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プライバシーという権利

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 宮下 紘 、 出版 岩波新書
インターネットが社会の隅々にまで浸透している現代社会におけるプライバシーを守る権利を考えている本です。とても勉強になりました。
FB(フェイスブック)で「いいね」を押した履歴を集めると、その人がどんな人か予測できるといいます。白人か黒人かは95%、性別は93%、ゲイであるか否かは88%の確率で予測できる。独身か既婚者か、喫煙の有無、飲酒の有無、宗教(キリスト教かイスラム教か)も予測できる。また、民主党支持か共和党支持かについても、85%の確率で予測できる。
私もFBは利用しています(見るだけです)が、これではうかつに「いいね」を押せませんね。
ナチスはユダヤ人迫害のとき、IBMからパンチカード読み取り機を購入し、個人情報を収集して分析した。それによって、ユダヤ人の中から誰を最初に資産没収、逮捕・拘禁、そして最終的に駆逐の標的にするかを決めた。
プライバシーの権利の核心にある利益は、憲法13条の個人の尊重の原理に照らした人格的利益と考える。データによる決定からの解放により、情報サイクルの中で人間を中心にすえて、本人自らがネットワーク化された自分を造形する利益、別の言い方では、自らの情報に関する決定の利益こそが現代的プライバシー権の中核をなしている。
日本の最高裁は、これまで一度も自己情報コントロール権を肯認していない。
ベネッセから個人情報が大量に漏洩した件について、ヤフーBBから500円の金券が配布されていたほかに、裁判所は5500円の賠償を命じた。
氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどの単純な漏洩の被害者に対する慰謝料の相場は、1人あたり1000円から1万円となっている。1人あたりではたいした金額ではないとしても、企業にとって、被害者が多いと大きな金銭的負担を余儀なくされる。
破産者マップについて、インターネット上で公表するのは違法だけれど、DVDにして販売する行為は適法とされている。この両者の違いは、一体どこにあるのか…。
では、車に搭載しているドライブレコーダーによる常時撮影は、情報自己決定権の侵害にあたるという判決はどう考えてよいか。
自動顔認証カメラが空港に設置されようとしています。その正確性は99%。ところが、2019年には外国からの旅行者は4434万人いたので、44万人あまりの人々が、誤認されることになる。これって、とても怖い話ですよね。
自分のことを自分以上に第三者が知っているなんて、まさしく不気味そのものです。いやですよね…。現代社会に生きるうえで考えるべき視点の一つだと思いました。
(2021年2月刊。税込880円)

