法律相談センター検索 弁護士検索

世界パンデミックの記録

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 マリエル・ウード 、 出版 西村書店
 AFP通信(世界三大通信社)が変わりゆく世界をとらえた500点の写真がオールカラー愛蔵版として一冊にまとめられました。貴重な記録写真になっています。
 今、日本はコロナ禍第七波の猛威の下にあります。でも、政府は人々に対して何ら行動制限をしていません。病院はパンク状態になっているというのに、医療面でも何ら特別の手だてを講じていません。政府が今やっているのは、コロナ陽性患者の統計をとらないようにしようということ、そして、GoToトラベルの再開を延期したことくらいです。
 アベノマスクに始まった自公政権の無為・無策はひどすぎます。それでいて、「国土」防衛のための軍事予算は青天井で倍増するというのですから、呆れはてて、怒りの声も出なくなってしまいます。
 世界中、コロナ禍は至るところで無数の死者をうみ出しました。そして、死者との別れさえ困難にしてしまったのです。
ブラジルでは、霊柩車が墓地で渋滞し、墓地はあっというまに満杯になっていく。中国では、たちまちのうちに野戦病院がつくられた。 そして都市が封鎖され、町はすぐにゴーストタウンと化した。 完全防護服に身に固めた人々が町を消毒していく。ソーシャルディスタンスが常識となった。
そして、医療従事者はエッセンシャル・ワーカーとして社会から感謝される存在。しかし、過労のため、医師や看護師のなかにだって倒れる人が相次いだ。
いったい、いつになったら、このコロナ禍は終息するのでしょうか…。
身近な人々が次々に陽性となり、また濃厚接触となって、仕事を休み、自宅に閉じこもる。いやあ、本当に大変な世の中です。ロシアのウクライナへの侵略戦争と同じで、まったく明るい見通しをもてないというのは本当に辛いです。
  (2022年3月刊。税込3850円)

リセットを押せ

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 ジェイソン・シュライアー 、 出版 グローバリゼーションデザイン研究所
 ニューヨークタイムズがアメリカのベストセラーとして紹介したゲーム業界の栄枯盛衰の話です。私は今なおスマホは持たずガラケー、メールは見るだけで自ら発信することもない、もちろん、ゲームなんて、かのインベーダーゲーム以来、とんととんと無縁に生きてきました。
 ゲームの面白さを知らずして人生を語るな。こう言われてしまいそうですが、私に言わせてもらえば、他人(ひと)の手の平(ひら)の上で踊って(踊らされて)何が面白いの…、ということです。それでも、かくもたくさんの人々を惹きつけてやまないゲーム業界とはいったいどんな状況なのかは知りたいのです。なので、ざっとざっと読んでみました。
 ゲーム業界とは、どんなところなのか…。この業界で一番嫌いなところは、開発者たちの生き血をすすり、骨までしゃぶってから捨てる。
 ビデオゲーム業界に安定という言葉はない。確実なものは何もないのだ。ビデオゲーム業界で30年以上も働いたという人は、あまり多くない。
 ビデオゲーム業界で働いていて、一番辛(つら)いのは、友人ができても突然引き裂かれる可能性があること。
 ビデオゲームは楽しんでもらえることを目指して作られる。ところが、実際は、企業の冷酷な論理の下で製作されている。
 ビデオゲーム制作会社の社員たちは、自分の時間も家族との時間もあきらめて完成にまでこぎ着ける。その犠牲の代償が失業、だとしたら、あまりにも不条理なのではないか…。
 いやあ、ホント、本当ですよね。
 ビデオゲーム制作会社での不安定な労働環境はあたり前になっている。従業員は、5年間にフルタイム勤務で2.2社、フリーランスで3.6社つとめている。それほど雇用の不安定は際立っている。しかも、収入は良くても、燃え尽きてしまう。アパートの1室で1日16時間も働くという生活は、明らかに持続不可能だ。ときには休息が必要なのだ。
 年収10万ドルの高給取りでさえ、物価の高いサンフランシスコでは生活に苦労する。悪くない収入を得ていても、裕福というほどではなく、生きるのに精一杯というのが実際だ。
 ビデオゲームの開発は、2つの段階に分けられる。ゲームを設計するプリプロダクションと、実際に制作するプロダクションだ。ただし、2つのあいだに明確な境界線はない。時間と予算に応じて、短くなったり、長くなったりする。
 たかがビデオゲームをつくるのに、何日間も徹夜するなんて、まったく信じられません…。
 若さにかまけて、そんなことしていたら、年齢(とし)をとって、身体中が内臓をふくめてガタガタ、病気もちの身になってしまいますよ。気をつけてください。
(2022年6月刊。税込2420円)

