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ニッポン人には、日本が足りない

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著者:藤ジニー、出版社:日本文芸社
 私はテレビを見ませんし、わが家にはテレビがありません。30年来のことですし、困ることはないのですが、ただ広告の話についていけないので当惑させられることがあります。この本の著者も「公共広告機構のテレビCMでおなじみ」とオビに紹介されていますが、私は見たことがありません。
 それはともかく、アメリカから日本の中学・高校の英語教師の助手としてやって来たアメリカ人女性が、スキー指導員の男性と知りあって結婚し、山形県の山奥の温泉旅館の女将として日本に定着したというのです。すごく勇気のある女性だとつくづく感心しました。彼女は今では和服も自分で着れます。また、それがとてもよく似合っています。そんな彼女から今のニッポン人には日本が足りないと指摘されると、なるほどと、ついうなずいてしまいます。山形県尾花沢市の銀山温泉です。団体客ではなく、個人のお客として行ってみたい温泉です。誰か行かれた方がありますか?ぜひとも泊まった感想を教えてください。

果てしなき論争

カテゴリー:未分類

著者:ロバート・マクナマラ、出版社:共同通信社
 720頁もあり、手にとるとズシリと重たい本だ(定価も3800円と高い)。マクナマラ元国防長官というと、団塊世代にとってはベトナム侵略戦争の立役者の1人である。その彼が1995年11月にハノイを訪問し、ボー・グエン・ザップ将軍と対談したというのだから、世の中は変わった。
 この本は、マクナマラ元長官たちがベトナム戦争について、ベトナム側の将軍たちと討議したことをふまえ、ベトナム戦争を総括しようとしたものだ。私としては珍しく2ヶ月ほどもかけて少しずつ味読した。
 大事なことは、過去というのは歴史家のためだけにあるわけではないということ。強さと持久力は、自分自身の歴史とつながりを持つことから生まれる。過去と未来は現在で均衡を保っており、人は自分自身の歴史に深く強く触れる範囲に応じて、将来を制御することができる。
 北ベトナムが正規軍の連隊を送って南の解放戦線を支援しはじめたのは、アメリカが北爆を開始して南に軍隊を送りこんだあとだった。1965年に北の3個連隊が中部山岳地帯に送りこまれ、11月にイアドラン渓谷でアメリカ軍と戦った。このとき、アメリカ兵は300人が戦死し、北ベトナム軍も少なくとも1300人の戦死者を出した。
 アメリカによる北爆によって、北ベトナムの戦意をくじいたどころか、民衆の怒りをかきたて、ますます政府のもとに結束を固めた。当時のベトナムには爆撃対象となるほどの工場はもともとなく、効果は薄かった。ホーチミンルートは複線のルートであり、いくらアメリカ軍が爆撃しても補給ルートを根絶やしにすることなど不可能だった。
 南の解放戦線の方が主戦派であり、北ベトナムは当初ずっとアメリカ軍との衝突を回避すべく南を抑えようとしていた。北ベトナムの統制力は決して想像されるほど強くはなかった。ところがアメリカ政府は、ずっと北ベトナムがすべての戦闘を指令していると考えていた。まったくベトナムを誤解していたのだ。
 アメリカが北ベトナムへ地上侵攻したときには、中国軍が直ちに反撃のためにベトナム内に入って反撃する密約が北ベトナムと中国のあいだで成立していた。そうでなくても現に20万人の中国軍工兵隊がベトナム内にいて、アメリカ軍の爆撃機を撃墜したりしていた。
 マクナマラ長官がベトナム戦争について教訓を引き出すためにベトナム側と対話するについてはロックフェラー財団の後援があったという。ベトナム後遺症は今回のイラク戦争にまで影響していると言われるアメリカならではのことだ。それにしても、かつての敵と真剣な対話をしてまで真実を明らかにし、教訓を引き出そうとするアメリカ側の努力には心うたれるものがある。ベトナム戦争はまだ終わっていない。

