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戦国日本の軍事革命

カテゴリー:日本史(戦国)

(霧山昴)
著者 藤田 達生 、 出版 中公新書
この本には、私の知らなかったことがいくつも書かれていて、大きく目を見開かされました。
その一は、種子島への鉄砲伝来。実は、すでに倭寇が介在して琉球などに火縄銃が入ってきていたというのです。種子島はワンノブゼムだった可能性があります。
鉄砲の国産化は日本がアジアのなかで最速だった。そして問題は、火薬と鉛の入手。硝石は、国内では産出できず、輸入するしかなかった。中国の山東省や四川省。また、鉛はタイのソントー鉱山。そうだったんですね。
鉄砲は、砲術師、鉄砲鍛冶、武器商人という三者の緊密な関係が成立しなければ機能しない。
織田信長は、イエズス会を介して硝石や鉛を大量に確保していた。イエズス会宣教師によって、タイ産の鉛と中国産の硝石がセットで輸入され、堺の商人を経由して信長のもとに届けられた。イエズス会と信長の親密さの背景には、キリスト教保護の見返りとしての軍事協力があった。実際に、長篠の戦いの古戦場から、信長方の使用した鉄砲玉のなかにタイ産鉛が確認されたのだ。
鉛は、鉄や銅に比べて鉄砲玉としては使いやすく、また対人殺傷効果も抜群だった。
長篠の戦いにおいて、武田軍もそれなりの鉄砲はもっていたが、その玉薬と鉛の備えが信長軍とは格段の差があり、それが戦場の勝敗に直結したということなのです。うむむ、なんという明快な解説でしょうか…。
家康は大坂の陣のとき、大砲の威力を大いに発揮させた。その大砲はイギリス商館を経由して、ヨーロッパ製のカルバリン砲(最大射程6300メートル)やヤーカー砲(同3600メートル)であり、それらを1門1400両で購入した。
いやあ、知れば知るほど、歴史は面白くなってきますね…。まったく目が離せません。
(2022年3月刊。税込924円)

ツバメのせかい

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 長谷川 克 、 出版 緑書房
たくさんのカラー写真とともに、ツバメの生態が詳しく紹介されている楽しい本です。とても身近な鳥ですが、知らないことがたくさんありました。
ツバメのメスは、ヒナにとてもよく似た声を出すオスに惹きつけられる。
オスの羽色が赤いほど、メスにもてる、その代わり、ケンカに弱い。
魅力的で経験豊富なオスが早く繁殖地に現れる。後から来たメスは、オスが来た順番なんて知らないはずなのに、早く来たオスがメスにモテる。不思議なことですよね。
ツバメをふくむ多くの鳥類には紫外線が見える。なので、多くの鳥は、ヒトより多彩な色を見えていることになる。
雨が降っていても、恒温動物の鳥は、日々、大量にエネルギーが必要である。
ツバメの平均寿命は1年半ほど。
日本に戻ってきたツバメのカップルの半数は離婚している。
巣立っても、無事に戻ってくる確率は数%ほど。大半は死んでしまう。
ツバメのメスは、夫より魅力的で子孫繁栄能力の高いオスを浮気相手として並んでいる。
日本の街中にいるツバメでは、婚外子は3%ほど。ところが、ヨーロッパの牛舎で集団繁殖するツバメでは婚外子が3割以上もいる。
玄鳥至、玄鳥去。玄鳥とはツバメのこと。ツバメが来た、ツバメが去ったというコトバ。
泥で巣をつくるというツバメの行動は、鳥類全体でみても類を見ないユニークな行動。
世界中にツバメは70種以上もいるが、日本には、わずか5種のみ。
ツバメは東南アジアから集団で渡って来ているのでしょうか。その渡りの途中をとらえた映像はないのでしょうか。あんな小さい身体で何千キロも飛んでくるなんて、不思議としか言いようがありません。
(2021年6月刊。税込1980円)

