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世界一美しい恐竜図鑑

カテゴリー:恐竜

(霧山昴)
著者 ライリー・ブラック 、 出版 日経ナショナル・ジオグラフィック
 タイトルにあるように世界一美しいと言えるかどうかは別として、恐竜がこんなにもカラフルな存在だったとは…。あまりに衝撃的な図鑑としか言いようがありません。
私は恐竜には格別の関心をもっていて、福井の恐竜博物館にも足を運び、その巨大すぎるスケールに圧倒されました。といっても、近くは天草の恐竜博物館、遠くは北海道の恐竜博物館にも行ったことがありません。先日も中国の砂漢での恐竜発掘現場を同行取材したテレビ番組を録画してみました。すごいですよね、素人には砂漢の単なる岩石でしかないのが、実は恐竜の歯だったり、頭骨そして足(脚)の化石だったりするのですよね…。「ファルコン・アイ」の異称をもつ北大の小林快次教授が学生を引き連れて現地調査に出かけた情景なのですが、まさしく幸運にも貴重な恐竜化石を相次いで発見していくのでした。見てるだけでも心が躍ってきます。
恐竜たちの全部かどうかは知りませんが、恐竜は恒温動物であり、体毛も発達しているので寒冷期をも恐竜は生き残った。
 それにしても、恐竜の全身骨格がそのまま残ったような化石もあるんですね。不思議そのものです。すると、体毛まであることが判明しますし、胃の中の構成物を調べると、恐竜が何を食べていたかも分かるわけです。
 ティラノサウルスも、初期には大型犬ほどの大きさでしかなかったというのにも驚きました。そして、歯の形(断面図)から、食習慣が分かるというのも、少しばかり理解できます。
肉食だった恐竜が草食に変わったのもあるという解説を読んで、なぜ、と疑問が湧いてきました。その答えは、エサの問題なのです。動物をつかまえるのは大変な苦労と困難を伴います。でも植物なら、すぐそこに、どこにでもあるのです。あとは消化して自分の血肉にできるかどうかだけなのです。なーるほど、そう言われてみれば、そのとおりですよね。
恐竜の身体の色については、化石の羽毛に含まれるメラノソール(色素を蓄える小さな塊)によって、識別できるとのこと。これって、すごいですよね。
 恐竜の胃の中には、胃石という小さな石がたくさん詰まっていた。
 羽毛は恐竜の体温を保つのに役立っているとのこと。
 いやあ、まあ、しびれる図鑑でした…。あなたも、ぜひ手にとってじっくり眺めてみて下さい。
(2023年1月刊。3300円+税)

最後の猿まわし

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者 馬 宏傑 、 出版 みすず書房
 阿蘇に猿まわし劇場がありますよね。何回か見に行った覚えがあります。
 山口にも猿まわしの伝統芸があるようですが、今も続いているのでしょうか。
 今では、ネットで検索したら簡単にすぐ判明することでしょうが、スマホと無縁な昔ながらの生活を送っている私には、そこらは不明です。
 この本は、中国の猿まわしの人々の生活を中国の記者が一緒に旅をして明らかにしたものです。文化大革命のころに少年時代を過ごした著者が初めて手にした高級カメラは、リコーであり、マミヤであり、ミノルタでした。そして、著者は写真記者になったのです。
 中国の猿まわし師は、長年、中国各地を渡り歩いていることもあり、非常に警戒心の強い集団だ。
 中国には、猿まわしで生計を立てている地域が2つある。河南省南陽市の新野県と、安徽省毫州市の利辛県。利辛県のほうは数少なくなったが、新野県のほうは2002年に2千人が地方へ猿まわしに出かけた。新野県は、『三国志演義』の第40話で諸葛亮が火を放った、あの新野。この新野あたりは、土地がやせているため、家族を養うため猿まわしを業としている。
 新野の多くの村は、数百年、ひいては千年以上に及ぶ猿まわしの歴史を有していて、人々は常に猿と生活を共にし、猿を自分の家の特別な一員としてきた。それは今に至るまで続いている。
「朝三暮図」では猿がバカにされているが、猿まわし師が猿を扱っている話でもある。そして、『西遊記』には、新野の方言がたくさん出てくるし、第28話には、猿まわしの話でもある。
猿まわし師たちは稼いだお金(現金)を「担ぎ荷」の中の箱にからくりをつくって隠し持って歩いていた。現金書留で送金できるようになってからは、それを利用したので、現金を隠しもって運ぶことはなくなった。
1970年から76年にかけて立て続けに干ばつや水害、害虫被害に襲われると、猿まわし集団も外に出てお金を稼いでくることが認められた。猿まわしの実入りはなかなか良く、多いと日に20~30元は稼げた。当時の労働者の月給が30~60元だったのに、かなりの高給取り。今は、それほどの稼ぎはできない。
 文革期(文化大革命のころ)は、猿まわし師も文芸工作者として、世間への進出が認められた。
 猿まわしの猿は、老いすぎても若すぎてもダメ。老いた猿は動きが悪く、幼なすぎると十分にしつけられていない。猿の「働き」のよし悪しは、体つき、かしこさ、できる芸の数で判断される。オスは若いもの、メスは老いたものを使えと言い習わされる。一般的には7歳前後の猿がもっとも曲芸に適している。立ち姿が美しく、生来の性格が悪くない猿を選ぶ。日々の訓練によって、猿が立つ脚の筋肉は強くなっていく。猿のうち年齢の近いオス猿を2頭、「家族」に入れてはいけない。
 猿まわし師は、猿に自分たちと同じものを食べさせる。肉以外は、人が食べるものなら何でも食べさせる。食事のとき、猿まわし師は、自分たちより一番に猿に食事を与える。それが猿まわし師の決まりごと。それを破って、猿まわし師たちが先に食事すると、猿は怒って、鍋に石を投げ込む。猿って、人間をよく見てるんですね。
猿まわし師が集金するのは、まず外周から始める。外周の客は、いつでも立ち去れるから。
 猿は暑がり。もともと、猿は密林に住んでいたので、炎天下で長時間の活動はできない。猿まわし師たちは、列車に運賃を支払わず、不正乗車して、旅費を節約する。すると、鉄道警察が発見したとき、お目こぼしがあるか否かは、大変な別れ目となる。
猿は肉や魚を食べられないとのこと。肉はともかく、魚も食べられないなんて、信じられません。
 猿まわしはワンシーズンで3000元ほど稼げるので、1年で6000~8000元を稼ぐ。これは農業収入よりやや多い。そして、見物していた少女にこう言われた。「おじいさん、あなたは一生で、どれだけの人に楽しみを与えてきたことでしょう…」
 そうですよね。人生は、お金だけではありません。やはり、人に喜ばれることをするのも大いなる生き甲斐です。
 野生の猿は30年も長生きはできない。猿は老いてくると歯が削られて平らになって、モノが食べられなくなる。猿は若いほど顔のシワ(皺)が多く、年をとるにつれて、顔がつるつるになっていく。メス猿の顔がだんだん赤くなれば妊娠したと判断できる。出産は夜がほとんど。訓練は1歳をすぎたころから始める。
  中国でも猿まわし芸は、もはや滅亡寸前にあるようです。
(2023年2月刊。3800円+税)

