法律相談センター検索 弁護士検索

『噂の真相』25年戦記

カテゴリー:未分類

著者:岡留安則、出版社:集英社新書
 「噂の真相」が総合月刊誌で「文芸春秋」に次ぐ発行部数だというのは知りませんでした。マイナーなブラック・ジャーナリズムとばかり思っていました。私の友人(東京の弁護士)が、「オレも例の一行情報にのっちゃったよ・・・」とこぼすのを聞いたことがあります。そのとき、彼も、そんなに有名人になったのか・・・、と正直なところ、ちょっぴりジェラシーも感じてしまいました。
 「噂の真相」は何度も世間を動かしたことで有名です。法曹界でいうと、検事総長コースに乗っていた則定衛・東京高検検事長は、その椅子からこけてしまいました。銀座のクラブで働いていたA子さんから告発され、「噂の真相」の記事になるという予告記事が朝日新聞の一面トップを飾って大騒動になりました。やはり中味がひどいのです。パチンコ業界の接待で銀座の高級クラブを飲み歩くだけでなく、A子さんの中絶費用までパチンコ業者に払わせた。公務で関西出張していたときもA子さんを同伴し、その旅費まで公費で負担させていたというのです。呆れてモノが言えません。
 東京地検の特捜部長だった宗像紀夫教授(最後は名古屋高検検事長)との角逐もありました。気に入った女性記者に情報をリークしていた、というのです。女性記者と宗像とのツーショット写真がとられました。
 国松孝次・元警視庁長官が狙撃された事件の犯人は依然として検挙されていませんが、国松長官が、あの高級マンションを抵抗権もつけずに現金で買った事実も追及しています。これは、例の警察裏金事件に関連するものなんでしょう。しかし、さすがはキャリア警察官の総元締めにのぼりつめた人物だけあって、シッポをつかませず、逃げ切りました。残念です。森喜朗総理大臣(当時)が、早稲田大学の学生時代に売春等取締条例違反で検挙されたことを記事にしたとき、裁判所が助け舟を出して和解で終わらせてしまいました。これも、前歴カードまで入手していたというから、たいしたものです。
 田原総一郎は小泉の個人的な相談役も買って出ている。今の田原は小泉政権の露払い役にしか見えない。リーダーとしての資質を欠く倫理なき政治家たちの人間性を正面切って批判しない田原総一郎は、もはやジャーナリストとは言えない。このように厳しく批判しています。まったく同感です。
 著者は私の1歳年長ですが、法政大学で新左翼の活動家でした。運動に挫折してマスコミ界に入ったわけですが、日本の深くて黒い闇の世界を暴くうえで、それなりに大きな役割を果たしてきたんだ、そう思いました。「噂の真相」が休刊となって、今の組織ジャーナリズムの不甲斐なさに歯がみしている私はそう思いました。

海峡の光

カテゴリー:未分類

著者:辻 仁成、出版社:新潮文庫
 刑務所を舞台とした一風変わった小説です。いま、私は毎週のように刑務所通いをしています。そこは山の奥の方にあります。下界から3度は気温も低いそうで、なかは凍えるほど寒いとのことです。
 刑務所はいまどこも満杯です。ここにも高齢化現象が現れているというのです。なんだか寂しくなります。面会のとき、奥の方から、「オイッチニ」の大きなかけ声が聞こえてきました。収容者が工場から帰ってくるときには一列に並べさせ、大きなかけ声とあわせて軍隊式の行進をさせられるのです。これは昔から日本の刑務所でやっていたのかと思うと、そうでもなく、30年ほど前からのことにすぎないそうです。がんじがらめの規則のなかで生活するうちに、社会での自由な生活への適応力を喪ってしまう人もいるということです。
 刑務所の職員に対して、「あんたたちも大変だね。一生、ここから出られないんだから・・・」と言ったというセリフが出てきます。本当に看守の気苦労は並大抵のものではないと思います。なにしろ定年までずっと何十年と続くのですから・・・。
 刑務所のなかで拳銃が密造されていたことが発覚したのは20年以上も前のことだったと思います。そのとき、刑務所から出てきたばかりの人に実情をきいたことがありました。そりゃ、ありえますよ。わたしなんかも房内でタバコを隠れて吸ってましたしね・・・、という答えだったので、ア然とした記憶があります。
 偽善者をキーワードとした小説でもあります。

