳まで生きた。
カラスは共喰いする。死んだカラスを食べてしまう。
カラスは水浴び、砂浴びを1年中好む。それは、身体についたダニなどの虫を払い落すため。カラスは清潔好きの鳥。
カラスの体と心の不思議にせまった本です。
(2021年6月刊。税込1980円)

中国共産党の歴史(2)

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者 高橋 信夫 、 出版 慶應義塾大学出版会
国共内戦で、紅軍は初めのうち後退を余儀なくされていた。蒋介石の国民党軍のほうが最新鋭の武器を持っていたから。そこで、毛沢東は、紅軍部隊に指示した。
「勝利が確信できなければ戦闘を避ける。チャンスがあれば攻撃対象を速やかに殲滅せよ」。「敵軍より少なくとも3倍の兵を終結させ、砲兵隊の大半を集中させて、敵の陣地の弱点をひとつ選び、猛烈に攻撃して確実に勝利する」
国民党軍の将軍は、最後にはアメリカ軍が助けてくれると期待していたので、懸命さに欠けていた。兵士の多くは、農村から強制的に連れてこられた男たちなので、はじめから戦闘精神をもっていなかった。そのうえ、兵士たちには十分な給料と食事が与えられていなかったので、村々を頻繁に略奪してまわった。これに対して紅軍兵士は相対的に士気が高く、略奪にもめったに手を染めなかった。
これでは、人心が国民党から離れて、紅軍に傾くのは当然ですよね。
国共内戦に勝利した毛沢東は、1950年夏に台湾解放作戦を考えていた。しかし、朝鮮戦争の勃発により消えてなくなった。それに、ソ連へ海軍と空軍(パイロット)の参加を求めていたが、スターリンはきっぱり断った。
毛沢東が1950年夏に台湾への武力侵攻を考えていたことを初めて知りました。
朝鮮戦争は1950年6月に始まりましたが、金日成がスターリンの攻撃同意を取りつけたのは1月30日のこと。毛沢東は、同年5月に金日成と北京で会ってスターリンの開戦同意を取りつけたことを知らされ驚いた。というのも、1950年の段階では、中国の沿海部分は蒋介石の空軍による爆撃にさらされていて、国共内戦はまだ終結していなかったから。
中国共産党の指導部内部でも、朝鮮戦争に参戦することには消極意見もあった。
中国の政治で驚き、かつ恐ろしいと思うのは、1950年10月ころの反革命鎮圧運動のすさまじさです。このころ開かれた全国公安会議において、中国の全人口の0.1%を殺害することが決議され、各地で、実行に移されていったということです。対象となる人物の行動から反革命分子と認定して殺害するというのではなく、まず「0.1%」を目標人数として、その分だけの氏名を特定し、そのうえで、「事実」を発見して、殺害する。
まことに手荒い、信じられない乱暴なやり方です。これで、3年間に70万人が「反革命分子」として殺害された。いやはや大変な人数です。過去のAB団、そして文革中の弾圧とその体質、手法は共通しています。
このあと、中国の農村社会では人民公社運動がまき起こり、そして、その失敗から大量の餓死者を生み出すわけですが、それでも集団化に対して大々的な抵抗運動は起きなかった。それは、「反革命分子」を鎮圧・除去していたから、共産党に抵抗する用意のある人々は除去されていたことによる。そのうえで、ソ連と違って、農村部にまで党組織が確立していたからだ。
1056年2月のフルシチョワによるスターリン批判は、中国共産党に対しても大変ショックを与えた。このとき、中国共産党はスターリン批判の大合唱に加わらず、むしろスターリンを弁護した。なぜか…。中国共産党は、当時、政権を握ってまだ日も浅く、権力基盤が盤石ではなかった。スターリンを一途に礼賛してきたのに、急に犯罪者だと決めつけようものなら、人々が共産党に背を向ける危険性がある。スターリンの偶像を簡単に破壊するのは難しかった。
毛沢東は、1958年3月の会議で、自らに対する個人崇拝を解禁した。このころ、毛沢東は「大躍進」を打ち出した。これは、製鉄熱を生み、また人民公社をつくりあげることになった。
「大躍進」は華々しく大成功をおさめた。1958年夏から秋にかけて、毛沢東は得億の絶頂にあった。しかし、実際には、深刻な飢餓が各地にあらわれはじめていた。
(2021年7月刊。税込2970円)

