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カティンの森のヤニナ

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 小林 文乃 、 出版 河出書房新社
 カティンの森事件とは、第二次世界大戦中に、ソ連軍の捕虜となっていたポーランド人将校2万5千人が大量虐殺され、埋められてしまった事件。これは、スターリンがポーランドという国を完全支配するため、ポーランド軍の幹部である将校たちを抹殺しようとしたもの。大量虐殺が発覚すると、スターリンは、その犯人をヒトラー・ナチスだと言い逃れようとした。
 そして、第二次世界大戦で苦労していたイギリスなどは、ソ連を味方にひきつけようとして、ヒトラー・ナチスが犯人ではなく、スターリンのソ連が犯人だと分かっていながら、「黙して語らず」の姿勢を貫いたのでした。
この2万5千人のポーランド人将校のなかに、たった1人だけ女性の犠牲者がいたのです。それが、本書の主人公である女性パイロットだったヤニナ・レヴァンドフスカ。ちなみに、ポーランド映画の巨匠アンジェイ・ワイダ監督の父親も、この事件で殺されている。
ヤニナは殺されたとき、32歳だった。ヤニナは、ポーランド空軍の中尉だった。
 ポーランドは、第二次世界大戦のなかで、3千万人の国民のうち、6百万人が殺害された。まさしく、国の存亡をかけていたのですね。
 それにしても、スターリンの責任は重大です。犠牲者はドイツ製の弾丸で頭を撃ち抜かれていたが、遺体の手を結んでいた縄は、ソ連製だった。
 天文学者のコペルニクス、科学者のキュリー夫人、ショパンもみなポーランド人。ナチス統治下のポーランドではショパンの曲は禁止されていた。うひゃあ、これまた、あまりにも野蛮そのものですよね。
 ポーランドがソ連の衛星国だったときは、「カティンの森事件」それ自体が「なかったこと」にされていた。
 ヒトラー・ナチスのユダヤ人などの大量虐殺も決して忘れることのできないほどひどいものですが、スターリン・ソ連のポーランド人大量虐殺(「カティンの森事件」)も忘れてはいけないことです。
戦争は狂気の連鎖を生むといいますが、現代の日本も、「戦前」にあるようで、岸田政権は空前の大軍拡予算を組み、また、ヘイトスピーチが公然と横行しているのを見て、空恐ろしくなってしまいます。
(2023年3月刊。2320円)

宇宙検閲官仮説

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 真貝 寿明 、 出版 講談社ブルーバックス新書
 宇宙のなりたちに関心のある私ですから、さっぱり理解できないながらも、どこか分かりあえるところがないかと手探りですすみながら、ともかく読みすすめてみました。
 アインシュタインの一般相対性理論は、「質量があると時空が歪(ゆが)み、歪んだ時空が重力の源である」と説明するもの。こんなこと言われても、まるで理解できませんよね…。
 ブラックホールが宇宙に存在するのは確実です。このブラックホールは、一般相対性理論が予言した天体。一般相対性理論の根幹をなすアインシュタイン方程式の解は、ブラックホールの内側に特異点が存在することを示している。特異点は、時空の対称性などの仮定によらず、一般的に存在することが、特異点定理によって数学的に証明されている。
 宇宙検閲官仮説とは、この特異点が発生しても、ブラックホールの中に閉じ込められているから心配しなくてもよいだろうとする仮説。すなわち、ブラックホールなしに「裸の特異点」が出現すると、それは自然界の検閲に引っかかって隠されるはずということ。いやはや、これまた私の理解をこえてしまいます。
 裸の特異点とは…。巨大な星が重力崩壊して、電子の反発力で支えられず(白色矮星となれず)、中性子の反発力で支えられず(中性子星となれず)、さらにつぶれ続けるならば、支えるものがなく、一点に無限大の質量が蓄積する時空特異点が出現する時空になってしまう。でも、時空特異点が生じても、それがブラックホール地平面の内側のことなら、外側の世界には影響が出ない。
 ブラックホールは発生できるが、消滅できない。
 ブラックホールは合体できるが、分裂できない。
皆既日食のとき、太陽の近くに見られる星の位置が通常とは異なるという観測データによって、太陽の質量によって空間が歪み、その歪んだ空間を光が進むため、皆既日食以外のときとは光の進む方向がずれてしまう。
 遠くの銀河にある変光星ほど、赤っぽく見えている。これは、宇宙全体が膨張していることの証拠。つまり、ドップラー効果によるもの。
 分からないながらも、宇宙について考えると、自分の死後、宇宙はどうなるんだろうか…というのが、実にちっぽけな、とるに足らない心配だと、いつのまにか雲散霧消してしまうのです。
(2023年2月刊。1100円+税)