佐伯チズの頼るな化粧品

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出版社:講談社
 お化粧なんかに縁のない男の私がどうしてこんな本を読んだのか。もちろん、すべての女性に、いつまでも若々しく美しくあってほしいからだ。厚化粧で嫌な感じを与えるのも困るけれど、髪の毛はボサボサ、身なりを全然かまわないなんていうのは、もっと困る。
 朝のメイクは、これから始まる一日の戦闘服。この言葉を目にして、正直いってのけぞるほど驚いた。そうか、女性は、朝、家を出るとき戦場へ戦いに出かけるのか・・・、と。男性も家の外に7人の敵がいると言われているけれど、女性は、もっと多いのかもしれない。
 この本には化粧品のつかい方についてきわめて実践的な注意がたくさんある。技術的なことはさっぱり分からないので、紹介を省略する。気のついたところを2つのみ書き出してみよう。
 30代からのメイクには意外性は不要。求められるのは知性と清潔感、これに尽きる。・・・これはまったく同感だ。週に一度は、お肌の断食。家に帰るとすぐにメイクを落とし、休日は一切メイクをしない。・・・なんだか、よく分かる心境だ。
 著者は1日2人に限定した完全予約制の美容サロンを開設している。すごーく高いんだろうな、と思う。それにしても、高校を卒業して以来、水着を一度も着たことがなく、海水浴にもスキーにも行ったことがないというのだから徹底している。やはり、何事によらず、プロは違う。

知恵伊豆に聞け

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著者:中村彰彦、出版社:実業之日本社
 三代将軍・徳川家光の懐刀として小姓から老中まで昇りつめた松平伊豆守信綱の一生を描いた感動小説。
 この本は歴史書ではなく小説なので、私もそのつもりで読んだ。つまり、歴史書なら長所と短所、そして当時の社会状況とのかかわりあいのなかでのプラス・マイナスの双方をあげつらうことになる。しかし、この本は小説なのだから、主人公に感情移入するためにもマイナス要素はできるだけカットしてある。「知恵伊豆」とは、どういう経緯でそう呼ばれるようになったのか、幼年時代のエピソードが丹念に紹介されている。島原の乱(これには宮本武蔵も参戦し、負傷している)について、攻める側がいかに苦労したか、どんな工夫をして落城させたのか、その点がとくに興味を魅いた。
 知恵と工夫を一言でいうと、それは臨機応変ということなのだが、日頃からよく物事のウラとオモテとを考えておかないと、とてもすぐには出てこないような非凡な発想な持ち主だったということ。

暇つぶしの時代

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著者:橘川幸夫、出版社:平凡社
 40歳をすぎてから、無性に自分の時間が欲しくなった。世のため、人のために生きることが苦になったわけではない。でも、自分のためにつかう時間だってあっていいはずだ。なにしろ一回限りの人生なんだから・・・。日曜日の朝、家の外に広がる青空を仰ぎみて、さあ、今日一日は自分の時間だ、自由につかえるぞと心のうちで叫ぶ。家中を雑巾がけして汗をかき、シャワーで身体を冷やす。フランス語の勉強にたっぷり一時間はかける。仏和大辞典を隅から隅まで少しずつ読んでいく。赤エンピツでアンダーラインをひき、頁がどんどん赤くなっていくのを見ると心が躍る。まだ何かしら、これまでと違った人生が切り拓ける気がしてくるのだ。
 この本は、日本がもうモノづくり大国であるのは止めよう。それよりコトづくりでいこうと呼びかけている。なんだか分かったような分からない考えであり、ノドにつかえるものがあって共感しにくい。しかし、いくつか大いに共感する指摘もある。子どもと大人の違いは何か。それは時間に対するとらえ方の違いだ。自分の時間を生きる者が子ども。社会の時間を生きる者が大人だ。子どもは、自由に時間を使うことによって、現実の枠組みに支配されない可能性を発想することができた。私は、これからも自分の時間を生きる者、つまり「子ども」であり続けたいと願っている。

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