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臨場

カテゴリー:未分類

著者:横山秀夫、出版社:光文社
 検死官シリーズ。著者は睡眠時間3時間で小説を書いているそうです。一度、倒れたこともあります。まさに命を削って小説を書いているのではないかと心配してしまいます。
 この本でも、新聞記者としての取材体験を生かして、警察署のなかの人間関係の描き方が真に迫っています。いかにもありそうな設定です。そして、殺人事件が起き、ベテラン検死官の鋭い指摘に、ウーン・・・と唸ってしまいます。
 推理小説なので、これ以上アラスジは紹介できません。小気味のよい謎解きが続く短編を寄せ集めた小説です。

田原坂

カテゴリー:未分類

著者:橋本昌樹、出版社:中公文庫
 西南役の実相を少し理解しました。これまで田原坂の激戦というのが、なぜあったか分かっていませんでしたが、この本を読んで初めてなるほどと理解できました。
 要するに、官軍側は新式の大砲でもって攻めのぼってくる薩摩の兵を撃退したかったのです。この大砲を運ぶには、道路勾配からいって、当時の田原坂を通過するしかなかったというのです。
 官軍側には、乃木少佐(29歳)をはじめ、後の日露戦争で日本軍の首脳部を占める山県、大山、児玉、野津、奥、黒木などの将軍が登場しています。薩摩軍の斬りこみ戦法が次第に効果をなさなくなり、代わりに新式の大砲が威力を発揮したようです。
 久しぶりに田原坂の古戦場跡地を見てみたいと思いました。

樋口一葉・いやだと云ふ

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著者:田中優子、出版社:集英社新書
 明治の初め、19歳で小説を書きはじめ、24歳で亡くなった偉大な女性がいた。
 有名な『たけくらべ』は、1895年(明治28年)、樋口一葉が23歳のとき連載をはじめ、翌年4月に一括発表されて絶賛をあびた。そして、その年の11月23日、一葉は24歳で亡くなった。
 著者は、樋口一葉は小説家になりたかったのではなく、相場をはってお金もうけしたかったけれど、それがかなわず、あきらめて小説を書いた。一葉は、挫折と無念のなかで死んだ。このように解説している。一葉は現実を直視し、逃げなかった。しかし、我慢もしなかった。「いやだ!」を全面的に拒否した。
 一葉は、いつもお金に困っていた。そして、たくさんの人、主として男性に、お金を無心していた。借りたお金は、ほとんど返していない。一葉は、貸してくれたお金に感謝したり、恐縮するのではなく、思ったより少ないと腹をたてた。そして、貸すと約束していながら貸してくれなかったときには怒りが爆発した。
 紙幣にまで登場する樋口一葉を、もう一度、読み返してみたくなった。

芥火

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著者:乙川優三郎、出版社:講談社
 隅田川の川縁にひっそりと暮らす江戸の庶民の暮らしが描かれています。きっと江戸時代の人々は、そんな生活をしていただろうな。そう思わせる確かな手応えがあります。
 世の中のことは、そう思い通りにはいかないもの。何度か試して手に入ることもあれば、月日をかけた甲斐もなく終わることもある。それが身過ぎ世過ぎというものだ。
 うーん、そういうものかなあ・・・。人生は一度きりしかないもの。思ったことをやり通した方がいい。そんな気に、ついさせる、しっとりした短編掌説集です。

義経の悲劇

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著者:奥富敬之、出版社:角川選書
 悲劇の将、義経の実像を完膚なきまでに暴いた本です。きわめて明快です。うんうん、そうだったのか、なるほどねー、と唸りながら読みすすめました。
 義経は戦術には長けていたかもしれないけれど、時代の流れを見抜く力がなかった。後白河法皇に操られ、勃興する武士に背を向け、衰退していく公家の側に身をおいたために滅亡していったという著者の論証はきわめて説得的です。
 義経は平清盛に助命され、母の常磐御前は清盛の側室とされた。そして、清盛に傾倒し、父とまで敬愛するようになった。しかし、成人して、実は自分の父親(義朝)が清盛に平治の乱で殺されたことを知ると、一転して清盛を、ひいては平氏を憎み嫌うようになった。
 ところが、頼朝は後白河法皇の言いなりにならず、武士の頭梁として天下を握ろうとした。したがって、義経が頼朝のご家人でありながら頼朝の許可を受けずに朝廷から官位を受けたりすることは絶対に容認できないことだった。
 義経は時代状況を客観的に見ることができず、武士団の統率力もなかった。多くの武士からすると、義経は公家の手先でしかなく、信頼できる存在ではなかった。
 となると、義経の悲劇は、歴史の移り変わりを見抜けなかったことによる必然のものだったということになります。つまり、「判官びいき」とは、あとから頼朝を悪者に仕立て上げ、執権として実権を握った北条一門を善者にすべくつくりあげられた「神話」にすぎないということなのです。うーん、そうだったのか・・・。

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