仁義の侍、三宅藤兵衛

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)
著者 天草キリシタン館 、 出版 同左
 島原・天草一揆(1637年)が起きたとき、多数の浪人(失業した武士)が一揆軍に加わりました。一揆勢には火縄銃も数多くあり、鎮圧しようとする幕府軍を一時的には圧倒したのです。
 この本の主人公である三宅藤兵衛は唐津藩側の代官として一揆勢と戦っているうちに戦死してしまいました。多勢に無勢だったのです。ところが、この三宅藤兵衛は、なんと明智光秀の孫。光秀の娘の子だったのです。そして、叔母は有名なキリシタンである細川ガラシャ。ガラシャは幼くして両親を失った藤兵衛を可愛がっていました。
 つまり、キリシタン信者として有名な細川ガラシャによって育てられたも同然の藤兵衛がキリシタン信者の一揆勢と戦い、戦闘の最中に戦死したのです。藤兵衛は明智光秀の孫にあたります。本能寺の変で織田信長を倒した明智光秀は秀吉によって敗退し、一族滅亡してしまうのですが、当時2歳の藤兵衛は生きのびて、長じて細川家に仕え、その後、唐津藩の家臣になりました。天草には唐津藩の飛び地があり、藤兵衛は、その代官だったのです。
藤兵衛は鎮圧軍を率いて戦ったのですが、一揆勢のほうが勢いがあり、奮戦むなしく一揆勢に囲まれ自刃しました。
 ところが、藤兵衛は一揆勢と果敢に戦ったとして天草一揆が鎮圧されたあと、その功績が顕彰され墓(石塔)が建立され、今に残っているのです。そして、その子孫も現在に続いているとのこと。
 藤兵衛が光秀の孫であることは藩主(細川光尚)の書状に明記されています(この冊子に写真があります)ので、間違いないことなのでしょう。
 今も、天草には藤兵衛の石塔や孫の墓がよく残っているそうです。天草に市立のキリシタン館があり、冊子を発行していることを知り、注文して読みました。
(2020年10月刊。500円+税)