庭仕事の真髄

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 スー・スチュアート・スミス 、 出版 築地書館
私は日曜日の午後は庭に出て庭仕事にいそしみます。冬は花の手入れというより、花を咲かせる準備です。夏は炎天下で雑草とりするのが大変ですし、蚊にやられますが、冬は蚊がいませんし、雑草もそれほどではありません。クワをふるって掘り起こすと汗をかくほど、身体が温まって、ちょうどいいのです。今、庭のあちこちにチューリップの球根を植えていますから、3月になるのが楽しみです。300本以上は咲いてくれるはずです。
チューリップの前にスノードロップが白い可愛らしい花を咲かせます。この本には、スノードロップは私たちの庭での新しい生命の最初の兆候だとあります。
庭にすんでいるネズミは他の球根を食べてもスノードロップの球根は食べないので、どんどん増えていくとも…。わが家の庭にネズミを見かけたことはありませんが、モグラはよく見かけます。モグラは球根を食べませんが、せっかく植えつけた球根を地上にはね上げてしまうことがあります。自分のトンネルを邪魔しているというのでしょう。
植物は人間よりもはるかに折りあいが良く、威圧的ではない。植物と働くことを通じて、私たちは生命を育(はぐく)みたいという衝動を再び持てるようになる。
子育てと同じで、庭も完全に人間のコントロール下におくことは不可能だ。庭自体が生き物で、人間がそれを完全に支配し、管理することは不可能。そうなんですよね、折りあいをつけるしかありません。
庭には人間を平等にする効果がある。土に触れて働くことは、人と人とのあいだに真のつながりを育てる。そこには気どった態度も偏見も存しない。なので、刑務所のなかでのガーデニングはとても効果がある。
トラウマは、過去が常時、現在に侵入してくるから、心が経験を時間的に処理するのを邪魔する。植物の世話に没入し、現在の瞬間に集中すると、これを変えることができる。
庭で土を掘り起こすことで、土壌中の他のバクテリアが直接働きかけてセロトニンを調整している可能性がある。ええっ、そんなことって、聞いたことがありません。本当でしょうか…。
ガーデニングは、テクノロジーをほとんど必要としない。
地味な普通の家庭菜園は、私たちだけのためにあるのではない。私たちが何かを始めると、多様な生物が存在するようになり、それによってさらに鳥や虫のための環境が生まれ、私たちの周囲は豊かになっていく。
わが家では生ゴミは結局のところ庭に植えこんでいきます。すると、庭はふかふかの黒い土となり、ミミズがたくさん生まれます。なので、モグラが繁盛するわけです。そして、ヘビが代々庭のどこかに棲みついています。
庭仕事は繰り返しの多いタイプの活動。そこにリズム感に気づくことができる。すると、心と身体と環境が一緒になって調和をもって機能するようになる。そして、心身を大きく回復させる力が発揮される。副交感神経の機能を強化し、脳の健康を増進させる。エンドルフィン、セロトニン、ドーパミンといった、抗うつ性の神経伝達物質のレベルが上昇し、同時にBDNFのレベルも上がる。これらが統合されると、楽しい気分の、リラックスした状態での集中ができるようになる。
今の瞬間を生きる力を引き出すことが、今日のストレス治療において強調されているが、同時に将来の方針をもつ力も深める必要がある。庭には、計画したり、楽しみにしたりすることが常にある。一つの季節が終わると、次の季節がとって代わる。このような何かを期待する前向きの感情は、生命の連続性といった、心を安定させる効果のある感覚を引き起こす。
美しい花は、真の、そして思わず出る微笑(ほほえ)み、デュミエンヌ・スマイルと呼ばれる微笑のきっかけになる。これは礼儀上の微笑と違って、顔全体を明るく照らし、心からの喜びを表すもの。緑の植物や花の存在は、信頼感や安心感を強めてくれる。
ガーデニングを読書とともに、主な喜びの一つとしている私にとって、とても意を強くしてくれる本でした。
(2021年11月刊。税込3520円)

母の背中

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 真木 和泉 、 出版 自費出版
宮崎出身の著者による短編小説を1冊にまとめた本。宮崎の大淀川近くに住んで小学校に通っていたころの思い出を描いているものが多い。
私と同じ団塊世代の著者は、7人姉弟の末っ子として、親からほったらかされ、ほとんど野生児のように育った。何のしつけも受けていないというけれど、祖母をふくめて10人家族なので、上の姉兄たちから、それなりにしつけを受けていたはずです。
貧しい家庭ではあったが、姉兄たちは、それぞれ個性的で、母親をふくめて人間的な、泥臭いぶつかりあいの絶えない日々だったようです。
そして、著者は小学校について、「なんとすてきな場所だったことだろう」と手放しで絶賛しています。
何も知らない野生児の自分に文字を教えてくれた。あの感動は今も忘れることができない。街を歩くと、今まで単なる模様に過ぎなかった看板の文字が読めるようになっていた。字についても面白いことは何もなかったが、学校はキラキラと輝いていた。そこで、どんどん利口になっていった。いつのまにか、お使いに行って釣銭の計算もできるようになった。
小学校で、人間として解放されていった。1クラス55人もいた小学校での日々によって、自分の人生に刻印されたのを一つひとつ自覚していったように思う。
小学校で、著者は今でいうイジメにもあったようです。たしかに身体が大きいほうが強かったと思いますが、1クラスに50人もいると、かえって陰湿なイジメになかったようにも思うのですが、どうなんでしょうか。私自身はイジメにあったことはなく、イジメる側にまわったことも、本人としては、ないと思っています。中学校には、いわゆる「不良」がたくさんいるというので、小学6年生のころ、中学校へ進学したらどうなるのかなと、漠然とした不安を抱いていました。
実際には、小学校は4クラス、中学校は13クラスもあって、生徒がうじゃうじゃいましたので、「不良」グループの標的になることもなく、仲良しグループとともに平穏な3年間を過ごすことができました。
大学時代の友人のすすめで、本にまとまったとのこと。やはり、こうやって一冊の本にまとまると読みやすいし、いいですよね。著者の今後ますますの健筆を期待します。
(2021年9月刊。)