ワンルームから宇宙をのぞく

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 久保 勇貴 、 出版 太田出版
 著者は、どうやら独身のようで、ワンルームマンションで10年も一人暮らし。そして、そのワンルームでやってる仕事は、なんと、広大な宇宙に飛んでいく宇宙探査機をどうやって上手に制御するかを研究すること。ええっ、そんなこと、ワンルームの自分のパソコンで一人で出来るの…、驚いてしまいました。ところが、著者はできると断言しています。
 宇宙機を目的地まで正確に飛ばす方法を考える軌道制御の分野では、宇宙機の運動や制御入力を数学的に方程式化して、その方程式をパソコンで解いて、制御がうまくいくかどうかを確認する。
 自分のパソコンで計算した宇宙機の軌道を初めて見たら、自分の目で宇宙の真理をのぞいたような感覚になるだろう…。いやはや、そんなことが宇宙航学研究所ではなく、ワンルームにある自分のパソコンで可能な世の中なんですね…。
 宇宙機の制御というのは、高校の物理で習う方程式でも、そこそこ太刀打ちできてしまうものなんだそうです。ええっ、えっ、ホ、ホントなんですか…。ウソでしょう。
 著者の研究は、多くの場合、パソコンひとつで完結してしまう。ワンルームの白いデスクにA4サイズのノートパソコンを広げ、ひとり黙々と研究する。うひゃあ、なんだかイメージが狂ってきましたよ…。
 著者は福岡生まれの兵庫県育ち。東大の航空宇宙工学科に入った。宇宙飛行士になるのを夢見て…。ところが、現実には足切り不合格。試験も受けられなかった。いやはや、すごい試験なんですよね。
 宇宙工学は、人間を乗せた宇宙船を正確に月にたどり着かせたり、3億キロメートルも彼方(かなた)の小惑星に60センチメートルという精度で探査機を着陸させる。
 宇宙機の設計での絶対的なルールは、とにかく制限重量を守ること。決められた重量の中で各システムのバランスを絶妙に調整し、ちょうどうまいこと全体のシステムを成り立たせて初めて宇宙機はミッションを遂行できる。
 宇宙空間は熱や放射線で機器が壊れやすく、しかもいちど壊れたら基本的に修理に行けない。そんな厳しい世界で、いかに巧妙に重量リソースを配分して、ミッションの成功率を高めていく。実際には、現実的な安全策を優先したり、機能を切り捨てたりという決断の繰り返しだ。JAXAで働きながら、なんと週1回はボクシングジムに通っているというのです。
 著者の書いていたブログが本になったものだそうです。書くのが好きというのも、いいことですよね。まあ、私も書くのが命ですけど…。
(2023年3月刊。1800円+税)