ティラノサウルス解体新書

カテゴリー:恐竜

(霧山昴)
著者 小林 快次 、 出版 講談社
 「なぜ恐竜図鑑の表紙はティラノサウルスばかりですか?」
 その答えは、よく売れるから。なるほど、ティラノサウルスなら、子どもも大人もみんな知ってますよね。映画『ジュラシック・パーク』もやはりティラノサウルスが登場してこそのド迫力でした。ところが、この本によると、ティラノサウルスが登場したのは恐竜時代の最終期、巨大隕石(直径10キロ)が地球に衝突して恐竜が絶滅するまでの200万年間だけだというのです。それは長い恐竜時代を1年にたとえてみたら、12月28日に現れて31日には姿を消した、このたった3日間しか暴れることはなかったというのです。不思議ですよね…。
 そして、このティラノサウルスは、日本では化石が発見されていませんが、ティラノサウルス類は、九州でも熊本県と長崎県で化石が見つかっています。熊本県は御船(みふね)町と天草市で、御船町恐竜博物館があります。天草では大きさ4センチ、太さ2センチの歯が見つかり、全長7メートルのティラノサウルス科の恐竜と推定されています。ぜひ近いうちに行って見てみましょう。
 著者は、ティラノサウルス・レックスは日本にいなかったとしても、ティラノサウルスの仲間はいたと考えています。すごいことですよね、これって…。
 今や恐竜はカラフルな生き物だったとして、図鑑は、それこそびっくりするほど奇抜な極彩色で描かれています。なぜ恐竜の色が判明するのか…。メラニン色素はメラノソームという袋のようなものに貯められ、その形によって色が異なることが分かっている。このメラノソームという構造が化石となって残っていると、これを応用して恐竜の色が分かる。たとえば、球形に近いとオレンジ系で、長細いと黒系の色。こうやって恐竜の色、とくに羽毛の色が判明した。
 ティラノサウルスのように巨大化すると、多少の気温の変化は、羽毛に頼らなくても、日中に体内で貯められた熱を慣性的に維持することができる。
 今では、ティラノサウルスの体は羽毛ではなくウロコに覆われていて、背中に毛のような羽毛が生えていたと考えられている。そして、頭にトサカのような装飾をつけて自己アピールをしていた可能性がある。
 ティラノサウルスの巨大な糞が1点だけカナダで発見されている。長さ44センチ、幅16センチ、高さ13センチ、重さ7キロ。これはすごいですね。この塊に骨が含まれていて、その巨大さからティラノサウルスの糞だと考えられています。まさしく肉食恐竜でした。
ティラノサウルスも卵生のはずですが、まだティラノサウルスの卵は発見されていません。鳥類のように抱卵していたとは考えられないようです。
 ティラノサウルスの寿命は28歳くらいではないかと著者は推測しています。
恐竜は完全に絶滅したのではなく、鳥類は恐竜の生き残りだというのが定説です。そして、その証拠の一つが、羽毛恐竜の発見でした。たしかに、恐竜に羽毛があるなんて、そんな化石が見つからなかったら、とても考えられないことですよね。
ティラノサウルスを中心として、恐竜学の最新情報を得ることのできる楽しい本です。
(2023年5月刊。1700円+税)

HHhHプラハ、1942年

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 ローラン・ビネ 、 出版 創元文芸文庫
 ヒトラー・ナチスの高官だったラインハルト・ハイドリヒが暗殺されたのは歴史的な事実です。いくつか映画もありますし、私もみました。
 ハイドリヒはヒトラーの右腕としてユダヤ人大量虐殺を推進していきました。アイヒマンも出席したヴァンゼー会議を描いた映画も最近公開され、これも私はみました。
 ハイドリヒとは、いかなる怪物だったのか、小説として、読者に問いかけている本です。
 事実ではないようですが、ハイドリヒは父親がユダヤ人だという根強い噂につきまとわれたせいで、思春期を台無しにしたとのことです。
 ハイドリヒの暗殺現場で使われたイギリスの短機関銃「ステン」は、その場で故障して役に立たなかった。これなんか、ええっ、嘘でしょと言いたくなりますが、これまた事実でした。それほど故障の多い機関銃だったようです。結局、ハイドリヒの乗っていた車に目がけて投げた爆弾(イギリス製の対戦車手榴弾)によってハイドリヒは死に至った。
 チェコ政府が送り込んだ2人の暗殺者は、どちらも孤児で、妻子もいない。そういう若者が選ばれたようです。
ハイドリヒは、プラハ市内を装甲なしのオープンカーで運転手以外は警護の兵も乗せず、自宅にしていた城から市内まで通勤していた。
 ハイドリヒが暗殺されたことを知ったヒトラーは1万人のチェコ人を銃殺せよと命令した。
 これには、国内のレジスタンスが犯人ではない、ロンドンの仕業だ、集団的報復はしないほうがいいといさめられて、ヒトラーは引き下がった。
その代わりとして実行されたのが、リディツェ村の村民大量虐殺だった。村の存在自体が消し去られた。
そして、暗殺者たちが潜む教会堂が包囲された。ハイドリヒ暗殺の代償は、あまりに大きいものがありました。
 要人暗殺には反対ですが、ヒトラー暗殺が成功していたら、それももっと早く成功していたら良かったのに…と思うことが私にもあります。
(2023年4月刊。1300円+税)

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