二本の棘

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 山下 征士 、 出版 角川書店
タイトルからは何の本か分かりませんが、兵庫県で捜査一課長をつとめた著者の体験記です。森永グリコ事件のような迷宮入り事件もとりあげられていますが、とくに目新しい事実が紹介されているわけでもありません。警察の捜査というのは地道な努力の積み重ねだということ、それには市民の信頼と協力が欠かせないという、しごく当然のことが書かれています。
それにしても、警察官による銀行強盗事件が兵庫県で連続して発生したというのには改めて驚きました。福岡でも警察官の銀行強盗事件が起きましたが…。
1984年3月、警部補(42歳)が大阪市内の泉州銀行難波支店にモデルガンをもって押し入り、現金1000万円を強奪した(5分後に逮捕)。動機は、ギャンブルなどによる借金苦。翌4月、大阪・池田市の幸福相互銀行池田支店に巡査長(43歳)が猟銃をもって押し入り、121万円を奪った。犯人は、翌日、逮捕された。40代の警察官が銀行強盗するなんて、まるでアメリカのギャング映画に出てくる悪徳警官です。
森永グリコ事件では、犯人を取り逃がした滋賀県警の本部長が自殺しました。たしか、ノンキャリア組の出世頭の本部長だったように思います。
捜査に必要なのは、体力と根性だけではない。それも重要だが、広範囲にわたる教養や知識、分かりやすく説明する力、ひらめきと想像力、目に見えない人間の心を理解する力、そうしたものすべてが捜査に役立つ。なーるほど、そうなんでしょうね。
キャリア組が捜査一課長になると、よほど現場での経験やある種の根性がないと、部下がついていかない。現場主義の思想が根強くあり、県警本部の捜査一課長は、「高卒叩き上げ」の指定席になっている。そうでないと、クセのある刑事たちをまとめきれないからだ。
捜査一課長には多くの「才能」を認めて活かすことが求められる。
1987(昭和62)年5月3日に起きた朝日新聞阪神支局の記者殺害事件について、著者は犯人は右翼だと推測しています。
グリコ森永事件の犯人たちは金銭目当てだったが、朝日新聞を襲撃したのは右翼思想の人間の犯行だということです。
かのサカキバラ事件、そして1974(昭和49)年11月の「八鹿(ようか)高校事件」もこのころ起きたのですね…。私が弁護士になった年の秋のことでした。
(2022年3月刊。税込1870円)

蒙古襲来絵詞復原

カテゴリー:日本史(鎌倉)

(霧山昴)
著者 服部 英雄 、 出版 海鳥社
これは、すごい本です。ぜひみなさん手にとって見てほしい本です。
文永の役(1274年)の蒙古襲来のとき、元軍を迎えうった日本軍の一員だった竹崎季長によって制作された「蒙古襲来絵詞」がカラー図版で見事に再現されていて、圧倒されます。巻頭の27頁もあるカラー図絵を眺めるだけでもワクワクしてきます。なんと素晴らしいカラー彩色絵でしょうか…。
もちろん原本の絵もあります。でも、白描本という線だけの絵とカラー彩色絵を三つ並べて鑑賞できるのです。いやはや、こんなに極彩色だったとは恐れ入りました。
中国(元軍)の最先端兵器は火薬を使う砲弾(てつはう)。轟音を発する見知らぬ兵器に日本軍は、人も鳥も脅えた。火薬の材料は、硝石・硫黄・木炭で、硫黄は中国大陸では不足していたので、火山国である日本で産出したものが中国(宋)に輸出されていた。元は敵対国(宋)への輸出を断ち切り、硫黄を直接入手したかった。軍需物資を得るため、日本を従わせようとしたのが元寇だ。
中国軍は、言語の異なる複数民族(蒙古・漢・高麗)から成り、著しく統一性を欠いていた。東路軍と江南軍は最後まで合流できなかった。初めての海外遠征で不慣れが多く、予定どおりの進軍ができず、作戦計画は非現実的だった。
この本では、「蒙古襲来絵巻」ではなく「絵詞」としています。宮内庁も国定指定名称も「絵詞」になっています。
「絵詞」は、熊本、細川藩家臣の大矢野門兵衛の所有であり、明治時代にはその子孫の大矢野十郎が所有していた。そして、明治天皇に献上された。
模写彩色本は、文政4(1821)年にできている。
「蒙古襲来絵詞」には絵の巻と言葉の巻があり、絵を見る人とは別に、声を出して詞書の巻を読む人がいた。草書は見慣れて読みやすく、楷書のほうが読みにくかった。うひゃあ、まるで今とは逆ですよね、これって…。
日本の大弓は2.4メートル、蒙古の弓は半弓で、1.8メートルなかった。日本の大弓は強力で遠くまで届いたが、長いので操作性は劣った。蒙古の弓は連射性・起動性には優れている。近距離だと、日本の弓を蒙古の竹で編んだ盾では防げなかった。
元軍は人数では日本軍に劣ったが、兵器・火器ではまさっていた。しかし、元軍には不慣れな海外遠征であり、作戦ミスもあった。
ともかく、合戦の模様が江戸時代の模写にせよ、こんなにくっきり鮮明に彩色されていたなんて、全然知りませんでした。もっと広く知られていい模写彩色本だと思います。ご一読を強くおすすめします。
(2022年3月刊。税込3850円)