宗教2世

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 荻上 チキ ほか 、 出版 太田出版
 統一協会(教会ではありません)と文科省は質問と回答を往復していますが、まったく上辺だけで、宗教法人に対する解散命令を出す気はないとしか思えません。でも、統一協会というのは「宗教」の仮面をかぶった巨大な詐欺集団であることはあまりに明らかではないでしょうか…。少なくとも国家が宗教法人として税法上その他で優遇するなんて間違いそのものです。
 宗教2世の問題は、一般的な「親子問題」とは異なる一面を有する。この点、私もまったく異論ありません。
 宗教2世問題は、家族問題のみならず、帰属する(させられた)コミュニケーションの問題とも関わっている。
身体的な脱会は意外と簡単にできるけれど、心のほうは依然として囚われたままなので、自分の主体性、自立性を確保するには、入信していた期間とほぼ同年、つまり10年、あるいは人生をかけたライフワークになる。
自分で決めるということをずっとやっていなかった人は、脱会しても、自分で決めることがなかなかできない。たとえば、食堂に入って、何か好きなものを食べなさいと言われたとき、えっ、自分で決めていいんですか?と思ってしまう。いやあ、そうなんですか、そこまで主体性を奪われてしまうんですね…。なので、自分が決めていいものなんだと理解できたら(したら)、その人は自分の足で踏み出すことができる。
統一協会の信者であり続けている人たちは、心の中で疑問を抱いていても、いまさら協会を抜けられるわけはない。今までどれだけの犠牲を払ってきたのか、と自己正当化して、協会のなかで我慢して生活しているという人が少なくないだろう。
ううむ、この葛藤は理解できますよね。それで脱会に踏み切れないのですね。無惨です。
カルト宗教、そして自民党右派は同性愛者より人口の少ないトランスジェンダーを集中的にバッシングするというのは、国際的な状況。まずは弱い環を叩け、という戦法ですね。
自民党に山谷えり子という議員がいます。安倍晋三議員と一緒になって、学校での性教育をえげつなく攻撃した議員です。そのおかげで、学校での性教育はタブーのようになって、大きく後退してしまいました。自分たちは散々、浮気、不倫しているくせに、子どもたちにはもっともらしい道徳論を押しつけるというのが、この連中の手口です。学校で、もっと大らかに性教育が進められるべきだと私は思います。
統一協会問題が終わってしまったかのようなマスコミ報道の現状に腹が立って仕方ありません。自民党の萩生田政調会長に統一協会について今どう考えているのか、マイクをつけてぜひ質問してほしいし、それをテレビで報道すべきです。
彼には、子どもの健全育成は、そのあとで語ってほしいものです、まったく…。
(2022年11月刊。2200円+税)

難民鎖国ニッポン

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 志葉 玲 、 出版 かもがわ出版
 先日、国会で入管法のひどい改悪が成立してしまいました。本当に残念です。自民・公明そして維新は日本に難民を一人も入れたくないホンネをむき出しにしました。人道主義とか国際人権というのは、この3党の議員の眼中にはないようです。今でも難民申請して認定されるのは1%ほどでしかありません。その難民認定が、いかに杜撰なものであるか国会の質疑を通じて明らかになったのに、まったく目を向けて反省しようともしません。我らが仁比弁護士(参議院議員)の国会での質問は胸を打つものがありました。
 難民申請は3回以上だと、申請中でも強制退去させることができるなんて、法律としてひどすぎませんか。外国人労働者を大量に導入して安くこき使うのはいいけれど、政治的・社会的に政府からにらまれた人の逃げ場所と日本がなってはいけないなんて、自分の都合しか考えないということではないでしょうか…。
スリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が、名古屋入管(出入国在留管理局)の収容施設で亡くなったのは2021年3月のこと。本人が助けて下さいと何度も訴えたのに、まったく無視され、十分な医療を受けることなく衰弱して死に至ったのです。ひどすぎます。このウィシュマさんについて、維新の会の女性議員が国会質問のなかで公然とデマ宣言したのも許せません。
ウィシュマさんはひどいDV被害を受けていて、その結果、留学生としての在留資格を失ったのでした。ウィシュマさんについては、ビデオによる映像記録があるとのこと。入管当局は2週間分の映像を2時間に編集してウィシュマさんの遺族だけに見せました。弁護士の立ち会いを入管当局は拒否したのです。これまた、許せません。
 日本の法務省は、現在、国際的に問題となっている「紛争難民」について、難民条約上の「難民」と決して認めようとしない。ともかく、狭く解して、一人でも多く入国させまいという姿勢なのです。
 日本各地にある収容施設に収容されている在日外国人は1253人。うち1年以上も約束されている人が531人(42.3%)もいる。入管による予防拘禁については、裁判所の判断が介在せずに無期限に拘禁するというのです。これは戦前の治安維持法による予防拘禁より悪質。
わずか150頁というハンディーな小冊子です。タイムリーなものとしてじっくり読んでみました。
(2022年2月刊。1600円+税)

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