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永遠の子ども

カテゴリー:未分類

著者:フィリップ・フォレスト、出版社:集英社
 4歳の娘が小児ガンにかかったとき、父親はどうなるか、いや、どうするだろうか・・・。小児ガンは、先進国では子どもの死因として、事故に続く第2位を占めている。
 脱毛は病気の印、死の定めの印である。髪の毛とともに、小さな女の子は名前も性別も失い、小児ガン患者と呼ばれるものになる。
 小説は、時間の森への切り込みである。小説は真実ではない。しかし、真実なしには存在しない。小説はぼくたちに手を差しのべ、目のくらむ一点の近くまで導く。
 死の悲しみは語らずにいられない。人は言葉を探す。なぜなら、言葉は、死者に対して考えられる唯一の施しだから。ぼくたちの娘の死んだ長い年は、ぼくの人生でもっとも美しい一年だった。
 ええっ、こんなに言い切れるなんて、すごいと私は思いました。
 病院の世界がもっとも恐れる伝染病は、絶望である。死者はまず、名前を持つ権利を失う。
 文学の評論を自分の仕事だとしていた著者が娘の死を体験し、小説を書きました。透明感あふれる文体です。訳者から贈呈されて読みました。フランス語を長く勉強していてめぐり会えた本です。日本語としてよくこなれた読みやすい訳文だと感心しました。

新井白石と裁判

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著者:山口 繁、出版社:西神田編集室
 日本人は、歴史的にみると、まったく訴訟好きな民族だ。これは、ジョン・オーエン・ヘイリー教授の言葉ですが、私も、まったく同感です。むしろ、権利意識が強くなったはずの現代日本人の方が訴訟を避けようとしています。江戸時代には、とんでもなく裁判が多かったのです。なにかと言うと裁判に持ち出すのは町人だけでなく、百姓も大勢いました。徳川六代将軍家宣は自ら漢字かな混じりの文章で判決を起案したそうです。
 それはともかく、江戸時代には、現在想像するよりはるかに多数の訴訟が係属していた。享保3年に江戸の公事(くじ)数は3万5751件、そのうち金公事(かねくじ、金銭貸借関係の訴訟)が3万3037件だった。江戸町奉行所には、そのほかに訴訟が4万7731件あった。翌享保4年には公事数が2万6070件、うち金公事2万4304件、このほか訴訟も3万4051件あった。
 あまりにも増えすぎたため、新井白石は、立会日の3分の1を金公事の集中審理に充て、その余を本公事の審理に充てるようにした。ちなみに、公事(くじ)は、相手方の存在する事件、訴訟は相手方のいない願の提出あるいは、相手方が応訴する前を言った。
 『世事見聞録』という江戸時代に書かれた本があります。1816年に出版されたものです。これを読むと、江戸時代についての認識がガラッと変わると思います。図書館で借りられますので、ぜひ読んでみてください。
 富士山のふもとで入会権をめぐって70年のあいだに8回の裁判があったことが紹介されています。村同士の争いです。私も司法修習生のとき一度だけ行ったことがありますが、「逆さ富士」などで有名な忍草村が相手方となっています。
 著者の山口繁氏は、もちろん元最高裁長官です。福岡高裁長官をしておられたとき、私も言葉をかわしたことがあります。日本の裁判は、江戸時代から変わっていない面もあることを知ることができる本です。

裏ミシュラン

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著者:パスカル・レミ、出版社:バジリコ
 私は残念なことに、フランスで星のついたレストランで食事をした経験がありません。でも、三つ星レストランの料理を紹介した本はこれまで何十冊と読みました。写真で見て、目で楽しみ、文章で雰囲気を味わうのです。わずか2000円ほどで豪華ディナーをたんのうできるのです。舌で味わえなくても、想像力で補ってきました。
 とは言っても、私はフランスで美味しい料理を実際に味わったことはあるのです。デイジョンでキールを初めて飲み、リヨンでクネル(魚料理)を食べ、パリのビストロで巨大な自家製パテに挑みました。生きのいい生カキも堪能しました。今でもはっきりと思い出すことができます。40代の初めには、南仏のエクサンプロバンスでひと夏の独身生活を謳歌することもできました。ワインはロゼです。こってりした魚スープをいただくと、あとは、もうサラダだけでもいい。そんな気になりながらも、なんとか肉料理にすすみます。マルセイユではブイヤベースとともに、野ウサギの赤ワイン煮こみもいただきました。うーん、また行きたくなりました。ぜひ、近いうちにまた行ってこようっと・・・。
 有名なミシュランガイドの調査員だった人が調査の裏話を紹介しています。調査員はたった5人しかいないそうです。毎回毎食、フランス料理を食べていたら健康は大丈夫でしょうか、と心配になります。
 レストランの側も調査員だと分かると、なんとか特別待遇しようとします。でも、調査員だと気づかれないように行って食事をし、最後に身分を明かすというのです。そのときのレストラン側のあわてぶりが面白く語られています。それはそうですよね・・・。
 でも美味しい料理って、なにより食べる側の体調によりますよね。ほどほどにお腹をすかしていないといけません。そして、連れが大切です。そのうえで、店の雰囲気ですね。三拍子そろうというのは、なかなか難しいものです。こうなると、お金だけの問題ではありません。

リラックマ生活

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コンドウアキ、主婦と生活社
 毎日せかせか仕事をして、少しくたびれたなー、そんな大人むけのほんわか絵本シリーズです。我が家のぐうたら娘の大のお気に入りです。世の中には、こんなに似た人間がいるのかと驚きます。でも、まあ、ちょっとひと休み。それもまた、いいものでしょう。いつもいつも息せき切って走っていても、つまりません。
 わが団塊世代にも、ついに大量定年時代が到来しつつあります。防衛大学から自衛隊の幹部になったF君はもう55歳定年でやめたはず。今ごろ、どこで何をしているのかな。 サマワに派遣された隊長たちは、みな40代の前半。あんな激しい戦火の真っ直中に飛びこむ人の気がしれないけれど、彼らにも読ませたくなる絵本です。死んで遺族が2億5000万円(ほかに年金が月70万円)もらっても仕方ないと思うのですが・・・。

うたう警官

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著者:佐々木 譲、出版社:角川春樹事務所
 うたう警官というのは、カラオケボックスでうたう歌がうまい警察官というわけではありません。警察の裏金づくりや不祥事を内部告発する警察官のことです。
 この本は、北海道警察の裏金づくりを告発した元釧路方面本部長の勇気ある行動を下敷きにしています。うたう警察官なんか、うたう前に別の口実をつくって殺してしまえ。そんな警察組織の体質が鋭く告発されています。といっても、スケープゴートにされかかった1人の刑事を救うために、仲間の刑事たちが次々に立ちあがり、行動していく様子が詳細に語られます。警察の捜査現場の雰囲気が臨場感にあふれていて、「警察小説の金字塔」とオビにありますが、なかなか読ませる小説でした。
 ところで、この本にインターネットで宅急便の会社の制服が売られていると書かれていました。ありうることです。玄関で「宅急便です」と言われたら、疑いもなくドアを開けるでしょう。それが物盗りだったら・・・。ぞっとします。
 それにしても、キャリア警察官がぬくぬくと裏金をフトコロにしているのは本当になんとかならないものでしょうか。権力とカネの両方をもたせると人間ロクなことはしないと思うのですが・・・。

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