七三一部隊と大学

カテゴリー:日本史(戦前・戦中)

(霧山昴)
著者 吉中 丈志 、 出版 京都大学学術出版会
 七三一部隊を支えていたのは京大そして東大医学部の教授たち。彼らのほとんどは戦争犯罪人となることもなく、アウシュヴィッツの医師メンゲレのように身を隠すこともなく、それどころか戦後日本の医学界や製薬会社のトップを占めています。そして、彼らは、「戦争だったから仕方がないこと」だとウソぶいて反省することもなく、真実を明らかにしようともしなかったのです。それは医学界の大きなタブーとなっていました。それを打破したのは『悪魔の飽食』(森村誠一)でした。
この本は、中国・ハルビン市にある「七三一罪障陳列館」の副館長(楊彦君)の著書の翻訳を前編とし、後編は日本の研究者の論文集から成っている、550頁もの大著。お盆休みに早朝から読みはじめ、午後になんとか読了しました。
 七三一部隊とはどういう組織だったのか、総合的にとらえることができます。
 それにしても3000人もの犠牲者を生体実験して、堂々と医学文献に発表するなんて、並みの神経ではありません。犠牲者たちが面前で死んでいき、その遺体が焼却されていくのを知っていたのですから…。
 犠牲者は15歳から74歳までで、女性もいます。中国人、朝鮮人そして白系ロシア人。なぜか病気になった七三一部隊員まで被験者になっています。
 白系ロシア人が看守をだまして反乱を起こしたものの、すぐに鎮圧されたこともありました。なにしろ七三一部隊の実験棟は、外に3メートルもの深い溝があるうえ、その内側に2、5メートルの高い塀があるから、脱出なんて不可能なのです。
 そして、「マルタ」と呼ばれた被験者は憲兵隊がどんどん連れてきます。それは抗日分子だったり、ソ連のスパイだったりします。日本軍に友抗的な人はいくらでもいたでしょう。そして、そんな「反日」の人間は匪賊として、即決射殺してよいという法律が満州国にはありました。面倒な裁判を経ることなく、憲兵隊は即決処刑できたのです。そして、殺すより「人体実験」で役に立たせようと考え、七三一部隊に送り込んだのでした。
 七三一部隊の悪業が世間に知られなかったのは、アメリカ軍が七三一部隊のトップに君臨していた石井四郎軍医中将たちから医学的データの提供を受けるのと交換に免責したからです。取引が成立したのです。石井四郎は、部下たちには墓場まで秘密を持って行けと命じておきながら、自らはアメリカ軍の尋問にペラペラとしゃべり、データを提供したのでした。
 本格的な学術研究書です。大変勉強になりました。
(2022年4月刊。税込3960円)