オランダの教育

カテゴリー:未分類

著者:リヒトレルズ直子、出版社:平凡社
 オランダの小学校は校区制がない。歩いて買い物に行けるほどの距離のところに3つや4つの小学校があるのがあたり前で、自転車通学可能な範囲を含めると10校前後の小学校があって、そのなかから選ぶことになる。小学校は全校生徒が平均250人。1学年せいぜい2クラス。
 先生も校長先生も本人の希望か学校の理事会が決議しない限り異動しない。学校の教職員は安定性が高く、いわば校長先生を代表とする一つのコミュニティのようなもの。教師は威厳のある権威的な存在ではなく、子どもの自主的な学習を補佐する友好的な大人だとみられている。
 オランダの義務教育は5歳からだが、たいてい4歳から小学校に通いはじめる。小学校低学年のあいだは、父親か母親が学校に送り迎えするのが普通。
 オランダの小学校には宿題がない。午後3時ころに学校から帰ると自由時間を楽しめる。高校も大学も、入学試験がない。学校に課外活動はなく、塾もない。
 日本でも「ゆとり教育」と言う前に、学校で教師も生徒も、もっと伸び伸びと過ごせる社会環境をつくりだすべきだと痛感しました。学力が世界レベルで低下したことを嘆くより前に・・・。

民営化される戦争

カテゴリー:未分類

著者:本山美彦、出版社:ナカニシヤ出版
 いまアメリカは海外での軍事行動について民間会社を活用している。Private Military Companies(PMC)という。PMC全体で年間100億ドルの売上がある。最大のPMCは元将校を1万2000人もかかえている。彼らは、軍人恩給として退職時の50%が支給されるうえに、現役の軍人であったころの給与の2〜10倍ももらう。ペンタゴンがPMCに支払う金額は年間250億ドル。これは10年前の2倍。PMCの従業員は戦地での戦闘行為にも加わっている。
 したがって、これらの民間会社につとめる社員が殺害されるケースが増えている。しかし、民間人の殺害が増加する反面、制服の軍人の殺害が減っていることから、戦争したくないという心理的な壁を薄くしている。戦争行為をPMCが代行してくれるおかげで正規の軍隊や彼らを統括する上級閣僚たちが、血を流す兵士の惨状を見て厭戦気分に陥る可能性が小さくなっている。そこで、限定的な局地戦にはPMCが多く送りこまれる。制服の大部隊を投入しなくてもよいからだ。しかも、5000万ドル以下のPMCとの契約額ならペンタゴンは議会に報告する義務もない。
 戦場に参加する民間会社が忠誠を誓う相手は軍ではなく、株主である。彼らはカネだけで働くかつての悪名高い傭兵たちと同じ行動をとる。
 PMCのなかでは、ハリバートン(チェイニー副大統領の関係する会社)の子会社であるKBRが断トツの存在。ほかにディンコープ、ビンネル、MPRI、AOCOMガバメント・サービスなどがある。
 イラクの罪なき市民を大虐殺しながら、アメリカの企業が巨大な利益をあげているなんて、許せない。しかし、それも長続きはしないだろう。とはいっても、それまでに莫大な犠牲者が出るのを、私たち日本人は座視して見守るだけであってよいのだろうか・・・。

キャッシュカードがあぶない

カテゴリー:未分類

著者:柳田邦男、出版社:文芸春秋
 この本を読むと、つくづく銀行にお金を預けておくのが心配になってしまいます。カードの不正使用で虎の子の貯金を全部おろされてしまっても、銀行も警察もそ知らぬ顔をしてとりあってくれず、被害の回復はきわめて難しいというのが日本の現実です。
 超小型デジカメをATMの真上にセットしておいてモニターする。銀行のATMに通じる電話線に盗聴器をつけて傍受する。カード照会機CATの近くで電磁波をキャッチする。このような最先端の技術で暗証番号が盗まれている。
 銀行のカウンターごしに脅迫して行員からお金を奪ったとしたら、たちまち銀行強盗事件として警察は動き出す。しかし、ATMを通じて預金が奪われたときには、警察も銀行も必死の訴えを聞き流すだけ。銀行は弁償しようともしない。
 スキミングマシンは、秋葉原などで安く買える磁気読みとりヘッド、アンプ、メモリ、電池の4つをそろえたら簡単につくれる。窃盗団がつかっているのは、タバコの箱半分ほどの大きさ。
 アメリカには「50ドル・ルール」というのがある。本人が負担するのは上限が50ドル。イギリスにも50ポンド・ルールがあり、ヨーロッパには150ユーロ・ルールがある。そして、銀行は保険でまかなってもらえる。
 日本の銀行がいかに消費者の犠牲の上にあぐらをかいているか、それを知り、あらためて寒々とした思いがしました。そんな銀行の救済のために政府は何兆円も税金を惜しみなく投入するのです。ところが、国民の被害には知らぬ顔の半兵衛を決めこみます。ひどい話ですよね・・・。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.