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虚妄の成果主義

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著者:高橋伸夫、出版社:日経BP社
 東大出身でない東大教授の方が、なんだか大胆にいいたいことを言っているという気がします。どうなんでしょうか?
 経営組織論の専門家である著者は、日本型年功制度の復活を長年にわたって強力に主張してきました。成果主義は有害無益だというのです。私も、まったく同感です。リストラ万能、人減らし論がもてはやされている今どき、珍しいくらいに小気味のいい主張です。なんといっても、人間はお金だけで仕事をするのではないんです。
 日本型の人事システムの本質は、給料で報いるのではなく、次の仕事の内容で報いるシステムだということ。従業員の生活を守り、従業員の働きに対しては、仕事の内容と面白さで報いる。本来、人は面白いから仕事をするのだ。成果主義とは、差をつけるのにお金ばかりかかるが、あまり効果の上がらないシステムだ。
 著者が東大生に教えさとす、次の言葉には大変共感しました。
 自分だけが上から評価されたいと願い、部下や後輩を踏み台にして自分だけが出世していこうとするような人は、やがて自らも淘汰されていく。最初は調子がいいように見えていた目上からの受けがいい人は、目上の人が減るにつれて次第に力を失っていき、自然とその地位も失うことになる。けだし至言だと思いました。

人生にツキを呼ぶ黄金の1日2食

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著者:佐藤富雄、出版社:講談社
 人生で大切なのは心のあり方だ。これに気づいたときが吉日だ。さあ、やってみよう。「人生、これからが黄金期」これを口ぐせにしよう。これで未来はどんどん開かれていく。
 ウソかマコトか、ともかくやって損はしない。1日2食主義を半年以上も実践している私には、またまたうれしくなる本だ。2食といっても、1日の摂取カロリーを変えないまま2食にするのでは逆効果。朝食分のカロリーをまるごと抜いてしまうのだ。
 でも、朝ごはんを食べないともたないでしょ?そんなことはない。まったくの幻想だ。著者は自信をもって断言する。ほんと、そうなんだよなー・・・。
 ところで、1日2食を実践している著者は、なんと午前3時に起きる。夜10時に就寝しているから、睡眠時間は5時間。これで十分だという。そして、朝食を抜くかわりに、なんと、朝のジョギングのあと、ビールを小瓶1本飲む。明治はじめ、ビールが日本に伝来してきたとき、ビールは薬として薬局で売られていた(ホント?)。これくらいビールは薬なのだ。希望にまさる妙薬はなし。楽天思考は百薬の長。
 いずれも本当にいい言葉だ。

百姓の江戸時代

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著者:田中真一、出版社:ちくま新書
 江戸時代は変化のない暗くて息苦しい時代だという思いこみが私たちのなかにあります。しかし、それは誤っていると著者は強調しています。
 たとえば検地です。著者によれば、検地というのは、土地を開いた(新田開発)百姓が大名に申請し、その耕作地を自分の名前で帳面にのせてもらって所有権を確保するというものでした。検地を受けていない水田には個人の所有権が及ばないのです。つまり、検地によってはじめて百姓は土地の所有権をもち、農奴的な身分から解放されるのです。検地について、単に大名が自分のために強行したという見方は誤っています。
 江戸時代には士農工商という身分が固定していたとされています。しかし、現実には、お金が対価として動きつつ、武士が商人になったり職人になったり、また、百姓が武士の株を買って武士になることが多々ありました。つまり、士農工商は身分というのではなく、職分だったのです。
 江戸時代の名主(なぬし)も、上からの任命ではなく百姓が選挙で選ぶようになりました。名主は村人によって選ばれ、村人が名主の給与を出すようになりました。
 長(おさ)百姓が不正をはたらくと、小百姓が団結して奉行所に訴状を出して弾劾することもありました。そして、その効果はちゃんとありました。
 江戸時代の百姓の位置づけについて、目を見開かせてくれる本です。

