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知事の決断

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著者:日本居住福祉学会、出版社:英伝社
 被災者生活再建支援法が改正されました。4月1日から施行されています。地震などで被災した住宅の再建のための解体費用として最高300万円を支給するというものです。では、解体したあとに再築する費用は、いったいどうなるのか。その点について鳥取県知事が何をしたのか、本書で紹介されています。私は感動のあまり胸が熱くなりました。片山知事は、東大法学部を出て自治省に入ったエリート官僚でした。その官僚出身の県知事が霞ヶ関の常識に果敢に挑戦したのです。生半可な気持ちでは、とてもやれないことだと思います。
 財務省は、住宅本体の再建費用については私有財産の形成に税金を投入することなんかできないと頑強に抵抗しています。しかし、本当にそうなるのか、他に例はないのか。片山知事は前例はあると主張します。農地です。個人の財産であっても、農地なら災害復興の対象になって補助金がもらえます。ところが、人間の生活の基本である住宅については、壊すのなら補助金を出すけれど、壊さないことが前提なら補助金は出さないというのです。変な話です。阪神・淡路大震災では、たくさんの仮設住宅をつくりました。1戸300万円はかかっています。ところが、それは取り壊すから国が補助金を出したというのです。えっ、と驚いてしまいます。
 片山知事は、仮設住宅はなるべくつくらずに、現地で建て替えるのに300万円の補助金を出しました。財務省の猛反対を押し切ってのことです。これによって被災地からの住民の流出がほとんどなくなりました。私は、それを知って涙が出そうになりました。住む家を喪った親を大都会に住む子どもたちが引き取ろうとしました。それを許せば、鳥取はますます住む人がいなくなります。大都会に住む子どもたちが年老いた親を呼び寄せ、見知らぬ人々のなかで生活させるのは本当に美談なのでしょうか。やはり住み慣れたところに住み続けたいと思うのが人情なのではありませんか。私より3歳年下の片山知事の英断に、私は惜しみなく拍手したいと思います。

日本海海戦かく勝てり

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著者:半藤一利、出版社:PHP研究所
 ひとつくれよと露にゲンコ。今から100年前の1904年(明治37年)、日露戦争が始まりました。日本海海戦は1905年5月、対馬沖でたたかわれ、東郷平八郎のひきいる連合艦隊がロシアのバルチック艦隊に完勝しました。
 この本は、この日本海海戦の真相を追求しています。有名な丁字戦法は使われていなかった。併航戦法がとられ、日露両軍の士気の違いで勝利した。機雷をロープでつないだ連繋機雷を新兵器で使おうとしたが、それも波が高くて使えなかった。天気晴朗なれど波高しという電文の真意は、波が高いので、連繋機雷作戦は多分できないだろうと軍司令部に通報したのだ。そんな驚くべき新事実を解明しています。
 軍の機密保持と東郷長官を神格化するなかで、誤った宣伝がなされたというわけです。まさしく政府の情報操作です。
 また、私は203高地の攻略作戦の意義を初めて知りました。『坂の上の雲』にも出てくる有名な秋山参謀は、「旅順の攻略に4、5万の勇士を損ずるも、さほど大なる犠牲にあらず。彼我ともに国家存亡に関するところなればなり」としているそうです。
 乃木希典大将が203高地で無謀にも強行突撃をくり返し、何万人もの大量戦死者を出したのは有名な話ですが、それにはこんな背景があったのですね。ところが、203高地を占領してみると、旅順港のロシア艦隊は既に日本軍の砲撃でみな沈没していたというのです。結果的には、203高地の占領は必要なかったというわけです。
これも知りませんでした。とかく戦争には隠された部分が大きいと思いました。
 国民は政府の情報操作によって、政府の思うように踊らされることが多いのは、先日のイラクの人質バッシングを見てもよく分かります。情けないことです。

鉄槌

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著者:いしかわじゅん、出版社:角川文庫
 弁護士には耳の痛くなる本です。漫画家の著者がスキーに出かけ、夜行バスで帰ろうとしたとき、トイレに行って戻ったら、なんと寒風吹きすさぶ夜空のなかバスに置き去りにされてしまっていました。その悔しさと怒りを漫画で表現したところ、バス会社から名誉毀損として100万円の賠償を求める裁判を起こされてしまいました。もちろん、著者も弁護士に頼んで応訴します。そのときの着手金がなんと200万円。えっ、と驚いてしまいます。そんなー・・・。
 著者は、弁護士費用というのは吹っかけられるものだとは知らなかった、実は、弁護士費用も交渉で決まるものだと書いています。えっ・・・。今では、弁護士会の標準となる報酬規定が廃止されていますので、こういうことも、お互いに納得づくであればありうるわけですが、当時は弁護士会の報酬規定があったわけですから、とても信じられません。
 しかも、著者によれば、弁護士と会って打ち合せをしたのは1回のみ。あとは、FAXと電話でのやりとりだったというのです。これまた信じられません。もっとも、はじめの弁護士(実名で登場します)は懲戒処分を受け、あとで弁護士登録を抹消しているそうです。ただし、それを引き継いだ弁護士は、そのようなことを何も説明していません。
 そして、和解交渉に至ります。本人との打合せなしに和解交渉するというのも信じがたいところです。裁判の記録についても、きちんと本人は渡されていなかったようです。ひどい弁護士がいるものだと思います。
 著者は、さらに、弁護士の文章のまずさ、拙劣さを厳しく糾弾しています。日本語になっていないというのです。難関の司法試験を合格し、文章を武器としてたたかっている人たちとはとても思えない、そうこきおろしています。関係者がほとんど実名で出てきます。こんなことを書かれたくないと思いつつ、胸に手をあてながら最後まで一気に読んでしまいました。

ケイタイを持ったサル

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著者:正高信男、出版社:中公新書
 わが家に夫婦ゲンカをもたらした問題の本です。男女ともに、30歳になるまで子をもつ心の準備ができていない。100年前の日本と比べて、精神的な意味で大人になるのに倍の年月を要するようになった。このくだりがケンカのきっかけです。
 わが家にも親離れのできていない(と思われる)子どもがいます。その責任が、母親にあるのか、父親にあるのかでケンカになってしまったというわけです。
 「ケータイ族」は、仲間への信頼にもとづいた社会関係を築けない。本当は自立してもおかしくない年ごろであるにもかかわらず、まだ親に頼らなくては何もできないと思いこむことで、「だから私が・・・してあげなくてはいけないんだ」と自らの行為を正当化しつつ、モノを次々と買い与えるなかで、子の信頼をつなぎとめようとする。そこには、子どもを信じられない親がいる。
 父親である私にも耳の痛い指摘でありました。わが子たちよ、一刻も早く、まず経済的に自立してくれたまえ。

チェチェンで何が起こっているのか

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著者:林克明、出版社:高文研
 チェチェン共和国は広さは岩手県ほどしかない小さな国です。人口も100万人足らず。そこへロシアは10万人もの軍隊を進駐させています。そして、モスクワではチェチェン・マフィアが猛威をふるっているというのです。どうして、そんなことが起きているのか。この本は、その背景を考える材料を与えてくれます。
 それは石油と石油パイプラインという利権をめぐる争いが根本にあるようです。それにしても、モスクワ劇場占拠事件といい、地下鉄爆破事件といい、どうしてこんなにロシアにはテロが相次ぐのでしょうか。それは、チェチェン共和国それ自体がロシア軍による野蛮なテロ行為で危機に瀕しているからです。まさしく、暴力の連鎖では何ごとも解決しないのです。

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