「核の時代」と戦争を終わらせるために

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 大久保 賢一 、 出版 学習の友社
日本反核法律家協会の会長として活躍中の著者が核廃絶の信念を披瀝するとともに、その現実性と必要性を力説しています。著者による半年前の前著より、体裁も内容も、とてもすっきりしていて、読みやすくなっています。
著者は冒頭部分で、34歳のころの、当時4歳の娘さんとの会話を紹介しています。
頭上を自衛隊の飛行機が飛んでいるので、娘さんが「何をしているの?」と尋ねたのに、「人を殺す訓練をしている」と答えた。「どうして原爆ってあるの?」「人を大勢殺せるようにさ」、「どうして人を殺すの?」「人を殺してでもお金もうけをしたい人がいるのさ」「じゃあ、お金なくしてしまえばいいじゃない」。
子どもの直観って驚くほど鋭いものがありますよね。この問答にもハッとさせられます。
著者が核兵器に反対するようになったのは、まだ幼いときに母親から「原爆で、人は蒸発して、石段に影として残った」と聞かされたからだとのこと。ところが、この旧住友銀行広島支店の入り口にあった石段の「人影の石」について、人間が蒸発するとは思えないと指摘されているといいます。知りませんでした。人が蒸発するような温度であれば、おそらく石の階段も蒸発するか、熔融するはずだというのです。なので、熱線のあたった部分と、そこに腰かけていた人間にさえぎられて熱線があたらなかった部分の違いだろうとのこと。なるほど、「蒸発」ではなく、そこにいた人は、吹き飛ばされてしまっただけなのかもしれないのですね。
そこで、著者は、どちらでもいい、その人の日常が、突然、理不尽にも奪われてしまった事実こそが問題だとしています。まったく同感です。
2019年4月、アメリカの連邦議会(下院)で、核兵器禁止条約を受け入れるよう求める決議案が提案された。その提案者であるジム・マクバガン議員は、次のように提案理由を述べた。
「核戦争は人類の生存を脅かす。結局、問われているのは、人類が核兵器を終わらせるのか、核兵器が人類を終わらせるのかということだ」
そうなんですよね。地球温暖化など地球環境の破壊が進行しているのも重大な問題ですが、緩慢なかたちで人類が生存できなくなるのか、一瞬にして人類が滅亡するのか、どちらも目をそむけるわけにはいかない重大な課題だと私は考えています。
それにしても、アメリカというのは本当に不思議な国ですよね。トランプみたいな、とんでもない人間が大統領になったりしますが、民主主義を守ろうという力もそれなりに強く、たくましいのですね…。
日本の青年・学生のなかに、「戦争はなぜ悪いのですか?」と真面目な顔で質問してくる人がいることが紹介されています。コロナ禍前から学生は忙しいし、政治に関心がなく、その多くはなぜか現状をなんとなく肯定し、同調圧力もあって自民党を支持するのが多数だということのようです。若い人の投票率は3割程度で、半分以上は投票所に行っていないという調査結果が紹介されています。本当に残念です。この本のなかで、昭和女子大の学生たちの取り組みが紹介されています。平和問題についての青年・学生の関わりを高めるにはどうしたらよいか、みんなで知恵を出しあうべきでしょうね。
コロナ危機の陰で核軍拡がすすんでいることに、著者は警鐘を乱打しています。これまた、まったく同感です。日本はコロナ対策ではアベノマスクや「GoToトラベル」にみられるように無用なことに大金をつぎこみながら、肝心のPCR検査やワクチン確保は後手にまわるとともに、保健所の廃止・統合をすすめ、医療機関も減らしつつあります。その一方で、「中国の脅威」をあおりたてて軍事予算はついに5兆円をこえて6兆円に迫りつつあります。オスプレイが日本本土をぶんぶんうるさく飛びまわり始め、コロナ感染の有力発生源であることが明らかなアメリカ軍基地について、日本政府は出入り禁止を申し入れることすらしません(できません)でした。
そして、今や、「敵基地攻撃」を国会で公然と口にしています。現実に攻撃されなくても(なので、正当防衛ではありません)、攻撃の意図があると認定したら(国会ではなく政府が勝手に)、敵国の領土にある施設を攻撃し、破壊する(安倍元首相は「殲滅(せんめつ)」という恐ろしい軍事用語を使っています)というのです。これはまるで先制攻撃、つまり戦争を仕掛けるのとまったく同じで、恐ろしいことです。狭い日本列島に住む私たち日本人は、どこにも逃げ場なんてありません。戦争になったらいけないのです。対岸の火事ではすまされません。
鳩山由紀夫・元首相は、「悪魔のペンタゴン」に敗北したと語っているとのこと。「悪魔のペンタゴン」なんて聞いたことはありませんが、政界・財界・官界の三角形にアメリカ軍とマスコミを加えたものです。ともかく、今の日本のマスコミはNHKをはじめ政権擁護が露骨すぎます。また、「ディープ・ステート」というコトバも出てきます。軍産複合体のことです。アメリカでは強大な力をもっているようですが、日本でも、そうなのでしょうか。
ともあれ、わずか170頁ほどの小冊子ですが、今回もまた大変勉強になりました。本書が広く読まれることを願っています。
(2022年1月刊。税込1760円)