私は英雄じゃない

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著者:リック・ブラッグ、出版社:阪急コミュニケーションズ
 戦闘中にイラク軍に捕虜となり、アメリカ軍の特殊部隊が救出作戦に成功したという美談のヒロイン、ジェシカ・リンチ米陸軍上等兵の話です。この本でどこまで真実が語られているのかは分かりませんが、ともかくジェシカ上等兵がイラク兵と銃をもって応戦中に負傷したという状況ではないようです。また、イラクの病院で医師と看護婦がそれなりの手厚い医療看護を尽くしていたのも事実のようです。イラク人の医師たちはアメリカ軍が近づいてきたとき、救急車にジェシカを乗せてアメリカ軍へ運ぼうとしたそうです。ところが、アメリカ軍に発砲されて逃げ帰ったということです。恐らく本当の話でしょう。やはり、戦場では、理性をこえたことが起きるようです。
 ジェシカ上等兵は戦闘に従事する兵士というより、鉛筆やトイレットペーパー担当の事務係だったのです。つまり、彼女の所属するトラックが道に迷ったところを、イラク軍に攻撃されてしまったのです。衛星を利用した所在確認装置をもっているアメリカ軍も、やはり砂漠では道に迷ってしまったわけです。
 イラク戦争にはどうしても英雄が必要でした。その英雄に、いつのまにかジェシカ上等兵が仕立てあげられたのです。というのも、アメリカ軍は、第2次世界大戦以来、自軍の捕虜になった兵士を1人として救出した実績がなかったからです。いえ、救出作戦は何度も試みられました。ところが、ベトナム戦争でもハノイ・ヒルトンにいた米軍兵士の救出に失敗しています。
 仕立てあげられた英雄談をぶちこわしたのはジェシカ本人です。すごく勇気がいったと思います。それを乗りこえて、真実を語った女性に対して敬意を表したいと思います。

明治前期の法と裁判

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著者:林屋礼二ほか、出版社:信山社
 今から130年前の明治8年(1875年)の民事訴訟の新受件数は32万件を越していました。これは、その110年後の昭和60年(1985年)の同じ新受件数とほとんど同じです。明治はじめの人口は3,555万人ですから、今の3分の1でしかありません。ですから、当時の32万件という裁判の件数がいかに多いか分かります。
 さらに、今の調停にあたる勧解という制度があり、その利用件数の方もとてつもなく多かったのです。明治10年に65万8千件、明治16年には109万件に達しています。信じがたいほどの利用件数です。
 ところが、その後、急速に裁判も勧解も申立件数が減ってしまいます。これについて、従来は、貼用印紙税の導入など政府の提訴(濫訴)抑制政策によるものという学説が有力でした。私もそうではないかと思ってきました。ところが、本書は、新しい裁判制度が始まったことを知った庶民が、それによって解決されることを期待し、従来から抱えていた紛争を裁判所に持ち出したから増えたのであって、それが一段落したら提訴件数が減っていくのは当然な流れだと説明しています。なるほど、それにも一理あるように思います。
 まあ、それにしても「日本人は昔から裁判が嫌いだった」なんていうのは、まったく根拠のない俗説であること自体は明らかです。
 また、この本では明治10年ころの東京地裁における離婚訴訟の実情も紹介しています。妻からの離婚訴訟が認められたのは明治6年のことです。日本最初の離婚判決は明治9年にあったようですが、明治10年10月19日の離婚判決が残っています。
 明治10年から明治31年7月までの離婚判決145件のうち、妻からの訴訟が93件(妻の勝訴が、うち67件)、夫からの訴訟は16件、夫による妻の取戻訴訟が18件、妻からの離婚拒否訴訟が10件などとなっています。妻からの申立の方が多いのです。
 妻には「己むを得さるの事故」があるときには離婚を認められたのですが、離婚理由は、妻の衣類の無断質入、夫の不貞行為、虐待、破綻主義の順になっています。やっぱり昔から日本の女性は強かったのです。

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