ブラックホール

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 二間瀬 敏史 、 出版 中公新書
 ブラックホールの姿が見えた、だなんて、不思議ですよね。だって、光が吸い込まれていくんでしょ。その姿が見えるはずありません。なので、ブラックホールの周囲が見えたので、その真ん中の黒いものがブラックホールというわけです。なるほど、なーるほど・・・。でも本当なんんでしょうか。ブラックホールって、いったい何でしょうか・・・。
そこにある物質が詰まっているわけではない。物質のかたまりではなく、時間と空間のかたまり、のようなもの。ええっ、いったい何のことでしょう・・・。ともかく、わけが分からないまま、読みすすめました。この世の中、わけが分からないけれど存在するものというのは、いくつもいくつもあります。コロナ禍が爆発的に増えているのに、行動制限なし。旅行するのも自己責任で自由。ロシアのウクライナ侵略戦争が終わる目途が立たないなか、日本も核をもてという声が強まる不思議さ。日本が核をもったら攻められないなんてノーテンキな幻想でしょう。いったい日本に原発(原子力発電所)がいくつあるのか知っているのでしょうか。休眠を入れたら50ヶ所以上になります。その一つでも攻撃されたら、日本はおしまいなんですけど・・・。
 ブラックホールの中に物質はない。どこにも物質はない。重たい割にはすごく小さい天体。そして重力がとても強い天体、それがブラックホール。
 えぇ、物質がないのにすごく重く、重力がとても強いって、どういうことなんでしょうか・・・。
 ブラックホールの表面は、時間が凍りつくところ。時間の流れが止まるところ。
それではブラックホールをつくった物質、その後にブラックホールに落ち込んだ物質は、いったいどこに行く、行ったのか・・・。これは、今なお答えが見つかっていない現代物理学の宿題だ。
 ブラックホールの正反対のものとしてホワイトホールと呼ぶものがある。このことも知りませんでした。外向きに一方通行の面に囲まれた時空の領域です。
 この宇宙には、大小無数のブラックホールが存在している。これらのブラックホールは、太陽質量の10倍以上重い大質量星の重力崩壊で形成されたものと考えられている。
 かの有名なホーキング博士は、タイムマシンができないことを意味する「時間順序保護仮説」を主張した。ホーキングはいまだかつて未来からの旅行者がいないことがその証拠だとした。そうですよね。映画や小説だとタイムマシンで時空を行ったり来たりしますし、できますけど、いったい父親が母親と巡りあわずに私が存在できるものでしょうか・・・。どう考えてもおかしいです。
 光さえも逃げ出せない時空の領域、それがブラックホール。では、それは何なのか・・・。こんな日常生活とはまったく無縁な思考の遊びのような世界に、しばし浸っているのも心地良いものなんですよね・・・。
(2022年2月刊。税込946円)

「ネコひねり問題」を超一流の科学者たちが全力で考えてみた

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 グレゴリー・J・グバー 、 出版 ダイヤモンド社
 猫は高いところから落ちると、最初にどんな姿勢であっても、必ず、足から着地するという驚きの能力をもっている。
 この本は、超一流の物理学者たちが、この「ネコひねり問題」を理論的に解明し、説明しようとした苦闘の歴史を解説しています。
 なので、その理論のところは、とても難しくて、正直言って私にはよく分かりませんでした。
 それでも、長い尾がなくても、目隠しされていても、そして宇宙(無重力)空間でも無事に着地できるという猫の能力には、改めて驚くばかりです。
 しかも、猫は高層ビルから落下したときにも、意外や意外、ほとんどケガせずに着地するというのです。それも9階より高いほうが猫はケガしないという、私たちの常識に反する事実があるのです。
 信じられません。その理由の一つは、猫の体重が人間よりはるかに軽いからです。
 猫は高いところから落下するとき、完全に無重量状態にある。なので、「加速」を感じることはない。しかし、終端速度に達すると、通常の重さを感じて、衝突に備える。
 32階の高さからコンクリートの地面に落ちた猫は、軽度の気胸と歯が1本欠けただけですんだ。いやあ、まったく信じられません…。
 イスラムの世界では、猫が西洋よりも、はるかに敬意をもって扱われている。それは預言者モハメッド(ムハンマド)が猫を愛したことにもとづく。
 いずれにせよ、猫の身体が想像以上に柔軟であることに関連していることは確実です。
 世の中には、本当に不思議なことが山ほど、次から次に出てくるものなんですね…。だからこそ、この世は果てしなく面白いのですが…。
(2022年5月刊。税込1980円)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.