台湾有事で踏み越える専守防衛

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 半田 滋 、 出版 立憲フォーラム
アベ首相にならってキシダ首相も国会で堂々と(臆面もなく)敵基地攻撃論をあたかも憲法で許されているかのように述べたてて恥じません。でも、「敵」基地を攻撃するというのは、よく考えたら、戦争をしかけるということですよね。日本は政府の行為によって戦争の惨禍が起きないように決意した(憲法前文)はずなのに、その政府が日本を守るためにはやられる前に戦争することがありますと国会で高言しているのです。ホント恐ろしいです。しかも、それをNHKなどのマスコミが平然と、批判することもなくタレ流し、国会でも大きな対決点ともならず(与党とゆ党があまりに多いため)、世論もあきらめムードが漂っています。本当に残念ですし、心配です。
著者は防衛ジャーナリストとして、この分野によける日本有数の専門家です。わずか36頁の薄っぺらな小冊子ですが、中味はぎっしり詰まっています。
いま、日本政府が想定している「敵」は、かつてのような北朝鮮ではなく、中国です。日本が中国軍の侵攻を迎えうって戦うというのです。そんな戦争をしたら、日本が勝てるかどうかなんて他人事(ひとごと)のような予想をする前に、日本は破滅します。
だって、日本には無防備同然の原発(原子力発電所)が、玄海原発、島根原発そして福井原発「銀座」といったように数多く存在するのですよ。そこを「敵」が狙うことはないという想定は、それこそ「平和ボケ」以外の何者でもありません。ところが、現実に政府(防衛庁)・自衛隊がやっているのは、中国軍による奄美大島への侵攻を想定した訓練です。それも、九州ではミサイル実射ができないので、北海道の矢臼別演習場で、初めてアメリカ陸軍の高機動ロケット砲システム(ハイマース)と陸上自衛隊の多連製ロケットシステム(MLRS)の共同射撃訓練をしたのです。これは、奄美大島に飛来する弾道ミサイルや航空機を迎撃し、上陸する敵をロケット砲で殲滅するための訓練です。
アメリカ軍は、奄美大島だけでなく、宮古島や与那国島、石垣島にも展開しようとしていますが、これは、あくまでもアメリカ本土を守るためのものです。日本防衛なんて、アメリカ軍は、ハナから考えていません。
中国がこれらの島々を本当に攻撃すると仮定します(私は、そんなバカなことを中国軍がするとは思えませんが…)。このとき、自衛隊やアメリカ軍は自分たちの身を守るため「敵」の中国軍に当然のことながら反撃するでしょう。問題なのは、このとき、住民(島民)保護は日米両軍の頭にまったくないということです。
中国は、2期10年をつとめあげた習近平国家主席が、本年(2022年)には3期目に入る勢いです。そうすると、2027年が注目されます。そのときまでに「台湾を統一する」ことが実現できていれば、習近平は、さらに、その次も安泰だろうというのです。いやはや、恐ろしい独裁国家です。
台湾が「中国領土の一部」であることは、日本政府も再三にわたって認めているところです。すると、台湾を独立国とみなして「密接な関係にある他国」と言えるはずがありません。
ナチス・ドイツの高官は次のように言いました。
「政策を決めるのは、その国の指導者、国民は単にその指導者の言いなりになるように仕向けられる。国民にむかって、我々は攻撃されかかっていると煽(あお)りたて、平和主義者に対しては、愛国心が欠けていると非難すればよい。このやり方は、どんな国でも有効だ」
まさに、このナチス・ヒトラーばりのあおりに乗せられて、日本の軍事予算は5兆円から6兆円台に乗り、さらに10兆円を目ざそうとしています。年金が削られ、介護保険料が引き上げられ、高齢者の病院での窓口負担増が図られているなかでのことです。大学生や若者が無料の食糧品提供に行列をつくっている状況を放置しておいて、軍事予算だけが一気に増強するなんてとんでもないことです。国民の生命・健康を守らず「領土」を守るなんて、おかしいことです。
日本国憲法を大切にして、戦争ではない道を模索し、実行するのが、政府の責務だと固く信じます。まさしくタイムリーな小冊子です。
(2022年1月刊。税込100円)

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