蜜量倍増、ミツバチの飼い方

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 干場 英弘 、 出版 農文協
養蜂でだいじなことは、ハチの密度をいかに高めてやるか、ということ。一つの蜂群に、女王蜂、働き蜂、オス蜂、卵、幼虫そして蛹(さなぎ)がバランスよく存在し、世代交代されていくことが欠かせない。そのためには、巣箱の中に育児する場所(育児圏)と、蜜を貯める場所(貯蜜圏)とをすっきり分けて、育児圏では巣枠の隅から隅まで蜂児でいっぱいの状態(額面蜂児)の巣枠をつくり、貯蜜圏では蜜だけを貯めこむ巣枠をつくる。
そこで、採蜜群は2段にして、下段を育児圏、上段を貯蜜圏とし、その間に隔王板を入れ、女王蜂が上段の貯蜜圏に行かないようにする。すなわち、養蜂の基礎は、育児圏と貯蜜圏を明確に区別し、それぞれふさわしい間隔に巣枠を整えることであり、それによって最大限の採蜜量が期待でき、質の向上も図ることができる。著者の指導するモンゴルの養蜂家では、年間のハチミツ収穫量が8キロだったのが、糖度80%以上のハチミツを20キロとれるようになった。
ミツバチは1万~数万匹の蜂群単位で生活し、一つの群れには1匹の女王蜂と1万~数万匹の働き蜂、1割のオス蜂から構成されている。女王蜂は3年ほどの寿命だが、養蜂家は女王蜂を毎年更新している。オス蜂は交尾以外には役立たずで、仕事は一切しない。
蜂群内では、女王蜂が中心で、働き蜂が仕えているように思われがちだが、実際には、「上下の関係」や全体を統率する存在はいない。それぞれ個々で行動している。それでも、集団としては秩序が維持され、蜂群が全体として維持されている。
ミツバチを飼育するときには、ハチ1匹の命を大切にする意識をもつ必要がある。燻煙
機を適切につかって、蜂群を丁寧に扱う。ハチに余計なストレスを与えないように心がける。
昆虫は変温動物だが、ミツバチはほとんど恒温動物といってもよいほど。蜂球の内部は30度で、外側は15度ほど。
ミツバチの最大の加害者はミツバチヘギイタダニ。被害全体の6割を占めている。
オオスズメバチなどの天敵もいる。農薬(とくにネオニコチノイド系)による被害も大きい。
ほとんど役に立たないオス蜂児は、高タンパク質、高栄養で、肉食性昆虫の代用食に適している。
ナツメの花からとれたハチミツは、世界でもっとも高価なハチミツとして有名。うへー、知りませんでした。わが家の庭にもナツメの木があります。鋭い棘(とげ)があるので、手入れが大変です。
ミツバチはハチミツを生産するだけでなく、花粉媒介による貢献のほうが5倍も役に立っている。イチゴも、ベリーも、サクランボやタマネギまでもミツバチにお世話になっている。
たくさんの写真とともにミツバチの飼い方が、具体的に説明されていて、写真もたっぷりの楽しいミツバチ飼育法のテキストです。でも、私にはちょっと無理そうでした、残念…。
(2021年3月刊。税込1980円)

