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凍れる河

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著者:オリヴィェ・フェルミ、出版社:新潮社
 インド最北部。ヒマラヤ山脈の谷間、標高3500メートルのザンスカールに住む兄妹とフランス人との心あたたまる交流が紹介されている。なにしろ1年のうち8ヶ月は雪のため下界と途絶する地方である。冬の気温はマイナス30度。村人は村を出ることもない。町まで出るには危ない山道を2週間以上も歩かなければならない。途中で遭難してしまう危険も大きい。
 登山家をめざしていたフェルミは写真家でもある。夫婦で滞在型の冒険旅行を始め、ロブサン一家と知りあい、その子どもであるモトゥプとディスキット兄妹と知りあった。この兄弟は学校で勉強をはじめると成績優秀で、兄は外交官に、妹は医師になるのを目ざしている。とても故郷の村には帰りそうもない。
 命がけの綱渡りのような壮絶な旅をそのまま実況中継した。そんな写真が素晴らしい。さすがはプロのカメラマンだ。

弁護士活動を問い直す

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著者:和田仁孝、出版社:商事法務
 若手の学者による弁護士への批判(注文)がもりこまれた本です。
 たとえば、弁護士の多くは司法試験の合格者を1500人に増やしたことで「質」が低下したとよく言います。しかし、弁護士の「質」とは一体何でしょうか?
 弁護士業務の「質」とは、法廷で的確かつ効果的に代理人として活動し、依頼者の権利を守るとともに、公共的正義を推進できるような能力にかかわるもの。高度の法的知識を知悉し、かつ、その推論構成能力に長けていることは弁護士としての必須の前提。これを参入制限によって、「縮小均衡」で保護してきた。
 私たち弁護士は「在野」という言葉をよく使います。しかし、本当に弁護士は「野」にあったと言えるのか、厳しい問いかけがなされています。
 利用者である国民の目からみて、弁護士は国民一般にはアクセス不能で不透明な「専門領域」で活躍する縁遠い専門家に過ぎなかったのではないか。弁護士は「野」にあったというより、人々から見れば信頼はできるが遠いエリート専門家であり、アクセス不能な「専門権力」のひとつだったのではないだろうか。
 うーん、そうかもしれません。私にも胸に手をあてて思いあたるフシがあります。
 さっと読める本ですが、反省させられるところも多い内容です。

アメリカの秘密戦争

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著者:セイモア・ハーシュ、出版社:日本経済新聞社
 セイモア・ハーシュと言ったら、アメリカがベトナムに侵略して戦争していた当時、ソンミ村虐殺事件をスクープした記者として有名です。60歳代半ばになってなお、現役の第一線記者として頑張っているそうです。
 イラクのアブグレイブ刑務所でアメリカ軍がイラク人を虐待していたことをスクープしたのも、このセイモア・ハーシュ記者でした。この刑務所を統括していたカルピンスキー准将は女性でした。この司令官の姿勢が兵士たちに何をやってもよいと思わせたとされています。
 この事件が発覚した端緒も紹介されています。イラクから任務を終えて帰国してきた女性兵士が暗い顔をしてふさぎこんでいたので、心配した家族が女性兵士がイラクからもち帰ったコンピューターを見たところ、おぞましい画像が次々に出てきたというのです。例の裸の人間ピラミッドなどの写真です。
 9.11テロ以降、アメリカは、法的手続き抜きでアルカイダのメンバーを1人ずつつけ狙って殺すことをテロとの戦争における新種の軍事行動として正当化している。
 こんなことをしていたら、アメリカは、さらにひどいしっぺ返しを受けるのではないでしょうか。そんなアメリカに追従するばかりの日本だってどうなるのでしょうか。私は本当に心配です。

検証・日本の組織ジャーナリズム

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著者:川崎泰資、出版社:岩波書店
 このところ新聞やテレビに、チェック機能のみならず特ダネやスクープも少なくなっているように感じる。私もまったく同感です。つまらないこと、どうでもいいことは大きく取りあげ、本当に私たちが知らなくてはいけないことはちっとも大きく報道されていない。そんな気がしてなりません。たとえば、イラクのサマワです。日本の自衛隊が出かけて1年になります。いったい、どんな町なのか、NHKは特派員を出して、定期的に街の様子を知らせてほしいと思います。いえ、自衛隊に反対している人の声だけを紹介しろというのではありません。賛成している人もいていいのです。もちろん反対している人が多いんだったら、それも報道すべきです。いまサマワの市民がどんな生活をしているのか、日本人は知る必要がありますし、NHKはそれを知らせる義務があるように思います。
 ところが、この本が強調しているように、イラク戦争が始まったとたん、NHKも一般マスコミも記者は全員イラクから撤退してしまいました。ヨーロッパの報道機関は残ったのに・・・。そして、NHKは自衛隊員のとったビデオをそれと知らせずに放映したのです。なんとも情けない話です。
 NHK福岡放送局の局長室(応接室)に入ったことがあります。まるで大企業の社長室という雰囲気なので、居心地が悪くなりました。海老沢前会長の往生際の悪さはひどいものでした。まったく私物化しています。天下の公共放送が泣きます。
 NHKの組合員の6割がNHKを政府の御用機関と考えているそうです。でも、今や御用機関どころか、国家機関そのものではないのか。著者は厳しく指摘しています。世論調査の報道にしても、政府に都合が悪い結果が出たときには報道しないというのです。ひどいものです。そう言えば、NHKはイラク戦争反対の集会やデモ行進をまったく報道しません。憲法改正反対の声をあげた有識者による「九条の会」についても報道しません。
 やっぱり、テレビはNHKをふくめて見る価値がないとアンチ・テレビ派の私は考えています。いかがでしょうか・・・?

「さまよう刃(やいば)」(東野圭吾)

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「裁判所は犯罪者に制裁など加えない」この文章に胸を一撃されました。被害者の遺族の怒りと悲しみはどこへぶつけたらいいのか。正義の刃(やいば)とは何だろうか。社会常識を身につけないまま身体だけが大人になってしまった少年たち。少年法はこのままでよいのだろうか。被害者側にとっての司法の在り方というものを深く考えさせられる1冊です。

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