中国法

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者 小口 彦太 、 出版 集英社新書
中国って、法治国家って言えるのかしらん。裏で共産党が裁判所そして判決を操作しているんでしょ…。こんな疑問にこたえてくれる新書です。
まず、何より驚かされるのは、中国の民事訴訟事件数が非常に多いという事実です。そのなかでも、契約関係の訴訟が断トツに多いのです。
著者は1700件もの訴訟の判決文に目を通していますが、判決文の形式は日本の民事訴訟とほとんど変わらず、当事者双方の主張、そして裁判所の事実認定が正確かつ詳細に記され、それをふまえて法解釈論が展開され、判決となっている。
中国の人々は、契約が守られなかったとき、決して泣き寝入りしないという人々が数多く存在する。なので、訴訟は多く、でたらめな判決文では本人がとうてい承服しない。
とはいっても、日本と中国とでは、法観念が相当に異なっている。たとえば、中国では、特別のことがないかぎり、当事者間の約定を何より重視する。約定こそ原則であるという法観念が強烈にはたらいている。むむ、これはなんだか日本とは違いそうですね。
中国の不法行為法には無過失責任の規定が多い。たとえば、中国の道路交通安全法では、運転者に過失がなくても、必ず損害額の1割の範囲内で賠償責任を負わなければならない。これは無過失責任。これも日本とは違いそうです。
中国の死刑判決は2種類ある。必ず執行される死刑と、もう一つは2年の執行延期がついていて、その2年の間に故意犯罪を行わない限り、無期あるいは有期懲役刑に減刑されるもの。知りませんでした。
中国の学者は、中国の裁判所と裁判官には、必要な独立性が欠けていると批判している。現代中国の刑事手続では、「疑わしきは被告人に有利に」という原則ははたらかない。それにかわって、「疑わしきは、軽きに従う」、つまり拷問があったかもしれないが、どうも確信がもてない。決めがたいので軽きに従う。これが現代中国での慣行をなしている。うむむ、これはいかがなものでしょうか…。
中国では、合議・独任廷での審理によって審判は完結せず、重大な事件であれば、常に上位の人間・機関の指示を仰ぐことが期待されている。こんな仕組みは、まぎれもなく行政に属すると判断される。
中国の法院の審判には確定力がない。
中国は、成立以来、30年間も法律の空白期間が続いたが、1979年の刑法典と刑事訴訟法の制定から、2020年の民法典の制定で、法体系の構築は基本的に完了した。
憲法解釈の権利は、中国では、全人代常務委員会がもっていて、法院(裁判所)ごときが憲法解釈権を行使するなど、もってのほか。これが党中央の指導部の考え方だった。
党が国家を指導する体制を前提をする限り、表の法としての「国法」に、裏の法としての「党規」が常に優先する。したがって、多様な形式から成る裏の法が姿を消すはずがない。これが中国法の常態である。やっぱりそうなんですね。
著者は、「法院」は本当に裁判所なのかと疑問を呈しつつも、私法の領域では、法は着実に機能していると認めています。この矛盾こそが、現代中国法をめぐる特色なのでしょうね…。福岡には中国語の話せる弁護士が何人もいますよね。たしたものです。ますますの活躍を心から期待しています。
(2021年11月刊。税込860円)

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