朝鮮通信使の道

カテゴリー:朝鮮・韓国

(霧山昴)
著者 嶋村 初吉 、 出版 東方出版
江戸時代は鎖国していたということになっているけれど、実際には海外に向かって4つの口をもち、朝鮮と琉球とは通信の関係を保持していた。4つの口とは、琉球、出島(長崎)、対馬、松前(北海道)。江戸には、朝鮮通信使、琉球使節、出島の阿蘭陀(オランダ)カピタンが参府し、徳川将軍に海外の情報をもたらした。
江戸時代の朝鮮通信使は、薩長12(1607)年を皮切りに、文代8(1811)年まで12回、来日した。そのうち3回目までは回答兼刷還使(さっかんし)といって、秀吉軍によって日本に拉致・連行された朝鮮人を連れ戻すことを主目的とした。
通信使一行は漢城(ソウル)の王宮で国王から励ましの言葉をいただき、江戸城での図書交換のため8ヶ月から1年2ヶ月をかけて往復した。
通信使一行は、三使(正使、副使、従事官)を筆頭に300人から500人、国内一流の人材が抜擢された。迎える幕府側は年間予算100万両をこえる巨額を投入した。
朝鮮通信使が来日すると、宿泊先には求画求援の人波が押し寄せた。朝鮮の先進文化を学ぼうとしたのだ。また、庶民のあいだでは、「朝鮮人の家を得ておけば願い事が必ずかなう」という噂がたち、人々が宝を求めるように集まった。
通信使は、異文化に接触できる江戸時代最大の外交イベントで、使節が行く沿道には、人垣ができた。異国の風俗、音楽、舞踊を縁日を楽しむように民衆は鑑賞した。その影響は、牛窓(岡山県瀬戸内市)の唐子踊り、三重県の分部町や東玉垣町の唐人踊りなど、現在も継承されている。
そして、朝鮮通信使は、日本の技術の優秀さを認め、評価した。
著者は、この朝鮮通信使のたどった道を実際に歩いたのです。
ソウルが外国軍によって占領されたのは史上2回ある。豊臣秀吉の朝鮮侵略と中国・清軍の侵攻の2回。
朝鮮で開化思想をもっともはやく受け入れたのは中人階級だった。医術・天文・通訳のような技術職の人々である。両班でも商人でもない。官職についても一定以上の昇進はできず、四・六品以上には昇れなかった。
両班(やんばん)とは、高麗、朝鮮王朝時代、官僚を出すことができた最上級身分の支配階級。両班の本来の意味は、朝廷で儀式があるとき、そこに参席しうる現職の官僚を総称するものだった。両班は婚姻関係を通じて結合するとともに、学問を通じて結びつきを深めた。
釜山には「草梁倭館」があり、対馬藩士が交代で400人から500人も詰めていた。その面積は10万坪で、これは長崎・出島の25倍もの広さ。江戸の中期には、雨森(あめのもり)芳洲(ほうしゅう)、後期には、小田幾五郎が倭館につとめた。
秀吉の朝鮮侵略のとき、朝鮮軍のほうに投じた日本人の武将がいました。降倭と呼ばれています。そのなかでは「加藤清正の鉄砲隊長」だった沙世可(さやか)が有名ですが、その14代目の子孫がいるというのには驚きました。全在徳さんです。慶尚道の大邱(てぐ)に住んでいます。
朝鮮通信使が日朝交流の点で果たした役割はとても大きかったと改めて思いました。
(2021年11月刊。税込1980円)
 水曜日の午前中、雪がチラホラ降ってきましたが、すぐにやみました。
 いま庭は紅梅が満開です。今年はなぜか隣の白梅が咲いてくれません。
 庭のあちこちに白い水仙が咲いています。ところどころ、正月に植え替えた黄水仙が可憐な花を咲かせています。私はキリっと自己主張する黄色の黄水仙がお気に入りなのです。

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